松室猛のTMニ水会定例講演・資料

 平成20年07 戻る





原油の暴騰、食糧危機、気象異変、アメリカ経済の不透明化、世界各地での暴動の頻発など、俄かに世間の動きが慌しくなってきた。

アメリカでは時代を読み解くキーワードとしてwater shed moment(歴史の分岐点)の言葉が多用されているようだが、最近のニュースを眺めていると内外ともに大きな変革期を迎えていることに気が付く。

政治分野の動きだけを取り上げてもこの傾向は顕著である。
大統領選挙の前哨戦である民主党の予備選がやっと決着し、バラク・オバマ氏(46歳)は史上初めて黒人で大統領候補となり世界中から注目を集めている。この事が何故歴史の分岐点と呼ばれるのかは、アメリカの歴代大統領はWASPと称されるアングロサクソン系の白人でプロテスタントが主流を占めていたからである。また、ヒラリー・クリントン候補は、前大統領夫人であり上院議員としても著名であったことから指名争いの大勢はヒラリー候補が圧勝するとの予想が覆ったことによるものだろう。
民主党の予備選だけでも大きな変化が感じられるが11月の本選挙での共和党との戦いは、ブッシュ政権の不人気により初めて民主党の黒人大統領が誕生する可能性が出てきたからではないだろうか。

アメリカ外交にも北朝鮮のテロ指定解除など新しい動きが出てきた。
これらの動きはアメリカ外交の手詰まりの打開策の一つで、大統領選挙に向けて共和党の支持率拡大を狙ったものと言えるだろう。その結果、6カ国協議でアメリカを頼りにしていた日本は、またぞろ“置いてけぼり”を食うことになった。日本とアメリカとの関係も大統領選挙を節目として転換点に差し掛かっていると理解すべきだろう。

わが国と北朝鮮の間でも国交正常化の動きなど、従来とは違う動きが出てきた。
日朝会談で拉致問題に関して再調査が話題になっているが、おそらくこの動きは複数少数の拉致者の解放を「撒き餌」として、北朝鮮が莫大な補償を引き出すために日朝交渉を主導しようとしていると見るのは穿ち過ぎだろうか。

お人好しの福田政権が、それによって現政権の支持率浮揚が図れると考えているとすればトンだ茶番である。
解散も出来ない、さりとて後継争いも日和見をする連中ばかりで閉塞感が蔓延しているが、そんな中で次の動きが大きいものである前兆が感じられるのは、まさに分岐点に指しかかっているからといえそうだ。

大阪府も歴史的な分岐点を迎えた
本年初頭に38歳の橋下徹知事が誕生し、かつてない勇気ある改革を提唱し大きな変革点を迎えている。
新知事誕生に至る経過は、チョットおかしい金銭感覚があったとはいえ、政治生命を断つほどの失政がなかった太田房江前知事がすべての党派から見放され出馬できない状態に陥ったからである。女性だからということではなく本人の資質によるものだろうが、その主たる原因は議会との対話の欠落であった。
政治家が最も心すべきことは、各界各層の人達と広く意見交換を図ることであり、厳しいことを言う相手に対し、好き嫌いの情緒的対応をすればこのような結果を生むことを心しなければならないだろう。

「議員の動きが気になる季節」と題した所以は、これからしばらくの衆議院議員の動きも気になるが、新しい知事を迎えた大阪府議会が橋下改革にどう対処するのかが見ものであり、どんな動きをするのかを見守りたいと思ったからである。

