夏のオート・ルート(Haute Route)


オート・ルート(Haute Route)とはフランスのシャモニー(Chamonix)とスイスのツェルマット(Zermatt)間のアルプスの高所を結ぶルートのことで、冬の山岳スキーのルートや夏の氷河歩きのルート、それに夏のトレッキングルートがあります。

このページで紹介するオート・ルートは、夏のトレッキングルートで、特殊な登攀道具を必要とせず、標高1000m〜3000m程の高所を距離にして約180km、シャモニーとツェルマット間の山岳路を、標高4000m級のアルプスの山々を眺めながら歩くコースです。全部を一度に歩き通すには2週間以上の日程が必要です。

小生は過去、このコースの一部を断片的に歩いてきました。歩く方向はバラバラで、ゴンドラなどの便利な乗り物は最大限に利用するなど、とても本来のオート・ルートの歩きとは言えませんが、トータルでオート・ルートの約2/3を歩きましたので、その凡そを略図と簡単な説明で紹介することにします。
モワリ湖(Lac de Moiry)


オートルート電子書籍の紹介 オート・ルートは人気のコースです。
しかしウェブサイトを見る限り、オート・ルートを全て歩かれた日本人を知りません。

左の電子書籍の著作者・Susumu 氏はフランス在住の日本人で、一切乗り物に乗らず、17日間でオートルートを完歩されております。
歩かれたどの日においても、自然を敬い、人を愛する心が文中の隅々に刻まれていて、人生の歩みや心の旅路と重ね合わせながら作者と共にオート・ルートをたどることができます。
我らが天界道
(The Walker's Haute Route)

ヨーロッパの背骨を歩く

Susumu 著
2010年の7月、モン・フォール小屋とプラフル−リ小屋でたまたまお会いした日本人がSusumu氏でした。オート・ルートをシャモーニーからツェルマットに向けて歩かれている途中で、山小屋では時間が経つのを忘れて話し込んでしまいました。
氏は日本に住む者以上に日本人のアイデンティティーをお持ちになっていて、話していても新鮮で、日本について改めて考えさせられることが多々ありました。
その年の10月、早速オート・ルート紀行文の電子書籍を送っもらいました。書籍完成まで2ヶ月あまりのそのスピードに驚くと同時に、文体の素晴らしさにも感動しました(2011年7月記)。



オート・ルートの略図 と コースの紹介
オート・ルートの略図を下に示します。地図の作りやすさを優先させたら上が東で下が西の変則地図になってしまいました。
オート・ルートのコース全体を通して標識がキッチリと整備されていますが、悪天候時や積雪がある時は要注意です。
どこから出発しても、一部だけを歩いても自由自在ですが、オート・ルートのほぼ中間に位置するディス湖(Lac des Dix)とアローラ(Arolla)間はディス湖側(シャモニー側)から歩かれた方が安全だと思います。
コースの多くは宿を出発すると途中に逃げ道は無く、何かあれば引き返すか進むしかない所が多くあります。
しかし宿からは容易に下山できる所が殆んどで、次の日の予定を変更することは比較的容易です。例えば、悪天候で出発できないが、その日に目的地の宿に入りたい、といった場合などは一旦下山し交通機関を使って目的地に回りこむ、などということが可能です(予め交通機関を調べておく必要がありますが)。
どこの宿も満室状態です。必ず予約をしておくことが肝要です。
オートルート略図
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コースの簡単な紹介
2〜3泊に分けて、地図の上j部から下部へ順に紹介します

ツェルマット〜サンクト・ニクラウス(2泊〜3泊
写真はトゥフテルンから見るツェルマットの町
宿泊場所:ツェルマット/ヨーロッパヒュッテ/ガセンリード/サンクト・ニクラウス

マッター谷を挟んでミシャベル山群の山腹をトラバースしながら歩く路程です。ヨーロッパ・ヴェグと呼ばれていて、ヴァイスホルンやビスホルンを絶えず視野に入れながらの歩きです。所々落石注意の表示のあるガレ場を歩く所があるようです。

トゥフテルン(Tuftern)付近ではマッター・ホルンやオーバーガーベルホルンやツェナールロートホルン等の4000m峰に囲まれたツェルマットの町を眼下に見ることができます。

*サンクト・ニクラウス〜ツェナール(3泊)
写真はメイドパス
宿泊場所:グリューベン/ベラトーラ小屋/ホテル・ヴァイスホルン/ツェナール等

サンクト・ニクラウスとユング間に小さなゴンドラが運行されている。アウグストボードパス間の路程では目と鼻の先にミシャベル山群を望みながらの快適な歩きとなります。

アウグストボードパスとメイドパス間にはグリューベンという小さな村が1つあるだけで、ここを歩く人の殆んどがその村のホテル・シュワルツホルンに泊まります。

メイドパスはドイツ語圏とフランス語圏の分水嶺で、同じスイスの国なのに、この峠を越えると言葉が完全に変わります。
メイドパスからはヴァイスホルン、ツェナールロトホルンの高峰の眺めが素晴らしい。

