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参議院選挙を顧みて
=自民党大敗の原因は何か=
平成10年7月12日に施行された参議院選挙の結果は当初の予想を大幅に狂わせ、自民党の大敗北で幕を閉じました。マスコミの戦前の当落予想や投票率の予想までが大幅に間違っていた結果となりましたが、これはマスコミの見込み違いと言うよりも最近の選挙に関して予想することがきわめて困難であることを示しています。
特に大阪の場合は知名度のあるタレント候補が大幅得票するのは、選挙民の民度の問題ではなく、既成の政治家に対する信頼感の欠如が招いた結果であると改めて反省すべきだと思います。

選挙の結果には常に
明確な理由がある

選挙結果には常に明確な理由があります。今回の自民党に敗北の理由は経済政策のあいまいさと、総理の指導力の欠如にあるあと言わざるをえません。

選挙に際して野党各党は消費税率の値下げをはじめ、大幅減税を大胆に打ち出していましたが、減税のための財源についての説明は決して充分ではなく、将来に赤字を先送りするものでしかありませんでした。言い換えれば、選挙のための対応であったと言えなくもありませんが、長引く景気の低迷で国民の嫌悪感は拭いがたいところまできており、中小企業者は死活問題と感じているときに効果的な景気対策を期待する声は当然の欲求であります。

橋本総理は国民の要望に対して、まず何よりも財政健全化が急務であると主張し、「火だるまになる覚悟でやり遂げる」と言い切り財革法を制定しましたが、朝令暮改そのままに今年の5月に柔軟条項を設けて金融不安の解消に取り組みブリッジバンク構想は打ち出したものの、一般国民の期待には応えることができませんでした。

景気回復策は
 すべての国民の願いであった

 どんな種類の減税であれ、こんな時代に可処分所得が増えたところで、消費にまわるよりも預貯金に消えることはわかっていますが、国民の間に蔓延している心理的不況を克服するためには、やはり減税は断行すべきであると地方議員の我々ですら主張しました。しかし、自民党執行部のもたつきぶりにはあきれかえる思いでした。選挙中の総理のテレビ発言は完全に国民に不信感を植え付けました。政権政党なるが故に財源の裏打ちまでしっかりとしなければならない苦衷はわかりますが、「恒久的な税制改正の必要性があるとは言ったが、恒久減税とは一切言ってない」とか、その2日後に恒久減税をやると言ったところで誰が信頼できる政党と感じるものか・・・・・これで選挙が戦えたら誰も苦労はしない、と現場にいる我々も失望を感じずにはおれませんでした。 

 選挙の前には多くの府県で自民党は複数候補を擁立して、それぞれが当選圏内なのに大阪は当選すら危ぶまれるのは何故なのかと言われ続けてきましたが、大阪どころか首都の東京が空白区となったのは政権政党としては壊滅的な打撃であると言わざるを得ません。

 これからの国会運営は大変だろうと思われます。衆議院では過半数を得ていますが参議院の議席がこれでは、かなりの部分で国家の意思決定が遅延し景気回復のための施策展開が円滑に行くとは思えないからであります。

批判は容易であるが
批判に終始してはならない

 国会運営の難しさとは別の次元で我々地方議員も今後の対応を真剣に考える必要があります。批判は容易であっても批判のみに終始してはなりません。今後の対応こそ大切であります。まず政治不信を払拭するためにも自民党の抜本改革を断行すべきです。

 自民党が議員中心の政党であり続ける限り未来の展望はないでしょう。特定の信条に基づく政党は強固な組織力がありますが、漠然とした綱領に基づく自民党の支持層は心情的な保守派でしかなく組織政党とは言えないのが泣き所ですが、それだけに選挙民との接点を多く持ち柔軟な対応が可能です。この特質を更に掘り下げ、民意を正しく反映する政党に脱皮すべきです。時には甘えた民意もありましょうが、その時は率直にあるべき姿を訴える勇気も身につけるべきであります。総理のもたつきを痛烈に批判をしましたが、今回の選挙を通じて学んだことは「政治家は国民が何を求めているのかを肌身で感じるべきであり、痛みを分かち合うことも含め決断する勇気を持つべきである」という当たり前のことであります。

 私は常々、地方議員にはさほど政党政派の論理は必要ではないと言い続けてきましたが、紛れもなく自民党の党籍を持つものとして、決してこの事態から逃れることなく選挙結果を厳粛に受け止め謙虚に研鑽を続け、府民の負託に応えねばならないと考えております。

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