戻る



平成15年9月23日



自民党大阪府連幹事長  松 室  猛



大阪市長磯村氏、三選出馬を断念
磯村市長は8月18日に三選不出馬を表明した。72歳という高齢と健康が優れないことがその理由とされた。しかし、世評では閉塞感に満ちている大阪市政の改革を望む声が日増しに高まり、直前まで三選出馬の準備をしていた関係者を驚かせた。
二期八年間の評価にはかなりのばらつきがあった。オリンピック招致運動の惨敗に対する総括の不十分さや、凄まじい3セク破綻に対する対応について不作為を云々する声すらあがっていたのである。

大阪市長選挙は何代も前から助役が前任者である市長の路線を継承する禅譲方式が恒常化しており、理事者と職員組合、運動団体、特定の政党が水面下で根回しをして候補者を決めてしまう閉鎖性を問題視する声もあった。
その結果、馴れ合いと閉鎖性が顕著となり、財政状況は極めて悪く、思い切った改革の必要性があるにもかかわらず役所内部の庇い合いかあるようで、結果として市政は停滞し閉塞感に満ち破綻の危機に瀕しているのである。
特に問題視されていた体質的な問題点は市長室が議会運営にまで、かなりのかみこみをし、市長と議会との距離をコントロールしているとしか思えない状態は異常であると市会議員が言っているのである。市会議員がそのことを改革することもせず外部に漏らすことも異常であるが、この庇い合いの論理の下では危機的な閉塞感は到底払拭できるものではないだろう。
このことを市長はどの程度理解しておられたであろうか。知らなかった筈はなく、また知らないではすまされない問題点であると思う。

この閉塞状態を打ち破るためには磯村氏に引退を求めるしかなく、新しい風を吹き込まねば思い切った改革が進まないとの思いが大阪を愛し、憂うる人達の間で急速に拡がっていった。

磯村氏ご自身は経済学者としての誇りと自負がお在りのようだが、彼の行政手腕いついて評価する人は多くなかったようだ。
3セク破綻に関するマスコミのインタビューに対して「私の責任ではない、私の責任はいかに正常化するかだ」と言われたそうだが、この言葉が正確かどうか若干曖昧さがあるが大きくは間違っていないようだ。

しかし、これが事実だとすれば、これから新しく市長選挙に出馬される方の発言ならともかく、「2期8年間に何をしたか、その結果はどうなんだ」をマスコミも切り込むべきであったのではないだろうか。
発言の後段はその通りだろうが、万事がこの式だとは思いたくないが、大阪府が3セク破綻の処理をするに際して当時のノック知事でもこの前段の言葉は吐かれなかったし、何とか処理しようと懸命に努力をされた。
予算案が否決されそうになったときに専決すら辞さない決意で議会に臨み、もしそんなことをすれば議会は不信任案で対抗するぞ、との強硬意見に対し議会の解散ではなく自分が辞任するとまで言われたことがあった。
あの人は抜群の知名度があり、解散をせずに失職して再選挙しても勝てるとの自信があったのかどうかまでは判らないが、行政手腕いついては評価する人がなかったノック知事ですら、そこまでの対応を考えておられたことを大阪市の理事者はご存じだろうか。
その経緯のなかで3セク破綻のリーディングケースを作ろうと一緒になって汗をかいた者として大阪市の甘さが気になるのである。

どうなる、大阪市の3セク破綻処理
凄まじい金額となっている大阪市の3セク破綻の処理をめぐって市の3セク3社(WTC・ATC・MDC)は特定調停の申し立てをしていたが、その第一回調停が8月21日に開かれた。3社が調停委員会に提出した再建計画案は金融機関側に963億円の債権放棄などを求めるほか、大阪市にも695億円の金融支援を求めており調停委員会は内容の合理性と実現可能性を調べる鑑定をすることを決めたようだ。
調停は非公開だが、鑑定結果は10月30日の次回調停までに出る見込みだそうである。
3社の再建計画の期間はATCとMDCは来年から30年間、WTCは40年間となっている。金融機関の債権は債権放棄や債務を株式に転換するデット・エクイティ・スワップ(DES)で963億円を減らし大阪市はDSEとATCの駐車場の一部買取で591億円を減額、104億円を新たに出資してもらうことを想定しているようだ。
その結果、今後5〜10年で売上が3〜5パーセント落ち、経費は5年ごとに1パーセントずつ上昇するとしても05年から12年度には単年度黒字を達成できるとしている。
来春早々には決着をつけたい模様だが、金融機関側からは、「我われの主張に反する調停には応じられない」との声があがっているようである。

大阪府は3セクの破綻処理に際し法的透明性を高めるために裁判所に対し調停の申し入れをしたが、大阪市の3セク破綻処理に際して「特定調停」の申し入れをした。
「特定調停」とは、金銭債務の調整調停に特則を設けたもので、
(1) 業者に対して取引経過の開示を求めることができる、
(2) 民事執行手続を無担保で停止できる、
ことなどの特徴があり、2000年2月から施行されている新しい制度である。
しかし、特定調停とはいえ、あくまで調停であり債権者が同意することが前提であることに変わりはない。

どうなるのか、これからの大阪市長選挙
磯村市長は三選出馬を断念され、後任市長の人選が進められた。
せっかく空けた風穴だから、外部から新しい風を導入しようとの声が経済界を始め、各級議員から沸き起こった。
ところが肝心の市会議員団はごく身近なところからの人選に腐心していたようである。
我われは助役が駄目だと言ったことは一度もないが、従来と同じ選挙母体では傀儡政権になる危険性が高いので、望ましいのは新しい風を感じさせる人材を広い範囲から探すべきだと主張したのである。
傀儡とは何事だと市会議員の中からブーイングが起き複数の議員から抗議を受けたが、もし仮に、職員組合の丸抱えのような選挙体制で選挙をすれば人件費のカットや職員数のカットなど大胆な改革ができるのかを考えてみる必要がある。このことを考えれば傀儡の意味が理解されるだろう・・と抗議に来た議員に話をしたこともあった。

広く人材を求める作業をしたとしても候補者が見つからないこともあるだろうが、その努力をした上で候補者が見つからなければ仕方がないが、拙速を戒めるべきであると関係者を説得したこともあったが、既に過去のことになった。
市長候補を選ぶ場合は市会議員団が主体的に対応されるべきであることは当然であると、その時にも申し上げたが、助役が悪いのではない、従来と同じ手法での擁立は避けるべきであるとの趣旨は理解されたようだ。しかし、議員団には最初から外部からの候補には拒否感があったようである。
結果的には内部からの候補者で三党が合意され関助役の擁立が決まったが、願わくば選挙態勢については従来と違う取組みで、三党が合意しての擁立なら三党で選挙を仕切るべきだと考えている。

市長選挙に関する第一報
(15年9月23日)                

自民党府連幹事長 松室 猛


  戻る