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大阪府財政の現況を考える
遂に赤字計上を決意税収落ち込み、一段と激化

 大阪府の財政危機について今までに度々報告してきましたが、相変わらずの不況の中で税収見通しが一段と厳しくなり、遂に赤字決算をしなければならなくなりました。これは在阪企業の九月中間申告の状況から判明したものです。
 大阪府は今年度当初予算の段階で府税収入を1兆3,519億円と見込んでいましたが、景気の低迷と株価の急落による法人の評価損の発生で軒並み法人の決算状況が悪化しており、大阪府の主要財源である法人二税(法人事業税・法人府民税)と消費税、自動車所得税の減収がさらに拡大し、1,840億円前後の税収不足が避けられない見通しとなり、今年度の決算が遂に赤字になる可能性が出てきました。

17年ぶりの赤字額は350億円前後では?

 地方自治体の決算で一定額の赤字が出た場合に「再建団体」の指定を受け自治省の監督下におかれ、大臣の指定に従い再建計画を策定しなければならなくなります。
 再建団体とは民間で言えば企業の破綻と同じような意味を持つもので、従来から実施してきた府として独自の施策などが実行し難くなります。府県の場合は標準財政規模の五パーセント以上の赤字を出せばそうなりますが、大阪府の場合はおよそ650億円がボーダーラインとなります。
 今回の税収減による赤字計上額の詳細は定かではありませんが、約350億円前後ではないかと思われ、今のところ直ちに再建団体に転落することにはなりませんが、時間の問題であることは間違いありません。このレポートが皆さんのお目にとまるころには、大阪府知事からマスコミに正式な発表がされていると思いますが、いよいよ大阪府財政の危機が来るところまで来た感じは拭えません。

地方財政制度の制度疲労は歴然である

 大阪府議会の自民党議員団では今日に至った原因と対策について真剣な議論と検討を続けてきましたが、一般会計で1兆8,000億円の予算規模で4000億円前後の財源不足は大阪府独自の対応ではどうしようもないのが現実なのです。思い切った行政改革の必要性は当然ですが、正直に言って行政改革で捻出される金額は精々、数十億円ないし数百億円単位でしかなく、何千億円単位の捻出は到底不可能なのです。さらに加えて、国としての景気浮揚策の必要は判りますが、法人税をはじめ住民税などの減税を矢継ぎ早に打ち出していますが、これらは両刀の剣で、直ちに府県の税収減につながるだけに痛し痒しで、大阪府としてどうすればよいのか、全くお手上げなのです。ではどうするのかが問題ですが。新聞にも報じられたように知事及び副知事などの特別職はボーナスの50パーセントカット、および30パーセントカットを打ち出していますが、精々550万円程度の削減でしかなく、精神論として是認できても「焼け石に水」程度でしかありません。府議会議員のボーナスカットの議論が当然の如くに浮上してきますが、現実の問題として来春の選挙を控えて不況のあおりを受けて個人献金が枯渇している現状から厳しい意見の続出が予想されます。
 

大阪府だけの努力ではどうすることもできない

 私個人の意見としては金額の大小ではなく「痛みを分かち合う」観点から避けて通れないと考えていますが、いずれにしろボーナスのカットをするためには条例の改正をしなければならず臨時議会が招集されるのか、あるいは特別職のボーナスカットは知事の先決処分で対応するのか、近々の内に決定されます。
 幾たびか主張してきましが、地方自治体の抱えている課題解決のためには、国、地方ともに行政運営のシステムそのものを根本的に再構築する必要があります。特に府県行政については「中二階」的で、政令指定都市との関係についても根本的に改革改善の必要があります。この件については別の機会に述べることに致しますが、文字通り新しい時代の到来なのです。

新しい時代に則した新しい行政のシステムづくりを

 「過去の経験則では明日を推しはかることはできない時代」「昨日と今日とは違い、明日もまた違う」のが現代という時代の持つ特性だと思うのです。誰しも負担が増えることは喜びませんし、行政サービスの低下も歓迎されません。
 いよいよ切羽詰まった今こそ、行政の担うべき範囲を、行政と議会とを府民とが一緒になって真剣に考え直す必要があります。
 「誰かが何かをするだろう」の他人任せでは事の解決はあり得ません。見せかけの議論や、府民におもねる議論などは何の意味もないことを議員自身が自覚すべきであり、事実とその対策を率直に訴えかけるひたむきさには府民もキット耳を傾け理解をしていただけるものと思います。勇気をもって是々非々を貫く対応こそが、今、議員に一番必要な資質であり対応だと思っています。

大阪府議会議員 松室 猛(平成10年11月13日)

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