鈴木彫刻所

鈴木彫刻所の仕事(その1)

鈴木彫刻所 画像は、彫刻師である鈴木さんが、竜頭を彫っておられるところです。
素材である松に鑿(ノミ)を入れる手際は、正に、目を見張ります。全身の無駄の無い動きとリズムが刃先に集中し、刻々と形になってゆくのです。

勘だけで作業が進められます。
彫りだされる形とは、鈴木さんの頭の中に在るというよりも、鑿(ノミ)と一体になった、こうした優雅で洗練された全身の働きによって生まれるのではないかという気がします。

鈴木彫刻所 一つの工程に、多い時には二十数種類ものノミが使われるといいます。刃先の形状に、平やマル、突きなどがあり、用途に応じて、形状や切れ味に対し、馴染みの鍛冶屋さんに注文を出すそうです。
鍛冶屋さんの焼き入れ方一つで、切れ味が変わるといいます。
刃を支える柄は、継承された形にそれぞれ工夫を加え、ご自分で一本、一本、作られるそうです。

鈴木彫刻所 ノミの種類によって、動かすリズムや素材の持ち方が変わり、目にも止まらぬノミ捌きとなります。
この辺りまで来ると、私の目や、カメラのレンズでは追いきれなくなります。

鈴木彫刻所 左のノミは刃渡り10cmはあろうかと思われる、クリ小刀と呼ばれるものです。
ノミの種類によって、あるいは、彫刻の工程によって、目にも止まらぬノミ捌きになったり、慎重なノミ捌きになったりします。

鈴木彫刻所 このようにして彫りあがる竜頭のフォルムとは、代々、継承され、又、それぞれの工夫、発展により変遷を遂げたフォルムであるといえるでしょう。そしてそのフォルムの継承、変遷とは、ノミ等の道具や技の継承、工夫、変遷に重要に関連付けらているという気がします。

工房の奥には、今でも使用されている、先代が考案、製造されたという長い木製の柄を持つ、糸鋸ミシンが据付られており、そして、その隣には先々代が作られた糸鋸ミシンが威風堂々と据付られていました。

鈴木彫刻所の仕事(その2)

鈴木彫刻所 先代の作った糸鋸ミシンで仕事をする、鈴木さんです。そして手前に見えるのが先々代が作った糸鋸ミシンです。
この時は、彫刻をする前の木製ブローチを、厚さ約2cmの木材を二枚重ねた素材から切り抜いておられました。

鈴木彫刻所 床下に設置してあるモーターからベルトにより、連動したシャフトが回転しているのが見えます。膝元にある、木製のレバーを手前に引くと、回転運動が二本の長い柄の上下運動に伝わります。
その柄の先端には、細くて薄い歯が取り付けてあり、それによって、素材となる木材を、かなりの精度で切り抜くのです。

歯の部分は、長さが約10cmあり、高さは2ミリも無いでしょうか、そして厚みは0コンマ1ミリ程しかなく、おまけに歯にはアサリが付けられていません。こうした精度の高い歯と、歯の動きに合わせ、すばやく素材を回転する技により、かなりの鋭角でも、淀みなく切り抜くことができます。
この時は、複雑な下書きをされた、ブローチ一個分を(二枚重ねであるから二個分ですが、)30秒足らずで切り抜かれておられました。脇から見ている分には、「楽々と」仕事をされているという印象です。

鈴木彫刻所 鈴木彫刻所

鈴木彫刻所 その技が、いかに難しく、熟練を要するかを納得できるのが左の画像です。
決して不器用ではないと自負する私(岡田)ですが、「萬」の下書きを施した板材の切り抜きに挑戦し、そして惨憺たる結果になりました。
「萬」の文字が真っ二つに割れ、折れた歯が素材に食い込んでいるのが解ります。慎重に進めたつもりだったのですが、やはり、素材を回転する手に力が入りすぎ、歯に加重をかけ過ぎたのでしょう。
高価な歯を破損してしまい、鈴木さん、ごめんなさい。

鈴木彫刻所 左は鈴木さんが杉材を切り抜いた、祇園祭でお馴染みの巴紋と木瓜紋です。
径6〜7cmの紋からすると、その精度の高さが伺えます。

彫刻師の仕事は、何と言っても失敗が許されないということかと思います。箔押しの仕事と違い、彫刻の仕事は、やり直しが利かないということです。万が一、失敗すると、その旨を施主に報告し、素材の提供を請わなければなりません。
その素材が高価であればあるほど、失敗は許されないといった、厳しく、難しい、熟練の必要が重要となる仕事といえるでしょう。

鈴木彫刻所・京都市下京区河原町通上ノ口下がる大工町478 電話075-371-4591

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