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−まなづる− 目次 |
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第70回例会報告「セロ弾きのゴーシュ」 |
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文学的哲学的にも論ずべきことの多い作品かもしれませんが、報告者にはベートーヴェンの田園交響曲の影が大きくて、音楽をほかにしては成りたちえないように思われます。間宮芳生が音楽を担当した高畑勲のアニメ「セロ弾きのゴーシュ」の印象が圧倒的であったからでしょうか。その中では「インドの虎狩り」も「愉快な馬車屋」も間宮芳生の作曲で具体的な形をとっています。ともかく賢治の音楽への傾倒が一番大きく表れている作品のように思えます。
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第71回例会報告「まなづるとダァリア」「ひのきとひなげし」 |
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これら2つの作品は花鳥童話と賢治自ら呼んだ作品群に類し、同じようなテーマを扱っているようです。つまり、「足るを知る心」の欠如、「飽くなき欲望」への戒めといったところでしょうか。読書会ではどちらの作品も、異稿も併せて読み比べてみました。
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第72回例会報告「二十六夜」 |
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お経や坊さんのお説教のパロディーがおもしろい作品ですが、元になったお経については仏教の専門家堀さんにも心当たりがないということでした。法華経法師品を指摘する本もありますが、内容は関係ないようです。梟や鳶の悪業の恐ろしさを説きながら、その救済にまで話がいかないのもおかしなことです。結末は弥陀来迎のようなシーンになって、賢治の中の浄土信仰が意外に強いことを偲ばせます。信仰というよりも幼時の記憶かもしれませんが。そういう仏教的な教訓よりも、情景や心理描写の面白さのほうがこの作品の身上ではないかという気がします。フクロウたちがお説教を聴いているときにいつもの汽車の音が聞こえ、泣きながらもその赤く明るいならんだ窓のことを考えるというのなど、まことに賢治らしい趣の表れているところだと思います。 | |||
第73回例会報告「税務署長の冒険」 |
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賢治童話の中で社会風刺的で人間風刺的ジャンルを扱ったものは少ないが、たまには宗教臭くなく、現実的三面記事的なものを扱ったもの―ただし、賢治の品性、風格もその中にちゃんと組み込まれている―で、表題童話はもってこいの私の宝だ。
@濁蜜防止講演会
A署長歓迎会
B署長策戦とC探偵
D署長のかん禁(解放)
私がこの作品に興味をもったのは、大学2年生当時、京都の出町柳で飲んだドブロクの味が原点にあった。運動で疲れて先輩の下宿に帰る途中、毎日のようにドブロクをあおって青臭い議論をしたものだ。うす白いトロッとした酒は安かった。少し酸味があって、飲む程に頭が軽くしびれて、終いにガンガン頭痛がしてくる。その多感な青い時代の記憶が、この童話の酒になつかしさと母親のような愛着をもたらすのかも知れない。賢治は性に対しても酒に対しても禁欲的で興味がありながら警戒的であったのかも知れないが、人はそんなに単純なものでないと思う。善と悪、美と醜、煩悩と正覚等、二者対立的に割り切れるものではないと思う。
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極東ビジテリアン大祭に参加して |
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賢治学会主催のセミナー、極東ビヂテリアン大祭に参加した。最近あの作品を読んだばっかりでもあり、たまたま花巻に行きたいお寺もあったんで、何か「呼ばれた」いう気がしたんよな。ぼくは知らんかったけど、賢治に「一九三一年度極東ビヂテリアン大会」いう未完の作品があって、その舞台が花巻温泉なんやそうな。
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編集後記 |
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