How to give your Urethane-Bumper MGB Steel-Bumper

 

1.はじめに

自動車デザインの世界において、その形を生み出したデザイナーの意図を最も忠実に反映しているのは最初のモデルであると言って良い。

 現在の日本では通例2年に一度施されるマイナー・チェンジは、スタイリングや機能をアップデートするという実質的な役割があるのはもちろんだが、それ以上に新車登場時に比べると下降線を辿っている販売台数に対するカンフル剤として「変化のための変化」に陥ってしまっていることも決して少なくはない。

 これはMGBにおいても必ずしも例外ではない。Mk.1からMk.2への変化はトランスミッションのフルシンクロ化や発電機のマイナスアース・オルタネーター化など実質的な改良が殆どで、事実上スタイリングの変化というのはなかったと言って良い。

 しかしその後は逆にコストダウンと外観上の変化に留まってしまったというのがMGBの後半生だった。

 その中で1974年秋にMGBに与えられた黒いポリウレタン製の衝撃吸収バンパーは、機能的な変化であったと同時に外観を大きく変化させた。それはアメリカで施行された安全規制に対応してのことであり、ただのハシゴを括り付けるのではなくボディとの一体感あるデザインを施したと言う意味でデザイナーの大いなる努力の跡が伺えるものだった。

 しかし客観的に見れば、それはやはり古典的な60年代スタイリングのボディに70年代のテイストを組み合わせるという、ミスマッチ感を感じずにはいられないのもまた事実である。

 同時期のフィアット124スパイダーや初代セリカの末期モデルであれば、元のスタイルに戻すのもそう難しい事ではなかっただろう。しかしMGBにおいてはなまじデザイナーがボディとバンパーをデザイン的に一体感あるものにしようとしたために、ボディに少なくない変更が施された。

 そのためウレタンバンパー・モデルをオリジナルのメッキバンパーのスタイルに戻そうとすると、そこには少なからぬ努力と出費を余儀なくされるのである。

 

 近年日本国内で目にするMGBは、その黒いウレタンバンパーをメッキ輝くスチール・バンパーに交換したモデルがめっきりと増えた。

 これからMGBを購入しようとする人のなかにも、「買うならメッキグリル」と考えている方、またウレタンバンパーのまま乗り続けて来られて、「ぼちぼち見た目を変えてリフレッシュ」と考えている方も少なくないだろう。

 ここではそうしたメッキバンパー・スタイルへのコンバージョンに関する話題を(概略ではあるが)取り上げよう。

 

2. フロント・バンパー

最終号車L/O(切り抜き) そもそもMGBにウレタンバンパーが装着されたのは、最大の単一仕向地であるアメリカ合衆国において、年々深刻化の度を深めていた交通事故死傷者数を抑制するため、時速8km以下での衝突において、復元可能な対衝突装備を備えることを法規で要求されたためである。

 このエネルギィを受け止めようと思ったら、バンパーだけを強化しても話は収まらない。そのバンパーを支えているボディ側にも当然補強を要するのである。

 と言う訳で、フロント・ウレタンバンパーを外してみると、そこには元々のフロント・グリルの開口の中から、大きなメンバーが顔を出すのである。

因みに右の写真は、MGB最終生産ボディを前にした記念撮影写真の中のUB2ホワイト・ボディ(「MGB THE ILLUSTRATED HISTORY」より)。グリルの中にあるバンパー取り付け用メンバー/Frウィンカー取り付け座面形状(下記参照)にご注意いただきたい。

 メッキバンパーと対を成すメッキグリルを装着するためには、このメンバーを撤去する必要がある。当然これには少なからぬ手間(=費用)を要することになるのである。

 

 もう一つの問題は、ヘッドライトの下のウィンカー取り付け部分である。

MK1UKFrウィンカー この部分のボディは上から見ると大きくカーブを描いてボディサイドに流れており、結果として本来のメッキバンパー用フェンダーではここにウィンカー座面が張り出して取り付け用の平面を作り出しているのだが、ウレタンバンパー用では逆にウィンカー・ベゼルの形状に合わせた形で凹面が構成されている。

