MGB TECHNICAL TIPS

 

1.フロント・ブッシュ

(1)  MGBのフロント・サスペンションのキング・ピンには、片側3箇所のグリースアップ・ポイントがある。こことプロペラ・シャフト1箇所およびサイド・ ブレーキ1箇所の合計8箇所には、5000Km毎にグリース(指定は「マルチパーパス・リチウム・グリースNLGI粘度bQ」)を補充すること。これを怠ると、キングピンにガタ付きが発生し、フロント・ハブ全体の交換を招く恐れがある。

  

 

(2)  MGBのフロント・ロアAアーム付根にあるラバー・ブッシュは2分割構造になっている。これは経時劣化やスポーツ走行による負荷によって痛みが早い。このためステアリング・シミーやハード・ブレーキ時のコンプライアンス・ステア現象による片効き症状が起こることがある。この場合はメタル・インサートが付いたMGB/GT V8用や、ナイロトロン等の強化ブッシュに交換するのが望ましい。

 

 

2.SU&ゼニス・キャブレター

(1)  キャブレター頂部にあるダンパー・キャップ内には、ダンパー・オイルを入れること。オイルはエンジン・オイルで良く、量はダンパー・キャップを戻してオイルの抵抗が感じられれば良い。これを怠ると、エンジンに適切な混合気が送られず、不安定な燃焼を招く恐れがある。そのため定期的に量をチェックすることが望ましい。

 

(2)  ゼニス・キャブレターのサクション・ピストンには、サクション・チャンバー内の負圧を維持して効率を高めるためのスカート状のラバー製ダイヤフラムが付いている。サクション・ピストンを装着する際には、ダイヤフラムとキャブレター本体に付いている凹凸を合わせて装着しないと、負圧が正しく発生しない。

 

 

 

3.ミッション・オイル

(1)  レイコック・ド・ノーマンヴィル社製電磁式オーヴァ・ドライヴ装着車は、ミッション・オイルにエンジン・オイルを用いること。通常のハイポイドギア・オイルを使用した場合、粘度が高すぎるためにユニット内部でオーヴァ・ドライヴを作動させるための油圧(これの流路の切り替えが電磁石)が発生できず、オーヴァ・ドライヴが作動しない。

(2)  LT77型トランスミッション・アッセンブリィを用いているRV8初期型は、ミッション・オイルとしてATF(オートマチック・トランスミッション・オイル)を用いるとシフト・フィールの硬さが軽減される。

 

4. レイコック・ド・ノーマンヴィル社製電磁式オーヴァドライヴ・ユニット

(1)  水温センサーUB2日本仕様は4速時にのみ作動するが、BM以前は3速でも作動可能

(2)  スイッチを入れたままシフト・ダウンしても、ユニットに損傷はない。ただし例えばUB2日本仕様で4速ODからシフト・ダウンすると、ギアは3速に入る。そのまま再びシフト・アップすると一旦4速に入るが、すぐにODが作動する

(3)  スイッチを入れても作動しない場合は無視できるが、スイッチを切っても解除されない場合には絶対に後退しないこと。ユニット内のワン・ウェイ・クラッチが破損し、走行不能となる

(4)  SWレイアウトのコピーODが作動しない場合、ユニット内に浮遊する鉄粉がプラジャー・ポンプをスティックさせていることがある。この場合はユニット底部のオイル・パンを外し、プランジャー・ポンプを抜いて両者をホワイト・ガソリン等で洗浄することで直る。

(5)  OD付車両のミッション・オイルは、通常の粘度の高いハイポイド・オイルではなく、エンジン・オイルが指定である。これはODユニット内のプランジャー・ポンプが作動油圧を発生させるためにはハイポイド・オイルでは粘度が高すぎるためであると推定される。

 

 

 

 

5. 電動冷却ファンのサーモ・スイッチ(UB2)

(1)  MGB(UB2)の電動冷却ファンを自動作動させるサーモ・スイッチは、耐久性が低い。電動ファンが作動しない場合、サーモ・スイッチに付いているコネクターを外し、針金などでコネクターの2本の足を繋いで同通させれば、ファンは強制作動が可能である。

(2)  サーモ・スイッチの故障に備えて、バイパス・スイッチを設けることも効果的である。そのためには自動車部品店等で単純ON/OFFスイッチを購入し、その2本のハーネスをサーモ・スイッチの2本のリード線に分岐を作って接続してやると良い。分岐を作るためのコネクターは自動車部品店で購入可能。

