<MGB in MEDIA

 

MGBが登場する小説や映画は、実はそう多い訳ではない。まして「通りがかりのクルマA」以上の扱いをされている作品ともなると、かなりレアである。

その中でもMGBが活躍するものをいくつか紹介しよう。

1.      五月香ロケーション・シリーズ

@「感傷戦士」 1986/8/5初版 森雅裕著/講談社ノベルズ刊(絶版)

A「漂泊戦士」 1987/4/5初版 森雅裕著/講談社ノベルズ刊(絶版)

<概要>

主人公である梨羽五月香は18歳になったばかりの女子高校生。しかしその正体は傑出した身体能力を持つ台湾・高砂族の中でも超人的なレベルを誇る飛虎族の父を持ち、飛騨忍者の末裔でもあるスーパー・ガール。

人里離れた山奥で一族と住んでいた村がそれと知らされぬままに自衛隊特殊部隊の演習訓練場とされたために、特殊部隊と排他主義の村人達との間に武力衝突が発生する。村人の一人でまだ小学生だった五月香は特殊部隊隊長で負傷した梨羽三佐を助けた後に養女となる。

7年後普通自動車免許の交付を受けた五月香は道楽者だった母方の祖父が乗っていて新車同様にレストアしたばかりという黒のMGBを譲り受ける。

そして日本の敗戦後の台湾統治権を巡る争いの中で密かに日本に秘匿された莫大な財宝を巡る政府と飛虎族のもう一人の生き残りとの戦いに巻き込まれて行き、それはやがて自衛隊特殊部隊による軍事クーデターへと発展して行く。

その中で家族を次々と失ってゆく五月香は本来同朋である部族の生き残りに復讐を果たすべく、GRUや内閣調査室特務部や米軍などが更に複雑に交錯する戦場に向かう。

 

<登場MGB>

 1963年式Mk.1トゥアラー(左ハンドル仕様)にローヴァV8を搭載した黒のコンバージョン・モデル。GT V8からミッションごと移植したらしく、文中に電磁式ODを作動させる描写がある。

 これで2.4リットル仕様のポルシェ911(ナロー・ボディか?)と高速道路でバトルをしたり、赤いフェラーリ308GTSと絡んだりと、前後編2冊通じてそれなりに活躍する。

 

<Corkey’s EYE

 別項でも触れているが、そもそも僕の愛車Bee-3のアイディア・ソースとなった小説。それを除けば、小説としての出来は決して良くはない、というよりはっきり言えば「悪い」。

 「小じゃれた会話」を狙っているのがあまりにも鼻に付くし、そのくせスプラッター映画並みに人が死ぬ。しかし結局は単純なバイオレンス・アクションで、それが超人的な身体能力で発揮されるとしても、アニメーションや実写映画ならいざ知らず、小説ではさしたる迫力を感じるほどの筆力もなし。しかも本人が描いたという挿絵(表紙絵も)は漫画家志望の小学生以下のレベルと断じてしまおう。

 少なくても前編である「感傷戦士」の表紙にMGB Mk.1のアップが描かれていなければ、絶対に買うことはなかっただろう(とすると今僕がBee-3に乗っているかどうか、という問題もあるが)。

 作者である森雅裕氏は江戸川乱歩賞の受賞者ではあるらしいがどうもトラブル・メイカーでもあるらしく、最近は作品も商業出版社からは出されていない様子。もちろんこの2冊も2013年2月現在絶版である。

 因みに主人公梨羽五月香は、ほぼ同時期に出版された「サーキット・メモリー」のヒロイン名でもあるが、両作の間にはまったく関連はない模様。要するに作者の思い入れの深いキャラクターなのだろうが、得てして読者の受け取り方とすれ違って作者の空回りという良くある図式か。

 

2.「高山殺人行1/2の女」 1985/3/25初版 島田荘司著/光文社カッパ・ノベルズ刊

<概要>

 主人公の斎藤マリは、35歳の若さで父親が社長である外資系企業の重役をやっている不倫相手の川北留次から妻の初子を殺してしまったという電話を受ける。主人公は不倫相手を救うために、自分が初子に成りすまして彼女のクルマである赤いMGBで高山に行き、多くの人間の目に触れさせてから湖にクルマと死体を沈めて事故を装う事を依頼される。

 そして計画通りに死んだ愛人の妻に扮してMGBで軽井沢から上高地を通って高山まで走り始めるのだが、その途中で様々な不可解な出来事が彼女に降りかかってくる。果たして事の真相は?

