〜馴れ初め〜

初めまして
花山ゆめみと申します
ゆきのの今は亡き母で御座います。
ここくらいなら出ても怒られそうにないですからね。
せっかくだから、響壱郎さんとの馴れ初めなんか話しましょうか

 あの頃の響壱郎さんは手の着けようのない様な悪ガキでしたのよ
町のチンピラやヤクザ、空手道場などに殴り込んでは大怪我をさせていましたの
ホントに暴れん坊で素敵だったわ、私は病弱でそんな事できませんでしたから
いつ、花山組に殴り込みに来るか楽しみにしていましたの。
それはちょうど私が15歳の誕生日の日でした。
ちょうどその時は皆さんが私のためにお祝いの準備をしているときでした
玄関を蹴破ってその漢は入ってきました
響壱郎「俺は、五十嵐響壱郎 世直しに来たぜヤクザの皆さん覚悟しな・あ?」
ゆめみ「はい、お待ちしておりました。どうぞ奥へ」
響壱郎「お・おう・・・調子狂うな」
だんっ!
ゆめみ「靴を脱いでください・」
響壱郎「なに〜っ!」
ゆめみ「世直しをなさる方がその程度のルールも守れないんですか?」
これ以上ないほどにこやかな笑顔で迫るゆめみ
響壱郎「お、おう。すまなかったな、俺としたことが焦っていたようだな」
ゆめみ「では、どうぞこちらへ」
スリッバを用意して屋敷の奥へ響壱郎を導いた、そしてついた場所は・・・
ゆめみ「道場です、ここなら心おきなく暴れられますよ」
響壱郎「お、おう・・・で、相手は?」
ゆめみ「今着替えますから、あっちを向いていてくださいね」
響壱郎「おう・・・って、お前とやるのか?」
振り向いた響壱郎の頭を木刀がとらえる
ゆめみ「ふ、振り向かないでください・・」
思わず頬を染めてしまうゆめみ。
それを陰で見守りながら笑いを堪える父、玄重郎の姿があった
玄重郎「これは見物じゃわい、ゆめみも成長したのう特に胸元が・・・」
・・・・・・
・・・・・
ゆめみ「はい、よろしいですよ」
そう言ってにこやかに笑い純白の道着に身を包まれた
ゆめみを見て思わず鼓動が止まりそうななってしまう響壱郎
響壱郎「ほ・本当にお前が俺の相手をするのか?」
満身の笑みを浮かべて返事を返す
ゆめみ「そうですよ、私はヤクザの娘ですから悪い子なんですよ。
    あなたは、それを退治に来たのでしょう?
    だったらお相手願います、ずっと心待ちにしていましたのよ響壱郎様」

にこやかだった顔が徐々に鋭くなる
どこら見ても突きますといった構えでにらんでくる
響壱郎『・・・ふっ、木刀程度で俺に勝てるつもりか・・
    目が鋭くても所詮は子供か・・・好みなんだがな』

響壱郎「お前が、ここの代表というわけか?
    お前を倒せば、ここの組はたたむんだな?」

眉一つ動かさずに即答した
ゆめみ「もちろんですよ、その代わり私が勝てば・・・
    貴方をいただきます・・・」

響壱郎「よく解らないが命がかかっているなら手加減はしない」
そう言って響壱郎が構えをとる
響壱郎「俺の体は真剣でも傷を付けるのは大変なんだぜ・・・えっ!」
言い終わる前にゆめみの木刀が響壱郎の太股に突き刺さる
血で塗れた木刀を構えながら
ゆめみ「無駄口が多すぎますわ、見せてください貴方のすべてを・・・
    でなければ・・・死にますよ」

響壱郎は生まれて初めて戦慄を覚えた
そして、恋をした・・・
響壱郎「条件変更だ、俺が勝ったら・・・
    お前をもらう・・」

ゆめみ「はい、喜んで」
・・・・・
・・・・
・・・
・・十分後
体中から血を流す響壱郎は
総ての攻撃をかわすことができず
総ての攻撃がかすりもしない・・・
しかし、時間はゆめみに襲いかかる
突然吐血してゆめみが膝をつく
真っ白な道着は真紅に染まる
響壱郎「おい大丈夫か?」
木刀を力無く突きだして間合いをつめさせずに
入り口の方に一言叫んだ
ゆめみ「まだ終わっていません・・・
    終わっていないんです・・・
    終わっていなんですよね・・
    終わっていなんですよね、響壱郎様?」

響壱郎「おう、一発で沈めて病院送りにしてやるぜ
    そうなったら俺の物だ、元気になるまで嫌と言うほど休ませてやる」

両者間合いを取り仕切り直す・・・
響壱郎の肌が赤く染まり筋肉が限界まで
縮められたバネのように絞られている
力をためているのだろう
対照的にゆめみの肌はどんどん血の気を失っていく
響壱郎が一間を一足で詰めてくる
手加減無しの拳がゆめみの柔らかい頬にふれたその瞬間
響壱郎の視界がゆがむ・・・
響壱郎「何で俺が・・」
ゆめみ「花山流豪剣術 奥義開眼 捨拾命冥 具現
    これで貴方は私のも・・の・・」

そう言ってその場に倒れ込んでしまう
現十郎「短命ゆえにあたえられた才か・・・
    何故、このような方法をとる
    他に手だてはあったであろう?」
血の付いた唇で微かに笑みを作り一言こういった
ゆめみ「私は、極道の娘ゆえに欲しい物は
    力ずくで手に入れなくてはねぇ、御父様。
    響壱郎様の傷の手当て頼みましたよ」

そう言ってゆめみは道場を後にした。
現十郎「惜しい、あの子が男で健康ならば
    裏世界を変えられたかもしれんのにな
    不憫な・・・せめてあの子の好きなようにさせてやるか」

というようなお話がありましたの
若気のいたりですね、ずいぶん危ないことをしていましたね。
この後、1年後私はめでたく響壱郎さんと結婚することとなり
その二月後にはゆきのを産みました、あの子も私に似て小さい頃は病弱でしてね
え?計算が合わない?野暮な突っ込みはなしですよ。
医学の進歩のおかげか今では姉妹の中で一番大きく育ってくれました
喜ばしいことですね、
それでは皆さんごきげんよう。