松室猛のTMニ水会定例講演・資料

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「永住外国人の地方参政権を考える」




 はじめに

在日外国人の参政権をめぐる議論は随分以前から話題になっていた。
国会にも議員提案として複数回提案されたが、いずれも審議未了で廃案となっている。ところが民主党の小沢幹事長はこの問題に熱心で先日訪韓の際に、日韓議連の韓国側の代表との会談で成立に向けて取り組みを約束した経緯があり、にわかに脚光を浴びるに至った。

鳩山総理もこの問題に前向きで、政府提案として上程されれば衆・参の議員数からして可決される可能性は大きく、問題視されるに至っているのである。

民主党の中にも参政権付与を疑問視する議員も多く、連立内閣の亀井静香氏は反対を唱えているので流動的であるが、この機会に何が問題なのかを検証することにしたい。

 

永住外国人とは何か

 わが国に在住する外国人は年々増加する傾向にあるが、選挙権付与を検討する際の外国人は「永住権を持った外国人」とされている。永住権を持つ外国人については次のような規定がある。

永住者の定義

一般永住者  出入国管理および難民認定法・別表第2の上欄の「永住者」の在留資格を持ち「入管法」の規定により法務大臣が永住を認める者。原則として素行が善良で、独立して生計を営むに足る資産又は技能を有する外国人で、10年以上居住していることや、その者の永住が日本国の利益に適合すると認められる場合に許可される。在留期間は無期限で、在留期間更新のための手続きは不要である。

特別永住者  平和条約の発効により日本国籍を離脱した者で、終戦前から引き続き本邦に在留している者、およびその子孫(いわゆる在日韓国・朝鮮人、台湾人)について、その有する歴史的経緯および定住性に鑑み、特別法により特別の地位を付与したもの。特別永住者は一般永住者より退去強制事由が大幅に制限されるなど外国人が在留するための地位としては最も法的安定度が高い。

永住者数(単位人)

平成16年    

平成20年   構成比   増減率前年比

永住者(計)

778,583 912,361 100% 4.9%

一般永住者          

312,964 492,056 53.9% 11.9%

韓国・朝鮮            

42,960 53,106 5.8% 6.4%

中国             

96,647 142,469 15.6% 10.9%
その他       173,357 296,481      32.5% 13.4%

特別永住者         

465,619 420,305  46.1% ▲2.3%

韓国・朝鮮         

461,460 416,309 45.6% ▲2.3%

中 国               

3,306 2,892 0,3% ▲3.1%

(参 考)

非永住者     1,195,164 1,305,065

外国人の呼称と処遇の変遷

滞在1年未満は非居住者。1年以上5年以下は非永住者。5年を超える場合は永住者(永住権者ではない)。

1979年の国際人権規約および1981年の難民条約の批准によって公共住宅への入居が解禁された。82年から国民年金への加入が認められ児童手当も支給されることになった。この点で社会構成員であることの基準が国籍より居住であることになった。

選挙に関する日本国憲法の規定

日本国憲法第10条 「国民の要件」日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

〃   第11条 「基本的人権の享有」国民は、すべての基本的人権はの享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在および将来の国民に与えられる。

〃   第15条「公務員の選定罷免権」公務員を選定し、およびこれを罷免することは国民固有の権利である。

(公務員とは地方公共団体の長や議員も包含するものである)

〃   第93条2項 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律で定めるその他の吏員は、地方公共団体の住民が直接これを選挙する。

「国民主権論」については後述するが、国民主権とは国の政治のあり方を最終的に決定する権力のことであり、その権力は国民にあるとする原理である。

参政権に対する在日韓国人と朝鮮人の受け止め方

地方参政権問題には、通常「在日」と呼ばれる人たち、すなわち韓国国籍をもった韓国系の人たち以外に北朝鮮系の人たちもいる。しかし、在日本大韓民国民団・(旧・大韓民国居留民団)略称「民団」は参政権獲得運動を強力に推進しているが、朝鮮民主主義人民共和国側の在日本朝鮮人総連合会・略称「朝総連」は、民族性を喪失させるとして参政権付与に反対している。