 

<登場MGB>

 表紙イラストにもある通り、赤のMGBウレタンバンパー後期型(シフトノブ頂部の電磁式オーバー・ドライブのスイッチの描写がある)。

 ただし冒頭のシーンで、いきなりミス。ファン・ベルトが切れてオーバー・ヒートを起こしかけ、通りかかったライダーが主人公のパンストで応急修理をしてファンが回るのだが、このクルマの冷却ファンはパンストでは回らない。言うまでもなく、UB2の冷却ファンは電動だからだ。

 まあファンを回さないのにファン・ベルトと呼ぶこと自体がおかしいのだが、ベルトが切れればウォーター・ポンプが回らなくなるのでオーバー・ヒートにはなる。しかしその前にオルタネーターも回らなくなるので充電警告灯が赤く光るから、普通はそちらに気が付くほうが先だろうし、音もなくベルトが切れるということも考えにくくはある

 当時作者はMGAに乗っていたらしく、さすがにそれではマニアックにすぎるので販売終了後5年程度のUB2を小道具に使ったのだろうが、現車には詳しくはなかったようだ。

 

<Corkey’s EYE

 「トラベル・ミステリィ」という推理小説のジャンルがある。この小説は「クルマを使ったトラベル・ミステリィ」を狙って書かれたものである。

 現在は光文社カッパ・ノベルズ→光文社文庫→徳間文庫と発行元が変わっているが、徳間文庫版は「新装版」と銘打っているので、中身は幾分か変わっている可能性がある。

 これも表紙のMGBに惹かれて買ったものだが、ミステリィとしてはちょっと筋立ての強引さが目に付く印象が免れない。「MGBでなければ成立しない」といったようなトリックもないし、所詮は「お飾り」に過ぎない。

 まあそうなると映像も画像もない小説では、MGBが出ているから購入するという積極的な理由も見当たらないのだが。

 

3.「ウルトラ・ダラー」 2006/3/1初版 手嶋龍一著/新潮社刊

<概要>

 昭和43年(1968年)暮れ、東京・荒川に住む若い彫刻職人が、忽然と姿を消した。それから35年以上の月日が流れ、ついに全貌が明らかになる・・・。ダブリンに超精密偽100ドル札あらわる!震源は「北」

(書籍腰帯より)

 

<登場MGB>

 主人公であるBBCラジオの東京特派員スティーブン・ブラッドレーの愛車として1972年式のトゥアラーが登場。BRGのこのクルマはスミスのメーターにモトリタのウッド・ステアリングを装備しており、幌のリア・ウィンドゥもジップ・アウトする。一つだけ解せないのは、どうもこのクルマ、左ハンドルらしい。それと言うのも何とワイパーが3連という描写があるのだ。

 

<Corkey’s EYE

 この本は、本そのものに興味があって購入してみたらMGBが出てきた、という例である。

 著者の手嶋龍一氏はNHKのワシントン支局長を経て、現在は国際関係のコメンテイターとしてTV番組でも姿を拝見する機会が多い方である。

 この本も基本は東京が主たる舞台とは言うものの、世界中のあちこちに場面が移るワールド・ワイドな物語で、こうした部分もちょっと日本の小説らしくないのではないだろうか。

 話そのものも北朝鮮がアメリカ製よりも精巧とすら言われる偽ドル札を印刷しており、それを自国の核武装のための資源や設備の購入に使おうとしている。その偽ドル札の製作に日本の技術と人間が大きく巻き込まれているというのが骨幹になっており、これ自体ただのフィクションとは思えない説得力を持っている。

 そうしたシーンの小道具として主人公スティーブン・ブラッドレーの英国への拘りを示すシンボル的にMGBが配されている。「なぜそれで左ハンドルなのだ?」という疑問はあるが、これは手嶋龍一氏が3連ワイパーなどという描写をしなければ良かったのだが、「筆が滑った」と無視しうる程度の些末な事なのだろうか。

