第8章   外道は天然物や!


最近は、年間労働時間の短縮とやらで”有休奨励日”や”特休”

(特別休暇、呼称は”メルモリアル休暇”)の日を増やそうとしています。

そんなわけで、誕生日を”特休”に指定されているものですから休みやすく、

又、釣りに行きやすくなっています。

これは、あるメルモリアル休暇の出来事です。

平日だったので、渡船も人が少ない日の事でした。

時期も11月という事でチヌ狙いは難しい時期です。

いつもの好きなポイントとは違い、一文字の波止へ渡りました。

この日は、チヌ釣り師にはあるまじき狙いで「チヌ、ガシラ」の両方狙いで

「カニとシラサエビ」を餌にしていました。

この波止は当然地続きでは無いため、渡ったが最後迎えの船が

来るまで身の隠し所とてない場所です。

風が強い日でしたので、波高も高く、落とし込みには大切な竿先の

あたりも判りづらい日の事でした。

早々に落とし込みはあきらめ、胴つき仕掛けでガシラ狙いに切替えました。

ガシラならいくら強風とはいえあたりがはっきり出ます。

あたりを求めて移動しながらポツポツと釣果をあげていた時の事、

突然ものすごい引きが!!「なんや!ボラか?」


釣りをしている皆様ならおわかりの事と思いますが、サビキや

胴つき仕掛けで「エビ」を餌にしているとボラがかかる事は良く

ありますので、この時もてっきり「邪魔者」のボラかと思っていました。

それでも仕掛けを切られるのはいやなので、丁寧に引き上げて

いました、そのうち魚影が見え「あれ!ボラにしてはえらい平べったいな、

ボラと違うんかな? ありゃりゃ!!赤いで〜っ! なぬっ〜!!!!!

真鯛やないか?何でこんな物がおるねん!?!?!?」

40cmは超えてそうなでっかい真鯛が、ガシラ狙いの胴つき仕掛け

にかかっていました。

「これは慎重に取り込まんと。逃がさんで!タモが要る!・・・ん??」



事情はお解り頂けますか? 今日は平日ですのでこの一文字の波止に

渡ったのは小生一人。タモを借りようにも誰もいません。

チヌ釣りの用意はしていましたので、タモは持参していましたが

ク−ラ−ボックスの近くに有ります。

ガシラポイントを探って移動していましたので、ここからなら距離に

して5〜6mはあります。

「どうしよう、タモに届かんぞ・・・??こうなれば仕方ない」

真鯛をタモまで引きずって行くしかありません。

(以前、日本海でボ−トでキス釣りをしていた時、釣れたキスに

かかった50cmはあろうかと言うヒラメを、タモを積んでいなかった

ばかりに取り逃がした苦い経験が頭をよぎります)

徐々に! ゆっくりと! 真鯛をかけた胴つき仕掛けを、

長さ約2mの竿でタモ近くまで引っ張り始めました。

真鯛が大暴れしたら、胴つき仕掛けの1号のハリスなど

ひとたまりもありません。

2mの竿では、真鯛の引きにあわせようもありません。

「ハリスよ保ってくれ! 真鯛よ暴れるな!」

と神様に祈りながら、リ−ルからラインも繰り出しゆっくりと

ゆっくりと・・・・タモに迫ります。

そして何とか、タモに右手が届く所まで来た時、またしても一大事が・・・


強風でしたので、タモが風に飛ばされない様ロ−プでク−ラ−に

しっかりと結わえつけていました。

「片手でロ−プを外すんだ」と判断早く右手でロ−プを外しに

かかります。その間左手で真鯛の引きにあわせて竿で調子を

取ったり調子の取りきれない時はラインを繰り出したりしていました。

両手なら直ぐにほどける結び目も片手なら、何とまどろっこしいことか。

長い長い時間が過ぎた(と思えた頃)頃、ようやくロ−プがほどけて

タモを右手に確保。やっと真鯛をすくう事が・・・・・?

そう簡単にはいきませんよね。

真鯛の引きにあわせてラインを繰り出していた分、

かなり深くに潜り込まれていましたので、引き上げるのに又一苦労です。

それでも今度は、タモがあるせいか気持ちに余裕があります。

「なんや! この鯛弱っとるのか? 引きが弱いな」なんて事を考えながら、

水面近くに引き上げたとき、やっとタモを水面へ・・・・・・

比較的簡単にタモ入れできました。この時の安堵感といったら・・(*^_^*)(^o^)!

で真鯛を波止に引き上げた時「ありゃりゃ!何じゃこら????」

真鯛の口元になにやら変な物が付いています。

「ストリンガ−やないか?」・・・・・!(^^)!これで全て判りました。

この近くで誰かが撒き餌釣りをして普段は釣れない真鯛を釣り、

ストリンガ−にかけていたのを、何らかの理由でロ−プから真鯛が

脱走した。(ストリンガ−を口につけたまま)

その弱った真鯛が空腹に耐えかねて小生の「シラサエビ」に食いついた。

弱っていたため、1号の胴つき仕掛けで5〜6mを引きずっても

切られなかった。と一人で理解しました。


「弱ってても真鯛は真鯛や!」と改めて小生のストリンガ−に

かけておきました。(44cmでした)

その後、ポツポツとガシラを釣り集め正午近くに納竿し、

チヌは釣れなくとも気分は最高で引き上げて来ました。


帰って刺身にしましたが、チヌより美味しい事はいうまでもなく

「イ*−ヨ−*ド−の刺身より美味しいね」だって。

「あったりまえや!!さっきまで生きてた、天然物の真鯛やで!!

ストリンガ−付きやけどな!!」

                                             以上


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