したがって、かつて公明党が提案した参政権付与法案では朝鮮人を除くものとなっていた。すなわち「外国人登録原票の国籍の記載が国名により登録されている者に限る」とし、北朝鮮系の人たちは外国人登録原票の国籍欄が「朝鮮民主主義人民共和国」ではなく「朝鮮」と地域名が記載されていることから除外するものとなっていた。また、この案は選挙権だけを付与し被選挙権を除外していた。

しかし、選挙権には、条例の改廃や監査請求権、解職請求権などのいわゆる直接請求権が与えられることになるが、公明党案では「当面の間」直接請求権は付与しないと特例を設けている。果たしてこの対応が妥当性をもつと言えるのだろうか。選挙権、被選挙権の分割については憲法上疑義があるとする学説もある。

地方選挙に関する民団の見解

「国民」と「住民」の違い

日本国民とは、日本国籍を持つ人のことであり、住民とは、その地域の自治体に住民登録をしている国民をいう。

地方参政権に関しては民団は次のように述べている。

「私たち永住外国人には半世紀以上、日本の地域住民として生活をしてきた歴史と、日本社会の発展に同等の義務を果たしながら応分の貢献をしてきた実績がある。戦後50年以上経つのに、私たちには地域社会に制度的に参与する権利、すなわち地方自治体選挙権が与えられていない。つまり、普通の市民としての地位が未だに認められていない」と主張している。

憲法93条2項では地方選挙の選挙権は、その自治体の「住民」が直接選挙するとの規程がある。したがって憲法では地方選挙は「国民」とは規定せず「住民」が行なうとされているのだから、外国人にも「住民」として選挙権を付与すべきであると民団側は主張している。

これに対する法律上の見解は、最高裁判決でも「憲法93条2項にいう『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当」と判決で示している。さらに公職選挙法では自治体に住民登録をしていることを条件としている。

生活実態と選挙権

帰国子女などには日本語を話せない日本国民もいる。彼らはもちろん選挙権をもっているが、それは言葉や生活実態とは関係なく日本国籍をもっているからである。現行選挙制度は国民であることを前提として、地域住民である以外に条件を付けていない。若年停止の年齢制限はあるが、所得の有無、性別、学歴などによる条件は一切無い。従って日本の義務教育を受け、納税義務の履行しているとか、地域に貢献しているなどは選挙権とは無関係なのである。

参政権に関連する最高裁の判決

平成7年2月28日に「選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下取り消し請求」が最高裁に提訴された。判決は「本件上告を棄却する」とした。

その要旨は、「公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、わが国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である。そして地方自治について定める憲法93条2項において地方公共団体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定しているのである。前記の国民主権の原理およびこれに基づく憲法第15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が、わが国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、わが国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」
以上が判決主文の要旨であり、国・地方選挙に外国人を明確に排除している。

ところが最高裁判決は「傍論」で次のように述べている。

「わが国に在留する外国人のうちでも永住者等であって、その居住する区域の公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、そのような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策に関わる事柄であって、このような措置を構じないからといって違憲の問題を生じるものではない」

(裁判長裁判官・可部恒雄・裁判官・園部逸夫・大野正男・千種秀夫・尾崎行信)

最高裁判決と傍論

傍論とは、判決主文に付随する裁判官の私的意見である。主文は当然法的拘束力を持つが、傍論は拘束力を持たない。

この判決と傍論に関し以前にも問題になる事例があった。

2004年の靖国神社参拝をめぐる訴訟で福岡地裁は小泉総理の参拝は違憲であると傍論部分で述べている。この訴訟は精神的苦痛に対する慰謝料の請求事件であり、この訴因については「却下する」とし原告敗訴の判決であった。
ところが傍論部分で違憲判断が示されたのである。総理の靖国参拝が違憲であるとの判決は異例のものであるが、裁判そのものは被告側勝訴であるから傍論に対して異議があったとしても控訴できない。こんな形で法的拘束力が無い傍論で憲法判断が示される傾向が多くなっているのはいかがなものか。

