「旅行用心集」61ヶ条
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:八隅芦菴編著(1810年、文化7年版)
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01 初めの一歩−〔足の点検〕=「旅の初日は、とくに静かに足を踏みしめよう。草履が 足になじんでいるかを確かめるようにするといい」<足を痛めたら、旅のあいだ苦しむことになる。足は大切>

02 出発前−〔荷は軽量〕=「旅行に持っていく物は、懐中物のほかは、なるべく少なく」<持ち物が多くかさばると失ったり、わずらわしい>

23 宿屋−〔宿に到着〕=「まず、この宿の東西南北の方角を聞いて確かめよう。家の造りや便所 、裏の出入り口などを覚えておこう」<家事・強盗・喧嘩などの時に備えて>

04 宿屋−〔明日の準備〕=「馬や駕籠や人足が必要なら、前の夜に宿の主人に頼んで おくといい。馬方、駕籠かきに直接交渉すると、途中で困った事になりかねないものです。朝、 何時、出発するか、夜のうちに宿に言っておいて、朝食の用意ができるまでに身支度をして 、それから朝食を食べる方がいい」<手回しよくするのがいい>

05 宿屋−〔明日に備え〕=「朝は気ぜわしいものです。物を忘れがちになるものですから、夜の うちに調べて、要るもの要らないものを考えて荷造りし、ちらからないように」<朝出か けるのが遅れると、1日の遅れのもととなってしまいます>

06 宿屋−〔宿の値段〕=「宿屋は、なるべく建物が立派でにぎやかな宿屋に泊まるのが いい」<少しばかり値段が高くても、それなりに良いことがあるものです>

07 道中−〔夏の食事〕=「暑いときは、人間の胃腸は具合が悪くなっている。食べ物が消化 しにくい。知らない魚や鳥や貝、筍(たけのこ)、きのこ、瓜、西瓜、餅、赤飯などは、 多く食べないほうがよい。夏は食あたりや日射病になったりして、苦しむもとになる 。春秋冬は、夏を参考にして考えておこう>

08 道中−〔食べ過ぎ〕=「腹がすいたといって、旅行中の食べすぎはいけない。特に急 いで食べるのは、よくない。ゆっくりと落ちついて食べなさい<ひどく腹がすくと、心臓 も疲れ、そこへ食べすぎるとたちまち気分が悪く急病となることもある>

09 道中−〔飲酒〕=「空腹のときは酒を呑んではいけません。食後に呑みなさい〕<暑い ときも寒いときも、酒は温めて呑むといい>

10 I道中−〔焼酎〕=「旅行中は焼酎をやたらに呑んではいけない。中毒を起こす場合が あります(注:昔は、醸造製法で今ほど発達してなかったのだろう)。上等なものは、少しは 呑んでもいい」<とはいっても、夏の長雨のころ、あるいはじめじめした土地などでは、 焼酎や泡盛などを少し呑むのは、湿っぽさ払うことになるのでよい。けれど秋や冬はあまり呑ん ではいけない>

11 宿屋−〔風呂〕=「空腹のまま風呂の入らないほうがいい。食後には、しばらくしてから入るように」<といっても、人が多勢で、空腹でも入らなければ後の人に差し支え てしまうような時には、まず足を念入りに湯で濡らし、それから風呂に入るように。長湯を してはいけない。空腹のときは、とりわけのぼせやすいものと覚えておくのがよい> 12 宿屋−〔風呂〕=「宿は忙しいとき、ほかの客がいる宿で風呂に入るとき、宿の人の案内に従って入 るのだけれど、客の順番を間違えたりしてもめごとがおこりやすい。そんなときは、客の様子をみてから身分の高い人がいれば、先に入れなさい。とかく、 風呂の順番で喧嘩になるものだ」<旅先では何事も控えめにしていれば、わが身のためにな ることが多い>

13 宿屋−〔風呂〕=「疲れたとき、熱い風呂にいつもより長目に入れば、疲れはとれる 」<ただし、入浴中に顔を何度も洗ってはいけない。のぼせに注意を>

14 道中−〔行程〕=「とりたてて急ぐ旅ではないなら、夜は決して歩いてはならない」 <どんな旅でも、九日で行く距離を十日で行くつもりでいれば、急いで夜に歩いたりする より、よほどいい面が多いもの。また、川越えなど、自分に都合よくいかないと ころがあるときは、それを考えに入れなさい>