僕は「細部に拘る」というのは、そういう所まで心配りをすることだと思うのだが。

ともあれ最後の最後で見事MGBはエンジン・ストールを起こすのだが、スティーブンの愛車を日本車には出来なかったのはその演出をするには不自然になるからでもあるのだろうか。

 なお続編である「スギハラ・ダラー」にはスティーブンは登場するがMGBは出てこない。残念。

 

4.「べっぴんの町」 1989/10/14公開 原隆仁監督/柴田恭兵主演 東映

<概要>

 神戸で私立探偵、というよりも何でも屋をやっている「私」に、恋人(未満)で高級クラブのホステス亜紀子が人探しの仕事を紹介する。それは数日前から行方不明になっている、クラブの上客である実業家の高校生の娘だった。

 家出か誘拐か、それとも・・・。「私」は神戸を拠点としたヤクザの若頭をやっている昔の教え子の力を借り、BRGのMGBを駆って神戸の街を消えた女子高生の姿を追う。

 その先に待っていたのは・・・。

 

<登場MGB>

 69年式Mk.3レイランドグリル対米仕様をMk.1グリルに換装したもの(リア・バンパーが2分割されていることから判別)。

 映画の冒頭からエンディングまで、このMGBはほぼ全編に渡って登場し、後半のクライマックス・シーンではホンダ・プレリュードを相手にポートアイランドでカーチェイスまで披露する。

 ただ探す相手の写真をインパネ助手席側のパッドに挟み込んで見せているのだが、そこには写真を差し込めるような隙間はないために実は写真の角が切られているのが注意深くシーンを見ていると見て取れる。

 

<Corkey’s EYE

 原作は軒上泊の小説だが、現在は絶版の模様。まあ原作にはMGBの影も形もないのだが。

 神戸(震災前である)を舞台とした、シャレたハード・ボイルド・タッチの探偵ものという、よくあるシチュエーションを狙った映画。映画としての面白さ云々よりも、たぶん世界で一番MGBの延べ登場時間が長い映画だろう。

 しかし何で選りにも選って1年間しか作られなかったモデルを使うかなぁ。まあウレタンバンパーじゃさすがに絵になりにくいけどね。

 

5.「シャコタン・ブギ『入門!ブリティッシュライトウェイトスポーツカー』編」 

1990/8/17初版 楠みちはる著/講談社ヤンマガKCスペシャル11巻

<概要>

 『ヤングマガジン』誌上で、漫画家が好きな歌をテーマに読み切りを描くという企画「歌謡マンガシリーズ」において、『涙のリクエスト』として本作第一話が描かれ、設定は全てそのまま連載になった。

1986年連載開始。当初は車と女の子のナンパが大好きな主人公2人の「青春グラフィティ」としてスタートしたが、連載後半は平行して『週刊ヤングマガジン』に連載されていた『湾岸ミッドナイト』のように、車漫画として見ることが出来るようなエピソードが増えた。

なお、連載中は時代背景の変化は反映されたが、登場人物の年齢はそのままである。

(以上Wikipediaより)

 MGBが登場するのはこの11巻収録の4話連続エピソードだけである。

 

<登場MGB>

 見ての通り、MGBウレタンバンパー後期型。ところがこれがレアな右ハンドル。ワイパーも2本で、驚くことにインパネもちゃんと本国仕様になっているのが、芸が細かい。

 ただしヤンキー兄ちゃんとのいざこざに巻き込まれても振り切るだけの性能はなく、果てはデスビのトラブルでヘタりこむ情けない姿を晒してしまう。

 しかしMGBの美点のしっかり押さえるところは押さえられているのが、著者がクルマ好きであることを伺わせる。

 

<Corkey’s EYE

 著者の楠みちはる氏と言えば、この「シャコタン・ブギ」が出世作であり、最大のヒット作は「湾岸ミッドナイト」ということになるのだろうか。

基本的にはコメディ・テイストのこのマンガの事とて、MGBも「ナンパのツールになりえるか?」というような視点での扱いで、かつコミカルなシーンを作るための小道具である。

しかし「速度ではない快感」や「肩の力の抜けた空気感」といったような言葉にしにくいMGBの美点を、マンガならではの手法で表現しているとも言える。

ただ・・・これでもう少し絵が上手いといいんだけどねぇ。

 

