panorama


街と空を朱に染める見事な夕焼けが
羊雲を境に夜の帳と溶け合う
自らも紅色に染まりながら
携帯電話のカメラを天空へ向けて
小さな小さな橋の上から
その風景を残している少女を見た

自分が目にした素敵な光景を
見せたいと思う誰かがいる
大事なものを分け合いたいひとがいる
それはとても幸せなことだと思う

工場のばい煙は幾筋もの黒い傷跡を残し
幹線道路からはひっきりなしにトラックの音と排ガス
足下には生活廃水とヘドロに埋もれた澱み
それでもこの街を この国を この世界を
とても美しいと思う一瞬は確かにある

遥か未来 彼ら彼女らの目に
焼き付けておきたいと思わせるものを
僕たちは残していけるのだろうか

遠く 鳥が啼いた


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