(3) さらに電動ファンの作動を示すインジケーター・ランプを付ければ、不意のサーモ・スイッチの故障も察知しやすくなる。これらのスイッチ/ランプ類は、予備スイッチ用のスペースを利用して装着すると見た目もスマートになる。また汎用でインジケーター・ランプが組み込まれたスイッチも市販されているが、これを使ってスイッチのON/OFFではなく電動ファンの作動で点灯するようにするには加工が必要なので注意。

 

 Bee2ホイール

 

 

6. ステアリング・シミー

(1)  共振現象によって、一定の速度域でステアリングホイールに生じる振動が、ステアリング・シミーである。これはすべてのクルマに起こる現象だが、その発生速度は車輌によって様々である

(2)  シミーを完全に消滅させることはできないが、例えばホイールのウェイト・バランスの補正などによって、その発生速度を実用域から外すことはできる。

(3)  これ以外のシミーの発生要因としては、サスペンション・ブッシュの劣化等もある。

(4)  ワイヤ・ホイール装着車の場合、ワイヤの緩みによってステアリング・シミーを招くことがある。ワイヤ・ホイールはハブとリムを結ぶスポークの張力によって成り立っているホイールであり、60本以上あるスポークの張力を厳密に同一にすることは不可能である。このためリムの真円度は低く、これがシミーを生じる原因となっている

(5)  仮にリムが真円であったとしても、スポーク張力の不均衡からハブはリムの円の中心から若干とは言えズレるため、ここでもタイヤの回転にはムラが生じ、シミーとなる。

 

7. ワイヤ・ホイール

(1)  ワイヤ・ホイールは、基本的にハブ/リム/スポークの3つの部品から成り立つ。

(2)  スポークはリムを貫通しており、両端がネジ状になっていることで張力を調整する。

(3)  このためワイヤ・ホイールには、原則的にチューブレス・タイヤは使用できない。使う場合はタイヤの中にチューブを入れる必要がある。

(4)  国産のホイールには、リムにスポークを接合する部分を樹脂でシールしているものがある。これは構造的にスポークの張力を利用していないためであり、そのためスポークは太い。

(5)  通常のロスタイル・ホイール車にワイヤ・ホイールを用いる場合、3つの方法が考えられる。その1つが通常のスタッド・ボルトで固定する形式のホイールを用いる方法である。これは前述の国産ホイールを用いる方法と、英国製の張力式ワイヤ・ホイールの二つがある。

(6)  2番目の方法が、センター・ロックのアダプターをスタッド・ボルトを用いてハブに固定する方法である。この場合MGB純正オプションと同じセンター・ロックのホイールが使えるが、アダプターの分だけホイールが外へ出る可能性がある。

(7)  3番目の方法が、ハブをセンター・ロック用に交換する方法である。この場合は問題なくホイールを用いることができるが、ハブ交換に費用を要することになる。

(8)  英国にはセンター・ロックのアルミホイール(ミニライト・パターン)も存在する。これであればチューブレス・タイヤも使用可能だし、ホイール・バランスを取る事で、ステアリング・シミーを抑えることができる。

(9)  センター・ロック式ホイールを固定する中心部のノック・オフ・スピナーは、左右で逆ネジになっている専用品である。これは減速時にノック・オフが締め込まれる(=タイヤの後進方向で締まる)ようになっているためであるが、ロータスなどは逆に加速時に締め込まれるようになっている。

 

 

8. スロットル・ワイヤ

(1)  MGBのスロットル・ワイヤは、何故か切れ易い。毎週末の使用で、だいたい2年程度で切断することがある。

(2)  前兆としてはワイヤ・ケース内でワイヤがささくれる事によるスロットルの渋さがあるが、これは徐々に起こるために事実上感知不能である。

(3)  このため常に予備のスロットル・ワイヤを携行するのが最も効果的な対策と言える。

(4)  切れる原因の大きなものは、キャブからスロットル・ペダルにやってくるスロットル・ワイヤ(インナ/アウタ)がフロント・バルクヘッド部で「ペダスタル・アクセラレーター・ケーブル」という名のパーツでアウター・ケーブルが止められ、インナー・ケーブルだけがむき出しでそのままバルクヘッドを貫通してスロットル・ペダルに向かう。しかし室内側でインナー・ケーブルが出てくる所に空いているボディの穴に擦れる事で、ケーブルが切断する事となる。

(5)  上記が理由である事から、バルクヘッド内でインナー・ケーブルがむき出しにならないようにアウター・ケーブルを加工するなどしてスリーブを作る事が効果的である。しかしスロットル・ペダルの動きでそのスリーブがバルクヘッド内から出て来る事でスロットルを閉じた時に引っかかってスロットル・スティック症状となる事があるので、スリーブが動かないように加工する必要がある。

