腰椎不安定症に対するセミフレキシブル半硬性コルセットについて
腰椎 体幹装具 プラスチック
増田医院*
葵義肢製作所**
*増田 和人
**山口 吉彦(PO) **橘 秀一(PO)
【はじめに】腰椎不安定症は腰椎変性すべり症の一形態である。腰椎が不安定な為に腰椎固定術が必要となる場合が多いが手術成績はあまり良くない。今回、厚さ1.5mmの軟性ポリプロピレンを使用したセミフレキシブル半硬性コルセットを作成し、それを着用することで腰椎の安定化を図り腰痛の軽減を認めた症例があるので報告する。
【症例】
55歳 男性 慢性腰痛を認めていたが、突然腰痛が増強した。腰椎X線検査にて第4、第5腰椎間で屈伸時に腰椎が前後に動き、MRI画像では腰椎の椎間板の変性を認めた為、腰椎不安定症と診断した。安静時は腰痛の軽減を認めるが、動作時は腰痛が持続した。保存的治療で加療を続け、ダーメンコルセットを作成し着用するも、動作時の腰痛が持続した為、
今回、厚さ1.5mmの軟性ポリプロピレンを使用したセミフレキシブル半硬性コルセットを作成し装着した所、動作時の腰痛が軽減された。
【制作】
《採型》安定した立位の状態でギプス採型を行った。
特に絞り込みはせず、肩甲骨下端部から仙骨部までを採型した。
《軟性ポリプロピレンの厚さについて》
軟性ポリプロピレンの厚さを1mm、1.5mm、2mmの3種類で作成した。1mm厚は装着感は良好だが、安定性に弱く、2mm厚では安定性は良いが装着感が悪く、結果的には1.5mmのものが安定性と装着性が伴に良好だった。
《トリミング》腰背部の後方半分までは軟性ポリプロピレンで作成し上方は肩甲骨下部の高さまで、下方は仙骨部までとした。腹部側の前方部は伸縮性のあるメッシュの生地で作成し、上側方は肋骨弓がかかる高さで、下方は前上腸骨棘の2横指下方とした。
【セミフレキシブル半硬性コルセット】
軟性ポリプロピレンで作成した半硬性コルセットは軽いが半筒型である為、縦方向に対する固定は良好であるが、回旋に対する固定性は少ない。そして仰臥位では違和感が少ない為装着したままでも長時間の臥位が可能であった。又、従来の半硬性コルセットより柔らかい為、「セミフレキシブル半硬性コルセット」と名付けた。
《装着感》軟性ポリプロピレンは軽くてある程度柔らかい為、装着感は良好で長時間装着することが可能であった。只、軟性ポリプロピレンが体温を閉じこめるため、夏季の様な高温多湿の環境では汗が溜まりやすく装着感は悪く、逆に冬季は寒さが防げるので装着感は良かった。
【経過】
発症後2年6ヶ月が経過するが、発症後約10ヶ月間本装具を使用した後体幹筋の強化訓練を行い、腰痛が再発する時に1週〜2週間の短期間本装具を使用している
【考察】
腰椎不安定症は腰椎の安定性を図る必要があるが、ダーメンコルセットの様な軟性コルセットでは固定性が弱く、腰痛を軽減しにくい。特に動作時には固定性のある硬性か半硬性コルセットが適しているが従来のものは強固で重いため装着感が悪く長時間の装着が困難になる結果、活動量が減少する。装着感の良い半硬性コルセットを使用すれば活動性を上げて腰痛も軽減できると考えられる。それにより体幹筋の低下をある程度防ぐ効果も考えられる。手術成績も椎間板ヘルニアほど良くはないことから、長時間の装着が可能なセミフレキシブル半硬性コルセットは腰椎不安定症に適した装具と考えられる。
又、問題点としては高温多湿の環境では装着感が落ちる。固定性を保たせた状態で通気性をいかにあげるかは課題である。
そして、長期間セミフレキシブル装具を装着する事による体幹筋の筋力の弱化の有無等も検証されなければならない。
【参考文献】
1)川村次郎 竹内考仁 編集:
義肢装具学 医学書院