第三章  気を取り直しての釣行でやっとこさ「お初」か


(その1)

「背徳の木の実は格別」。
とは言ってもそんな大げさな事をしたわけではない。
会社を有休で休んで釣行におよんだだけの事。
でも休む理由が「釣り」では、「背徳」と言われても仕方がない。

その日は朝6時の船と決めていた。朝は5時起きである。
そのためには、前日の残業も(部下の迷惑省みず)そこそこに切り上げて
早めの帰宅と、早めの就寝。ビ−ルも控えめにね。

目覚まし時計と携帯のスケジュ−ル機能で時間に遅れる事無く起床し
餌屋にぶっ飛ばす(急行します)
(^o^)
ちょっとシ−ズン外れ(遅れ)か?とは思ったが「イ貝」を・・・

「イ貝は無いよ」とつれないお返事

「やっぱし・・・じゃあ蟹を・・・」とオ−ソドックスな餌に落ち着いた。

「渡船の券も」と要求したが

「渡船の券は置かない事にしたから」

「えっ・・」なんとまぁ・・・・

「奢れる平家も久しからず」や!か・・
しばらくこないうちに・・・
本当に変化(移り変わり)の早い時代になったものです。
渡船場で\1,500を支払い船長さんに「○○○○で降ろしてね」って頼んで
船に乗り込んだ。

今日は金曜日だから一人っきりかと思いきや・・何と同船者が6人も?

「えっと・・あの二人は60歳を超えてそうなお爺ちゃんやから除外するとしても
 あの四人は小生より若いで!彼らの仕事なんやろ。金曜休みっていう事は、
 土日が仕事の人達か??」
釣り場迄の船の中でしきりに詮索してましたが、ポイントへ着くとそんな事は
どうでも良くなった。
船を降りようとしたら

「ありゃりゃ・・何や!みんな同じとこで降りるんか!」
で全員同じポイントへ。早速仕掛けの準備をしていると

「何狙うの?」とおじいさんから

「チヌです。たぶん釣れないけど・・」

「チヌか。こっちはハネや・・・がんばりや!」
ほ−い!言われなくっても頑張んべ−!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(その2)

天気は曇り、熱くも寒くもなく生暖かくていや〜な感じ。
こんな日は「絶対に釣れる」と確信にも近い感じがします。
(よく、外れますが・・
(^_^;)?)
1時間ぐらいでしょうか必死に探っていた時・・・ガツンとアタリが・・

「おっ・・」と引き上げても掛かりません。蟹の頭半分がありません

「何や、チヌと違うがな。これはフグやな?まだ水温が温かいんか?」
久々のアタリだけどちょっとがっかりでした。
たままたアタリです。「フグかいな、かなんなあ」と気がゆるみかけた時
手応えが出ました。竿をグッ−!っと引っ張ります。

「何や?これはフグちゃうで?ガシラか?」
竿先をグングン締め込みますが、何とも頼りない!

「これは、チヌや!それにしても小さいなぁ」
上がってきたのはやっぱりチヌでした。
タモを使う迄もなく、抜き上げて波止の上へ。25cmでした。

「小さいなぁ・・・でもチヌや・・どうしよう持って帰ろうか・・
 
いや止めや! こんなん持って帰ったらプライドが許さん!」
仲間うちで「
30cm以下はリリ−ス」と決めてます。
反したらグル−プ破門です。

「誰も見てへんけど、この約束破る時は落とし込みを止める時や!」
と心に決めてます。

「もっと大きくなりぃや!その時に釣り上げたるわ!」と今年度のお初に
涙を飲んでリリ−スです。

「でもこれやったら、今日は絶対釣れるで」と気合を入れ直して探り始めます。
その後に、25cmを又リリ−スした時、携帯のメ−ル着信が・・・

「どや?釣れてるか?」
最近は便利になったようで不便なものです・・
携帯電話のメ−ルで何処までも追っかけられます。

「25cmを2匹リリ−スしたとこや」

「キ−プせんかったん、お初ちゃうの?」

「だから、30cm以下はリリ−スと決めてるの。今までもそうしてきたから」

今日は、絶対釣れるんや30cm以上がね。そんな予感がしてるんや!
その証拠に見てみい。アタリがガンガン出てるから蟹もどんどん無くなって・・・
なにっ!??今頃気が付いたか?蟹餌が半分くらいになってるわぃ。

こりゃあ はよ 釣らんと!