6.「スイート・ホイールズ」

@モーニング・カラーKC版 1991/8/23初版 田中むねよし著/講談社モーニング・カラーKC版

Aティーポ版上巻 1998/5/6発行 田中むねよし著/ネコ・パブリッシング ネコ・ムック20巻

Bティーポ版下巻 1998/6/10発行 田中むねよし著/ネコ・パブリッシング ネコ・ムック22巻

<概要>

 ネコ・パブリッシングの「Tipo」や小学館のビッグ・コミックなどで一貫して自動車趣味をテーマとしたマンガを描き続けている田中むねよしの出世作と、そのリメイク版。

 元々は週刊モーニング誌上で不定期連載されたもので、それをまとめたのがモーニング・カラーKC版。

 その後活躍の舞台を「Tipo」誌に移したのと機を同じくして未発表作(ボツ原稿?)も合わせてコンピューター彩色を新たに施して上下巻で発行されたのがネコ・ムック版である。

 基本的に1話完結(例外的な数話連続ものもあるが)で、各話に共通する主人公や設定はなく、舞台となる国や地域もバラバラ。無論取り上げられるクルマ達も話によって異なる。

 というよりも取り上げたクルマに合わせたストーリィ(その車の特色だったり、生い立ちにまつわるエピソードだったり)が展開される構成になっている。

 MGBが登場するのはネコ・ムック版では下巻の通算第22話である。

 

<登場MGB>

 Mk.1グリルを付けたBRGのトゥアラー(右ハンドル)。ヘッドレストやラバー・インサート付のオーヴァ・ライダーを見るとレイランド・グリルの72年式かブラックメッシュ・グリルがベースかとも思われるが、定かではない。

 要するにむねよし氏は、さほどMGBに詳しくはない、ということなのだろう。

 

<Corkey’s EYE

 「名作」とまでは言い過ぎかもしれないが、間違いなく自動車を中心に据えたマンガとしては「良作」だろう。特に第1話のカニ目の話や、連作であるケイターハム7の話は大好きな話である。中で語られる「男なんて赤ん坊と一緒」というセリフには苦笑すると共に共感してしまう僕のお気に入りである。

 僕はパソコン通信時代にたまたまむねよしさんと知り合いになり、ずうずうしくも友人知人への結婚挨拶状のイラストをお願いしてしまった。それに快く応えていただいて描いていただいたのがこのHPの冒頭の献辞に載せたものである。

 それは良いとして、残念ながらMGBの話は「MGBでなければ成立しない」というものではなく、オーナーとしては物足りなさを感じる。またCGによる彩色はまだ不慣れな点もあるのか、オリジナルに比べていささか不自然さも感じる。その意味では講談社版は貴重かもしれない。

 ともあれこのマンガはヒストリック・カーを趣味としている方であれば読んで損はないということは断言しておこう。

 

7.「Classic Car Rescue」(邦題『レストアの達人』)

<概要>

 ケーブルTVでドキュメント専門チャンネルとして老舗かつ著名な「ディスカバリー・チャンネル」でここ数年急激に増えてきた自動車テーマの番組の一つ。実は次に紹介する「Wheeler Dealers(邦題『クラシックカー・ディーラーズ』)」の二匹目のドジョウを狙った番組のようである。

 設定としてはイギリスでヒストリックカーのレストア&販売を生業とする共同経営者の二人がボロボロのクルマを安価で手に入れてレストアを施して高額で売却する、というところまで「Wheeler Dealers」と一緒。ただし営業担当(らしい)のマリオ(5枚目の写真の左のヒゲオヤジ)と修理担当のバーニー(同じく右のハゲオヤジ)の仲が悪いのは、「Wheeler Dealers」のマイク&エドとは大違い。

 でこの両方の番組共にMGB/GTを取り上げた回があり、「Classic Car Rescue」での回がこれ。

 

<登場MGB>

 最初に素材として当たったのが、たぶんUB1。しかし1000ポンドという価格と状態(ほぼドンガラ)が気に入らないということで、2台目の同じインカ・イエローのUB2(76年式のウレタンバンパー付)を500ポンドで購入してレストア・ベースに決める(2枚目の写真が値踏みの時のもの)。ところが最終的にレストアが終わった個体は、よく見るとUB1のメッキコンバージョン。不思議な事もあるもんだ。

 