判りにくい国会の動き
まず国会議員についてであるが、危機に瀕する国民生活と国家財政に対して自分はどう考えているのかを明確にする必要がある。国民の生活を直撃している物価高については、世界的な環境変化や経済変化によるものだけに議員個人に対して、どうこうしろとは言わないし、言えないが、何も言わないのは逃避に等しく無責任である。具体的には医療費や福祉関係費の増嵩に対してどう対処するのか、そのために国民の負担増になる消費税率のアップが取り沙汰されているが、自分はどう考えるのか等について、勇気を持って発言するべきである。ところがこの種の発言を地元の国会議員から聞いたことがなく、地元の会合に挨拶程度にしか顔を出さないようでは、難しい時代を任せる気になれないし、日本の政治のみならず世界中が大きな分岐点に差し掛かっていることを理解しているのかと疑わざるを得ない。

現在、わが国政治を不透明なものにしている最大の原因は衆参の捩れによるものと、与野党ともに、どうにも合点がいかない対応が多過ぎるからではないだろうか。
最近の国政に関する最大の茶番は参議院における問責決議ではないだろうか。
先の問責決議は何だったのかと国民は不思議な感じで眺めているだろう。

問責決議と政党の思惑
平成20年6月11日に参議院で首相の問責決議が可決された。
問責決議とは、参議院には内閣不信任案を提出する権限がないので政府の政治的責任を問う目的で参議院において提出される決議案のことである。
憲法に定められた手続きではないので法的拘束力はないが、憲法上、内閣は国会に対して連帯して責任を負う建前から可決されると政権にそれなりの影響を与え、また閣内にとどまれば、野党が国会審議に応じないことから国会運営に支障をきたす可能性がある。

しかし、今回の問責決議は会期末になってから提出・議決されたので実質的な審議拒否は行なわれず、ほとんど影響は無かった。
提出者である民主・社民・国民新党はその提案理由の中で、政府が参院で議決した後期医療制度の廃止を拒否したことや、ガソリン税の暫定税率復活、年金記録紛失問題などを挙げているが、参院での可決を受けて翌12日に直ちに衆議院で信任決議をするなど、今国会に関する限りその影響は無に等しいものであった。しかし、考えてみると衆参両院とも数を頼りに、参院がそうするのなら衆院はこうするまでだといった、子どものケンカの様相を呈しているのは、国権の最高機関の対応として、少し大人げがなさ過ぎるではないか。

問責決議の提案趣旨は、前述の理由と直近の参議院選挙において与党が信任されておらず、福田首相の支持率が25%前後と低迷しているのは国民から信任されていない証拠であるとし衆議院を解散して国民に信を問うべきであるというものであった。
ところが、老人保健制度の見直しに関しては平成12年に共産党を除く与野党が付帯決議で確認しているだけに、参院で後期高齢者医療制度の廃止法案を可決したとしても代替案を示していないのは不作為かつ無責任であり、自らが加わった議決に対する軽視というべきではないのか。こんな事では高齢者の「受け」を狙ったパフォーマンスといわれても仕方ないだろう。
年金記録のデタラメさが問題だとすれば、所管する厚生労働大臣の問責が筋であり、首相問責は、「為にするもの」でしかないが、福田首相は、辞任も解散もする意思がなく、あの決議は何だったのかと国民は不可解に思うだろう。

どうなる、これからの政権運営
しかし、もう一つの問題点は、問責決議は今国会だけでなく次の国会でも総理が同じである限り継続するので、民主党や社民党は本当にこれからの参議院の総ての審議に応じない積もりだろうか。そんなことをすれば政局はますます混乱するが、審議に応じないことに対して国民はどのような反応をするだろうか。
審議拒否に対する国民の反応を懸念する意見が民主党内にもあるようだが、そうなると民主党も審議拒否を貫けないだろう。だとすれば問責決議は益々意味を持たないものになるだろう。

洞爺湖におけるサミットの終了後に起死回生を狙って内閣改造をするのではないかとの憶測もあるが、改造によって簡単に政権浮揚につながるとは思えない。もし内閣改造で人気浮揚のために「人集めパンダ」の如き軽薄な人気者を入閣させるようなことをすれば、さらに国民からひんしゅくを買い墓穴を掘る結果になるだろう。

