平成13年9月    戻る

これでよいのか、対中 日本外交

靖国神社参拝問題や教科書をめぐる近隣諸国の対応には常軌を逸したものがあり、何故ここまで言われるのかと憤りを感じることがある。 靖国、教科書の両問題の背景には歴史認識の違いがあるのだろうが、中国の日本に対する感覚と対応について 古森義久氏著「日中再考」の中から幾つかの事実を感じる日本人は多い筈である。この著書を一読されることを薦めたいと思うが、それにもまして一番怖いと思うことは、中国や韓国がどんな思いで日本に接しようが、それはそれで構わないが、わが国の屈辱的とかしか思えない外交姿勢について何にも言わない日本人の存在が、1番の問題では無いだろうか。以下に「日中再考」からの抜粋を含めて考えてみたい。

日本では何故か「三国志」のブームであるが、実在の人物であった諸葛孔明のような、人民を尊ぶ優れた政治家であり軍略家であるよ うな人物は今の中国には存在しないのではないか。 何故なら現在の中国は、如何に解放改革路線を見せかけていようと、
唯我独尊の共産党が総ての権力を握り、言論の自由はおろかITの 時代であっても国益に反する情報を極度に制限している国は他には存在しない。
総ては共産党の宣伝で統一され国民は洗脳されているとしか思えない状況のなかで、中国とどう付き合うべきかを考えてみなけれぱな らないのではないか。

日本側の対応】
1972年の日中国交回復の共同声明で「戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えた事についての責任を痛感し、深く反省する」
1995年の村山富一首相は戦後50年談話で「痛切な反省の意を表し、こころからのお詫びの気持ちを表明」

【日本誹謗の幾つかのサンプル】
●中国の大手新聞「中国青年報」の世論調査の結果、戦争を知らない世代の77%が「日の丸を見れぱ日本侵略の悪辣さを思い出す」と回答している。
●大手のWEB「華夏風情」の「時事縦横」では
「中日友好という言葉は根拠を欠いた虚偽であり、幻想だ。両国が対立し合う現実を無視する宣伝は人民を混乱させ政治への不信感を煽るだけである」と報じている。
●中国在庄のアメリカ人の中国研究家アレン・ホアイティング氏は
「中国の日本に対する一般的認識は依然敵対的であり、80年代半ばよりその度合いが強い」と喝破している。
●日本の教科書では南京事件で日本軍が多数の中国人を殺傷したという記述や「731細菌部隊」を取り上げていることなどは一切中国では教えず、又、戦争に関する記述は山ほどあるのに戦後の日本についての記述は、憲法第9条の平和主義や非核3原則についての紹介などは皆無。戦前の過ちは認めているのに、戦後は軍事力行使を禁ずる憲法を持ち、半世紀の間、只の一度も軍事力を行使していない事実や国連の平和維持活動にさえ他国並に加われない事情などは一切教えていない。
●尖閣諸島の領有権でも、排他的経済水域でも中国の無理難題は数知れない。
●中国はチベットに対して何をしたのか、インド、ベトナム、旧のソ連への軍事行動は平然と行っている。

【日本側の対応−その2】
●2000年5月、北京を訪ねた日本人を相手に江沢民主席の重用講話と称する演説の中では「中日友好」を強調しているが、それを受けて時の野中広務幹事長は「閣下から日中友好重視するという趣旨のお言葉を賜り日本国民一同感激しております」と発言し、2000年5月の連立3党の幹事長「過去の歴史を路まえ日中友好を積み上げていく」とか、「友好、協力の増進を3党挙げて支えていく」とか、江沢民主席から送られたトキ二羽にできた小鳥の命名の意見拝聴とかに終始し、政治的懸案については一切発言なし。
中国から貰ったものは、トキとパンタぐらいのもので、日本からはどれだけの経済援助を与えているかを検証してみる必要がある。

【対中援助のうちオリンピックの開催を競った北京に対する経済援助の額(ODAー政府開発援助の額)】

国際空港新設 300億円 日中友好環境保全センター 105億円
〃管理システム 210億円   〃  病院建設 200億円
北京市の鉄道建設 870億円   〃  医学教育センター   6億円
〃 地下鉄建設 200億円   〃  リハビリ研究センター  34億円
〃 揚水発電所建設 130億円 消防機材  25億円
〃 光ファイバー網  72億円 肉類食品総合センター  27億円
〃 上水道 155億円 野菜研究センター  11億円
〃 下水道  27億円 淡水魚養殖センター   8億円
浄水場建設 147億円 輸出入食品検査センター  10億円
国家経済情報システム 240億円 中日青年交流センター 110億円
職業訓練指導員要請   18億円 中国中央テレビ局機材  38億円
北京市鉄道(追加分) 172億円    対北京分だけの合計 3,115億円

2000年までの対中政府開発援助ODAは約3兆円に及んでいる。
このほか、返済を伴う輸出入銀行の融資は3兆3千億円でODAを上回っ
ている。

(古森義久著「日中再考」から転記)