(3)いよいよクルマを見る

  まず決めるべきは、「何を求めるか」である。

  コンクール・ドゥ・エレガンスでの入賞を狙うのならメッキバンパー・モデルで、しかもオリジナリティの高い個体を探すのが早道である。

  各地で行われているヒストリックカー・イヴェントへの出場を意図しているのなら、通常参加資格の基準を1970年に置いているケースが多いため、自動的にLG以前のモデルということになる。さらに100q程度のツーリングがスケジュールに組み込まれていることが多いから、基本的なメカニズムには問題がないものを選ぶ必要がある。

チューニングを楽しむのなら、UB2は素材の出物が多く価格も手頃で、さらにわずかな改良でも性能の向上がはっきりと体感できるからチューニングのしがいがある。しかも通常チューニングによる動力性能の向上は車体に余分な負荷を加えることと表裏一体を成すものだが、日本に存在するUB2は排ガス対策で本国仕様よりも性能の劣る対米仕様を基にしているから、本国仕様の性能に戻す範囲では耐久性を劣化させる懸念とは原理的に無縁である。

 

さてこうして予算と自分が求めるMGBと求めるポイントが定まれば、次は出物を探して物件の見定めである。信頼のおけるショップに頼んだにしても、やはり自分の目で見て納得できることが一番だからだ。

 まずすべきことは、シャーシィ・ナンバーとエンジン・ナンバーの確認である。製造されてから日本に送られて登録されるまではタイム・ラグがあるのが普通であるから、単純にショップの言う「〜年式」というのは当てにはならない。例えばMGB最終号車がライン・オフしたのは1980年10月22日なのだから、日本で散見できる「81年式」などというのは製造年を表してはいない事が分かる。

メッキバンパー・モデルでもフロントグリルなどが交換されていることはよくある話で、これもシャーシィ・ナンバーの確認などで見分けることが可能であるし、エンジンとシャーシィの年式が符号しているかどうか確認することで、過去におけるエンジンの載せ代えなども発見可能である。

さてモデルの特定ができれば、それに従ってオリジナリティのチェックが可能になる。

「オリジナルにはこだわらない」という人でも、付けられている部品がオリジナルなのか後付けなのかを知っておくことは、後々の修理などの際には役に立つことである。

特にエンジン・ルームは重要である。UB2の場合オリジナルのゼニス・ストロンバーグ・キャブレターをSUやウェーバーに交換しているケースも少なくない。これは自分で交換する手間と費用は省ける反面、峠などで荒く乗られている可能性もあるし、またキャブレターのオーヴァ・サイズに起因するトラブル(プラグのカブりや、低い燃費など)の元になる可能性も否定できない。

オルタネーターもオリジナルのルーカス製か日本製かで信頼性に大きな差があるし、ラジエターの電動ファンも水温によって2基が確実に作動する事を確認する必要がある。無論ヒーターやワイパーなど、その他の機器の作動も確認する必要があることは言うまでもない。

 

エンジンのチェックと並んで重要かつ関心が高いのが、ボディの状態だろう。

ヘリテイジ・ボディの誕生によって「新品ボディのMGB」を作り上げることも可能になったとは言え、それを目的としているのでもなければボディは無事であることに越したことはない。

これには3つのチェック方法がある。最初が目視チェック。次がパテによる修理で隠されたサビを見つけ出す方法。そして実際の試乗による確認である。

MGBのボディでサビが出やすく、また影響も大きいのはサイド・シル部である。特にトゥアラーの場合MGBはモノコック構造を採用したオープンカーとしては初期のものに属するし、ボディ強度の上でサイド・シルに依存している割合は高い。

まあサイド・シルの表面に水脹れが幾つか見られる程度ではさほど心配する必要はないだろうが、それがあまりに大きく数多いようだと危険信号と考えた方がいいだろう。ましてサビて穴が開いているようなのは論外である。

サビというものは進行度合の軽いものならば表面的にペーパーで落としてその上をエポキシ・パテなどで整形し、塗装を施してしまえば事実上直すことが出来る。しかしそれがあまりにひどくなったり、またボディのへこみなどがある場合にはパテの量も多くなる。ところがそれを外観から判別することは極めて困難であるにもかかわらず、経年変化でボディが(実はパテが)割れたり、サビが浮き出てきたりというトラブルの種になりかねない。

そこで登場するのが磁石である。使い古しの若葉マークでも良いし、冷蔵庫の脇にメモを留めるクリップでも良い。

パテの層の厚みによって磁石の吸着力には差が出る道理だから、怪しげなところにそれを当ててみることでパテの厚みを推定することが可能になるという仕組みである。実際にこの原理でパテの厚みを計測する器具も市販されている。

ただし注意が必要なのは「Mk.1/2 までのMGBのボンネットはアルミ製である」という点である。当然磁力は効かないということは言うまでもない。ほとんどの部品が再生産されているMGBではあるがこの部品は欠品パーツで、しかも高価である。まれにLG以降のクルマでこのアルミ・ボンネットに換装されているケースもあるが、かなり幸運であると言える。

 

こうしたチェックが一通り終われば、次は下回りのチェックに移ろう。

過去の事故を暗示するような歪みなどをチェックすることはもちろん、MGBのウィーク・ポイントの一つであるフロント・ロアAアーム付根のラバー・ブッシュやステアリング・ラック・ブーツの状態の確認など、経時劣化を起こしやすいラバー部品を重点的に確認しておくと良いだろう。さらにクルマの下に潜ってフロア・パネルにサビがないかどうか確認できれば言うことはない。

MGBのフロント・サスペンションには左右4個所ずつのグリース・アップ・ポイントがあり、通常 5000kmごとのグリース注入が必要である。これを怠っていたり、現代のパワーステアリング付のクルマよろしく据え切りをしていたようなクルマだと、最悪キング・ピン部にガタツキが出ることがある。

これを調べるにはフロント・タイヤを両手でねじるようにして揺すってみるといい。これでタイヤがガタガタと動くようだと、遠くない将来にハブ全体の交換という事態が襲ってくることになりかねない。

 

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