松室猛のTMニ水会定例講演・資料

 平成21年9 戻る


「選挙結果は何を示しているのだろうか」


今回選挙の党派別得票数一覧

第45回総選挙の総括

 平成21年8月30日執行の総選挙は、マスコミ各社の事前の予想通り民主党の圧勝で終わった。選挙公示前の7月に選挙結果の予想をして二水会とネットで公表した。前回の郵政選挙がおかしすぎる選挙であったので今度は自民が大幅に議席を減少させるだろうと予測したまでは良かったものの、これ程惨敗するとは思えなかった。

今度の選挙結果は、自・公政権に対する国民の明確な拒否反応であった。

選挙前と選挙後の議席数

記録として残すために党派別議席数の変化を記すことにする。

政 党 公示前議席数 新議席数(比例)
民主党 115 308 (87)
自民党 300 119 (46)
公明党 31 21 (21)
共産党 (9)
社民党 (4)
国民新 (0)
みんな (3)
改革
日本 (0)
諸派 (0)
無所属 (0)
  
480 (180)

自民党敗北の原因

予想では自民が下野するのは間違いないとしても、民主が安定過半数を獲得するとは予想できなかった。しかし選挙結果の見方としては民主が勝ったのではなく自・公が負けたというべきだろう。
自民党にとっては昭和30年の結党以来、選挙で政権の座を追われたのは初めてである。(過半数はなかった野党が連立を組み、河野洋平が細川護熙に破れ下野したことはあった)

問題は、その敗因である。万年与党に安住した驕りと、政権運営を4年間に4人の総理によってたらい回ししたことや、選挙向けの顔だけで総裁を選出した安易に過ぎる対応が国民から拒否されたのである。派閥の功罪はともかく、最大派閥が分派行動をして麻生の足を引っ張ったことも原因の一つであった。閣僚と幹事長以外は積極的に支えようとしなかったことはそれらを明確に示していた。そして何よりも自・公で3分の2の議席を確保していた驕りが最大の原因であった。

麻生政権は政局運営の中心に緊急経済対策を取り上げ大胆に執行した。しかし、その反面、政官の癒着や官僚の天下りを容認する対応は国民の反感を買う結果となった。何よりも小泉改革によってもたらされた格差の拡大や雇用情勢の極端な悪化に対して麻生政権は景気回復こそが最優先と捉えていた。しかし、この施策だけでは庶民の生活を救うまでに至らなかったのが敗因の最たるものである。
次元が低過ぎて言うのも厭になるが麻生太郎の軽薄な発言とブレも酷かった。

理念としての国家観の無さも大きな敗因であった。冷戦終結後、世界がグローバル化し、政治・経済ではなく文化の違いによる多極化が進行するようになっても自民党は日米同盟を強調するだけで新たな国家ビジョンを示せなかった。自民党の中枢部は依然として中国信仰から抜け切れず、中国の国辱的な対日政策に対してひたすら頭を下げるのみであった。こんな自・公政権の姿勢は国民の政治不信を加速させていった。内政においては、官僚はいかに効率的に行政運営を行なうかだけにとらわれ、世界の変化を読み取ることが出来なかった。自民党一党支配の下で高度経済成長を実現させたのは事実であったとしても、長期政権と族議員との馴れ合から政治家の官僚支配が機能せず、官僚の腐敗に拍車をかけることになていったのである。これらの現象が一度に噴出し「官僚内閣制打破」「政権交代」のキャッチフレーズがストレートに国民に受入れられたのである。

自民党の蘇生は可能だろうか

 自民党大阪府連所属の国会議員は小選挙区1、比例区5名の計6人である。

そのうち比例区単独が2名、惜敗率で当選者が3名となっている。従来から国会議員の党活動には見るべきものがなく、地方議員はもっぱら自分だけの後援会活動に専念する者が大半で、党活動に熱心な議員は見当たらない。来年の夏の参議院議員選挙まで1年を切った。それまでに組織の建て直しが可能であろうか。恐らく今回の選挙に懲りて国会議員は選挙区内を這い回る活動に埋没して、党としての組織回復に取組む議員は少ないだろう。そうなると参院選の勝利はむつかしくなる。解党的出直しをしなければ自民党の蘇生はむつかしいだろう。
 次期参院選では候補者の公募をしようとしているようだ。しかし、参院選は選挙区が大阪全域であり余りにも広過ぎるので、よほどの風が吹かない限り組織のバックアップのない新人は名前すら浸透させることはできない。こんな選挙に、組織にガタがきている政党がどのようなバックアップが出来るのだろう。選挙に関心のある者はこの辺りのことをシビアーに眺めているので、本格派の真面目な応募者があるだろうか。

