不思議の鍵師のアリス
第三話 開かない扉
彼女は、森の中にいた、降りしきる雨の中シャルルを追ってここまできたのだ。
後戻りはできない、ほかの方法も彼女のWIZは与えてはくれないようだ。
そんな事を考えているとき、森が開け大きな洋館が現れた。
シャルルを見失ってから、5時間後の事であった。
その洋館の入り口に大きな足跡、間違いない、シャルルの物だ。
扉の横に看板がある
「きい ますたあろっく?」
「鍵の館?錠前の達人?」
・・・ちがいます!
ほかの文字に目もくれずその文字だけを読んで物思いにふける。
「この館につれてこられて、監禁されているのね」
・・・・違います。
「必ず助け出してみせるわ!」
拳を握りしめながら裏口の方に回った・・・ちがうんやけどな。
裏口には丈夫そうな扉があった、ついでに鍵穴も。
暗がりなので、頼りになるのは針金から伝わる感覚だけだった。
額から汗が流れる、この雨の降る寒い夜に。
説明しよう、この世界では鍵開けに10分しか時間を使えず、一度失敗すると、さらなる成長があるまで挑戦できない非常の法則があるのだ「さすがマスターと言うだけのことはあるわね、これだけ古い型の錠前は遺跡くらいにしかないわよ。」
ニヤ。
カチャリ、小さな音がする、ここまで2分23秒流石である。
音を立てないように館に侵入する。
どうやら厨房らしいところに入った。
お腹がすいていたので、とりあえずそのまま食べられそうな物をゲット!
・・・注意それは犯罪です。
腹ごしらえがすんで、厨房を出ようとしたとき、厨房の扉にも鍵がかけてあった。
とりあえず、鍵の傾向を見る・・・新しいようだ。
「これは、ダリルマイスターの最新型!」
ごく!
のどが鳴る。
ダリルマイスター本名不明、稀代の天才鍵職人としてその名を世に示して早30年。
鍵師にとっては、いつかは越えなければならない壁、それもとてつもなく高い。
その人の最新作。
丁寧に下調べを始める。
「すばらしい、これはまさに芸術品ねこんな鍵まであるなんて流石マスターね。」
下調べにおよそ30分・・・戦闘開始。
先ほどとは違う、そして盗賊などが使う物よりもさらに高度な道具が並べられる。
手が汗ばむ、さらに作業は暗所で行われる、しかし時間はやはり10分しか許されず失敗もまた同じである。
一歩また一歩と追いつめていく、それよりも速い速度で時間が追いかけてくる様な感覚におそわれる。
時間は、9分をまわった、アリスも後一歩である。
後、手を一ひねりすれば今までの努力のせいかがわかる。
無意識に同じ言葉を繰り返す。
「開け、開け、開け、開け、お願い開いてよ〜〜。」
・・・ぱくりやな。
カチャリ、開く音がする。
鍵が開いたことで全身の緊張が解けその場にへたり込む。
想像に容易いが、鍵開けの姿勢は非常につらいものである。
「これで最後とは思えない、まっててねシャルル。」
厨房を出るとそこはまるで、酒場のようなところであった。
・・・酒場である
辺りを見回すとカウンターらしいところに一冊の本がある。
本の中を見るとシャルル=ウル=ワドローの名がある。
「監禁者リストね。」
・・・ちがう
「・・・203号室か。」
階段を探してて再び部屋を見渡すと壁中に錠前が飾ったある。
「鍵の装飾品かー・・お、階段めっけ。」
階段はちょうど厨房の反対側にあった。
音を立てないように、階段を上る。
部屋は、廊下を挟んで並んでいた。
「203、203・・・発見。」
思わず笑みがこぼれる。
「今助けるからねー。」
早速鍵を調べ始める。
見たこともない型だ、しかし今更驚きはしない。
そう、ここまで来たのだから。
「な、何これ。」
鍵穴を調べ始めた彼女は一つの真実に突き当たる。
鍵穴の中にあるべき物が何もないのである。
今までにない型の鍵だ、しかしここで引き下がるわけにはいかない。
「いくよ!」
小さな、鉤を鍵穴に挿入する。
・・・やはり何もない。
イタズラに時が過ぎる。
・・3・・・2・・・1・・・0。
「時間切れだ」
思わず前にのめり込む。
「ここまで来たのに・・・」
涙が頬を伝う。
のぶにかけていた手が滑りながらのぶを回す。
頭が扉を押す。
キイー。
「・・?」
「・・・・?」
「・・・あれ?」
「ハハ。鍵、かっかってないや。」
「恐るべし、マスターロック。」
ち・が・う・よ。
また音を立てないように部屋に入る。
ベットに眠り夢にうなされ苦しそうなシャルルの寝顔をのぞき込む。
「あなたの心の扉もこんな風に簡単に開けばいいのにね。」
先ほどとは違う、涙が頬を伝う。
シャルルの顔を見られて安心したせいか、その場に音もなく倒れ込み寝息を立て始めた。
・・・ん・・・ん。
アリスが目を覚ます。
もうお日様は、折り返し地点を越えているようだ。
「あ!!!シャ、シャルルは?」
部屋を見渡すと、その姿は居ない。代わりにベットに眠っていたのは自分であった。
枕元に小袋と手紙を発見〜〜ん!
「また置いてけぼりぃ〜〜。」
手紙には、こう書いてあった。
【親愛なるアリスへ
これを読んでいると言うことはお目覚めかな?
あまり寝顔がかわいかったので起こさずにいきます
シャルル=ウル=ワドローより
追伸 また君に救われたよありがとう。】
「すくわれた〜〜?」
何のことかわからず、小首を傾げていると、部屋をノックする音がする。
「はい、どうぞ」
返事をすると扉が開き、一人の老人が現れる。
「おはようお嬢さん、主人のロックですじゃ。」
昼食を手にした、宿屋の主人が現れる。
「ご飯は、まだですじゃろ、それとも夕べ食べ過ぎましたかな厨房でのう」
「あ、あ〜〜〜!!」
「ダリルマイスター?何でここに?」
ダリルは、アリスの師匠であった。
当然顔見知りだ
「儂の鍵を開けるとは、アリスも進歩したものよのう。」
ばつが悪そうにうつむきながらダリルに問いかける。
「あのーシャルルはまだ居るでしょうか?」
ダリルは笑いながら答える。
「おお、あの青年かアリスによろしくといって昼前に宿を出たよ。」
アリスは飛び起きると、ダリルの手にある昼食をついばみ、急いで宿を出る準備をした。
「これ何をあわてとる、鍵師たる者だな、いついかなる時も・・・」
「アリス聞いておるのか〜〜!」
昼食を食べ終わった彼女は、ダリルに話しかける。
「んぐ!聞いてませ〜〜ん。ところでシャルルはどこに向かうと言ってましたか?」
ダリルは諦めに近いため息をついて答えた。
「は〜〜。北じゃよ」
と顔を上げるとそこのはすでにアリスは居なかった。
「鍵師としては優秀なんじゃがのう、シャルル殿も大変よのう」
アリスの旅はまだまだ続く。
「待っててねシャルル、必ずあなたの心の鍵を開いてみせるからね」
「あなたの開かない扉の・・・」
誰にも見せない悲しそうな顔でそうつぶやいた。
終劇

これが、館の看板・・・ちゃんちゃん!
ぎゃふん