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平成13年2月25日発信



大阪府議会が2月27日から開会されるが、開会に先立って22日に新年度予算案が示された。 一般会計予算の総額が初めて3兆円を越え特別会計との合算で総額3兆8千150億円の予算規模となり、 前年対比は一般会計で5.8%、特別会計で1.5%の増となっている。

新年度予算のバランスは

問題は予算編成に際しての歳入と歳出のバランスであるが、この予算を編成するに際して4,970億 円の歳入不足が明らかになったことである。 府税収入は法人2税が若干伸びており最悪期は脱したとはいえ、それでも税収見込みは1兆2千4百億 円程度で、人件費を2千5百億円上回るに過ぎず、扶助費、公債費を合算すると1千5百億円足らない 状態である。その結果4,970億円の歳入不足となり借金返済のために積み立てている減債基金の取 り崩しや、国が新設した臨時財政対策債(赤字地方債)を組み込むなどのやり繰りをして、やっと帳尻 は合わせたものの累積赤字は443億円となっている。

歳出面でどんな取り組みをしたのか

歳出面についての工夫は、職員を640名削減するなどして人件費を166億円カットしたり、事業評価 制度の導入により従来の事業の128件を休・廃止し、196件を見直し195億円削減することとし ている。また、府債の発行残高は4兆2千億円を超え公債費が単年度で3,415億円となっているこ とは今後の府財政運営の難しさを通り越し、危機的な状態と言わねばならない。 ごく簡単に府の予算について眺めてみても大変な事態であることが判るが、5,000億円オーダーの歳 入不足は、大阪府だけの取り組みではどうしようもないのは紛れもない事実である。

なぜ、こんな状態になったのか

なぜ、こうなったのかを問い続けてきたが、極端な経済不況の影響による法人2税の落ち込みが最大の 原因であるが、それでも旺盛な経済活動を続け、担税力のある大阪が納める税金の3分の2を国が引き上 げ、その税金の3分の2を全国の地方自治体が使う現行制度に問題があることは誰しもが認める制度上 のひずみであり欠陥である。このシステムを改革しない限り大阪府の財政的な蘇生はあり得ないだろう。 即ち税財源の地方への委譲が不可欠なのである。 若干の説明を加えれば、国への納税額の3分の2を大阪府に還付されるのなら話しは別だが、国からの 交付金を平成9年度実績でみれば、国税還元率は31.8%でしかなく、こんな状態では大都市圏は地 域の行政需要に対応できず、苦しい財政運営を強いられることになるのである。 税財政制度の制度疲労といわれる所以がここにある。  

自治体の破綻とはどんな状態なのか

それぞれの施策に対する分析をすれば膨大なものになるので、概括的な一般論にとどめるが、大阪府が このまま推移すれば(飛躍的な景気回復もなく、国の税財源委譲が進まない場合)間違いなく財政的に 破綻をすることになるだろう。 自治体の破綻とは、標準財政規模の5%以上の赤字を出せば「地方財政再建促進特別措置法」を準用す ることから「準用再建団体」と呼ばれ、民間で言えば破産と同じような状態になる。 このように一定基準の赤字を出せば自治体が自ら申請して総務省が指定する財政再建団体となるが、大 阪府の場合約650億円の赤字が分岐点である。 今年度が443億円の赤字だから2007〜8年には再建団体に転落するだろうといわれている。 再建団体になれば、地方債の発行が出来なくなるし、その自治体独自の施策が行えなくなるのである。 大阪府は独自に大都市圏特有の行政需要として他の府県より圧倒的に多かった高校進学者を吸収するた めに私立学校に協力を要請してきた経緯があり、その見返りに独自の私学助成をしてきたが、この施策 や国制度を上回る老人医療費助成を行っているが、これらは標準的な行政を上回るものだから標準的な 水準に後退せざるを得なくなる。このことからも判るように総務省の監督下に置かれ自治体としての機 能が著しく制約を受けることになるのである。 府民の負託を受けた議会としてこれを座視するわけにはいかず、何とか非常事態を乗り切るために、今 何をなすべきかを懸命に模索をしているのである。


現状からの脱出は可能か?

今回の予算編成の前段で法人府民税の増税が提案されているが、細かい点はともかくとして、何らかの 手立ては講じなければならないだろう。苦しい時代であるだけに増税は避けたいが、再建団体になるこ ととの比較において、何としても府民に理解して貰う方法を懸命に探るべきである。 問題は今回の増税案の中身であるが、1月に発信した「年頭所感」で詳しく述べたが、課税対象を総て の法人とはせず、全体の70パーセントを超える資本金1000万円未満の法人を除外したことが府民 に理解されるだろうか。今回の知事提案は「取りやすいところからだけ取る」とのそしりを受けないだ ろうか。 その税の多寡が問題なのではなく、知事をはじめ、府の理事者の姿勢には差し迫った危機意識が感じられ ないことや、依然として甘やかしと格好づけの構図が感じられ、安きに流れる傾向があるこ とが心配なのである。 これから本格的な議論が始まるが、61億円の増税案そのものが問題なのではなく、今後の取り組 みの基本的なスタンスが理解できない限り、議員も理事者も賛成、反対の安易な対応はすべきでな いと考えている。                                   

     大阪府議会議員 松 室  猛

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