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(その3)

探ってた波止からちょっと遠征しました。
波止の根っこから北の方に石積みの波止があります。
其処までは500mくらいの護岸が続きます。
その護岸もたまに釣れますので探りながら行った時でした。

油断してました。(*^_^*)

竿先から目を離した隙に引ったくっていかれました。

竿がビンビン響いた時、身体がすぐに反応して合わせてました。
竿先が強烈に締め込まれ海面すれすれです。

「なんや!・・こりゃあチヌやで・・やったで・・この締め込み、
 今までと全然違う。でかいで!30以上あるで・・
 やっぱ思った通りや。小チヌの中に絶対こんなの居るんやから。
 バラさん様にせんとな。絶対にタモ入れやで・・」
右手に持ってた蟹桶と、右腕に掛けてたタモを置いて、竿に集中です。

「おしおし、可愛いやっちゃ!こんなに締め込みおって・・さあ上がっといで
 顔拝ませてや!!」
変な気分でした、「これは絶対針外れせえへん!唇にしっかり掛かってる」と
何か信念みたいなのがありました。どーんなに締め込まれても余裕で操ってます。
ギラっとした後にやっとお顔の拝見です。

「うっしゃ−!30cmは超えてる。ええチヌや お〜いで〜!お〜いで〜!」
俺は幽霊か?(*_*)
1度タモ入れを失敗し、沖へ走られた時はハッ!としましたが。
タモ入れをすませて引き上げ測寸すると、35cmでした。


これなら堂々と持って帰れる。

ええ顔しとる。居付のチヌの黒々とした感じがたまりません。

時間は9時半頃でした。
そや!メ−ルで報告や!最近は便利になったもので(
さっきとエライちゃうで!

「35cmゲットしたで。やっと持って帰れるわ」

「調子ええなぁ。さっきの25cmもキ−プしとったら良かったのに」

「だから、30cm以下はリリ−スと決めてるんだってば〜」
釣り上げた、チヌを「久々に使用できる」ストリンガ−に掛けて
(カメラ付携帯ならお見せできたのですが)・・・次を探ります。
持ち帰り2匹目を求めて・・・・

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(その4)

そろそろ餌がこころもとなくなってきた。
前方に石積みの波止が見えてますので、其処まで行って岩場に付いている貝を徴収します。
この貝をむき身にしても釣れます。それも、シ−ズンによっては良く釣れます。

ココの石積みの波止を一通り探って元の波止に戻ります。
途中で掛けておいたストリンガ−を巻き上げ、チヌをぶら下げて。
探りながらではなく一気に
「基地」まで戻ります。

(*基地・・・最初に船で渡してもらった所にク−ラ−を始め荷物を置きます。
       大概は電柱の根元とか岩陰ですが)

「気分は?」

「良いですねぇ・・!チヌをひっさげての凱旋ですから」(^_^)

 途中で

「ええカタ(サイズ)やね!」

「いやぁ、小さいですよ。35ですから(ちょっと嫌みかな?)」(^_^;)

「餌は?何処でアタリました?」

「餌は蟹です。向こうの護岸の端っこ辺りですよ」(^_^)/~
とココは正直に申告します。
釣り仲間に嘘を言ってはいけません。
この情報交換が非常に大切で、その日の「餌・ポイント」の情報を交換し合う事で、
助けたり助けられたり。

基地の電柱に再びストリンガ−を掛けて探りますが、
またまた25cmくらいの小チヌをリリ−スしたところで。
疲れがドッと。時間も11時半頃でしたでしょうか。
納竿して、お迎えが来るまでしばし休憩。
(お迎えって死ぬのとちゃうで、船やで)

朝のおじいさんが
「どや!釣れたか?」

「はぁ。1匹だけ」

「1匹でもええやないか!こっちはハネがさっぱりや。蛸は釣れたけどな」

「ハネから、蛸に変えたんですか?」

「あぁ。蛸も旨いでぇ」
(わかっとりやんす)

結局、背徳の日の釣果は、25cm以下を3匹と35cmを1匹でした。

その35cmを今刺身にしようと奮闘してます。
下の子が帰ってきて、覗いてます。

「久しぶりに釣れたん?」

「そや!久しブリや」
ガツン! 痛っ! 何すんねん?

ブリと違て、チヌやんか」

「はぁ〜い!」
もぅ、最近は手加減なしや。頭はりなや(頭叩くな)、こっちはじかやで。
でも、刺身は旨かった。コリコリしとる。


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