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大阪府の自主財源は法人2税と呼ばれる「法人府民税」と「法人
事業税」に大きく依存しています。ところが、法人2税は会社の
所得に対して謀税される方式となっているために、その会社が赤
字である場合は法人2税のうち法人府民税の均等割り額しか納付
しなくてよいのです。法人府民税の均等割り額は別表(注-1)
通りです。したがって資本金50億円以上の大企業でも赤字決算
である場合は年間80万円しか納付していないのです。
そのために大阪府の税収は長引く不況の影響もあり大幅に落ち込
んでおり破綻寸前の状態なのです。
法人2税は「応益課税」で、その地域で活動するに際して自治体
から受けている利益に応じて収めるべき税金とされていますが、
話題となりました銀行業は、預金利息は史上最低の金利で資金を
集め、貸出に際してはそれなりの金利を上乗せしてバブル期以上
の利益を上げているのに、バブル期の不良債権を償却するために
毎年赤字決算をしており法人税はもちろん地方税も払わなくても
よいことになっているのです。
それにもかかわらず銀行業は毎年2千7百億円もの株式配当をし
ているのです。このことはどう考えても税負担が不公平であると
言わねばなりません。
そこで大阪府は資金量が5兆円以上の大手30行に限って業務粗
利益(注-2)に3%の法人事業税を課税することにしたのです。
資金量5兆円以上の銀行に限定したのは、そんなに規模が大きく
ないローカル銀行や信用金庫や信用組合などを課税対象から外
し、担税能力がある大手の銀行だけに課税することにしたのです。
これは中小企業などの金融活動を阻害しないための配慮なのです。
簡単にいえば所得に課税する方式ではなく、企業の規模や従業員
の数などの、簡単にわかる「外形」に対して一定の税率を掛ける
方式のことです。
銀行業の場合は、外形標準課税の「外形」として捉えられたのが
「業務粗利益」ですが、簡単に言えば売上総額のようなもので企
業の営業規模を把握するのには一番判りやすいものです。
今回の銀行に対する外形標準課税というのは、総ての経費を引い
た利益に掛ける所得課税と違って、損金処理などの操作をしてい
ない、一目瞭然にわかる総売上ともいうべき業務粗利益の外形に
掛ける税制のことを言います。
銀行が行う金融活動は、総ての経済活動の動脈のような働きをす
るものですから金融の安定化は必要であり、公的資金を導入して
でも早期安定化を図る必要性は我々も是認しています。しかし、
バブル期の銀行は本来の銀行業にあるまじき営業活動を行った経
緯があります。
銀行が直接貸し出すことに若干抵抗がある部門などには住宅専門
の金融会社、いわゆる「住専」と称するノンバンクを設立し、大
型デベロッパーに貸出をしていた事実は衆知のとおりです。
バプルの崩壊によって土地の価額が急激に下落し、保有していた
担保の価値が激減したために多くのノンバンクが倒産しました。
ノンバンクは貸付先のデベロッパーが倒産し債権が回収不能のた
めに放棄しなければならなかったのです。
このような銀行の行った行為によって発生した銀行の負債を、な
ぜ我々がカバーしなければならないのか、この疑問に銀行はどう
答えるのでしょうか。
銀行が抱えている不良債権はこれだけではありませんが、このよ
うな経過を経て発生した大部分の不良債権を償却することを大義
名分として、すべての納税義務を免れることは許されることでは
ありません。
この課税方式に対して、銀行業界は大きく分けて2つの論点で反
対しています。
1つは税の公平性の論点であり、2つ目は所得以外に課税するた
めの要件としての「業務の状況」についてであります。
銀行側は公平性の議論として「資金量5兆円以上の銀行にだけ課
税するのは税の公平性に反する」と主張しています。
「公平性」に関する我々の主張を述べる前に、まず税制の公平性
とは何をもって言うのかについて論ずる必要があります。
私たちが支払っている所得税も市民税もすべて所得の額に応じて
支払っています。これは「応能負担」と呼ばれており、我々もそ
れなりに納得しているのですが、単純な公平性の議論で言えば、
一生懸命に頑張って多くの所得を得た者が多くの税金をとられ、
