本の虫

◆第4回『OZ(オズ)/樹なつみ』◆

 『OZ』第1巻の帯にはこうあります。『人類究極の愛と夢と野望とが織り込まれた、1990年代の幕開けを飾るにふさわしく壮大なスケールで描く近未来冒険物語巨編!』――いやぁ、なかなかすごいですね。でもこれがはったりじゃなく本当だからもっとすごいです。

 舞台は第3次世界大戦後、小国が乱立し、地球規模の戦国時代を迎えた世界。狂気の天才科学者の兄を追って、伝説の科学都市OZへ向かうヒロインと、彼女を助ける傭兵のヒーロー、そしてOZへの案内人たる美しいサイバノイド(機械人間)。この三人(?)が繰り広げる冒険の旅。まぁストーリーは読んでのお楽しみですが、ヒーローがね、超カッコいいんですよぉ。顔がいいとか悪いとかじゃなくて(いや、顔もいいんだけど)、生き方がカッコいいんですよね。

 そして魅力的なのが、サイバノイドの描かれ方。高度な学習機能を持った彼(彼女?)は、ロボットから人間へと成長していく。ロボットとは何か、という問いはすなわち、人間とは何か、という問いの裏返しなんですね。人間は普段、自分が人間らしいかどうかなんかで頭を悩ませたりしませんが、ロボットは、ロボットであるが故に人間らしさを求める。サイバノイドは言います。『人間に近づく事とは、より不完全なものへとなっていく事なのでしょうか…』

 樹なつみさんという人は、本当にセリフがうまいです。人を泣かせるツボを心得ています。もう、最後はボロボロでしたもん、私。どうしたらこんな良いセリフが書けるのか教えてほしい。ついでに魅力的なキャラクターの作り方も……。

 さあ、今から本屋へ行って『OZ』を注文しよう。絶対損はしないから。

『OZ』全4巻 樹なつみ(白泉社ジェッツコミックス)
(完全収録版全5巻も白泉社から出ています)


●次回予告●

次回は『アヴァロンの霧/マリオン・ジマー・ブラッドリー』です。


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