次期衆議院選挙はどうなる
現在の衆議院議員の任期は来年9月だが、現政権がかなり不評でありながら、それなりに小康状態を保っているのは、野党に解散に追い込む迫力がないことと、自民党内に次期政権をにらむ有力議員が政権交代について日和見をしているからである。しかし、それでも任期満了までに解散は避けられないとの見方が強いが、その時期がいつなのだろうか。
国会の解散権は首相の専権事項であるが、この前の解散による衆議院選挙は郵政選挙といわれ自民党が圧勝し衆議院では安定過半数を得たが、この状態で解散しても現有議席確保はまず不可能だろう。

福田政権初の国政選挙である衆院山口2区の補欠選挙が4月27日に行なわれたが、民主党の平岡秀夫氏が自民党公認、公明推薦の山本繁太郎氏を2万票を越える大差で破っているし、沖縄県議選における与党の過半数割れなどからして解散総選挙をしても自民党が躍進する要素は考えられない。
勝てない選挙をするために解散する首相はいないだろうが、防衛省の汚職、年金記録の紛失、道路財源のデタラメな使われ方、財務省を筆頭に各省にも居酒屋タクシー問題などの不祥事が続き、庶民はあらゆる分野の物価高騰に喘いでいるが、それでも明確な対応が出来ない政府に対し現職議員はどう感じているのだろうか。国民の不満が爆発しない方が不思議なくらいなのに、政権交代が具体の話題に上がらないのも不思議な話である。

これほどの閉塞感が満ちている世情は珍しいといえるだろうが、然らばどうするのかが問題である。
選挙をしても勝てない理由は沢山あるが、政党に対する不信と政治家不信の状況から帰納される選挙結果はどうなるのだろうか。
現行選挙制度は、人ではなく政策を中心に政党を選ぶ制度であるが、依然として人を選ぼうとする傾向は残っており、政党も候補者も信頼できない現下の状況では日本全国のあらゆる選挙区で、どの党が勝利するなどといった「風」が吹く可能性よりも、「この選挙結果は何を意味するのだ」といった感じの選挙になる可能性が強いと思う。
しかし、従来の選挙結果は、現政権に失望している場合は対立する政党の政権担当能力の有無に関わらず、そちらに流れる傾向があるから現政権が苦しくなることは避けられそうにない。

大胆な予測をすれば・・・
そうなれば政局は今まで以上に混乱するのは明らかである。
仮に、解散の前に閉塞感を打ち破れるような選挙管理内閣をつくり、新しい政権のもとに選挙をして自公が政権運営を維持出来る議席を得たとしても、衆参の捩れは従来のままであるから、残念ながらわが国の政治情勢の不安定状況はしばらく回復しそうにない。

しかし、この考え方は既存の政党がそのまま推移することを前提にしているものだが、政界再編が加速する可能性はかなりの確率で考えられるだろう。
自民党内でも派閥を越えての勉強会や、超党派の勉強会が大流行だが、かつて話題になった大連立は陰を潜めているが、これとても9月の民主党代表選挙で小沢代表が変われば復活の可能性は皆無ではないだろう。民主党の前原前代表は、かなり明確に小沢路線に不協和音を唱えているが、彼に党を割るだけの力量が感じられないのは少し寂しいが、選挙前は無理でも選挙後の議席状況によっては政界再編が一気に加速する可能性は充分あるのではないだろうか。
合従連衡なのか、新党の誕生なのか、種々選択肢があるようだが、現在の様子を眺める限り二大政党制からかなり外れる形での小党の複数連立の可能性が高いのではないだろうか。
いずれにしろ、次の選挙は既存政党間の戦いだけに収斂されるほど単純ではないだろう。

