それではこれまで学習してきたことを整理しながら、離散フーリエ変換 (および離散逆フーリエ変換)について考えてみましょう。スペクトル解析 では、時間領域における信号データを周波数領域に変換して考えます。 これまで習ってきた、フーリエ級数(展開)、フーリエ(逆)変換、 離散時間フーリエ(逆)変換と今回学習する離散フーリエ(逆)変換とは どこが違うのでしょうか。これを理解するのが今回の講義の目的です。
変数 | 時間領域 | 変換公式 | 周波数領域 |
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パラメータ | ![]() |
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状態変数 | ![]() |
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性質 | 連続・周期関数 | 離散・無限次元 | |
フーリエ級数 | ![]() |
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フーリエ展開 | ![]() |
変数 | 時間領域 | 変換公式 | 周波数領域 |
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パラメータ | ![]() |
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状態変数 | ![]() |
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性質 | 連続・非周期関数 | 連続・非周期関数 | |
フーリエ変換 | ![]() |
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逆フーリエ変換 | ![]() |
変数 | 時間領域 | 変換公式 | 周波数領域 |
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パラメータ | ![]() |
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状態変数 | ![]() |
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サンプリング間隔 | ![]() |
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性質 | 離散・無限次元 | 連続・周期関数 | |
DTFT | ![]() |
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IDTFT | ![]() |
変数 | 時間領域 | 変換公式 | 周波数領域 |
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パラメータ | ![]() |
![]() |
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状態変数 | ![]() |
![]() |
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性質 | 離散・有限次元 | 離散・有限次元 | |
DFT | ![]() |
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IDFT | ![]() |
これらの表でもわかるように、コンピュータで実際に処理が可能なのは 最後の離散フーリエ(逆)変換だけです。 しかし、他の変換が信号処理で不必要というわけではありません。まず 数学的な解析はもともと連続空間で議論されているので、フーリエ級数、 フーリエ変換の考え方を理解することは大変重要です。また後半で学習する フィルタの設計では、離散時間データの系列に関して、連続な周波数領域で考察するので 離散時間フーリエ変換を使用します。 上記の4つの表で理解しておいてほしいのは 時間領域・周波数領域でそれぞれ連続空間・離散空間のどちらで取り扱うのか、 またその対象となる信号の周期性・非周期性に注意してください。 われわれのまわりにある現実の信号のほとんどは非周期信号といえるかも しれませんが、 離散フーリエ変換では有限個のデータを仮想的に周期信号とみなして 議論します。数学的な特徴は、教科書(p.86-97)にまとめられているので、そこを わかるまで熟読してみてください。
それでは、離散フーリエ変換の計算処理について考察を進めてみましょう。 DFTの計算はそのまま行うことはなく、次回学習する高速フーリエ変換(FFT) を用います。
N個のデータをサンプルしたとき、 離散フーリエ変換の指数表示の代わりに以下 の記法を使用します。
複素空間でこの量は半径1の円周上 を回転することから、回転子と呼びます。データ数が2の倍数 なら、回転子の位置はどのように変化するでしょうか? たとえばN=4の場合について考えてみてください。
図をみてわかるように、2の倍数に応じて、規則的に 同じ場所に点がくることがわかりますね。高速フーリエ変換は このことを利用して、効率よく計算処理のできるアルゴリズム です。詳細については来週の講義のときに考えることにして、 ここでは回転子を用いて離散フーリエ変換と逆変換を 書き直してみましょう。
このように書くと見通しよく計算ができます。教科書にも書いてあり ますが、離散フーリエ変換と逆変換は この変換を和記号をなくしてマトリクスとベクトルで表記してみましょう。