フェアウエルパーティー in LONDON

恥ずかしながら、スター(?)を囲むイベントで海外に旅行したのは、今回が初めてではない。
今までハワイを中心に3回行った。そして、情けないことに満足したことはあまりない。
その原因は、
1)ツアー人数があまりに多くて散漫になる。
2)ツアー客から高額の旅費を集め、その余剰金でテレビ局の人を招待していたり、
バンドのメンバーや家族まで来ていて、さながらあちら側の慰安旅行になってしまっていた。
3)本人に触れるな、話しかけるな、ホテルに来るなの注意事項が山盛りで、しらけまくった…等、
苦い思い出が今でも蘇ってくる。だから、あまり期待しないでいようと思っていた。
私はあくまで舞台が見たかったので、竜也さんに負担がかかるようなら、
あっさりしたパーティーでいいと思っていた。
食事も多分立食だろうと予想し、きっとみんな前の方にワッと行ってしまって
食事など出来ないだろうからと、しっかりアフタヌーンティーを頂いてパーティーに出た。
ところがこれが大失敗。会場にはいくつもの丸テーブルが並び、きちんとしたお料理が順番に出てきた。
ゆったりと落ち着いた、まるでディナーショウのような設定だったのです。

スタッフの挨拶は実に簡単なもので、ファンクラブのEさんや事務所の方々、みんな非常に腰が低い。
芸能プロ特有の匂いのようなものがない。ホリプロのカラーなんだろうか?
中でも一番腰の低い人(!)が、あまりにもさりげなく登場した。彼独特の、おずおずとした入り方。
世間一般の少年よりはもちろん格段に美しいが、さすがに舞台のようなオーラはない。
噂通りの長身で、しっかりした体つき。紺のジャケット、白いTシャツに細身のジーンズ。
しかし、そのいかにも普通っぽい彼がひとたびマイクを持つと、一気に異彩を放ち始める。
声がデカいのだ。ひときわよく響く大きな低い声。
同じマイクを通しても、周囲の人達と明らかに質の違う舞台役者の声。
「今日はこのTシャツを買いまして…」と、挨拶にはほど遠い言葉から始まる。
彼らしい、わけのわからない(笑)乾杯。

食事が始まると竜也さんが各テーブルを回ってくる。
ジーンズ&スニーカーという出で立ちにも関わらず彼の動きはとても優美だ。
姿勢正しく、ふぅわりと歩く。話しながらの手の動きも実に柔らかい。
この世界に入らなければ、こんな仕草は身に付かなかっただろう。はにかみがちの素顔が見え隠れする。
自分よりずっと年上の女性たちを前にして、たった19歳の少年がいったい何を話せばいいのだろう。
彼自身が楽しむというよりは、何とか満足して帰ってもらおうという懸命さが見える。
私たちのテーブルはおとなしい人が多く、誰も彼に話しかけることが出来ない。
あっという間に彼は隣のテーブルへ。これではいけない、という思いがみんなの中に芽生え始める。
私はなんとも言えない気分で彼を目で追っていた。話しかけられればうれしいが、
そうでなくても別にいいやと思う気持ちもどこかにあった。
あの天才役者をこうして目の前で見ることが出来たのだ。
そのうえ彼は、私の予想に反してとても淡い色合いの人だった。
私はかつて、もっと強いオーラを持った人物に出会ったことがある。
周囲の人をすべて金縛りにしてしまいそうなその青年は、スターの光を撒き散らす一方で、
清々しい瑞々しさは徐々に失くして行きつつあった。その人と藤原竜也とは明らかに違う。
地味というのでは決してない。
舞台を降りている時の竜也さんは、無意識のうちに半分羽を閉じてしまっているのだ。
だからこそ舞台で、彼の羽は大きく開き、彼は燦然と輝く。スターというよりも、
表現者といった在りようだ。