<Corkey’s EYE

 この番組は「ドキュメント仕立てのショウ」でしかない粗悪品。「ボロボロのクルマをピカピカにレストアして高値で販売する」というのが番組のテーマそのものなのに、そもそも素体として購入したものとレストアが終わったものが「別物のよう」ではなく、本当に「別物」であったのでは、この番組を「タチの悪いインチキ」と言って恥じるところはない。

 そう断じる根拠が2枚目以降の写真の随所に見られる。まずは2枚目の値踏み時のエンジンルームは、UB2固有の特徴である前進したラジエーターがはっきり見て取れる。また3枚目のインパネもUB2英国仕様のもので、4枚目のCピラーにはパネル接合面を隠すバッジがある。これだけ証拠があれば、この個体はUB2英国仕様に間違いないと言って良いだろう。

 しかしこのクルマはレストア初期段階で2柱リフトで持ち上げた際に、なんとリア・アクスルがボディから脱落するという悲劇に見舞われる。原因はアクスルを支える左右のリーフ・スプリングがボディと結合される部分の腐食のようだ。

 それを溶接などで何とか直して「ヤレヤレ」という事なのだが、5枚目の写真をよく見て欲しい。何かに気付かないだろうか?ラジエーターの位置がいつの間にか後退しているじゃないか!おまけにレストア終了で紹介されたインパネは、UB1と思しきもの(速度計/回転計の大きさがその証拠)に変わっている!笑えるのは、英国でMGB/GTによく見られる後付けオプションであるキャンバストップが2台目の素材には付いていたはずなのに、わざわざ板金で埋めたことになっている。もちろん1台目のUB1にはそんなものはなかったのは言うまでもない。

 因みに番組最後に査定士が付けた値段は5000ポンド。これ自体は画面上で見える仕上がりからすれば高過ぎるとは決めつけられないものの、次に紹介する「Wheeler Dealers」のMGB/GTが2850ポンドだった事と比べると、8年の時間の差を考慮しても僕なら後者を選ぶ。

 そもそもこのバーニーが本物のメカニックだったとして、素体の買い付け時にリーフ・スプリングの取り付け部の腐食も見抜けない程度の腕じゃ、とても信頼などは出来ない。

 

 僕が推測するに、確かに当初はレストア・ベースとしてUB2を購入したもののリア・アクスルが脱落するほどボディ全体の腐食がひどく、別の個体(たぶん最初に見た個体ではないかと睨んでいるが)に素体を切り替えたにもかかわらず、その事を伏せて番組を作り上げたというのが真相ではないだろうか。

 確かに僕がMGBマニアであるがゆえに見抜いた事だろうし、普通の人はこんな事実を気にも留めずに番組を楽しむのかも知れない。しかしこの番組がこんなインチキを働くという事実を知ってしまった以上、番組の中でどれほどの紆余曲折や苦労話があったとしても、すべてはただの虚構の話ということだ。しかもそれがこのMGBの回だけで行われた事とは思えないのだ。

 そういう訳で、僕はもはやこの番組を二度と見ることはないだろう。まあこのMGB/GTの回については「間違い探し」を楽しむつもりで僕のコレクションには加えるが。

 

 

8.「Wheeler Dealers」(邦題『クラシックカー・ディーラーズ』)

<概要>

 前項の「Classic Car Resucue」と同じく「ディスカバリー・チャンネル」のコンテンツの一つ「Wheeler Dealers」のMGB/GT編。「Clasic Car Rescue」が放送スタート2012年と新しいのに対し、こちらは2003年放送開始と遥かに古い(両方とも2015年現在なおシリーズ継続中の模様)。

 その中でもこのMGB/GT編が作られたのは2004年のシーズン2と、相当初期。そのために現在は1時間番組なのが30分の前後編フォーマットになっている。

 

<登場MGB>

 「Classic Car Rescue」と同じくUB2(1980年式だそうだ)英国仕様のGT。素材購入時からメッキコンバージョンされている。購入価格は業者間取引で保障なしという条件で1000ポンド。因みにこちらも2台目で、最初に見たUB2は偶然にも「Classic Car Rescue」と同じインカ・イエローで、状態が悪いので購入が見送られた。

 