公明党の選挙区全滅はどうしたことか

従前から、公明党は当選第一主義で落選の危険性がある地区には候補者を立てない主義であった。従って候補者数は決して多くはなかった。その代り当選確率はほぼ100%であった。ところが今回の選挙における結果は次の通りである。

公明党の選挙区候補は全員で8名であった。関東圏では、東京12区の太田昭弘、神奈川6区の上田勇、関西圏では大阪3区・田端正広、5区・谷口隆義、6区・福島豊、16区・北側一雄、兵庫2区・赤羽一嘉、8区・冬柴鉄三の8候補である。これらの選挙区には自民党は候補者を擁立せず自公の選挙協力区となっていた。それでも一人残らずすべて落選した。それぞれの選挙区における得票差はいずれも僅差であるが、公明党は比例区は比例単独制で、重複立候補制をとっていないので小選挙区候補はすべて落選となったのである。従来の選挙結果や実績からすれば考えられない結果であった。直前の東京都議選でも厳しいながら前回議席を確保する戦いをしていただけに今回の結果は驚きであった。

民主党の勝因は何か

今回の選挙は4年前の小泉郵政選挙の裏返しそのものであった。永過ぎて倦んでいた長期政権に対して国民の忌避感を旨くついた民主の戦略の勝利というべきだろう。
しかし、マニフェスト選挙だといわれながら、政策よりも「政権交代」だけで民主が勝利したことを思い起こせば、郵政選挙時には、その選挙区とは何のゆかりもない無名の新人が刺客として差し向けられ当選したことの裏返しそのものであった。
今回も同じ傾向が各所で見られた。長崎2区では福田衣理子(28歳)が久間章生を落とし、公明の太田を落としたのも千葉から比例で参議院に出ていた青木愛(44歳)であった。彼女は7月24日に記者会見をして立候補を表明し公明の党代表から議席を奪い取ったのである。ベテランだけが尊いのではないが、それでも国政選挙がこんな形で決着することで良いのだろうか。
また、政治家が官僚任せにしたことが官僚の腐敗を招き、政・官・業の癒着などは民主にとって追い風になっていた。

しかし、選挙前に問題になった小沢や鳩山の政治資金規正法がらみの不祥事が選挙に影響しなかったのは不思議でもあった。

大阪における自民候補の選挙結果

 大阪は19選挙区である。しかし、3区・5区・6区・16区の4選挙区は自・公協力区として自民党が候補者を立てていないので15選挙区での戦いとなる。

候補者別の予測は問題があるので1〜5選挙区、6〜10選挙区、11〜15選挙区、16〜19選挙区に分けて予想をしたのであった。

自戒の念をこめて再度その予測を記すことにする。

1〜5区   1議席確保できるだろうか。   結果は0
6〜10区  1議席±1議席          〃 0 
11〜15区 2議席±1議席          〃 1
16〜19区 1議席確保できるだろうか。    〃 0

この予想をネットで発信した時に、関係者からシビアー過ぎるとお叱りを受けた。選挙前の議席は選挙区だけで13議席あったのだから自民党の支持者からすれば身贔屓もあり無理からぬものだろう。敢えて我田引水的発言をすれば、±の予防線を張っているが大阪選挙区における予想はほぼ当たっていると自負している。しかし、全国の選挙情勢は分らないとはいえ、民主党が過半数を超えるとは思わなかったのは完全な読み違いであった。

