独り言

「スマンな、こんな所まで呼び出しちまって。」
「なあに、アイタ・ペアペア。  」


本当は報告と一緒にサンプルを送れば済む話だった。
忙しいのは解っているのに、なぜ来てくれなんて言ってしまったのだろう。
両親や雪子に会ったこと等、話せる筈もないし。
でも、こいつの笑顔を見ていたら(俺はこれほどうれしそうに笑う大人を他に知らない。)
なんだかほっとしたのも確かだ。

「じゃあ、僕は明日帰るよ。」
「ああ、済まなかったな。」
「別に謝らなくていいよ。君の怪我も診ておきたかったし。
また、いつでも呼んでくれ。」
「いや、もう・・・」
「何処にいようと、絶対行くから。」

「・・・」
感謝の言葉を言うべきだと思ったが、声には出せなかった。



「・・・夢か。」
一瞬、気を失っていたらしい。
夢の中では熱い気さえしたのに、現実は殆んど凍りついている有様だ。
もうすぐ処刑されようというのに、随分暢気な夢を見たものだ。
こんなところに結城が来られるわけはないのに。

でも、きっと来るな。

あいつがそんな自分の危険を顧みるような賢い人間
だったら俺だって周りの人間だって困らされやしない。
そのかわり、仲間だと思う事もなかったかもしれないが。

来てくれたら、今度こそ素直に礼を・・・ 言えないな、きっと。