Aerosmithライブへの道

Written by まっつ さん
(2nd Jan. 2000)
1月2日はエアロスミスの名古屋公演の日であった。
「彼」は友人Sを引き連れ、昼2時頃一路名古屋へと出発した。

ちなみにSは、尾崎豊や黒夢(←実は我々の地元出身だったりする)、
SADS等を普段よく聞き、洋楽は殆ど疎い人間である。
そんな人間が何故、彼のエアロスミスライブの話にのったかというと、
「俺、ドームまだ行ったこと無いんだわ」との事。
つまりエアロよりも「正月はナゴヤドームでライブ」という点に惹かれたらしい。

話はさかのぼるが、そんなSに彼は年末頃、ライブの予習という意味で
WOWOWにて放映された大阪ドームでのカウントダウンライブの録画を頼んだ。
・・・というよりも、単に彼がWOWOWに加入していないので、
自分自身が見たいが為に毎度の如く頼んでいるだけなのだが。

そして、彼が所有しているエアロのアルバムから、最近発売された
ライブアルバムと「Nine Lives」、「Big Ones」を貸した。
ただ、貸した日付が12月31日、つまりライブの2日前だった。

年明けて元日、以前名古屋でライブを見に行った際、行き当たりばったりの
行動で酷い目にあったこともあり、また、正月という特殊な期間でもある
事から、彼は事前に現場を視察しに出かけた。まったくもって暇人である。

ナゴヤドームは名古屋市内でも北側に位置し、彼の住んでいるG県からは
一般道で約1時間の所にある。最寄り駅はJR大曽根駅で、そこから西に徒歩
約15分で着く。
電車で行けばいいのにと思われるだろうが、彼の住んでいる所はローカル線
への乗り継ぎがあり、「かったるい」ので、今回も一路車で出かけることにした。

となると、駐車場の確保が必要である。
彼自身、ナゴヤドームへは一度、車で行ったことがあるのだが、その時は
野球を見に行ったので、ドームの地下駐車場に駐車する事が出来た。
ただ今回は野球とは違い、「野球以外での地下駐車場への駐車は出来ません」
と、"チケットぴあ"のお姉さんに釘を差されたので、近所で駐車場を
見つけなければならない。

大曽根駅の近くで彼は駐車場を見つけた。ドームから徒歩でおよそ20〜25分
位の距離、駐車時間は夜10時までである。
「ライブの開演時間が6時。もし3時間演ったとしても、
 何とか間に合いそうだな。よし、ここで止める事にしよう。」
今回は前回の轍は踏まないぞと意気込みながら、彼は名古屋を後にする。

帰宅途中、Sの家に立ち寄る。録画してもらったビデオの回収のためである。
 彼 「おう、どうや。ある程度予習できたか?」
 S 「いや、全然。まあアルマゲドンのテーマくらいかな、ちょっと知っているのは。
    まあ、全然分からずに行くのもそれはそれでエエやろ。」
確かに、前日CDを渡されていきなり曲を覚えられるはずもない。
間際にCDを渡す彼も彼だが、殆ど曲を知らないでライブを見に行くSもSである。

帰宅後、明日の予習の為、彼は録画してもらったビデオをチェックする。
さすがカウントダウンライブだけあって、大阪は盛り上がっていたみたいだ。
ちなみに実は、彼自身も、エアロの曲は余りよく知らない。
後期のベストアルバムと最近のアルバム2枚。前期のベストアルバムも
持っているのだが、あまり聞き込んでいない。
「まあいいや、お説教が聞ければ。」
熱心なエアロファンにしてみれば顰蹙ものである。
(注:お説教=「Walk This Way」の邦題)

さて当日、
昼頃に目が覚めた彼は、おせちの残り物などを軽く食べながら支度。
すると、電話が鳴り響く。相手は彼が起きる一足先に、名古屋の熱田神宮へ
参拝に出かけている母からであった。
「あんた、今日ライブ見に行くとか言ってたけれど、大曽根の辺、車込んでるよ。」
「大丈夫、ちゃんと余裕もって出かける予定だから。」
今回はやけに自信たっぷりな彼である。

彼はSを乗せて2時頃出発した。
公演の開場は4時・開演6時の予定なのに、何故そんなに早く出発したのかは、
彼は駐車場がエアロを見に来る車で満車になるのを恐れていた為である。
しかも、その時彼は
「もしライブが延長して車が駐車場から出られなくなってしまったらどうしよう」
と、入らぬ心配を掛けていた。