おいしそうな料理が次々運ばれるが全く手が出ない。読みの甘さを悔やむ。
遠目に見るが、竜也さんも食べている様子はない。デザートの頃に彼は再び各テーブルを回り始めた。
今度はファンも彼も少しリラックス。
私の妹ががんばって会話を繋ぎ、なんとか言葉を交わすことが出来た。
7月7日が誕生日だと言ったら「おめでとうございます。七夕じゃないですか」と言ってくれた。
ありがとう。減っていない料理を見て、「お味はどうですか?」と気を遣ってくれる。
事情を話すと、「僕も変な時間にフィッシュ&チップスを食べてしまって何も入らないんですよ」と。
どう考えても小さそうな彼の胃袋。肩幅があるので体はしっかりして見えるが、
真っ直ぐで長い脚は見事に細い。
妹の質問に答えて、体にぴったり合った細身の服が好きだと言っていた。眼福。
強引に彼に椅子をすすめる人がいるかと思えば、感激で泣き出してしまう子もいる。
「どうしたの〜」彼に声をかけられて、また泣き始める。なんて初々しいんだろう。
テーブル行脚は続く。やっとリラックスしてきて、席につくシーンが増えてくる。
座るとその場に溶け込んでしまう不思議な人。笑っている。皆が自分を求めていることを甘受している。
彼の発する光はとても優しい。
食後、写真撮影タイム。ファンが堂々と写真を撮れるのはこの時だけ。
まるで、動物園のパンダのようにぐるっと取り囲まれ、目にしみるほどのフラッシュの中で
柔らかく微笑んでいる竜也さん。
みんなが平等に正面写真を撮れるようにくるくると向きを変えるが、カメラの調子の悪い人を見つけ、
その前でしばし佇む。よく見ている。
若くして身に付いた気配り。怖くて聞けそうもないが、聞いてみたい。
竜也さん、こんな時はいったい何を考えているのですか?
その後○×クイズ大会(意外に難しい)、1ポンドジャンケンなどと続き、
次々とプレゼントが竜也さんから勝利者に手渡される。竜也さんに少し疲れが見える。当然。
次は待望の質問コーナー。
くだらない質問など一つもない、なごやかな中にも真剣なやりとり。ファンも素晴らしい。
以下記憶に残っている質問。

以前、蜷川さんから渡されたと言っていた三島由起夫の「豊穣の海」第1巻はもう読まれましたか?
同年代の主人公をぜひ演じて頂きたいと、切に思うのですが…
読みました。うーん、同年代と言えば、「ロミオとジュリエット」をやるという話は蜷川さんから
聞かされています。まだ決まってはいませんが…
(と、話はずれる。以後このようにずれていくこと多々あり)

なぜ、ロンドン公演は髪が白くないのですか?
蜷川さんと話し合って、ロンドンのお客さんの前で髪を白くしてもあまり意味がないのではないか…と。
それに、あれをやるにはブリーチを8回も繰り返すので、すでに髪が溶けそうになっているんです。
(ハゲるんじゃないの?の声あり。うちの家系にハゲはいません、と切り返す)

ロンドン公演2度目で、「身毒丸」の時と心境に違いはありましたか?
(不肖、ワタクシの質問です。非常に丁寧に答えてくれて感激しました。)
「身毒丸」の頃は何もわからず、夢中でただ演じているだけでしたが、今回は2度目でもあるし、
失敗するわけにはいかない。成功か失敗しかないわけだから、プレッシャーもすごかったです。
実は今回稽古があまりにも順調に進んで、蜷川さんも「竜也いいね」と言ってくれていたんです。
ところがロンドン公演2日目に芝居が大きく崩れてしまいまして…。例えば芝居って演出家と役者の感じ方に
微妙な違いがあって、自分では駄目だと思っていても「良かったよ」って言われる時もあるし、
どうだ!って思ってもダメ出しされることもあるし。で、その時は自分で駄目だと思って蜷川さんを見たら
イライラしてるのがわかったんです。もう、どうしていいかわからなくなって落ち込みました。
夜に一人公園で考えたんですが、風邪をひくといけないのでやめまして、それから演出助手の人と一緒に散歩しながら
話し合いました。バービカンって、形が日本の劇場と違って傾斜が急なので、客席が一枚の岩のように立ちはだかって、
圧迫感があるので大変やりにくいんですよ。
で、次の日昼公演の前に稽古をつけてもらって、持ち直しました。大成功に終わって本当に良かったです。
共演の清水さんに、「竜也のこの歳でないと俊徳は出来ないね」と言われました。
今この歳で俊徳を演じることは僕にとってすごく意味のあることで…、この成功は自信にもなったし、
僕の中で非常に大きなものになりました。いい経験をさせてもらったと思います。
まだこれから日本公演が続くので、芝居が崩れることのないよう、がんばりたいですね。

インタビューとかで、20歳になった時にもう一度自分の身の振り方を考えるという発言がありましたが、
それについてはいかがですか?(詰問口調)
討論会ですか?(笑・返しがうまくなったなぁー)「20歳になったら…」という発言は、
自分はまだ19歳なのであくまで一つの区切りとして言ったまでで、深く考えていないし、
焦る気持ちもないです。とりあえず今は楽しく仕事をさせてもらっています。
20歳になったら、周囲の方や家族・友人と相談して決めたいと思います。