また正面から見た場合でも、前の写真と右の写真を比較すると良く分かるのだが、本来グリル下端/バンパー上端の線に対し、ウィンカー下端の線が一致する。しかしホワイト・ボディの写真を見て分かるとおり、ウレタンバンパー・モデルではグリル下端線よりも低い位置にウィンカー・アッセンブリィが装着されるための穴が空けられている。

こうして元々のメッキバンパー・モデルとのボディ・パネル形状の相違のため、元の穴を利用しつつウィンカー・ユニットが装着できない訳ではないものの本来のメッキバンパーとは異なる形となるし、またウィンカーの下からボディ・パネルの穴が覗く事となる。

 

 バンパー下のエプロン(またはバランス・パネル)は、ウレタンバンパー・モデルでは黒色で中央部に2分割のグリルが付けられている。このグリルはブラックメッシュグリル・モデルの74年式から採用されたもので、メッキバンパー・モデルでは当然ボディ・カラー同色である。

 

3.リア・バンパー

UB2REAR 問題はここである。

 リアのウレタンバンパーの形状は、両端が上に持ち上がった形でテールランプに繋がっている。対してメッキバンパーは水平である。

 この結果、ウレタンバンパーMGBにおいてはテールランプ下にあったボディ・パネル面が切除されているため、単純にウレタンバンパーをメッキバンパーに交換すると、テールランプ下にポッカリと穴があいてしまうのである。

 

 これを放置したのでは、あまりに見栄えが悪いと言わざるを得ない(実際に、とあるMG関係のショップでここが放置されたままの物件を眼にした事がある)。となるとこの部分のパネルを板金で追加しなければならない。これには当然塗装処理も必要であり、これまた少なからぬ出費を強要される項目である。

BMREAR また本来メッキバンパーMGBのリアフェンダー・パネルはテールランプ下で分割されており、その継ぎ目が縦に線状のレリーフとして残っている。

 ところが通常メッキコンバージョンでテールランプ下を足す場合、U字型のパネルをテールランプ下にはめ込んで溶接した後に、残った左右の継ぎ目を消すやり方が普通のため、このテールランプ下のレリーフがない状態になる。

 このため真にオリジナルのメッキバンパー・モデルと同じ外観にこだわるのなら、ここにレリーフを追加する必要がある。

 

 因みにMGBの後部ボディ・パネルは@ナンバープレート部を含む中央部/Aテールランプ下までの繋ぎ部分/Bテールランプ下からのフェンダーの左右合わせて5つのパネルから成っているが、メッキバンパーMGBでは@とAの間はハンダ盛りで接合線が消されている。対してウレタンバンパーMGBではコストダウンのためか、このレリーフがMK1UKテール縮小残されたままになっている。

 このパネル分割のレリーフは、トゥアラーにおいてはリア・コンパートメントとブーツ・リッド(トランク・リッド)との間を繋ぐ部分も同様となっている。

 通常メッキバンパー・コンバージョンを施したMGBの場合、テールランプ下とこのテールエンドのレリーフの有無でまず見分けが付くことが多い。次に見落とされがちなのが(意図的に残したケースも少なくないだろうが)、フロント・エプロンである。

 ここさえ処理してあれば、後はオリジナルとコンバージョンを見分けるのはオーヴァライダーの形式とフロント・グリルの整合、フロント・ウィンカーとフロント・グリルの位置関係程度である。

 

4. その他の改造項目

さてこれでとりあえずメッキバンパーは装着できた。後は「ここから先、どこまでやるのか?」である。

 最終的なゴールを「オリジナルのメッキバンパー・モデルと見紛うばかりの外観」とするならば、まず決心すべきは「どのモデルにするか」である。これは大雑把に言えば、BM→LG→Mk.2→Mk1の順に要する手間が増えると言って良い。