平成7年の最高裁判決に関わった園部逸夫元最高裁判事は22年2月19日の産経新聞紙上で次のように述べている。
「判決には在日韓国・朝鮮人をなだめる意味で政治的配慮があった。参政権付与の対象者について非常に限られた永住者に限定することを想定した」と述べ、民主党などが検討している一般永住者に与えようとしていることに関して「ありえない」と批判した。判決の背景に政治的配慮があったことを言及したのは極めて異例なことである。また園部氏はコメントの中で、「無理やり連れてこられて、参政権が欲しいのなら帰化すればよいというのは、先祖を大切にする韓国人にとって簡単な事ではない」とも語った。また、園部氏は11年6月24日付朝日新聞で「私は判決の結論には賛成であったが、自らの体験から身につまされるものがあり、一言書かざるをえなかった」とも述べている。その背景には、併合時代の朝鮮半島で生まれ、台湾で育った若き日の贖罪意識があるようだ。いずれにしろ裁判官が情緒的な見解を傍論に書いたことは大きな問題となった。

強制連行に関する事実認識に対して、日大の百地章教授らによれば、強制連行というのは政治的用語で、当時の朝鮮半島の人々が日本国民であったことに基づいて「徴用」をはじめとする戦時の労務動員であり、日本本土に居住する多くの日本人も徴用で強制的に労務提供させられたことは歴然たる事実である。これをもって強制連行といのは正確性を欠くとの指摘がある。

戦後の国籍をめぐる経緯

終戦当時は日本国民であった在日朝鮮人の法的地位(国籍)に関して、当分の間は日本国民とみなされるのか、そうではなく連合国人とみなされるのか、あるいは連合国以外の国民とみなされるのかについて占領軍側にも議論があった。

なぜなら大韓民国が成立するのは昭和23年のことで当時はまだ帰属する国家そのものが無かったのである。この時代に便宜上言われた言葉が「第三国人」である。

このような経過の中で在日朝鮮人は自らを「連合国人」であり日本人ではないと主張した。今日問題になっている在日朝鮮人の大量帰還が事実上終了しようとしていた際に(昭和21年11月)GHQは、本国に帰還しない在日朝鮮人は、朝鮮半島に政府が成立するまでの間「日本国籍を保持しているものとみなす」と発表した。この発表は在日朝鮮人から猛烈な反発を受けたのである。

サンフランシスコ平和条約締結によって国籍離脱が当然の帰結となった。

当時の在日の人達の国籍問題とは、日本国籍をめぐる問題ではなく、北朝鮮籍となるか、韓国籍となるかの対立であった。これが歴史の事実である。

参政権付与推進派の論点

朝鮮人の連行と国籍変更に関して、かなり異なる見解がある。
韓国釜山生まれで桃山学院大学教授や、国際在日韓国・朝鮮人研究会会長などを歴任している除龍達(ソ・ヨンダル)氏は、その編著「定住外国人地方参政権」のなかで概略次のように述べている。
「日本への移住状況は一般に4期に大別される。『土地調査事業期』『産米増殖計画期』『中国大陸侵略期』『戦時体制・強制連行期』に区分し、最初の1期は1910年〜19年・即ち明治43年〜大正8年に溯る」としているが、日韓併合以前からの論議をすることになると、最終的には清国の冊封体制化下にあった朝鮮を解放し、独立を認めたことの可否や、併合条約の法的有効性まで議論しなければならなくなる。紙面に限りがあり到底ここでは論じられない。一番問題とされている第4期の「戦時体制・強制連行期」(1939〜45年)に絞って考えてみると、彼は「156万人もの低賃金労働者を連行し、巨大企業に戦時独占利潤を欲しいままにさせた時期があった」と断定しているが、著作の中で、その数字の出展や根拠が示されていない。百地章教授の著書によると「昭和20年の敗戦当時、日本には約200万人の朝鮮人がいたが、GHQの積極支援のもと昭和23年までに約140万人が帰国し、戦時動員された人はほぼ全員帰国しており、残った人たちは戦前からのは日本に生活基盤があり自らの意思で日本に残った人たちである」となっている。数字に若干開きがあるが「徴用」と「強制連行」とは同義語ではない。

この時代の在日韓国・朝鮮人は日本国籍があり選挙権も付与されていた。在日の朴春琴氏が二回衆議院に当選しているが、彼のことを反動的親日派と蔑んでおり、市町村会議員は計54名の当選者があったに過ぎないと、あたかも制約があったかのごとく論じている。当選者数の多い少ないについて、選挙の実態に問題が無い限り、このような見解や分析をすることに妥当性はなく、文字通り「為にする論理」だと言う他はない。
戦後の混乱期に在日韓国・朝鮮人が戦勝国民として胸を張っていた事実を記憶している日本人は多い。当時は在日に日本国籍を付与することに彼等自身が反発していた明確な事実を意識的に除外した議論は無意味である。