15 旅先−〔色欲〕=「旅行中は色欲は、慎みなさい。娼婦は、性病を持っているものである 」<暑いときには特にうつりやすいのでこわい。また、布団から皮膚病などがうつること もあるから、香りのあるものを身につけ、その害を防ぐとよい>

16 道中−〔飲み水〕=「夏の旅行中はたびたびのどが渇き水を飲むけれど、きれいな水を 選んで飲むこと。古池や山の湧き水でも、よく澄んでいても流れていない水をやたらに飲んで はいけない。必ず害があるものである」<五苓散(ごれいさん)などの薬を身につけ、そ れとともに水を飲みなさい。また、山椒(さんしょう)、胡椒(こしょう)などは必ず持 っていること。こうした薬は、山の中の悪い空気や湿気を取り去ってくれます>

17 道中−〔休息〕=「夏の旅で、疲れ果てたあげく、道路や草むらで休息を取って眠っ たりする人がいるけれど、決してそれはしないことえです。夏の野原には毒虫がたくさんいます〕<た とえ毒虫でなくとも、その虫が毒のあるものに触れた後に人に刺すと、その毒は大変す さまじいものになる。さらに、古いお宮や寺の茂っている林や山中の洞窟などに注意せず入ったり、水辺や湿地が涼しいからといって長く休息したりしてはいけない。このよう なところには、湿気の害が多くあるもの。気をつけなさい>

18 道中−〔食後〕=「食後には絶対に急いで歩いてはいけない。馬や駕籠に乗るときも 速度を上げないように」<もし転んだり落馬したりすると、食べたてでは腹の中が落ち ついていないため、気を失ってしまうことがあします。用心しましょう>

19 道中−〔用足し〕=「用足しをがまんして、馬や駕籠の乗るのは決してしないように」 <もし落馬したりすると心臓に負担がかかり、死んでしまうことがある>

20 道中−〔手配〕=「行き先の宿などに人足や馬の用意をさせておくなら、その使いは出発の日より二、三日前に出しておくのがよい」<途中でいっしょになり、役にたたな くなってしまうこともあります>

21 到着−〔荷物〕=「武士の荷物はもちろん、商人の荷物でも宿場に着いたならば、ま ず役人に相応の挨拶をし、それから駄賃帳を出して人馬の数を申し出て、つぎに宿場の到着 する荷物の順番を確かめて物静かに話し合うのがよい」<また問屋場は混雑するところな ので、なくし物や他人に失礼があったりしないように気をつけるべきである> 22 道中−〔我慢〕=「武士はもちろんのこと。町人でも、主人の大切な用事で旅をする者は、途 方で馬方や人足などが思いどおりにならないことがあっても、我慢が大切です。しかし、それが勤めにかかわるようなことであるなら別だけれど、そうでなければ堪忍が第 一と心得ていなさい」<道中で手間取っては、主人の用で旅をする意味がなくなると思う べきである>

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23 道中−〔荷替〕=「旅の途中、馬の交替で荷物の荷替(にがえ)がある。これは、旅をする者にとって はいたずらに手間取るようで迷惑に感じるものだが、観念しなければならない」 <馬方が急いで荷物を付け替えるときなど、えてして小さい荷物などを取り落と してしまわないように、貫(かん)さし銭(ぜに)や小さい荷物の数を確かめながら、自 分でも積替(つみかえ)を手伝うがよい>

24 道中−〔荷物〕=「馬の左右に乗せる明荷(あけに=旅行用の竹つづらなどの箱)に衣類や紙包みなどを入れるときには、油紙で二 重に包んで中がぬれないように荷造りしなさい。川越えをするときに、明荷のふたのすき まから水がはいるものである。明荷ばかりでなく、両掛(りょうかけ=天秤棒のついた旅行用の行李)などにも、水が入 らないように用心しよう」<大体において川越えでは、物が濡れたり、なくなったり しやすいので気をつけなさい。明荷や両掛は、江戸では伝通院前の駿河屋の作ったものが 、安心して使える>

