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市町村合併の前段に広域連携の推進を!

大阪府議会議員 松室 猛



平成12年4月に地方分権一括法が施行された。国と地方とが、対等、協力を基本とする 新たな関係を構築し、地方自治体は「自己決定」と「自己責任原則」に則り、施策展開が 求められるようになった。これを受けて余りにも細分化されている現在の市町村を広域化 することで、行政効率を高めていくべきだとの要請が同時に高まり、大阪府でも「市町村 合併推進要綱」が昨年12月に示された。 そこで広域化に向かってどんな問題かあるのかを探るために、まず地方自治体なるものの 現況と実態のごく一部について考えてみたい。


すべての地方自治体が未曾有の財政危機を迎えているが、その原因と責任について考えて みると、先ず地方自治体の基本的なシステムの問題が挙げられる。予算編成と提案は議会 の議決を必須要件とする首長の専権事項である。しかし、首長に予算編成権はあるものの、 財源については、がんじがらめの国の規制と交付税交付金や補助金の制度があるために、 国の支配下におかれているのが実態である。京大の吉田和男教授がいわれる限界財政責任論の所以がここにあり、こんな中途半端な状況の中で、各市町村は独自に施策を展開しなければならないのである。 加えてその施策の独自性が問題である。住民も、議会も、そして首長までもが、隣の自治体にある施設などが我が自治体に無いことを許さないから、何処に行っても同じような施設が出現し、それぞれが管理運営に窮している実態がある。これなどは、ここの施策についての広域的連携によって解消されるはずであるが、これを阻んでいるのは、個々の自治体の面子以外に大きな理由は存在しないのではないか。



自分の街を愛する気持ちはわかるが、面子のみにこだわるこんなちっぽけな感覚はセクショ ナリズムそのものであり、行政投資の効率化の論理の前では何の意味ももたない。 広域連携、市町村合併論の台頭は、実は財政危機からの脱却が主たるものであり、行政の 効率化に尽きる命題なのである。

また一方、税制そのものの持つ矛盾として、国が2/3を吸い上げ、地方が2/3を使う現在の方 式は中央がコントロールするのには都合が良いだろうが、現状に沿わない問題点を露点する に至った。 国・府県・市町村のたて系列もだんだん色あせてきているし、府県と政令指定都市の関係など は、府県そのものが中二階的であり、二つの政令指定都市を包含する場合は一層その傾向 が強くなっている。府県の問題は別としても、異様に多い自治体が地域の行政需要を一都市 単独ですべてを完結させる必然性など、どこにも存在しない。

具体的な問題としては、ゴミ処理は市町村固有の事務とされているが、ダイオキシン対策など も含め、高度な処理には膨大な金がかかるが、財政力の乏しい自治体では不可能な場合も 数々ある。上下水道なども同じであるが、原水供給に限り府県が行ったり、流域下水道方式 の広域的取組は既に始まってはいる。ところが医療行政、消防防災などや文化行政などに ついては、やっぱり自治体が独自に進めている事が多いが、これに無駄がないかを検証して みる必要があるだろう。

本誌1月号の池田市長のインタビューの中にも示されているが、「合併推進論者ではあるが、 自分から声高に主張するのは、今はいかがなものかという思いはあります・・・・」その詳細な 根拠は1月号を参照されたいが、首長も議員も一向に積極的な姿勢が見えないのは、ハッキ リといってセクショナリズムと議員や市長の数が減ることに対する抵抗である。その中で池田 市長は「今大切なのは広域連携だと考えている」のくだりであるが、この主張は正しいし具体 性のある論点として評価されるであろう。問題はどの分野をどうするかである。

紙面に限りがあるのでテーマを列挙するに止めるが、ゴミ処理の問題、上下水道、医療行政、 介護保険を中心とした福祉行政、文化行政に加えて、若千次元は異なるが遊休施設の統廃 合なども広域的に対応することでかなり行政効果が高まるはずである。 広域連携の古くからある手法として、一部事務組合方式があり、かっては大阪の南部地域は 財政力が弱かったことから、消防、ゴミ、し尿処理など多岐にわたる行政を一部事務組合で 処理している。南部地域と較べて北摂の多くの市町村は、それぞれ各市独特の行政対応となっ ているが「わが街」の豊かさを誇っている時代は既に昔話になった。 医療行政については、病診連携をはじめ診療科目の広域的かつ高度的対応として公立病院の 広域連携のあり方、ゴミ処理の広域化による高度処理化、消防防災行政の広域対応などなど、 大阪府が示した合併のシュミレーションとは違った観点から、豊中・池田・箕面と豊能が連携 する方策を具体的に模索するのが今世紀初頭の課題ではないだろうか。


病診連携・・・・病院と開業医との役割分担および連携のこと

本稿は行政情報誌「あきかな通信」に掲載したものです。 ご意見やご感想をぜひお寄せください