神々の日常◇10のお題編
2,戦い
最初の言葉は、満足したような低い声でした。
ある日の夜、イダヴェルのグラスヘイムに招集された男神たちは、不思議そうに彼、オーディンを黙って見つめています。
何か考え込んでいる様子でしたが、ついに、オーディンは口を開きました。
「ふむ。…おお、皆よ、そう緊張せんでもよい。かたい話をするのではないからな。
さて、トール、前回の試合の優勝者はそなただったな?
―おお、成る程、力のあるそなたならば、一対一の闘いには絶対に負けぬであろうよ。
戦いにはトールのような腕力はかなり重要なことは確か。
しかし、しかしだ。最も戦いでの勝者となるには、腕力だけでなく、
多様な力を駆使しなければならぬと思わぬか?
特に、‘賢しさ’は、見落とされがちだが、役に立つものよ…」
ここで、オーディンはいったん言葉を切って、ロキを眺めやりました。
ロキはニヤッと―トリックスター、その名にふさわしく―笑いました。
「…ま、そういうことである。時に、ヘイムダル、そうロキを睨むでない。
―さて、話を戻そう。そこで、一風変わった模擬試合を行おうと思う。どうだ、皆?」
神々は賛成、と答えました。
「では、ルールを説明しよう―」
◆
オーディンの説明したルールはこうでした。
・一対一ではなく、混戦。ただし、試合参加者同士は協力してはならない。
・女神や試合参加者以外の者には援助を請うたり、受けたりしてよい。
ただし、グナーは虹の橋の門番のため、除く。エインヘルヤルも駄目。
・はじめ、神々それぞれに、名前の入った石1つを渡し、それを奪い合う。
・自分自身の武器は持ってはならない。持てる武器は、木刀のみ。
・試合中はアースガルトにいなければならない。
・戦った相手が戦闘不能状態になった場合、その相手の持っている石すべてを奪える。
・優勝者は石の数で決める。
◆
「次に、参加希望者を募ろう。参加したい者は挙手願う」オーディンの声でざっ、と手が上がりました。
フレイ、トール、ヘイムダル、チュール、ウィーダル、マグニ、モージ、ニョルド、ロキ。
総勢九名の神が名乗りを挙げました。
オーディンは、皆を見渡しました。
「よし、よし。では、石を持ったな?あと六時間ほどで夜が明けよう」
そして、高らかに宣言しました。「日の出と共に試合開始である!健闘を祈ろうぞ!」
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