また、国籍に関して、彼は「人権の世界的な潮流からして国籍の有無が人権保障の基準になっていたこれまでの考え方に大きな反省を余儀なくさせる時代が到来した。まさしく人権とは『人が人であるということのみに基づいて当然にもつ権利』であることから、国籍がなぜ必要な基準にされるのかという疑問が一般化してきた」と述べている。

また一方では、「国民主権の原理とは国家政治の基本的な仕事を国民が決定する権利であり、地方自治体の行政は、その地方に住む人たちがその都道府県、市町村の運営を決定することである。従ってその地方を構成する住民が主人であって、国籍=国民が主体になるものではない」と言い切っているが、この見解は地方公共団体が、わが国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることについての検証が欠落している論法である。
さらに、「国民主権と国籍が不可分の関係にあるとしても、国民主権原理の前に国籍があったわけではない。主権者である住民が先にあって、後から国籍が付与されたというのが歴史的事実ではないか。いまや「国民主権」は民主主義の原理と同じ意味をもつ「住民主権」に取って代わるべき時代を迎えたと認識すべきである」と論じている。

確かに古代社会には、住民は存在しても国籍は存在していなかったであろう。しかし近代国家が国家として成立する過程には、近接諸国との国境の確定や防衛の観点などから主権を行使する領土を確定させる必要があった。国家の内部において主権を行使する主権者を確定するために国籍を付与することで国家としての団体性を維持し近代国家が誕生したのである。住民の存在と国籍の付与と、どちらが先かなどの議論は国家を考える上で意味を持つものではない。

基本的人権に関する考え方

日本国憲法が保障する基本的人権の保障が外国人にも及ぶのかについて考えてみる必要がある。日本国憲法は日本人だけを対象にしていると考えられる部分が厳然と存在する。国政選挙に関する参政権などはその典型であり、入国に関する諸規定もそれである。すなわち人権の性質に着目し、権利の性質上、日本国民だけを対象としている以外の人権は外国人にも保障されると仕分けして考えるべきである。
一般的に言われる社会権がそれに該当する。国民健康保険、年金の加入および受給権、就学権などは権利であり義務でもある。
問題は地方参政権であるが、地方自治体が国益に関する関与はもとより、強制権の行使を行うことがあり、あるゆる分野で国政と連携していることから「国民主権の原理」により外国人を排除することは法制上当然のことである。

外国人の公務就任権に関しても同様で、その部署によっては現在でも就任を認めていない。すなわち「公権力の発動として人民に対する命令強制を内容とするような職務」への就任は認めていない。
すべての権利を等しく付与すれば、国民の国民たる権利の意味がなくなり、国家に対する忠誠や義務と責任が希薄化し国家の態を成さなくなるからである。
参政権は主権者としての権利であって、人間としての権利である「人権」とは違うものだ。

選挙権に関する相互主義について

韓国では2005年に永住資格の取得後3年を経過すれば地方参政権を付与している。但し、韓国における永住権は華僑を除けば、結婚によって韓国に居住し5年以上経過して永住権が取得できるなどごく稀なケースでしかない。韓国の永住権を取得した日本人は6,365人で、実際に2006年に選挙登録できた日本人は、朝鮮日報によると51人となっており、外務省領事局の数字ではおよそ100人となっているに過ぎない。(高市早苗−正論4月号)
わが国は特別永住者だけで40万人を超え、一般永住者を含めると90万人を超えている。とても相互主義の対象ではない。そもそも相互主義とは経済関係・司法関係・課税・領事事務等の観点から双方の必要に応じて行われるものである。

2009年に韓国公職選挙法が改正され在外韓国人に対して大統領選挙や国会議員選挙(比例代表)の投票権を認めた。以前は日本の永住権を放棄し、韓国での住民登録が必要であった。それを改正し特別永住者のままで国内居住申告だけで選挙権行使ができるようになったのである。
80年代にはすでに比例選挙に立候補できる資格を持っていたので実際に民団幹部が国会議員に当選していたが、今回の改正で在日韓国人の国会議員の誕生は確実だとされている。そうなると日本で地方参政権を付与されると国政選挙では韓国大統領、国会議員に投票し、日本では知事や市長、地方議員に投票が出来ることになり、さらに韓国の国会議員が日本の知事選挙などにも投票するという日本の主権にとって複雑な問題が生じる。外国の政治家が内政干渉に匹敵する行為をする危険性が生じるからである。