それほど頑張らなかったために所得が少ない者が少ししか税金を
払わないのが公平と言えるのか。応能負担の観点からは理解がで
きても単純な公平性の論点からは実に悩ましい問題点があるので
す。また、別の視点からは所得が多い者ほど多くの税金を払わね
ばならない累進課税制皮は勤労意欲を阻害するとの論点もありま
す。
単純な意味で一番公平な税制は、総ての人に等しく税金を掛ける
方法です。消費税がそれですが、確かに高額所得者も低所得者も
買物をすれば同じ税金を負担しなければならないのは一面では公
平ではありますが、このことは逆進性と呼ばれる問題点、即ち、
低所得者には負担が多い問題点があるのです。
公平な税制とは何をもって言うのか、大変難しい論点なのです。
銀行業への課税について言えば、担税力のある企業が税法上の理
由により、大きな利益を上げながら応益課税である事業税を払わ
ないことこそ不公平と言うべきだと思うのです。
2点目の「業務の状況」に関する論点ですが、今回の外形標準課
税導入の法的根拠は地方税法第72条の19に規定されている課
税標準の特例についての条項ですが、「業務の状況」によっては
所得に課税するのではなく「外形」に課税できると規定されてい
ます。
ところが銀行側は「業務の状況」とは、電気、ガス、生保、損保
の4業種のような業務の状況を言うのであって、銀行業にそれを
適用することはできないと主張しています。
72条のの19に規定されている電気、ガスの事業は売上金であ
る料金が、公共性が高いために認可制となっており事業規模と比
較すると利益が低く抑えられていますので所得課税だと企業規模
にくらべて事業税が低くなり過ぎるので収入金額で課税する方式
が認められているのです。また、生命保険と損害保険は収益構造
上の理由で、すなわち保険料の運用益の配当義務制などがありま
すから、電気ガスと同様に収入金額に対して、即ち「外形」に対
してその他の業種より低い税率であるl,365%の事業税率を
かける外形課税を認めているのです。
ここで問題になるのは、電気ガス生損保以外でも「事業の状況」
に応じて課税標準の特例を認めているのですが銀行業が該当する
かどうかであります。
この見解に対する我々の主張は、銀行業の過去15年問の事業税
の納税実績はその振幅が大きく不均一な納税実績となっており不
安定極まりない状況にあります。この状況は応益課税としての事
業税の本来あるべき姿に照らしても「業務の状況」と捉えること
は可能であり、また、金融三法や早期是正借置などにより不良債
権認定について金融監督庁が、たびたび改正をしたマニュアルに
もみられる特例的措置がとられていることなどから銀行業を「事
業の状況」に応じて対象にすることは妥当であると考えるのです。
今回の銀行業に対する外形標準課税の導入は自民覚府議会議員団
が議員提案として議会に提案しました。従って本会議における提
案理由の説明や、総務常任委員会に付託されたのちの委員会審議
は総て提案者である自民党府会議貝団が対応しました。
議員には議案の提案権がありますが、今日まで議員の提案権が行
使されたケースとしては委員会設置条例や議員定数削滅条例など
だけでした。本格的な条例案が議員提案され、議員が答弁者とな
って審議されたケースは大阪府議会始まって以来のことです。
この議案は大阪府独自のものではなく東京都が導入したものを、
そのまま踏襲して提案したものであったために、東京の「二番煎
じ」だなどと批判されましたが、我々は大都市圏として同じ問題
を抱えていることや、現時点で関係法令との整合性などを熟慮し
た結果、この案がベストであるとの結論に達したので提案に踏み
切ったのです。
地方分権が云々されながら、地方に対する財源委譲が先送りされ
ていることなどから、何としても白主税源を確保して財政再建の
一助にしたいと言うのが我々の主張でした。
ところが、府議会の公明党、民主党は「拙速である」とか「知事
が新しい自主財源を9月に提案すると言っている」ことなどを理
由に導入に反対しました。
最初は継続審議を主張していましたが委員会審議の際にも、参考
人の意見を聞いた上でなければ質問できないとか、その後の質問
でも反対を確定するだけの論拠もなく、同じような質問を繰り返
すだけなのに、慎重な審議が必要であるとの主張は、引延しを画