25 道中−〔川越え〕=「旅先で初めての川に出たら、決して歩いて渡ってはいけな い。また、大水のため橋が流失していると、歩いて渡ったり船で渡ったりしなければならない場 合もある」<そんなときは宿の役人に相談するのがよい。自分で渡し人足などと掛け 合ったりしてはいけない。すべて宿役人に相談したほうが、都合よくいくものなのだから。 26 道中−〔川越え〕=「女連れの旅では、川越えをするときは、事前に心積りをしておいたほ うがよい。女性は男性と違って神経が細く、川を見ると、その水の勢いに恐れをいだく。その上、川越え人足の荒っぽさに驚いて、ぽ−っとしてしまうことがときどきある。だ から、川越えが予定されているとき、前日からどんなに立て込んでいるかを十分に話し ておこう。同行の者と離れてしま決してあわてないよう注意しておくのがいい」<こ ういう場所には宿役人などもおり、少しも心配すろことはない。女性はおびえがちだから、川越えばかりでなく、水辺、船渡し、山道など、きびしい場所にのぞ むには、前もって言い聞かせておくのが肝心だ>

27 道中−〔懐中物〕=「川越えや船渡しの場所では、それぞれ懐の物に気をつ けて乗ろう。また、駕籠の中の物が落ちることもある」<水中に物を落 としたら、見つけるのはむずかしい>

28 道中−〔船に馬を乗せる〕=「渡し場で乗合の船に馬を乗せる場合がある。そんなと き、馬を先に乗せ、人は後から乗るように」<人が先に乗ってしまうと、馬は 船に乗るのをいやがり暴れるから、人がケガすることもある。また、老人や女性は 、馬の乗った船には決して乗らないほうがよい>

29 道中−〔船路〕=「近道だからと船を使うのは注意したほうがよい。大事な用 事で急がなければならないときは、なるべく陸路を通るほうがよい」<急がない旅ならば 船に乗って足を休めるのもよく、思いのほか追い風にあってうまくいくこともあるが、も しも何かの異変が起こったとき「後悔先に立たず」となることを知っておこう>

30 道中−〔出水〕=「大水の出た川は、小さな川でも、たかをくくって不用意に 渡ってはいけない。出水時は水の勢いもとりわけ強く、いろいろな物が流れて くるので、けがをすることもある。また、山に近い川は、いつもは、水が少なく小 さな川に見えていても、雪解けや夏、山奥で夕立があったときなど、急に増水 して、あったいう間に川幅もたいへん広くなるので、常時、橋はかけられないのだ」<そ れで冬の間だけ使うための仮橋をかけておくので、出水のたびに流されてしまう。東海道 の酒匂川、奥街道の白沢、大田原などの川がそれです。とくに山国にはこのような川が多 い。このような出水のときは、徒歩で渡ることはもちろん、水の中に見える仮橋も決して 渡ってはならない。杭が抜けて浮き上がっていた橋を渡って流された人もいる>

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31 宿屋−〔長雨〕=「長雨が降りつづいた後は、山が崩れ落ちるということはよくあ る。このようなとき、山ぎわの大きな岩の下の宿屋や、川岸の宿屋には泊まらな いこと」<前もって心にとめておき、旅程を考えるべきである>

32 道中−〔清算〕=「旅の途中で人足や馬の賃金、あるいは宿屋の払いなどは、連れが あるとき、その都度それぞれが出すようにしなさい。もし、小銭などがない場合はその 場だけ出しておいてもらっても、その日の泊まりのとき清算するものだ」<長い道中 では、お金の貸し借りなど、日記帳に記しておいてもわからなくなってしまう ものである。おろそかにしてはならない>

33 道中−〔信用〕「旅の途中で三日、もしくは五、六日ほど道連れになって信用がおけ るように見えた人でも、同宿したり、食べ物や薬など、たがいにやりとりしてはいけない 」

34 道中−〔依頼〕「馬がなく困っているときに、駄馬に荷を積んだ人と出会ったと しても、たとえそれが知人であっても、自分の手荷物などをその馬に乗せてくれと頼まな いほうがよい」<もし途中で急に荷物がいる用ができても、他人の馬に積んでいたのでは 間に合わなくなってしまう。だれでも旅の道中では、自分がしっかりとして、人を頼りに しないよう心がけるべきである>