民主 自民 公明 共産 社民 みんな 国民 諸派
北海道 1.348.318 805.895 354.886 241.345 113.562 460.797
東北 2.433.836 1.491.761 516.688 315.201 316.635 241.445 36.295
北関東 3.172.577 1.945.933 855.134 471.138 274.030 597.025 99.354 60.476
南関東 3.695.159 2.233.560 86.427 601.299 369.754 605.358 102.992 44.162
東京 2.839.081 1.764.696 712.199 665.462 299.032 419.903 86.046 35.667
北信越 2.007.770 1.333.082 333.084 274.816 225.992 240.333 32.312
東海 3.864328 2.182.422 891.158 486.974 264.957 404.411 130.212 57.222
近畿 4.733.415 2.592.451 1.449.170 1.067.443 411.092 465.591 169.380 80.529
中国 1.704.242 1.388.451 555.552 244.761 156.291 208.208 32.319
四国 973.038 719.594 293.204 150.171 94.558 19.507
九州 3.073.035 2.352.372 1.225.505 425.276 480.257 271.466 183.242 54.231
比例区 29.844.799 18.810.217 8.054.007 4.943.886 3.006.160 3.005.199 1.219.767 899.908
選挙区 33.475.334 27.301.982 782.984 2.978.354 1.376.739 615.244 220.223 1077.543

得票数からの選挙分析

 各派別得票数はいろんなことを示唆している。

 まず政党別の得票率・議席占有率を見てみると

選挙区の得票率 議席数 比例区得票率 議席数 合計
民主党 47,43% 221 (73,67%) 42,41% 87 308 
自民党 38,68% 64 (21,33%) 26,73% 55 119
公明党 1,11% 11,45% 21 21
共産党 4,22% 7,03%
社民党 1,95% (1,00%) 4,27%
みんなの党 0,87% (0,67%) 4,27%
国民新党 1,04% (1,00%) 1,73%
日本新党 0,31% (0,33%) 0,75%
改革 0,05% 0,08%
諸 派 1,53% 1,28%
無所属 2,81% (2,00%)

選挙制度のもつ特性と問題点

 現行選挙制度は「小選挙区・比例代表並立制」である。この制度の最大の特徴は重複立候補を認めることである。小選挙区に立候補した候補者が当選できなくても僅差で敗れた場合は、その惜敗率で名簿掲載順に繰り上げ当選できる仕組みとなっている。この論理は小選挙区は1人制であるから、勝つか、負けるかしかない。極端な例を挙げれば、当選者が10万票獲得し、次点が99,999票でも落選する。この結果は1票の重さからしても問題であり、死票が多くなるのでこれを救済するために比例区に重複立候補を認め、政党別投票数に応じて名簿掲載順に当選とする方法である。従って同じ小選挙区に立候補した3党の候補者がすべて当選するケースもあり得るのである。

こんなおかしいことがあって良いのか

近畿ブロックにおける比例区の当選者枠は29議席である。ところが民主党がほとんどの選挙区で当選したから民主党の当選枠以上に当選者が出る結果となった。そこで、自民党に当選枠が回ってきて、大阪14区で谷畑孝が32,000票差(76,6%)で負けたが、民主党枠がオーバーしたので当選となったのである。前回の郵政選挙に際しても同じようなことが起こり自民党枠で他党が当選したことがあった。こんなことが起きるから当選の確率が低くても比例枠に多くの候補者の名前を連ねるのである。但し、比例区の候補者名簿届出政党は比例単独候補の場合は供託金600万円が必要となるから、そう簡単に枠を増やすことはむつかしいのだ。因みに比例区の供託金没収の規定は、比例当選者数の2倍までは還付される。
東海ブロックでは静岡7区の民主党斉木武志は選挙区では惜敗率48,7%でも比例で復活当選している。また、同じ東海ブロックで静岡市議選で最下位落選者であった磯谷香代子は、公示3日前に民主党の参院議員から依頼を受け比例名簿の最下位に掲載された候補者であった。彼女も当選となり、国会議員になることに何のためらいもないと発言していた。
この選挙制度について各党から再検討すべきだとの意見がでている。
制度改正については、従来の中選挙区制へ戻すべきとする意見、比例区の定数180名を100名に減らすべきとする意見などがある。比例定数を減らすことにより総定数を400にする案には公明党、社民党、共産党は真っ向から反対している。その理由は前記の比例区の当選状況をみれば一目瞭然である。

