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平成14年4月16日発信


銀行税判決と大阪府の対応について

 

                                                   大阪府議会議員 松 室  猛


東京都では知事提案で資金量5兆円以上の大手銀行に対して外形標準課税の1種である「銀行新
税」の導入を決定し施行しているが、これに対し銀行側が「不公平であり東京都の条例は無効で
ある」と訴えていた裁判の判決が3月27日に東京地裁で行われた。
判決の要旨は新聞等でも詳しく報道されたが、そのあらましを簡単に記せば、条例が無効かどう
かについては「訴訟適格性を欠く」として退けたが、判決内容は東京都側の全面敗訴であった。
その上、東京都に対して損害賠償まで命じ、主担者の東京都主税局長の重過失、石原知事の過失
責任まで論及している異例の判決であった。
裁判批判に関して、かつていろんな議論が行われたが大阪府議会の自民党議員団は、東京都と異
なり議員提案で条例制定をした経緯があるだけに判決に対して黙視することは出来ないものがある。
銀行団が告訴をし担当裁判官が決まった時点で、東京都の担当者は「この裁判の結果は厳しい」
と、その時点で覚悟を決めていたようであった。
その理由は藤川雅行裁判長の過去の裁判記録を見れば、何故か行政訴訟案件の担当が多く、その
総てが行政側の敗訴となっていたのもこの裁判の結果は厳しいと感じていた理由であったのだろう。
藤川裁判長が担当した最近の主なものに、新聞で大きく取り上げられた小田急電鉄沿線の高架化
事業の取り消しがあったし、国立市の地区計画区域内の建築制限条例の無効判決等々、最近の事
件のうち八件が総て敗訴しているのである。だから、この判決がおかしい等と言うつもりは毛頭
なく、判決全文を取り寄せて読んでみたが、我々の法律知識で読んでみても「そうだろうか?」
と思う点が多々あった。
東京都も第一審判決を不服として直ちに控訴手続きを執り、さらに争う姿勢を明確にしている。
自民党議員団では、幹事会と銀行新税に関するプロジェクトチームのメンバーの緊急会議を召集
し、東京の判決に対して我々の見解をまとめることにした。
その見解をどこに向けて発するのかも議論となったが、我々としては、なんら慌てることはない
との思いであるが、府議会の各党が大阪府知事に対して要望書を提出していたので、現時点で知
事にも我々の見解を理解して貰うべきだとの思いで、下記の「東京都銀行新税に係る判決に対す
るわが党の見解」をまとめマスコミにも発表したのである。
この件に関して、我々が感じる判決の理解しがたい部分等を詳細に記述しようと考えたが、下記
の「見解」にすべて盛られているので、是非各党の見解とあわせて読んでいただきたい。

                                               
                         



  銀行税に判決に対する自由民主党の見解

                                  平成14年4月2日

            東京都銀行税に係る判決に対するわが党の見解

 先般3月26日、東京都外形標準課税条例に関する訴訟に対し東京地方裁判所の判決があった。
 これを受けて、4月1日、民主党・府民ネットワーク大阪府議会議員団及び公明党大阪府議会
議員団から、「東京都の銀行条例が無効であり、実質的に銀行側の完全勝訴の内容となっている。
既に効力の生じている銀行税条例を府がそのまま執行するのではなく、知事におかれては、早
急に善処されるよう、強く要請する」という趣旨の要請書が提出された。
しかし、判決では一般的に条例が無効であることを求めたものであれば本件は訴訟適格性を欠く
と退け、条例そのものを無効と判断したのではなく、銀行に対して本来は外形標準を課税標準と
して事業税を課することができないのに課税することを定めた部分は違法であり無効としている
に過ぎない。本件訴訟の判決は、あくまで東京都の条例に対するものであり、本府は被告ではな
く、この判決に拘束されるものではないが、同趣旨の条例を施行している立場で判決を眺めてみ
ると、我々の主張と乖離する部分があり黙視することはできない。
本件の最大の争点は、地方税法第72条の19であるが、判決では電気供給業、ガス供給業、生
・損保の4業種に限って、その事業の特殊性から応能原則、担税能力を中心に外形標準課税を
容認していると断定しているが、そもそも法人事業税を含む地方税はその企業が存在する自治体
から受ける受益に対する応益的な側面は否定できず、条文でも4事業以外の法人または個人の
行う事業に対する課税標準については事業の情況に応じ、所得および清算所得とこれらを
課税標準とあわせ用いることができると規定されており、我々は銀行の現状を「事業の情況」と
判断したものでありこの部分の判決は容認することはできない。また、本判決は東京地方裁判所
における第1審判決であり、東京都は判決を不服として直ちに控訴しており、訴訟継続中であり、
上級審である高裁の判決では1審と異なる判決がなされるものと確信するものである。
 そもそも、我々が「銀行税」を提案したのは、国と地方の不公平な税配分、特に国の都市部に
対する公共投資や補助等の冷遇に対して抗議し、課税の自主権を確立しようとしたものである。
また、公平性の観点から論ずれば、地方自治体から数多くの行政的便益を受けているにもかかわ
らず、大部分の銀行は、不良債権処理のため多額の粗利益を計上しておりながら経理上所得が発
生していないことから、地方自治体に対して法人府民税で80万円の均等割分しか納税せず、
一方において株主に対しては配当金を支払うという理解しがたい不公正な取扱に対して指摘した
ものである。
 我々は「金融秩序の再建」という国の政策に異を唱えるものではないが、受益に対する課税は
当然の義務であり、これを課さないのは不公平といわざるを得ない。
このような条例の提案趣旨に基づき諸問題についてあらゆる観点から議論を行い、府議会におけ
る十分な審議を経た上で可決成立したものであり、本条例案を提案したわが党としては、現在も、
条例の正当性を疑うものではない。
よってこの時点で本府は特別な対応をすべきではないことを付言しておくものであり、知事にお
いては、このような条例制定の当初の趣旨を十分に踏まえ対応されるよう、わが党の見解を申し 
述べるものである。      
                                      以  上


