法曹一元化と陪審制度を考える

大阪府議会議員 松室 猛
21世紀を正しく理解するためのキーワードは「中央から地方ヘ」「官被主薄嚢からの脱却」「自己責任原則」だど考えるが、この流れは司法の分野も例外ではなく、数々の検討カが加えられ今日を迎えている。司法改革給講は98年に経団連と自民党司法制度特別調査会が、法宮人口の増加、法甘一元化ど陪響制度の導入により司法への国民の参加を促そうどするものが端著であった。
その後99年には内閣に司法制度改革響犠会が設置され法甘3者(最高裁・法務省・弁護士会)に学者、経済界を加えたメンバーで検討カが加えられ現在に至っている。

※先進国で司法裁判に民間の関与を認めていないのは日本だけである。官の自己過信の背景には愚民思想がある。
日本人には統治客体意識が強く、逆の言い方をすれば常に受益者的立場にある。特に司法の分野に関しては「お上」のすることだと決めつけている。しかし、国民は常に裁きの対象であってはならず、司法の分野にも当然国民の参加があって然るべきである。

わが国の法書人口の実態・・・・・現役の弁護士人口はおよそ1万5〜6千人程度である。
司法試験の合格者は60年代から90年代にかけて、年間500人程度に抑えられていたが、司法試験制度改革によって91年度は600人、93年度は700人と順調に増え続け、現在では1000人と増加傾向を示している。これらは、わが国の裁判が異常に長くかかることや、国民の法的二一ズに応えるための改革である。

わが国の司法制度・・・・・官僚司法制度
司法試験に合格し、司法研修所で学んだ卒業生の一部を直ちに裁判官として任用してきた。一度裁判官に任用されれば順次上級裁判所へと昇進していく現在のキャリア制度は裁判官が最高裁の人事評価を気にする桔果裁判官の独立が侵される恐れが懸念されている。日弁違は「判決の内容や裁判の運営を市民感覚からかけ離れたものにした」と官僚司法は限界にきていると指摘している。

法曹一元化とは
原則として、裁判官を社会経験を積んだ弁護士など、裁判官以外の法律事務を一定期間こなした者の中から任命する制度。
アメリカやイギリスでは早くから採用されているが、わが国では弁護士の絶対数の不足や、弁護士の大都市偏在などの問題が指摘され実現していない。

陪審制とは
選挙名簿などから無作為に選ばれた陪審員が、裁判官から独立して事実認定をし、密室で「有罪、無罪」を決定する。
これを「評決」と称している。裁判官は評決を受けて有罪の場合の量刑を判断する。

参審制とは
参審は広く選ばれた参審員が裁判官と一緒になって事実認定から判決、量刑判断まで幅広く関与する。

※陪審制と参審制の大きな違いは、有罪か無罪かの事実認定に裁判官が加わるが否かにある。
陪審制では裁判官は除外され、参審制では共働する。

わが国にもあった陪審制度
1923年にわが国に陪審法が成立し28年(昭和3年)から太平洋戦争の激化で同法が停止される43年(昭和18年)まで、重罪等の刑事裁判で陪審が行われていた。披告が陪審か裁判官による裁判かの選択ができ、484件陪審で裁判が行われた。わが国の陪審制では裁判官が陪審員を罷免できたし、評決のやり直しを命じることもできた。何よりも裁判官は評決に拘束されなかった形だけの制度であった。

裁判員制度とは
司法制度改革審議会は、平成13年1月30日の会合で、事実上の「参審制」を刑事裁判に導入する方向で大筋一致した。
但し、参審制とは呼ばずに参審員も当面は「裁判員」の名称を使用することにしている。

陪審制の論理は、真相の究明よりも国民が下した判断が正しいとする論理である。
アメリカの陪審制陪審員12名
ドイツの参審制参審員2名
フランスの参審制参審員9名
わが国の場合、参審員の人数をどうするのか?
仕事を休んで裁判に出ることの理解が得られるのか?(長引けぱどうなるか?)
陪審制(アメリカ)では評決には理由は示されないし、全員一致が原則。
、
日本流の参審制では意見を付ける方向で一致。
単純多数決で良いのか、2/3の特別多数決が良いのかの議論もこれからである。
陪審制度の実際・アメリカの例
刑事裁判の重大事件のみを扱う。アメリカでは刑事裁判で9割の披告人は起訴事実を認め「有罪答弁」をする。
この場合、有罪が無罪かの事実審理が要らないので陪審にはがからない。従って起訴事実を争う1割の裁判のうち軽微な犯
罪を除けぱ、ごく僅がな裁判だけが陪審裁判となる。
しがも、陪審制を拒否できるし、自ら有罪を認める場合も陪審にはかからないので刑事事件全体の1、8%(98年実績)
しか行われていない。
Ex?0,J,シンプソン事件?ロドニー・キング事件?服部君射殺事件いずれも陪審で無罪評決。
;i:!i:三::ij何れも無罪〔人種差別的傾向が去々された〕
司法取引について一一軽い量刑と引換えに有罪を認める取引がアメリカでは一般化している。
参審制で評決権を付与することは憲法上の問想があるのでは・・・
裁判官でない参審員に違憲立法審査権を与えることに対する疑間と、司法の独立制、裁判の独立制を艮間人に拡げること
の法的妥当性は?
∴
専門参審制とは
医療過誤や欠陥建築をめぐる裁判などには医師や建築士等を加えるべきであるとする制度。
わが国の場合の問題点
・一般の刑事事件では検察官が十分有罪に持ち込める件に限って起訴しているので市民が加わっても意味がないのでは・・
・参審員が事件報道に影響されることはないのか?
法務省と最高裁は何らかの報道規制が必要となると指摘。日弁連は報道の自由を安易に規制できないと反論。
・参審制の場合は職業裁判官と一緒であることが良い。一緒であることは誘導されるとの両論がある。

				
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