選挙後の政権運営はどうなる

選挙前の予想では、民主党が安定過半数に届かないとの見方をしていたので、連立の形をめぐり政界再編が加速するのと考えていた。従って選挙後の関心は、民主を軸とする連立の形が注目の的であり、政界再編は避けられないと見ていた。ところが、民主が圧勝したので合従連衡はほとんど話題に上がらなくなった。
民主は選挙協力と参院の議席数との関係から社民と国民新党とに連立を呼びかけている。現に岡田克也幹事長と社民党福島瑞穂党首、国民新党の亀井静香新代表は政権協議に入ったが、岡田は何らかの協議の場の必要性を認めながらも政策は閣議に集約されるべきであるとして合意に至っていない。この協議はむつかしいし、容易に決着しないのではないだろうか。しかし、それでも参院における両党の議席数からして一定の配慮をしなければならず、民主党としては最初の難関になっている。
政策を閣議で一元的に決定するとなれば社民と国民新党から入閣者を迎えるということになるのではないか。両方合わせて10名の会派から2名の閣僚を迎えることに民主党内に不協和音はないのだろうか。

民主党のマニフェストから感じるもの

選挙に先立ち各党からマニフェストが発表された。それぞれを読み比べてみて感じることは「政権公約」よりも「政権交代」がマスコミの話題になり選挙民も現在の閉塞状態からの脱出にのみ関心があったようだ。

それでも政権公約として示されていたバラマキ型の政策は、貰えるものは貰う式の関心があったようだ。その典型は子ども手当てである。子ども一人に月額2万6千円の手当てを支給するというのは、子どもを持つ家庭にとって喜ばない家庭はないだろう。人数に制限はなく中学卒業まで支給し、公立高校の授業料は無料にし、私学に対しては年間12〜24万円助成をするというのである。大学・専門学校生には希望者全員に奨学金を支給するという。そのための所要額は5兆3千億円、いかにも大盤振舞であるがこんなことが出来るのだろうか。
農業政策に関しては、販売価格と生産費の差額を基本とする「戸別所得補償制度」に1,4兆円、高速道路原則無料化に1,3兆円、その他マニフェストに記載された金額だけを単純に合計すれば16兆9,690億円に達する。これらの財源は、予算を組替えすることや特別会計の埋蔵金などを含め無駄を排することで捻出可能であると主張していた。選挙中の党首討論や各党幹部との討論を聞いていても、その時点では民主は、野党であるから関係省庁は明確な資料を示さないから分りにくい点はあるが捻出できるというだけであった。財政の専門家筋からも余り評価されていなかった。それでも自民党よりはマシだとする機運が渦巻いていたのは、それ程自民党に対する信頼感がなかったからである。

安全保障に関する問題

選挙直前にニューヨーク・タイムスが掲載した鳩山論文が話題になっている。そのあらましを紹介すると、「日本は冷戦後、グローバリゼーションと呼ばれるアメリカ主導の市場原理主義に翻弄され続け・・・人間の尊厳は失われた」「グローバル経済は日本の伝統的経済活動を損傷し、地域社会を崩壊した」と説いている。
確かに小泉政権の時代にアメリカイズムが蔓延し日本の形が大きく変わったことは事実である。しかし、この原因と責任をアメリカによるものとする責任論は間違っている。むしろその責任は日本政府の執政のあり方に起因するものが大きい筈だ。アジアの一員に関する彼の論調もすこしおかしい。
鳩山は「国家目標は『東アジア共同体』の創設だ。むろん、日米安保条約は日本外交の礎石であり続ける。われわれは同時にアジアに位置する国家として地域経済と安全保障を築けあげねばならない」と論じている。
これに対し外交評論家の岡本行夫は、「アメリカは安保条約により日本を侵略から防衛することに法的義務を持った国である。一方の中国は92年に領海法により尖閣列島を中国領と宣言し、97年には国防法により海洋権益確保を海軍の主任務と確認し強力な外洋艦隊を建設中の国である。そのアメリカと中国を等置して、日本は如何にこれら2カ国から独立を保てるのか、アジア地域統合と集団安全保障体制にあるというが、国家体制、信奉する価値、そして軍事力が全く異なる国家が並立するアジアに集団安保に基盤が出来るのは遠い将来である」と批判している。
鳩山は、「世界の支配国家としての地位を維持しようと戦うアメリカと、これから世界の支配国になろうとする中国との間で、日本はいかにして政治的、経済的独立を維持すべきか。これは日本のみならずアジア中小国の悩みであり、地域統合促進の主たる要因である」と論じている。
これに対して岡本は、「米中と等距離を保ちたいのなら答えは一つしかない。独力防衛、つまり武装中立だ。このためには自衛隊の規模は少なくとも数倍にし、核武装もしなければなるまい。それが厭ならかつての社会党左派の主張のように非武装中立を主張するしかない」と評している。(産経9月1日朝刊参照)