「ロミオ&ジュリエット」をやるとしたら、相手役は誰がいいですか?
神保さん(笑)。これって、失礼なことですよねー。
うーん、ま、やると決まったわけでもないですし…。
そうそう、初日の舞台の後、安藤和津さんから楽屋に花束が届いてたんですよ。
とても嬉しかったです(話がすっかりずれている)。

「星の金貨」のストーリー展開は竜也さん的にはどうでしたか?
とても良かったと思います。やらせてもらって有難かったです。野島さんはすごい方ですし…。

じゃ、あれで良かったんですね。(奥歯にものの挟まった言い方)
何かご不満でも?(会場内爆笑)じゃ、不満があった方は手をあげてみてください。
(パラパラと手があがる)そうですかー。じゃ、ちゃんと伝えておきます。
(なぜかニヤニヤする竜也さん)

「星の金貨」で、印象に残っている手話は?
「星…の…金貨」(手話をしてくれる)という部分。でも、僕より大変だったのは
星野真里さんで、あのドラマは彼女のすごい努力のたまものだと思います。

最近のマイブームは何ですか?
出前ですかね…。カツ丼・おそば…、とにかく毎日がお稽古にどっぷりなので、
この間は何も他のことは出来ないです。体を鍛えなきゃと思って8KGずつのダンベルで
ストレッチをやろうとしたんですが、重くて持ち上がらなかったので(笑)、
6KGずつに変えました。

けっこうストレスがたまると思うんですが、ストレス解消法は何かありますか?
ストレスがないようなイメージにとられることが多いんですが、僕は全身ストレスのかたまりです。
短気なのでストレスはよくたまりますが、劇場を一歩出れば、車を運転している間に
頭は切り替わっています。あ、解消法でしたね(笑)。
今は稽古が大変でカラオケにも行けないし、解消法はないです。

今度またこういうツアーをやるなら、場所はどこがいいですか?
(思い出したように、スタッフに向かって)ねぇ、もうそろそろジュージャンとかはやめて、
もっと違ったことをやりましょうよ。(段取り悪くてすみません、と謝るスタッフ)
あ、どこがいいかという質問でしたね。
そうですねぇ…フロリダなんかいいですね。皆さんはどこがいいですか?
「ハワイ!」「ハワイねぇ…」(なぜか、反応きわめて薄し)、「ミラノ!」「ミラノ、いいですねぇ」
(世間の若い男の子の好みとはちと違うような…)皆さんで決めて下さい。

※ その他にも、どこで出たかおぼえていないけれど印象に残ったお話がいくつかありました。
順不同であげてみたいと思います。
・ 取材で桃井かおりさんと対談をした。とてもかっこいい人だった。
・ 瀬戸内寂聴さんと対談した時すごく話がはずんだのに、先日テレビで「好きな男性は?」と
聴かれた寂聴さんが、新之助さんの名前をあげていたので、がっかりした。けっこうショックだった。
・ ロンドンでの食事はたいてい中華。昨夜食べたインド料理はすごくおいしかった。
・ 先日、車のバックミラーをトラックにぶつけられ、トラックの方が悪いのに僕が先に
謝ってしまったので、修理代が19000円もかかった。
ヤナセのお店でコルベットがあったので、200万ぐらいかと尋ねたら500万と言われた。
我ながらバカなことを聞いたと思う(笑)
以上、思い出すままにつらつらと書き出してみました。細かいニュアンスの違いはご容赦ください。
桃井さんのかっこよさを理解し、寂聴さんのメガネに適うことを願う竜也さんは、
それだけで充分いい男になる条件を兼ね備えていると、私は思います。
さて、今回の舞台、千秋楽に彼は泣いたか?という質問がクイズの中にありましたが、
おおかたの予想を裏切って、泣かなかったというのが正解でした。
どうやら、東京で千秋楽を終えるまで、彼の精神は解放されないようです。
言い方を変えれば、どんどんプロになっていってるというか、容易に泣いたりしない強靱なものを
彼は身につけつつあると思いました。
このようなパーティーにしても、決してないがしろにせず、非常に誠実なホストぶりだったと思います。

この後、ツーショット写真の撮影会で会場は盛り上がり、竜也さんの三本締めで幕を閉じました。
彼の最後の挨拶をここに引用して、このレポートを締めたいと思います。
「今回こんなに多く100人もの方が来てくださるとは思ってもみなかったので、とてもうれしいです。
じゃないと、このツアーは成り立たなかったので。
この舞台が大成功に終わったのも、みなさんが遠路はるばる来て下さったからだと感謝してます。
ほんとうにこんなに思ってるのに、伝わってますかね?こういう気持ちです(両手を合わせるポーズ)。
皆さんがいるから僕がこうやっていられるんだなぁと思います。ほんとうにどうもありがとうございました


HOME