35 道中−〔道連れ〕=「旅の連れはせいぜい五、六人程度までがよい。大勢で行くのは よくない」<人はそれぞれ考えが違う。大勢で長旅をすると、きっとうまくい かない者が出てくるから〉

36 道中−〔道連れ〕=「道連れにしないほうがよい人は、大酒飲み、酒は飲まなくとも 癖のある人、癇癪(かんしゃく)、喘息持ち、あるいはたいへんな持病を抱えている人」 <こういった人は、いつその病気が起こるかわからない。よく考えたほうがいい>

37 道中−〔財布〕=「旅にかかる費用を持って歩くには、腹巻の財布に入れておくのが よい。一日にいるお金は懐中に小出しにして使いなさい」<もちろん、小出しにするとき は、夜でも人目につかないようにするのが肝心だ>

38 宿屋−〔脇差〕=「宿屋に泊まるときには、刀、脇差は自分が寝る床の下に置きなさい 。槍や薙刀なども床の奥に置くのがよい」。

39 道中−〔煙草〕=「道中では火の用心には特に気を配り、村の中を通るときはもちろ んだけれども、野原でも煙草の吸殻をやたらに捨ててはいけない。休んでいるとき、また、乗合 舟の中などでは、着物や荷物に火がつくこともある。よく注意するように。

40 道中−〔引火〕=「春になると、ところどころで野焼きをしていることがある。野焼 きの火は、風の強いときには驚くほど広がっていくものだ」<こんなときに出くわしたなら、どの道を行ったらいいか考えなさい。本通りでも火にまか れることがある。野焼きの火もばかにしてはいけない>

41 道中−〔手出し〕=「道端の家や畑で作られている梨、柿、柚、蜜柑など果 実類は、どんなにみごとに実っていても、いたずらにも手を出してはいけない。また、村 の中で五穀はもちろん、庭に干してあるものは間違っても踏んではいけない」<知らぬ土 地で文句をつけられるようなことがあっては、こちらが正しくても勝ち目がないと思って いたほうが間違いない>

42 道中−〔もめごと〕=「山中や野道などで若い女性、草刈り女、女連れでお参りに出 かける一行などとすれ違ったときには、ひと通り挨拶をする方がいい。それ以上のいらぬ話 をしたり、または相手の田舎言葉をむやみに笑ったりしてはいけない」<もめごとは、さ さいなことから起こると覚えておくこと>

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43 宿屋−〔旅の秘訣〕=「間宿(あいのしゅく≠江戸期に公の宿駅間に設けられた旅人休憩の宿)や、本通りからそれた場所などで、よ くないところに泊まることになったときは、気分も落ち込むものだ。しかし、そういったとき、不平を言わないで、ふだんよりも静かに話し、自分の荷物や戸締りなどに用心 しておくのが、旅の秘訣である」

44 道中−〔言葉〕=「だれでも知らないところへ行けば、言葉や風俗はいろいろに変わ り、自分の住んでいるところの言葉と違うから聞き慣れず、また見慣れないうちは変だ と思うのだが、向こうもまたこっちのことを変だと思っているに違いない。それを知らず に、よその土地の風俗や言葉を笑ったりするのは間違いである」<他人の言葉を笑ったり さげすんだりすると、口論のもとになる>

45 道中−〔同調〕=「人が道で謡や小唄、浄瑠璃などを口ずさみながら歩いていくのに 、いっしょに口ずさんだりしてはいけない」<これも口論のもとになる>

46 道中−〔人だかり〕=「途中で立ち寄って見たりしないほうがよいものは、けんか、 口論、ばくち、碁、将棋、村の踊り、村の相撲、変死人、殺しの場面など。これは、人だかりが しているところは、物騒なことと、見当をつけて素通りしたほうがよい」

47 宿屋−〔逗留〕=「商売以外のことの用事や湯治に行った場合、お参り、あるいは 川留めなどにあって長く宿に逗留する場合は、空相場に手を出すことはもち ろん、賭碁や将棋は絶対にしてはならない。また、様子のわかっている商売でも、 手出しをしないことだ」<欲から問題が起こり、災難をまねいて思いのほか手間取るもの である。慎むべきだ>