メイドパスを通らずに
南側のフォルクレッタ峠を越えるルートもあるが、こちらはマイナーなルートで時間もかかるようです。

ベラトーラ小屋や山岳ホテル・ヴァイスホルンとツェナール間では、ダン・ブランシュ等の高峰を眺めながらの穏やかな歩きが楽しめます。


*ツェナール〜アローラ(3泊)
写真はモワリ小屋への道とモワリ氷河
宿泊場所:モワリ小屋/ラ・フォルクラ/ラ・サージ/アローラ等

ソルボア峠から見るヴァイスホルン・ツェナールロートホルン・ヴェッソの山々は氷河の白を乗せて美しい。
ソルボア峠からは2つのルートがある。モワリダムに下りてトラン峠を越えるのが近道だが、モワリ湖の横を通りモワリ小屋泊でツァテ峠を越えるルートを勧めます。モワリ湖の青色とモワリ氷河には圧倒されます。

ラ・フォルクラ(またはラ・サージ)の村からレゾデールを経由してアローラへの歩きは、比較的道路に近い低標高の歩きになります。
途中、アローラ近くにブルー湖という小さな綺麗な湖があります。
もちろんバスでこの間の歩きを省略することが可能です。
                     


*アローラ〜モン・フォール小屋(2〜3泊)
写真はテルマン峠から見るグラン・コンバン
宿泊場所:ディス小屋/プラフルーリ小屋/モン・フォール小屋/ルヴィー小屋等

リードマッテン峠もシェーヴル峠もディス湖側(西側)から越えた方が良いと思う。峠の西側は、リードマッテン峠はガレの急斜面でシェ−ヴル峠は長い垂直の2段の鉄ハシゴになっている。これらを下るのは危険性が増す。

アローラとプラフルーリ小屋間には2つの峠越えがあり結構長い。中間にディス小屋があり、ここに泊まればゆっくりとした路程を取れるがシェイロン氷河の末端を越える必要があるので要注意。

プラフルーリ小屋とモン・フォール小屋間は峠を3つ越える必要があり、オート・ルートの中で最もハードな路程と云われる。ただ快晴だったせいか歩いた感じでは思っていたほどではなかった。氷河や氷河湖の横を通る変化のあるコースで展望も良い。
ラ・ショー峠を通ればショートカットできるが、荒れ道で時間短縮にはならないようです。

モン・フォール小屋はスキー場の開けた場所にあるので、これが嫌ならフィオネーに抜ける静かなルヴィー小屋に泊まることもできます。


モン・フォール小屋〜シャンペ(2泊)
写真はラ・ルイネットから見るモンブラン山群
宿泊場所:ル・シャブル/シャンペ

モン・フォールとシャブル間一帯はヴェルビエを中心としたスイスでも有数の大スキー場でゴンドラやリフトがあちこちにあり、自然が殆んど残っていない。しかもモン・フォールと麓のシャブルとの標高差は1,600m以上もあり、ここを歩くのは精神的にもかなりのタフさが求められる。料金は高いがゴンドラの利用が可能。

シャブルとシャンペ間は低山歩きです。歩かずにバスでの移動も可能です。

シャンペは、湖の畔のこじんまりした保養地で、ホテルなどの宿泊施設が沢山ある。



シャンペ〜シャモニー(2〜3泊)
写真はバルム峠の道から見るベルト針峰(左)とモンブラン(右)
谷の奥はシャモニーの町
宿泊場所:フォルクラ峠/トリエンテ/アルジェンティエール/シャモニー

シャンペとシャモニー間はツール・ド・モンブランのルートと重なります。
シャンペとフォルクラ峠間のルートは2つあり、鼻歌交じりで歩けるボヴィーヌ小屋経由と、フネートル・ダルペット峠越えがある。健脚ならば、タルペット氷河を真近に見る峠越えの方を選ぶべきです。

スイスとフランスの国境のバルム峠は昔密貿易者が越える道だったようです。峠の道からはモンブラン山群と赤い針峰群の大展望が楽しめ、シャモニのーの町を眼下に見ることができる。

シャモニー近郊のアルジェンティエール辺りでオート・ルートを終了(スタート)するのも良いが、更にシャモニー西側の赤い針峰群の山腹に入り、シャモニーを挟んでモンブラン山群を眺めて歩くのもオート・ルートの内になる(ツール・ド・モンブランのルートでもある)。この途中には有名なラック・ブラン湖がある。