下の写真はUB2右ハンドル車の右フロント・フェンダー内バルクヘッド部の写真で、1枚目の手前の黒いものはブレーキ・マスター・シリンダーである。赤丸で囲んだ部分がスリーブの先端金具部分で本体はボディの中に入っている。金具が接しているBRGの山形の部分はボディの「ペデスタル・アクセラレーター・ケーブル(米モスでは「ガイド・アクセラレーター・ケーブル」)」(2枚目パーツ・リストの赤丸部分)、黒いケーブルがスロットル・ワイヤのアウター・ワイヤーで、スリーブの金具とはインナー・ケーブルを介して当たっているだけである。3枚目の写真の赤丸で囲んだ物は抜け留めのためにスリーブの先端に付けたナットで、横にドリルで穴を開けて小ネジを付けてスリーブのアウター・ケーブルに止めてある。これでスリーブが上に抜けることを防ぎ、スリーブ自体の金具がペデスタルに当たって下に抜けることを防ぐ形となっている。

 

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9.幌の畳み方(UB2)

(1)マニュアルによれば、MGBの幌を畳む際には裾のフック/ファスナー類を全て外した後にヘッダー・レールのバックルを外し、ヘッダー・レールを若干持ち上げてから最後端の2箇所のフックを抜く。左右のリア・クォーターウィンドゥ部を内側に折り込み、そのまま幌を折り畳むのに合わせて幌最後端を後ろに引っ張り、トランク・リッド上にリア・ウィンドゥ部だけを伸ばす。その後に完全に畳まれた幌骨全体をリア・ウィンドゥ部で丸く包む。最後にリア・バルク・ヘッドに付けられた左右2本のストラップで幌全体を固定する。

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(2)フード・カバー/トノゥ・カバーを装着する際には、2分割された「トノゥ・バー(日本語マニュアルでは『フード・カバー・レール』)」を組み立て、左右ドアのすぐ後ろにあるソケットに差し込んでから装着する。これはカバーの前端形状を整えるためである。

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(3)トノゥ・カバーを用いる時は、開けた側のカバー中ほどにあるフラップを、リア・コンパートメントのヒール・ボードにあるドット・ファスナーに留める。これはトノゥ・カバーのたるみを無くすためである。

   

 

 

10.幌/トノゥカバー用ソケット

  (1)Mk.1の取外し式幌骨および全トゥアラーのトノゥバー/ハードトップの取り付けに用いるソケットは、折り畳み式幌の幌骨をボディにボルト留めする時に共締めする事。

  (2)その際、ソケットが外側(ボディ側)/幌骨が内側になる。これは幌骨が可働するためであるが、幌骨側のボルトの受けて部分にソケット分のクリアランスを確保するための足があるので、問題はない。

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11.取外式幌(STOW-AWAY HOODまたはPACK-AWAY HOOD

(1)  MGBには、1970年8月(71年式レイランドグリル・モデル)まで取り外し式と折り畳み式の2種類の幌が存在していた。

(2)  幌は左右2分割式の幌骨と全体を取り外す形式の幌の2パーツから成り立っている。

(3)幌骨は、トノゥ・バーを取り付けるのと同じソケットに差し込む

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(4)サーキット走行を想定してロールバーを装着する場合、折り畳み式幌では干渉する恐れがあるので、この取り外し式幌を使うと良い。

(5)4点式シートベルトを付ける際にもショルダー・ベルト部のボディ取り付け位置によっては折り畳み式幌では干渉する事があり、この際も取外し式幌を用いると良い。

 

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12.GTボディの4シーター登録

 MGB/GTは本国では乗車定員4名だが、日本では後部座席が自動車保安基準の審査事務規定第5章34-1-(2)-@の規定内容に対して座面長の要件を満たしていないため2シーターとしての登録しかできない。

 規定内容は以下の通り。

 「自動車の運転者以外の者の用に供する座席(またがり式の座席及び幼児専用車の幼児用座席を除く。)は、一人につき、大きさが幅380o以上、奥行400o以上であること。」

 これに対して後部座面を作り替えることで要件を満足させ、4名乗車登録に成功した例がある。

 

13.ドアラッチのスティック

 UB2等に使われている「アンチ・バースト」タイプのドアラッチ(図の12全体)は、古くなって動きが渋くなるとストライカー(図の10)を噛みこまなくなる事がある。

 これはアウター・ドアハンドルのボタンによって押されるラッチコンタクター(赤丸で囲んだ、図の13)が汚れや腐食などで戻らなくなるためである。

対処方法はドアトリムのアッパー・ガーニッシュを外し、さらにドアトリムを留めているクリップを外して後端をめくり上げ、柄の長いドライバーなどでラッチコンタクターを動かして戻し、潤滑剤を塗布すると良い。

 

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