ちなみに道中の車内のBGMは何故か「井上陽水ベスト」。
一体誰のライブを見に行くのであろうか。とてもエアロを見に行くとは思えない。
「♪行かな〜くちゃ、君の〜為に行かなくちゃ、傘がない・・・」
無いのは傘ではなくて、彼らのヤル気ではないのだろうか。

懸念していた大曽根近辺の道路もさほど混んではいなかった。
「ふふふん、余裕じゃん。」
陽水の曲でまったりとした雰囲気の状態で彼らは駐車場に到着。
「あれ?駐車場ガラガラじゃん。まあいいや。満車になってからでは遅いからな。」
一人納得して駐車。時間は3時頃。

3時半頃、彼らはナゴヤドームに到着。開演までまだ時間があるというのに、
ドーム廻りにはカップル連れや、何故かギター片手の人など、結構人はいた。
「なんや、こいつら暇人やなあ。」と彼らは話していたが、
そう言っている彼ら男二人連れの方がよっぽど暇人である。

ちなみに着いた早々彼は、「コーヒー飲みたいなぁ。」とか言いながら、
ドームの外の売店でコーヒーを買おうとしたが、売店のメニューの
生ビールという文字に惹かれ、思わず生ビールを購入。一杯あける。
気分は夜のジョン・ディーコン(意味不明)。

予定より15分ほど遅れて開場。中に入ってドーム初体験のSが一言。
「なんや、案外狭いんやな。」
実は、「彼」がその昔、初めて東京ドームに行ったときの感想と同じである。
(注:TVで見ると、レンズ効果で大きく見えるのである。)
しかも、スタンド席だが、彼らの席は一応"S席"。
だがそこは、スタンドとグラウンド(アリーナ)を隔てる金網が邪魔して
どうにも見にくい。
これならいっそ、後ろの席の方が金網に邪魔されず、見やすいであろう。

Sがタバコを吸いに廊下に出ている間に、彼はおそらくこのライブに来ているはずの、
某掲示板で知り合った「チェルシー」さんに予告無く電話を試み、
会場でお会いする事に。
程良いアルコールも手伝って、気分は深夜のジョン・ディーコン(意味不明)。
短い間だったが、楽しいおしゃべりに花を咲かす。

予定より30分ほど遅れて開演。
「おいおい、30分遅れてるじゃないか。もし、駐車場が閉まったらどうしよう。」
と、後にしてみれば入らぬ心配をする。
ちなみにジョー・ペリーは、ブライアンのライブの時にやっていた
「生き別れのいとこ」風な出で立ち。後にチェルシーさんが某掲示板で
指摘していた井上陽水のようにも見える。彼らが車中で聞いていたせいなのか。
思わず笑えてしまう彼であった。

ところで、事前にビデオで見て予習してきたつもりでいた彼であったが、
途中から彼の知らない曲が続いて、彼は焦った。というか、
ライブ全曲の半分近くは彼の知らない曲であった。まあ、彼にしてみれば
「お説教」を聞けば良かったのだが。

なんだかあっという間だったなあと思いながら、ライブが終了してふと時計を見ると、
始まってから2時間しか経っていないではないか。
「2時間〜!ちょっと早いんじゃねーの!」彼が文句を言ったとき、
Sが重要なことに気が付いた。
 S 「・・・アルマゲドンのテーマって演ったか?」
 彼 「・・・!! ・・・演ってない・・・」
その時アリーナ席では、おそらく「物足りないぞ!」の意味の手拍子が
鳴り響いていた・・・

「今回ドーム公演だから、もしライブが3時間以上演って駐車場が閉まってしまったら
どうしよう」と思っていた彼だが、悲しいかな、今回は入らぬ心配だったようだ。

そして駐車場までの帰り道、
 S 「満車を恐れて俺達早く来たけれど、これでもし、駐車場がガラガラ
    だったらどうする?」
 彼 「ははは、まさか。だってエアロだぜ。結構車停まっているて。」
などと冗談をかましながら、駐車場まで来てみると、

・・・ガラ〜ン・・・

その時彼は意味不明の言葉をつぶやいたのであった。
「・・・負けた。今日はエアロに負けた・・・」

 完

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