 民主・公明党の見解


                                  平成14年4月1日
大阪府知事 太田 房江 様

               民主党・府民ネットワーク大阪府議会議員団 幹事長  土師 幸平        
                     公明党大阪府議会議員団 幹事長  谷口 富男
               民主党・府民ネットワーク大阪府議会議員団 政調会長 半田  實
                     公明党大阪府議会議員団 政調会長 鈴木 和夫

                 
                    要  請  書
 
 さる3月26日に東京都の銀行税条例に関して言い渡された東京地裁の判決は、東京都の銀行
条例を無効としただけでなく、東京都に対し、条例に基づき銀行が納付した724億円の返還や18億
3000万円の損害賠償の支払いを命じるなど、実質的に銀行側の完全勝訴の内容となっている。
銀行税条例については、制定当時から、法的に疑義があるという見解が政府から示されていた上
に、税法の学者をはじめとする多くの法律家も、地方税法に違反すると指摘していた。
 大阪府においても、東京都と同じ内容の銀行税条例が、平成12年3月議会に議員提案され、様
々な議論を経て、平成12年5月議会で可決成立した。この条例に基づく銀行税の最初の納税期限
がほとんどの対象行については、この6月末に到来するため、今回の判決は大阪府の財政運営に
とって、大きな影響を及ぼすこととなった。
 今回示された判決の効力は大阪府の銀行税条例に及ばないが、内容が東京都の条例と同じであ
る以上、銀行側が大阪府に対しても条例の無効等を求めて出訴した場合、大阪府の訴訟にも大き
な影響を及ぼすのは明らかである。
 東京都は判決を不満として控訴する予定であるとされているが、控訴しても逆転できる可能性
は低いと考えられることから、銀行側からの訴訟提起が予想される大阪府においては、まず早急
に判決内容を法的に十分検討することが重要である。
 仮に大阪府が最終的に敗訴した場合には、銀行からの納税額と合わせて4.1%の還付加算金を
返還しなければならないだけでなく、場合によっては、相当額の損害賠償金をも支払わなければ
ならない。このような事態に立ち至れば、3年連続で赤字決算となり、全国最悪の財政危機状況
にある大阪府にとって、財政運営に重大な支障が生じ、直ちに準用再建団体への転落が現実の問
題となるのは避けられない。
 こうしたことから、既に効力の生じている銀行税条例を府がそのまま執行するのではなく、知
事におかれては、早急に善処されるよう、強く要請する。 
      
                                       以  上


共産党府議団の見解

             

大阪府知事 太田房江様                        2002年4月4日
                               


                               日本共産党大阪府議会議員団
                              
                                    団長 塩谷としお


              大阪府の銀行税問題への対応について(要請)


 報道によれば、東京都の銀行税条例が東京地裁で敗訴したことを受けて、知事は大阪府に対して
も同様の提訴がおこなわれた場合の府の敗訴をも想定し、凍結や執行延期など府の銀行税条例の見
直しを検討する、とされている。
 周知のように、府の銀行税条例は一昨年3月議会で議員提案され、わが党も賛成して同年5月議
会で成立した。
 わが党がこの条例案に賛成した理由は、先ず第一に、深刻な府財政危機の下、府が地方自治体と
しての課税自主権を行使して、必要な自主財源を確保することは、住民福祉の向上を図るべき地方
自治体としての当然の行為であること、第二に、大手銀行は莫大な業務純益をあげて十分な担税力
を持っていながら、不良債権処理を名目にわずかな法人事業税しか納税していないという実際から、
応分の税負担を求めるのは当然であること、によるものであった。
 わが党は、こうした主張は大方の府民的合意を得ていたと、現時点においても強く確信するもの
である。
 実際、99年3月期で2兆8000億円を超える業務純益を挙げ、本来374億円の納税義務と能力を持ち
ながら、大手30行は府には16億円しか法人事業税を納税していなかったのである。しかも、70兆円
に及ぶ公的資金の投入も受けていた。
 東京都は、早速控訴してあくまで課税の正当性を争っている。わが党は、その控訴には道理があ
ると考えている。府において銀行税条例が成立した時、知事は再議権を行使しなかったが、その事
実は、府が行政府の意思として条例の適正な執行を自らに課したことを意味する。
 わが党は、府がこうした経緯をあらためて検証し、条例を厳正に執行するよう、重ねて強く求め
るものである。
                                            以上


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