どうなる大阪府政のこれから

橋下改革の評価
橋下知事が就任直後にプロジェクトチームを立ち上げ、初年度1,100億円の削減計画を作成させ話題になったが、その中身は事業費は勿論人件費も大幅に切り込むものであった。
PT案を各部局や関係諸団体に示し意見聴取をした上で最終的に知事が政治判断をして予算案が編成されたが、まず何よりも評価できることはPT案を取捨選択をしたものの、総額1,100億円の削減総額をそのまま踏襲したことである。ただし、収入の範囲内で予算編成をするために府債の発行をしないと言い切っていたが、自民党などの意見を取り入れ、退職金引き当て額だけは府債の発行をすることになっているが、この措置は退職金の平準化の観点からして許容されるものといえるだろう。

7月1日から始まる臨時府議会で知事提案の予算案が審議されるが、最終的にこの提案内容がどこまで具体化されるかは流動的であり、個別には歳入確保のための資産売却も買い手がつかねば計画倒れになる話であり、最大の問題とも言われる人件費カットに関する労使交渉も現時点では不透明さは拭えない。
職員給与は必ずしも同意を必要とせず条例を改正すればできるが、議会の議決は必須要件である。

議会自身はどのような改革をするのか
知事は自らの報酬を30%、退職金の50%カットを打ち出し、ともに痛みを分かち合う態度を明確にしているが、この状況を受けて議会はどんな対応をするのか、府民は大きな関心を寄せている。

報道によると、議員報酬削の削減率に関して議論が輻輳し難渋しているようだが、知事の大阪復権への意欲を評価し、自らも痛みを分かちあう対応をしなければ府民は納得しないだろう。
定数削減も話題に挙がっているが、まず当面の対応として議員報酬を考えてみる必要がある。

議員報酬の決め方
議員報酬は、府庁外部の有識者10名で構成する特別職等報酬審議会に知事が諮問し答申を得て決定される仕組みになっている。府議会議員の報酬は昭和63年から平成4年まで改定されていなかったが、前回の改正で82万円から93万円に改正された。それ以来現在まで16年間改定されていない。
現在大阪府議会議員には議員報酬と交通費等を支弁する費用弁償と政務調査費が支給されている。その詳細は次のとおりである。(期末手当も支給されている)
報 酬
議 長  月 額 117万円
副議長   〃  103万円
議 員   〃   93万円
費用弁償
居住地域により異なるが大阪市内の議員は7,000円、郡部の議員は居住地域により9,000〜15,000円が会議出席の度に支給されている。
政務調査費
  議員個人に対して  49万円
  会派に対して    10万円
政務調査費に関しては、監査請求が出され大阪府では外部監査を導入した結果多額の不適正支出が指摘され返還された額が多かったが、事後改善されて総ての支出に領収書の添付を義務付け透明化が図られている。

適正な議員報酬とは何か
この問題に関する解答は大変難しいが、特別職の報酬と比較する必要もあるだろう。大阪府の特別職の報酬は
知 事   145万円
副知事   114万円
知事は報酬月額の30%を削減、副知事は20%削減を7月議会に提案し、8月から実施すると決めている事実を議員は厳粛に受け止めるべきである。

そこで議員報酬の削減幅についてであるが、知事、副知事との整合性を考慮して25%削減を実施すべきことを提案したい。
議員報酬の25%は232,500円で、支給額は697,500円となるが、このくらいの削減をしなければ府民も職員もその気概を評価しないだろう。
この金額が妥当かつ適正であるかはどうかは誰しも直ちに判断出来ないだろうが、今必要なことは改革への決意をより明確にし、府職員は勿論のこと、府民とともに痛みを分かち合いながら一緒に汗をかく姿勢を示すことである。

今回のPT案に基づく予算案は、前述のごとく資産売却のみならず、議会審議の経過の中にもかなりの流動性を孕んでいる。加えてこの改革は単年度だけでなく来年度以降も継続されるものであるが、PT案が作成された時点の税収見込みを既に1,270億円下回る予測が報じられているのは悩ましい限りである。この原因は大阪府の歳入構造にある。大阪府の税収は法人2税に軸足をおく構造になっており、最近の景気動向からすれば法人所得の落ち込みに連動して減収は避けられないからである。これらは財政構造そのものが制度疲労をきたしているからであり、大阪府の努力だけではどうしようもないことであるが、このような財政事情を誰よりも詳しく承知しているのは議員であるから、それなりの決意を示し、まず議会が率先垂範すべきであろう。

