信号解析第1回

講義スケジュールをみてわかるように、この講義では一貫して「時間とともに 不規則に変動する信号の処理」を実現する方法について学習します。 時系列信号(Time Series Signal)とは時間の経過とともに不規則に変動する信号のことです。 このような信号はごく日常わたしたちのまわりで取得することができます。たとえば 1日の気温は時間とともにある一定の規則で変動していきます。小学校で晴れた日なら 午後2時頃最高気温となり、夜があける直前(すなわち太陽が昇る前)が最低気温となる と学習したでしょう。しかし実際には天候によっては2時に最高気温になるとはかぎりません。 1日全体の温度変化は場所、季節、天候によって多少変動してきます。 このようにわれわれの取り巻く環境では、さまざまに不規則な信号があります。 また人間社会においても、さまざまな不規則な信号をみることができます。 たとえば株価や為替の交換レートなど経済システムで生ずる時系列信号は 多国間のマーケット状況に応じて複雑に変動することはみなさんも経験しているところです。

ではこのような時系列データの特徴をどのように捉え、そして解析・処理を進めたらよいのか。 本講義においては、 これを確率・統計学の知識を援用しながら学習していきます。みなさんが確率を学習するとき は簡単な例題としていつもコインの裏表やサイコロを振る問題がでてきて、そのあといきなり 難しい積分論の話になったことを経験したかもしれません。確率・統計というといつも難解 でよくわからない、結局平均値や偏差値といったキーワード だけに終わってしまいがちです。しかしながら確率・統計は工学における設計問題とも 深く関わる大事な事項です。ここでは、コインのトスなどの簡単な問題をシミュレーション を通じて実験し、そこから時系列信号の統計量、それとスペクトルの関係、不規則変動の数学モデル の学習を行い、時系列の信号処理の実相にせまりたいとおもいます

なお今回の講義では、講義をわかりやすくするためにExcel2003を用いた実験を行います。受講生 のみなさんは、講義終了後、各自Excelにより学習内容の確認をしてください。 Excelを使用することにより、実験をおこなうのに必要な無駄なプログラミングを省き、講義の 内容を理解することを心がけてください。