もっと卑近な例を挙げれば社民党の主張との整合性の問題もある。インド洋における給油支援も即時撤収と、法律の期限である来年1月までの違いをどう調整するのか、非核三原則の密約問題でもかなりの差があるのは容易に纏まらないだろう。もっと基本的な問題では憲法審査会の活動を4年間凍結を主張している社民党と憲法改正を容認する民主党の多数派との調整も纏まる話ではないだろう。

官僚制の問題点の解決は可能か

民主党は日本の行政システムは議院内閣制ではなく官僚内閣制と比喩し、官僚の独善的傾向を抑え政治主導をすると公約している。この傾向は現実に国民も感じているところであり、この指摘に国民は期待している。しかし、日本の官僚は世界的にも評価が高く優秀である。それぞれの分野のエキスパートであり専門家集団である。彼らが所管する分野で、やるべきことを実現するために法案を起草し政治家が国会で議決する流れはごく普通の流れになっている。官僚の人事に関しても省内で独自の手法で毎年行なわれている。これを省庁のトップである所管大臣が決めることに省内に抵抗があるのが実態である。

ここで行政の執行に関する基本的な仕組みを改めて確認する必要がある。
三権分立にもとづく国家では、行政権は内閣に帰属する。それは、あらゆる行政を内閣が行なうことではない。行政権は行政各部の機関が行使し、内閣は行政各部を指揮監督し、その全体を総合調整する立場である。 

ここで問題なのはテクノクラートの集団である官僚が、持てる力を発揮して、ときには立法府の領域を侵すことがあり、これを抑制する機能が内閣に乏しいことである。この問題を新政権はどう改革するのだろうか。
非核三原則に関する密約の存在が問題化してきた。事務次官レベルでは申し送り事項であったものを大臣によっては知らされていない大臣がいたことも明らかにされた。考えてみるとふざけた話しながら、官僚が大臣を仕分けしている事実が明らかになったのである。日本の閣僚と官僚との関係が垣間見られる事例である。こんな信頼性も資質もない大臣が存在することが問題なのである。
民主党は政治主導のために百人ほどの議員を政府に送り込み政治主導を徹底するというが、それだけの人材があるのかも心許ない。政務官、副大臣など現行制度でも70人前後の衆議院議員が行政府に入り込んでいるが、多ければ良い問題ではないはずだ。
官僚制の改革は重要な課題である。しかし、「批判は容易であってもその実践は難しい」の言葉通り、その改革は容易ではない。新政権の力量が問われているところである。9月16日には閣僚名簿が発表される。新政権の顔ぶれがどんなものか、興味が尽きない。

民主党に望みたいことは、政策実現のために継続的な財源確保が可能か、国家戦略局という新しい機関は何をどうしようというのか。自民党政権下の経済財政諮問会議とどう違うのかなどを明確に示しさねばならないだろう。

野党となった自民党に望みたいことは、健全な野党として是々非々の対応をすることと、1日も早く永年にわたって政権を担当してきた政党として国民から再び認知されるような解党的出直しを実践すべきことである。

(文中敬称略)
平成21年9月9日
松 室  猛


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