<Corkey’s EYE

 制作時期とは異なり、日本での放映順はこちらの方が「Classic Car Rescue」よりも後になる。しかし中身については遥かにマシ。というよりも「Wheeler Dealers」は基本的にレストア過程を見せるのが目的の番組で、この回のテーマはシートの張り替えとボディの補修/再塗装と言って良い。

 UB2の特徴ではあるが非常に評判の悪いストライプ入りのファブリック・シートは73年式相当のモノトーンの表皮に張り替えられる。痛んだホイールも再生品に交換、サビの目立ったサイド・シルにはクロームのシル・ガードが追加されている(これは雨水の抜けを悪くして、かえってシルの腐食を悪化させる恐れもあるが)。

 しかし最後の売却の場面でははっきりと「1980年式のメッキコンバージョン」と言っているし、話に矛盾はない。5枚目の写真に見られるフロント・ウィンカー取り付け部などを見ると、どうも左右フロント・フェンダーは丸ごとメッキバンパー用に交換されているのではないかと思うが。

 売却額は2850ポンド。まあMGB/GTとしては妥当な額か。因みにホイールやシートカバーなどはMGOCから入手したものと思われる。

 

 それにしてもこの「Wheeler Dealers」にしても「Classic Car Rescue」にしても、なぜフロント・ウィンカーの取り付けが左右逆(車体外側が白色の車幅灯であるのが正)なのだろう?

 

9.「The Classic Car Show」(邦題『名車の殿堂 ザ・クラシックカーSHOW』)

<概要>

 英国で制作されているヒストリックカーを題材としたバラエティ・ショウ。2015年から放映が始まったものらしいが、ケーブルTVのヒストリィ・チャンネルで日本放映が始まったのが2015年夏。ずいぶんとタイムラグが減ったものだ。

それはともかく、番組は有名な自動車バラエティ・ショウであった「TOP GEAR」のヒストリックカー版のようで、番組前半が英国の自動車ジャーナリストらしいクウェンティン・ウィルソン氏が1車種のヒストリックカーの紹介を行い、それにアイルトン・セナの甥であるF1レーサーのブルーノ・セナが番組独自に構成したミニサーキットでヒストリックカーを走らせてタイムを計るコーナーがあり、そしてクウェンティン氏のパートナーであるジョーディ・キッド(女性レーサー兼モデル、だそうだ)が行う企画モノ(例えばヒストリック・ミッレミリア参加とか、ラリー・ミニの同乗とか)という番組構成になっている。

 MGBは2015年3月12日に放映された第6回で、クウェンティン氏のコーナーで取り上げられた。

 

<登場MGB>

 Mk.1トゥアラーからMGB/GT V8、果てはLE50まで、出てこないのはRV8くらい。どれもかなり綺麗な個体ばかりである。

 

<Corkey’s EYE

 語られている内容は、ある意味でしごく当たり前で、「初めて聞く」というようなものはない(特にこのHPをご覧になっているような読者諸兄であれば尚更)。しかし驚くのは、現在の英国でのMGBの扱われ方だろう。

 いきなり「MGBのイメージは、『冴えない中年男性』」的な言われ方(4枚目の写真がそのシーン)から始まり、全編を通じて「MGBは不当に過小評価されている」というのがテーマのようになっている。まあ特に日本ではそれ自体納得できてしまう状況なのだが、英国でも同様だとは思わなかった。マツダMX5の思想的祖先として、もう少しはマシな評価を受けているものだと思っていたが。

 もっとも、これまた全編を通して感じられる「BLMCの愚かさ」への言及は全面的に同意するが。

 

10.MGB(UB2)日本仕様の広告

<概要>

 当時まだ「クリエイティヴ・ブティーク・ネコ」と称していた現ネコ・パブリッシングがシリーズで出版していたムック本「心に残る名車の本シリーズ4『英国伝統のスポーツカー』」の裏表紙に出稿されていた日本レイランドの広告です。

 

<登場MGB>

ウレタンバンパー後期型MGB日本仕様車

 

Corkey’s EYE

 当時の雰囲気や日本市場へのMGBの導入方法が分かる、今となってはこれ自体が歴史的資料。

 不思議なのは、僕はこれとほぼ同じ構図のショウルーム用ポスターを持っているのだが、そちらはボディカラーがカーマインレッドなのだ。

 レタッチで色を変えたのか、それともわざわざ2台で撮影したものなのか、今となっては定かではない。

 

 

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