2月。それは「落とし込み釣り師」にとっては厳しい季節です。防寒着を着て、使い捨てカイロを貼っていても脚元から寒さが
ジンジン伝わってきて、指もかじかんでカニもつかめなくなり
カニのハサミにバシバシ突つかれます。
よほど気を張っていないと、寒さに負かされ腹具合まで悪くなり
ピ−ゴロロ・・なんて事もあり得ます。
その時は我慢しないでテトラの中に潜り込みます。
(冬の釣りには、ポケットティッシュは欠かせません)このシ−ズンの餌はカニが良く、それも出来るだけ小さい
赤ちゃんクラスのカニが良いと作者は思っています。
テトラの穴の中へカニを沈めてやると4m迄であたりが出ます。
この時期は餌が少ないせいかあたりがはっきり出る事が
多いようです。
たまには、大型チヌでも餌をひったくって行くやつも居ます。
それはある2月の事。釣友と2人でテトラのチヌを狙った
時の事でした。
今にも雪が降り出しそうなどんよりとした雲が覆い被さった
日でした。
風はそんなに強くは無かったのですが、ジンジン脚元から
寒さが伝わってきます。
テトラをひょいひょい移りながら探っていた時、目の前を
白い物がちらつき始めました。
「ひょえ〜!雪や。こりゃ寒いはずや」すかさず襟元の
ジッパ−を上の方まで上げて僅かな抵抗を試みます。
最初はちらほらでしたが、その内にボタン雪に替わり
視界も3〜5m程度になってきて竿先もハッキリとは
見えなくなってきました。
竿先どころか竿の上にも雪が積ってきて、釣りどころ
では無くなりそうな気配です。
「こりゃダメや!この調子やったら相当積るし、
迎えの船も来てくれるんかいな。釣友にTELして、
早めに帰ろうかなぁ〜」とも考えていた時の事です。
お待たせを!!ここから寒さが気にならないような
事の始まりです。
−チヌよ何処へ− 雪にかすむ竿先の揺れが、波でも雪の重みでもなく
「しなり」ます。
「ほれっ!きた!!」と強あわせで「しゃくる」と
ラインが「びゅんびゅん」うなって竿もいっぱい曲がります。
この時期のファイトは凄く気持ちが良いのですが、
テトラに深く潜り込まれるとラインがテトラに擦れて
アウトです。チヌとのやりとりをしながら出来るだけ
早くテトラから引き出す事が大事です。
「よしよし!出てこい。出てこい」とチヌの機嫌を
取りながら(?)ラインが擦れないように竿を倒し
ながら穴からの引き出しにかかります。
やっと引き出してタモを用意しかけた頃、浮き上がって
くるはずのチヌの姿が見えません。
「ありゃりゃ!何処へ行きおった?」とテトラ付近を
見回しても見あたりません。
雪も小降りになり視界は良くなってきたのですが・・・・
「お〜ぃチヌよ何処行った?」
竿には未だ、チヌの締め込みがビンビン伝わってきます。
竿先からラインを追っかけるとラインが沖へ。
「この野郎!沖へ逃亡を謀ったな」このチヌさんは
テトラの溝になっている部分をすり抜け、水面経由
ではなく水中経由で沖へ逃亡を謀っていました。
「この野郎、逃がすか!脱獄は重罪やで」とわけの
分からぬ事を考えながら、もう一度ファイトのやり直しです。
この状況では「テトラに擦れてライン切れ」は無く
なりましたが、空気を吸わせてませんので敵さんまだまだ
元気です。竿が伸されそうになった時、足場を前に移動
するためテトラを飛び移りました。
後で驚きましたが「雪の積った滑りやすいテトラの上を
よく飛び移ったなぁ」と感心しました。
必死だったのと、夢中だったのと、タモはテトラ
という事で2.7mだった事もあったのでしょう。
水面すれすれまで近づいて伸されそうになった竿に
集中し「絶対ラインは切れない、フロロカ−ボンの
2号を信じて」と念じながら、それでも無理をせず
徐々に引き寄せます。やっと水面に顔を出させ空気を
吸わせて、ばしゃばしゃやっているところを無事
タモいれに成功しました(38cmでした)。
−何時の間に−
この時になって足元の藻の滑り易さに気がつき怖くなりました。テトラを慎重に上り、獲物をストリンガ−にかけて
釣友に携帯TELを入れます。
「TELして『あたりを見逃した』ってどやされるかな!」と
気にしながら
「どぅ、調子は?釣れた?」
「あったりまえや!今2枚あげたところや。
おまえの前の方にストリンガ−あるやろ」
「うっ何!すげえな。俺今やっと1枚上げたとこやで。
おっし、この雪でも頑張るぞ!お〜!」
「お〜っ!」ってご返事。
それにしても何時の間に2枚も。本当に凄いお方で、
この釣友のファイトにはいつも元気づけられます。
さっきまでの「こりゃダメや!・・・・・・早めに帰ろうかなぁ〜」なんて気分は一度に吹き飛びました。
2匹目を狙ってまだ降り積もる雪の中を釣行の再開です。
釣友のお言葉通り少し前の方に40cmはあろうかと言う
”戦利品”が2匹ストリンガ−にかけられゆらゆらと。
「こりゃ負けてはおられんわい」
−3匹目は?− テトラの上の雪が気になって場所の移動に難渋しながら、
それでもすぐあたりがありました。
雪は完全に止んでいましたので竿先もはっきり
見えていました。竿先を押さえ込む”締め”です。
すかさず強あわせで、又々ファィトへ。この敵は穴から
引き出してやると水面をばしゃばしゃしていますので
楽にタモ入れ。
(1匹目の経験で強めにファィトしたのかなぁ!36cmでした)しかし、ここでちょっと困ってしまった。
この時ストリンガ−は1つしか持っておらず、
自分のトリンガ−の所に戻るには少し遠く
悩んだ末、釣友のストリンガ−を思いだしTELで
「もしもし、どない?」
「なんや!ちょいちょいTELすんなよ、気が散るなぁ。」
「わりいけど、ストリンガ−使わせて。2枚目のチヌ
入れても良い?」
「勝手に使えや!」
「あんがとさん」
と言うことで、釣友のストリンガ−を借りて2匹目をKeep。
再び釣行の再開です。
今度はなかなかあたり無くそろそろ寒さが身に浸みて
きた頃、竿に変なあたりが。
「ごつ!ごつ!ごつ!」って。
「大胆やな!」であわせると、今度は締め込み無く
「すっ〜」と上がってきた途中ちょっと抵抗したものの
上がってきたのは「ポンには届かぬアブラメ(28cm)」
でした。
これも、釣友のストリンガ−にかけました。
何故かって。だって、あたりが途絶え緊張が少し途切れて
いた時に「アブラメ」の釣果。
外道とはいえ、美味しそうな晩飯のおかずです。大事にね。
今度は釣友からTEL
「3匹目か?」
「あっ!見てた。違うよアブラメだよ!」
「タモ入れしてるから3匹目かと思ったよ。おどかしやがって」
この後あたり、釣果無く、釣友と2匹づつの引き分け。
(但し、アブラメ分だけこっちの勝ちと独り合点)
12時ころには、お日様も顔を出し、積った雪も溶け
仲良く(?)釣果をぶらさげて帰路につきました。
以 上
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