策するだけで説得力のないやり取りでしかありませんでした。
東京都の場合は一人の反対だけで全党派が賛成をしたのに、大阪
の場合は、両党は知事与党を自認し、知事の意向に沿わないから
反対といった非論理的な、知事べったりの、なんとも幼い対応振
りが目につきました。
3月の定例府議会で自民党は、危機的な財政状況からの脱却のた
めに知事に再三銀行新税を大阪府も導入すべきであると迫りまし
た。ところが知事は「問題点が多いので慎重に対応したい」と言
い逃れをするだけで積極的な姿勢が感じられませんでした。業を
煮やした自民党府議団は、「それなら、どうするのか」と詰め寄
りますと、9月府議会に新しい自主財源の案を示すことを約束し
たのです。
我々も銀行新税だけでなく大阪府として可能な自主財源確保の方
策はないものかと懸命に模索しましたが、府民に負担を強いるも
の以外は見当たりませんでしたので、急遽会期末に窮余の一策と
して担税能力のある大手30行に対する銀行新税を議員提案をし
たのです。
我々の結論は以上のとおりでしたが、行政のプロを自認される知
事が9月定例府議会に提案を約東している「新しい自主財源」と
はどんなものなのか、大変楽しみでありますが、率直に言って精
々受益者負担の増を求める案か、法人府民税の均等割り額の増加
を含め超過課税ぐらいしか提案できない筈です。モノによっては
過度の府民負担となるものだけに、我々としては容易に賛成でき
ない場合も当然考えらますが、もし素晴らしい案が示されれば積
極的に賛成するつもりです。
現時点ではっきり言えることは、銀行新税が導入されたから知事
の新しい提案を先送りにすることは絶対に認めないことです。
苦しい財政事情のなかで、大阪府をどう方向づけていくのか、
性急な再建策だけを云々するつもりはありませんが、経済を活性
化させ税源培養をどのように図っていくのか、などの財政再建策
を示せないのなら何をか況んやであります。
銀行新税の導入に反対された会派の皆さんは、知事与党を自認さ
れるのなら一緒になって素晴らしい案を示してこそ評価される政
れるのなら一緒になって素晴らしい案を示してこそ評価される政
党だと考えますが、いかがでしょうか。
この銀行新税によって大阪府は390億円の税収がありますが、
地方交付税制度では新しい税収があればその額の80%を交付税
額から滅額する方式となっていますので現在の税収16億円を差
引すると実質税収増は74億円となります。
東京都は全国47都道府県の中で唯一の地方交付税の不交付団体
ですから、同じ税制でl,100億円の税収が全額増収となるの
です。
あらゆる意味で大阪と東京の違いの大きさが、随所に感じられる
のは悔しい限りですが、これが現実の姿なのです。


(注‡@)法人府民税の均等割り額

        法人の区分 税率
        資本金50億円超 年額80万円
        資本金10億〜50億以下 年額54万円
        資本金1億〜10億以下 年額13万円
        資本金1千万〜1億以下

         年額5万円
        上記以外の法人等  年額2万円


(注‡A)業務粗利益とは

  • 資金運用収益−資金調達費用=資金利益
  • 役務取引利益−役務取引費用=役務取引等利益
  • その他の業務収益−その他の業務費用=その他の業務利益

        資金利益
        役務取引等利益 業務粗利益
        その他の業務利益


    ※参考

  • 業務粗利益−経費(人件費・物件費等)=業務純益
  • 業務純益−臨時純損(貸出金償却・不良債権処理に係る損失)
                 =当期利益(税引き前)

    ※全国法人数と利益法人の状況〔平成9年度〕

    法人数 利益法人数・比率
    資本金1億円以下

    2,401,452

    876,599

    36.5%
    資本金1億円超

    28,815

    15,594

    54.1%
    法人総数

    2,431,267

    892,193

    36.7%

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