ところが議員報酬の削減幅に関して6月中旬を過ぎても共産党を除きすべての会派がその額を提示していなかった。現実には各派内で大変な議論が繰り返されている筈だが、一切表面に出てこないのは会派内でまとまらないこともあるだろうが、自・公・民の三派が、他派に先走られることを嫌うあまり共同歩調を取ろうとしているとしか思えず、大変不明瞭であった。
すべての決め事は各派の合意が前提であるが、最大公約数を求めるに際し意見調整ができない場合はそれぞれの見解を明らかにすべきである。

先日、府議会の正副議長がテレビで報酬問題を語っていたが、副議長が「議員には退職金がなく厳しいものがある」と発言したのを聞いて驚いた。退職金と報酬とを同列で考えることもおかしいが、知事や副知事に退職金が支給されるのは彼らが常勤であり、議員は非常勤だから退職金が支給されないのである。従って兼職禁止規定も議員には適用されないが、この違いを理解せずに報酬論議をすることは如何なものだろうか。
その後6月24日に議会運営理事会が開かれ、ついに各派が議員報酬の削減幅を正式に提示した。その内容は自民が20%、公明・民主・共産は10%であった。政調費については自民・公明が20%、共産は10%、民主は5万円もしくは10%削減する案であった。

若干の経緯を経て議長団は各派の違いを調整すべく15%削減案を調停案として示したが、7月1日の本会議前の理事会で自民を除く各派はこの案を拒否したために、白紙に戻すことになった。

これで良いのか、議長団の対応
ここで不思議に思うことは議長団が調停案を示す前段で正副議長の意思統一がなされていたのかについてである。
議長団は議会運営に関して超党派的な対応をすべきであるが、府議会の正副議長は国会と異なり政党所属のまま就任しており、自派に根回しができていない状態のまま議長団として調停案を示すことなどあり得ないことではないのか。
民主・共産両党が議長提案を拒否することはあり得ても、副議長会派が拒否するとはどういうことなのか。

かつて議長の役割に関する議論の中で「議長とは進行役であり、各派折衝は幹事長の仕事だ」と言い切った議長がいたが、こんな感覚で議長職を捉えているとすれば何おかいわんやであり、こんな議長の斡旋など各派が聞く訳はないだろう。こんな事をしているようでは、平時は良いが混乱すれば収拾がつかなくなるだろう。

政務調査費についての考え方
監査結果に基づき不適正支出が指摘されていたが、その傾向が皆無ではなかったとしても監査委員の指摘には直ちに同意しかねる論点があった。
現在の執行状況にも、かなりの偏見に基づく支出制約があるようで、こんなに使い勝手の悪い政調費なら削減しても良いと感じている議員がいるようであるが、本来政務調査費は府政の根幹をなす政策決定作業に支弁されるものであり、議員本来の活動原資であるから安易に削減すべきではないと考える。
真面目な政策立案のためのあらゆる作業について支出を明確にすることを前提に、もっとおおらかな対応を許容すべきである。

政調費に関する監査結果に驚き、世評を気にして慌てて返還する議員があったことは記憶に新しいところだが、その結果、窮屈な政調費を削っても良いと考えているとすれば本末転倒である。従って政務調査費は本来削減すべきでないと考えるが、かなりの事業費を削減しなければならない現状に鑑みて、この際10%の削減は止むを得ないだろう。