その他、諸外国の例

北欧諸国では地方参政権を認めている国があるが、国家規模そのものが小さく外国人労働者の受け入れなくして産業が成り立たないような環境にあり、移民政策との関連を見落としてはならない。ノルウエーは人口480万人であり、デンマークは550万人と日本の府県よりも少ない人口規模であり、この種の問題の比較にはなじまない。
ドイツとフランスはそれぞれ日本と同じように地方参政権を認めていなかった。ところがEUへの加盟を契機に相互主義を執らざるを得なくなり、そのために憲法改正をした。従って諸外国には地方参政権を認めている国はあるが、決して多くは無く、国際的な潮流などと言えるものではない。

外国人が選挙権を持てば

自治体単位で在日外国人の数を調べて見ると次のごとくである。

都道府県別永住者数(上位10府県のみ記載・法務省在留外国人統計21年版)

1 大阪府  143,220人

2 東京都  129,950人

3 愛知県   99,017人

4 神奈川県  70,573人

5 兵庫県   67,603人

6 埼玉県   43,199人

7 静岡県   37,719人

8 千葉県   36、205人

9 京都府   35、548人

10 福岡県   23、291人

外国人登録者数上位自治体(人口比10%以上のみ掲載)  

1 大阪市生野区    31、633人   24%

2 群馬県大泉町     7,069人   17%

3 神奈川県相模原市  11、048人   15%

4 岐阜県美濃加茂市   6,121人   11%

5 人口比10%の自治体

東京都新宿区・横浜市中区・神戸市中央区・横浜市南区・名古屋市中区

「民団」の活動実態とその趣旨

民団はその綱領の中で、「在日韓国国民として大韓民国の憲法と法律を遵守する」と明記し、民団中央本部予算の85%(約8億円・06年)が韓国政府から支給されている。さらに各地の領事館を通じて民団の各地方本部に一定の補助金が支出されている。(統一日報)民団は外国政府のコントロール下に置かれている団体である。日本と韓国との間で対立する問題に地方自治体が関係することは当然あり得る。そうなれば在日は韓国への忠誠、本国の利益に基づき日本の国益に反する行動をとることは韓国憲法及び法律の遵守義務から当然予測される。

もう一つ問題なのは、小さな自治体への影響力行使である。有権者数が少ない自治体に選挙権を持った永住外国人が集中して居住登録を行なえばその自治体の政治そのものを掌握することになり兼ねない。なかでも危険なのは国境の自治体である。

例えば対馬市である。歴史的にも国際法上も対馬は日本固有の領土であるが、韓国側は最近韓国の領土であると主張しだしている。

平成20年7月に韓国国会議員50人が韓国国会に「対馬島返還要求決議案」を提出した。対馬には1年間に人口の倍にもなる韓国人が押し寄せ韓国資本によって海上自衛隊対馬防衛隊の隣接地をはじめとして島内の不動産を買い集めている事実が昨年明らかにされた。

このような情勢下で地方参政権が付与されたらどうなるのか、対馬の有権者は約3万人、議員定数22名、最下位当選者は685票、市長選挙では1万5千票対9千7百票という結果であった。仮に投票権だけを付与したとしても、帰化した元韓国人が市長や、議員に大勢当選すれば「対馬は韓国領だ」などという主張をしないとも限らない。

外国人が外国籍のままで地方選挙に係わりを持てば自治体が外国人の影響下におかれることは容易に想像され、由々しき問題を招きかねない危険性がある。

これは韓国との問題だけではない。

顕在化する中国人問題

今関心が高まっているのは中国人である。在日の大半を占める特別永住者は一貫して減少し続けているが、中国人一般永住者は急増しているからである。外国人参政権問題は現在は韓国人問題であるが、近い将来は中国人問題となるのは必定である。

鳩山総理は「日本列島は日本人だけの所有物ではない」、地方参政権付与は必ずしも憲法違反ではないと主張しいる。傍論を引用したものであるが、この感覚は到底総理の感覚として了解できない。