48 湯治−〔場所〕=「湯治場は硫黄の気が多いので、大小の刀身だけでなく外側までも錆 びてしまうもの。気をつけないといけない」<もっとも、場所によってそうでは ないところもあるが、多くは錆びてしまうものだ」

49 道中−〔用事〕=「主人の用事や大事な用事ではじめて旅をする人、ほんの少しといっても寄り道をして名所旧跡などを尋ねてはいけない。また、知らない近道 や、船の近道行きなどは、決してしないこと」

50 宿屋−〔火事〕=「宿にいて、近くで火事が出たら、早く身支度を整え、身の回り の大切なものを持ち、それから風向きを考え荷物などを取り出すように。家来がある人 は提灯をつけ、持って逃げるものの指図をし、なくし物がないよう気を配りなさい」 <こんなときは、宿の者の案内を頼りにしないことである>

51 宿屋−〔相宿〕「旅先では他人と相宿になるのはよくある。自分で充分用心 していれば、何事もないものだる。第一に戸締りに気をつけ、早くから相客の様子を 察知しておいたほうがよい。もし酒乱や変な様子のある人だったら、すぐそれなり の心がけをしておくっこと」<相宿での事件にまきこまれる例は少なくない>

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52 宿屋−〔酒盛り〕=「相宿の中で酒盛りがはじまり、夜更けまでつづくようだ ったら、自分の仲間うちでその酒盛りが済むまで、かわるがわる一人ずつ寝ないでいるの がよい」<長い酒盛りは、よく問題を起こす>

53 道中−〔馬上〕=「馬は驚きやすい。もし驚いて跳ね出したときは、あわ てて飛び降りてはいけない。荷物にしがみつき、荷物がずり落ち地につきそう になった頃あいを見計らい降りること」<驚き飛び降りると、必ずケガをする ものだ>

54 道中−〔乗馬〕=「三月、四月、道中で田舎馬に乗るときは、乗り降りに特に気を つけなさい」<田舎馬は毎日でなく、たまに使うものだから、春の陽気 に誘われ駆け出したりする。気をつけて乗ること>

55 道中−〔馬上〕=「夏、馬に乗るときは、虻(あぶ)にさされて馬が跳ねたりするの で気をつけなさい。また乗っている人も、夏は眠くなったりして危ない」<だから、山坂 や川の端などを通るとき、老人、子どもは、夏は特に気をつけるように>

56 宿屋−〔売薬〕=「宿で相客などに、妙薬などで安く売ると勧める者がいても、堅く断っ て、買ってはならない」<もし、必要なら、薬屋で調合してもらいなさい>

57 飛脚−〔書状〕=「飛脚や荷物運びの監督人は、程度の軽重はあっても一般に大切な役目だと心得るべきだ」<書状は金銀より重いもので、万一落として なくしてしまったら、頼んだ人の大事な用事が果たせなくなるだけでなく、重要なこと を他人にもらすことにもなってしまうから気をつけないといけない>

58 道中−〔装身具〕=「道中で腰にさす大小の刀は、軽くて短いのがよい。長い刀、長脇 差、派手なさやのもの、変わった着物や持ち物は身につけないほうがよい」<目 立たない恰好であれば、災難にあうこともない>

59 出発前−〔一筆〕=「同行の家来や下男、雇い人などは、出発の前に家族を呼び 、もし当人が途中で病気で死んだりしたとき、しかるべき処置をしてよいという一筆 を書かせておいたほうがよい。万が一、途中で病死した場合には、宿や医者からも一筆書い てもらっておくべきだ。一人旅の場合、または諸国を巡る旅の場合は、寺証 文を持って歩きなさい」<このように万事に念を入れておく人には、災難は起きないものだ>

60 道中−〔日食〕=「道中で日食にあったら、休みをとって、日食が済んでから歩 きなさい」<月食の場合も同様である>

61 道中−〔御札〕=「旅の途中、神社や寺は当然のこと、橋や立ち木、大きな石などへの落書き 、御札を貼ったりするのは厳禁のこと」

 以上の六十一ヶ条

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