その他の費用
費用弁償は不透明な部分が多いので廃止すべきである。支給するとすれば交通費の実費のみとすべきである。

議員は信念に基づき堂々と発言すべきである
これから各派の主張の違いについて議会で議論が始まるだろうが、議員諸氏は、今こそ、「自分はこう考える、かく信ずる」との所信を胸を張って発言すべきである。

少し次元は違うが、政治家の発言や政府の対応に関して、忘れられない出来事があった。

先日、台湾政府の劉兆玄行政院長(首相)が尖閣諸島近海で日本の海上保安庁の巡視船と台湾の遊漁船が接触し転覆した事故に関して、6月14日の立法院において「開戦の可能性を排除しない」との強行発言をしていた。
自国の領土だと主張するからには当然の発言だと思うが、これが日本なら、いくら勢い余った発言でも「強硬に抗議する」くらいの発言しかしないだろう。
日本側は謝罪と補償を申し出たが、今後の日台関係が気がかりだ。
日台間には国交がなく漁業協定がないので尖閣諸島近海でのマグロ漁業などをめぐる摩擦が絶えない。これからは日本の排他的経済水域内で巡視船の護衛とともに領海侵犯を繰り返すのではないかと懸念されるが、こんな事態に対して日本政府はどんな発言をするのだろうか。今までのような不明瞭な発言を繰り返す弱腰外交では、ずるずると相手のペースに引き込まれる可能性は避けられそうにない。

少し話しは旧いが、領土に関して忘れられない事件があった。
1982年、サッチャー首相の時代にフォークランド紛争が勃発したが、あの事件はアルゼンチン沖に僅か12000平方キロ位しかないイギリス領の島をアルゼンチンが占拠したことに端を発した紛争である。実際には歴然たる戦争であった。約3ヶ月間戦いが繰り広げられイギリス軍が制圧したが、双方の戦死者901名、撃沈された船舶は双方で11隻に及んだが、本来領土を守るとはそのようなものである筈だ。

日本が抱えている領土問題は、尖閣諸島、竹島、北方領土など、海洋国家日本としては海底資源、海洋資源確保の観点からもないがしろに出来ないはずなのに、驚くべき弱腰なのは何によるものだろうか。
国際紛争を解決する手段として武力行使をしないことを明文化している憲法の制約があるからだ。然らば無人のわが国領土に外国軍が実力で占拠しようとした時はどうするのか。こんな問題に対処するために直ちに憲法規定を廃棄せよとは言わないが、外交交渉を通じて解決するというのなら政府、あるいは政治家はこれくらいの気概を持った発言や行動をすべきある。

北海道洞爺湖においてサッミトが開催され世界各国の首脳が集うが、この機会に北方領土を展望できる地域を案内し、日本の領土問題に関する関心の高さを理解させるくらいのことをすれば国内における福田政権の評価は上がるだろう。しかし、摩擦を避けることのみに腐心している福田首相や日本の外交筋には出来る筈がないだろう。

時代は大きなうねりの中で着実に変化を続けている。
今ほど、地方自治体のあり方、地方議会のあり方が問われている時代はない。大阪府は意欲的な知事を迎えて大胆な改革の第一歩を踏み出そうとしており、この機を逃がさず議会も苦しみを乗り越えて大阪再生のために立ち上がるべきである。

国会議員諸氏にも申し上げたいことは、これ程閉塞感に満ちている世情に対して、より明確な自己主張をされるべきだということである。
国、地方を問わず、調子の良いことだけをいう議員など、何の役にも立たないことを選挙民は良く知っている。
代議制民主主義の本旨にたち返り、国民の思いを代弁し、時には国の将来のために国民に対して耳の痛いことでもハッキリと発言するような議員が、今一番求められていることを知って欲しいのである。

大阪府議会議員各位は7月臨時議会に、「選良としての矜持」をもって臨まれることを期待し、国会議員諸氏にはサミット後の臨時議会の前段で、それぞれの地域に帰り、自らの信条を堂々と披瀝する対応を期待したいものである。

平成20年7月
松  室   猛



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