夜の始まり
氏神 遥

あの日からオレの「夜」が始まった…。

今日も夢を見た。「あの日」の夢。
目覚めても決して覚めることのない夢。

オレは何故今ここにいるのか?
戦うため。
「ヤツ」と戦うため!
そのためにオレは「戦神」の技と名を継いだ。

「ヤツ」。
母の命を奪い去った「ヤツ」。
そして、…。
オレの「最も大切な人」を奪い去った「ヤツ」!

「大切な人」、リサ。
「永遠の妻」、リサ。
彼女はオレの太陽だった。
母を殺され、復讐を誓い、それ以外のものを全て捨て去ったオレの。
彼女と過ごした日々は幸せだった。充実していた。永遠の楽園のようだった。
そして…、夢のようだった。
覚めてほしくはなかった、夢…。
今は安らかに眠る君、君の夢の中にオレは出てきていますか?

何故、オレの体は動いてしまったのか?
「ヤツ」に憑りつかれた君がオレを襲った時。
あの時オレは「君となら死んでもいい」、そう思っていた。
そのはずだったのに…。

「ヤツ」に憑りつかれながらも、君は負けなかった。
最後まで「ヤツ」と戦いつづけていた。
オレは…、負けてしまった。
「ヤツ」に。
「自分」に。
自分の背負うもの「全て」に。
そして…。
動いてしまった。
この手で「最も大切な人」の命を奪ってしまった。

オレは戦わなければならない。
勝つために。
「ヤツ」に勝つために。
この世の全てに勝つために…。

あの日、オレの中の「太陽」は沈んだ。
あの日、オレの「夜」は始まった。
そして…、
「夜」は明けない。