地方参政権問題は地方自治体の選挙をめぐる問題だけではなく、日本のあり方に関わる問題なのである。

国家と国籍についての見解

国家とは、主権の及ぶ領土を有し、その国家に忠誠を誓う民族が住んでいることをいう。わが国では戦後の一時期、国家否定あるいは国家に対して懐疑的な風潮があった。しかし国家とは「歴史的・伝統的な国民共同体としての国家、すなわちネイション」と「権力機構としての国家、つまり政府・ステイト」がある。

近代国家は「国民国家、すなわちネイション・ステイト」と呼ばれる歴史的・伝統的国民共同体であらねばならないとされている。(日大教授・百地章)

国籍とは「個人が特定の国家の構成員である資格」であり、「忠誠義務の紐帯によって国家に結び付けられた自然人」と定義されている。

先にも述べた国民主権との関係における国籍について歴史をひも解くと、16世紀のヨーロッパが象徴的である。国民主権の論理は、君主主権に対抗する概念として登場してくる。フランスにおける君主主権は、王権神授説、すなわち神によって授けられた絶対君主の権力が最高のものであるとされていた。これに対し次第に勢力を増してきたブルジョアジーが、絶対王政を打倒する闘い(近代市民革命)のなかで君主主権を否定し国民主権こそが最高のものであるとされたのである。すなわち治者と被治者が同質であるとするイデオロギーである。

国民主権の原理を最初に掲げたのは1791年のフランス憲法であり、国民とは国籍保持者の総体であるとされたのである。近代市民革命以前は、どの領主の支配に服する者かということが人の帰属を示すものであった。これに対し市民革命以降は、国の政治の在り方を最終的に決定する権力は国民にあるとする原理に基づき、まさに参政権を行使し得る者の範囲を確定する前提として国籍の明確化が必要とされたのである。それまでの地縁的つながりより、民族としての血縁的つながりを重視する血統主義の国籍法を生み出したのである。

移民社会のアメリカでは出生地主義が採用された。但し、現在では血統主義と併用されている。

国籍取得に関する対応

アメリカに帰化するには日本同様の要件もあるが、根本的に違う点がある。

アメリカの国籍法では「国民は国家に対して永久の忠誠義務を負うもの」とあり、国籍取得のためには「アメリカに対する忠誠宣誓」とともに、旧母国に対する忠誠の放棄も行なわせている。国籍取得の最終口頭試問では、アメリカのために銃を持って戦うか、との質問があり、イエスと答えなけらばパスできない。

日本は5年以上の日本居住(緩和規定もある)、素行善良で憲法遵守、日本政府を暴力で破壊することを企てる者を排除しているだけである。宣誓もさせない。 

もっと簡単なのが配偶者の永住許可である。最初は一年間、再申請で2年間、すなわち3年が経過すると永住許可となるシステムで、最短3年で永住許可を取得できる。この簡単なシステムを悪用するのが偽装結婚である。

むすび

平成22年3月3日の参議院予算委員会の質疑の中で亀井静香氏は質問に答えて、もし地方参政権問題が政府提案となるなら連立離脱を辞さないと理解してもらってよい答弁していた。これらの動きもあって、今国会に地方参政権付与法案の上程を見送るようであるが、依然として小沢氏は成立に意欲的である。公明、社民、共産も積極的であるから、近い将来上程される可能性は濃厚である。

島国である日本人は、国家と国籍について極めてのん気である。

近接する諸外国から疎んじられる最大の原因は、国を守る気概以前に、極く当り前の国益を守ろうとする気概すら感じられない日本政府の呆れ果てた外交感覚にその原因がある。

地方参政権は、地域だけの問題だと考える人がいるとすればトンでもない結果を招くことを、この機会にお互いに確認しあうべきである。

平成22年3月
松 室  猛
参考文献 除 龍達(編)定住外国人に地方参政権・日本評論社
田中 宏 外国人の地方参政権・五月書房
百地 章 外国人参政権問題Q&A・明成社

雑誌・WILL・3月号

雑誌・正論・4月号

外国人参政権にNOと言おう

日本政策センター(代表・伊藤哲夫)

(日本政策センター編の資料は貴重なもので、出展等も含め、代表の伊藤哲夫氏の了解を得て、多くの部分を引用させた頂いた)



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