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泉佐野コスモ破綻処理に関する臨時議会が4月30日に召集されました。
この問題は新空港の開港に合わせて泉佐野地区に先端産業団地を造成するために、第3セクター方式(官と民)で会社をつくり、事業を進めようとするものでしたが、買収が完了した時点でバブルが崩壊し、造成に入っても進出する企業が見込めなかったために、事業を凍結し、今日に至ったのです。
用地買収額の合計金額は元本ベースで620億円でしたが、その総てが借金ですから、放置すれば金利がかかりますので、放っておくわけにもいかず精算することにしたのです。

第3セクターの破綻に対して自治体はどう責任をとるべきか?

泉佐野コスモは資本金10億円の会社ですが、大阪府は出資比率16%の筆頭株主です。その他、泉佐野市、ゼネコン各社、銀行団6行が主な株主で、それぞれの出資者から役員を派遣しておりました。府は産業振興と地域活性化のために事業目的を提唱し、会社設立を誘導、事業の進捗にもかなりの関わりを持ち今日に至った経過があることから、破綻に関しても大阪府に責任ある対応が求められたのです。
用地の広さは85ヘクタールに及び、地目は近郊緑地が約80%、農地が40%弱含まれています。事業が円滑に進捗しておれば開発申請をして造成が可能ですが、会社を精算して処分をするとなれば、一団の土地としてしか使いものにならず、その規模と地目からして公共が買収する以外に会社資産の処分の方法がないのです。

バブル後遺症の大きさはどのくらいだったのか?

用地買収の際は、バブルの最盛期で、土地の値段がどんどん上がり、一時でも早く土地を取得しなければ損をするという感じで、公共施行では考えられない、ずさんな買収が行われ、その結果、実際の面積と支払い面積とに5ヘクタールにも及ぶ面積差異が生じたのです。この責任をどう処理するのかも大きな論点となりました。常識的には社長と取締役会の責任ですが、調停ではこの点の処理は論じられず、会社の精算の際に特別精算人にゆだねることにしたのです。
一方、処理方策の柱である府が用地を買うためには、鑑定評価に基づいて適正な価格でしか買えませんから、鑑定を依頼したところ、鑑定額は142億円でした。バブル時の買収金額は620億円ですから、土地の価額は、何と4分の1以下に下落していることになるのです。

第1次調停案にはどんな問題があったのか?

会社を精算するために資産を売却して借金を返すのですが、単純に言えば借金の25%しか返せず、75%が回収不能債権となりますから、銀行団が簡単には承知をしてくれません。そこで、任意整理をあきらめ、裁判手続きに準ずる調停を申し立て、公正な第3者の判断にゆだねることにしたのです。
調停の結果は、

  • 府が130億円と、もともとその地区に公園計画を持っていた泉佐野市が12億で用地を買い取り債務の返済に当てる
  • インターチェンジの築造費の半分の金額9億円のうち、泉佐野市が3億円、府が6億円を解決金として支払う
  • 大阪府からコスモに貸し付けている70億円の債権放棄

も織り込まれていました。

議会が調停案の受諾を拒否し再調停を申し入れ

府議会は用地を買うだけならまだしも、貸し付け金の全額放棄と解決金6億円の支払いには同意できないと主張し、再調停の申し入れをしたのです。当初、府の理事者は法的にも整理され、関係権利者の同意が得られた調停案だから最終決定と受け止めるべきであり、再調停は不可能ではないかと主張していました。しかし議会側は、調停の場において大阪府の主張がほとんど認められていないことに不満を表明し、調停とは一種の和解契約であり、あくまでも話し合いの場だから、結果はともかく再度話をすべきであると強く主張し、再調停の申し入れをしたのです。
その結果、再調停が行われ、議会の意向と府の財政の窮迫に配慮がなされ、6億円の解決金を削除した修正案が提示されたのです。
70億円の債権放棄についてはそのままでした。その理由は、銀行団は会社の全ての資産に抵当権設定をしており、所有権移転が終わっていない農地については抵当権設定予約の念書を会社と交わしていますが、大阪府は貸付金に対して抵当権設定をしておらず、債権の劣後性を指摘され、債権放棄となったのです。
4月30日の臨時府議会はこの調停案を承認することの是非を巡り紛糾しました。自民党議員団の内部にも府の財政が厳しいなかで何故必要でない用地を買わねばならないのかと強固な反対意見がありましたが、府の主導責任と地元の混乱の回避と用地の特殊性から土地の買い取りはやむを得ないと結論づけて賛成多数で可決したのです。
泉佐野コスモは一応落着しましたが三セクの難しさ、責任の不明確さ等々が浮き彫りにされ、厳しい経済情勢と相まって、今後の三セクでの事業展開はほぼ不可能に近いと言わねばならないと考えています。

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