 例えば日本仕様のUB2をオリジナルのMk.1と同一の外観にしようと思ったら、前述のボディ後部のレリーフのみならず、グリルのないフロント・エプロンへの交換やワイパーの2本化、フロント・ウィンカー取り付け部の移動と座面の追加、さらに左右フロント・フェンダーのサイド・ウィンカーの交換、左右リア・フェンダーのリフレクターの撤去、果てはボディ・カラーなど、いざやるとなると結構な板金塗装作業が必要となる。ところがこれがBMだと事実上レリーフを処理すれば良いだけのようなものと、要する手間には大幅な違いがある。

もちろんせっかく「改造」という、あなたの好みを愛車に反映させる整形手術を施すのだから、MGB各モデルの中の自分で好ましいと思う要素を集積する、という手もありだろう。

 どちらにしても、オリジナルがどういう状態なのかを知らないことには始まらない訳で、そのためには本HPの他項をご参照いただいたり、BAY−VIEW BOOKSの「ORIGINAL MGB」という良質のテキストを充分ご活用いただくとか、また毎年秋に軽井沢で開催されるMGデイの参加車を参考にするなどされると良いと思う。

 

コンバージョン比較(縮小) メッキバンパー化の副産物として、前後合わせて100kgはあると言われるウレタンバンパーの軽量化によって、運動/動力性能の向上が見込めるが、反面車重の軽減によって車高が数センチ上昇するということも心に留めて置かれるほうが良いと思う。右写真で、左の青いメッキバンパー車はUB2のコンバージョン・モデルで、右のウレタンバンパー車はロアリング・キット組み込み済み(=オリジナルのメッキバンパー車の高さ)のUB2。サイド・モールの高さ/ホイール・ハウスの空き具合に注意。

これはただでさえ高いUB2のロール・センターをさらに上昇させるということであり、旋回時の初期ロール特性はさらに悪化する。

 これを改善する最も簡単な方法はロアリング・キットの装着だが、これについては別項の「UB2チューン・アップ方法」をご参照いただきたい。

 

5. 費用

 今まで述べてきた事からご判断いただいて、一口にメッキバンパー・コンバージョンと言ってもその費用には大きな開きがあることはご理解いただけたのではないかと思う。

 とりあえずバンパー/グリル交換に要するだけの部品代としては12〜20万円も見ておけば充分だと思うが、問題は今まで述べてきた作業に伴う工賃である。

 単なる取り付け作業程度であれば素人でも場所と道具と時間があれば何とかなるかも知れないが、板金塗装となるとそうもいかないだろう。ましてボディ・カラーまでもオリジナルのメッキバンパー・モデルに設定されていた色に合わせようと思ったら、総額100万を越えるようなことも充分ありえる話である。

 これからコンバージョンを施そうとお考えの方は、この点を充分に考慮に入れて計画されることを強くお勧めする。

 

6. 終わりに

 MGBの面白さの一つには、「改造する楽しみ」がある。

 それはチューニング・パーツなどを組み込んで行う性能アップもあるが、一方で様々なドレスアップ・パーツを用いたコスメティック・チューンの面白さもある。それはあたかもプラスティック・モデルやラジオ・コントロールカー(比較的若い方だと、ミニ4駆と言った方が分かり良いか?)でやった事を、原寸大のクルマでやるようなものだ。

 言わばウレタンバンパー・モデルを用いたメッキバンパー化と言うのは、そうした遊び方の一つとも言えるかも知れない。コンクール・ドゥ・エレガンス的に言えば、確かにそれはフェイクかも知れないが、しかし設計図通り組み立てるのだけがプラスティック・モデルの楽しみではない。

 所詮趣味とは自己満足から始まるものだとするならば、それはそれで尊重されるべきだと考える。ただし筆者的には「どうせフェイクなら、徹底的に」と思うものだから、Bee-3ではよほどの目利きの方でもコンバージョンだとは分からないように仕上げたつもりである(まあ内装を見られれば、一目で看破されるのだが)。

 ただしメッキバンパー化にはあなたが今想像している以上の手間と費用がかかるということ、また逆に手抜きをしたコンバージョンにもかかわらず、元のウレタンバンパー・モデルに法外な付加価値を載せているような物件に注意する必要があるという意味で、これからMGB入門編としてウレタンバンパー・モデルを物色しようとしている方も注意が必要である。

 

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