仮面舞踏会          
                    BY 流多和ラト


<エピローグ >

 目が覚めると、そこは寮の自室である事が視界に飛び込む情報から新一には分かった。
そして自分があのまま気を失ってまる半日近く眠り続けていた事も。
窓から差し込む柔らかな日射しの角度は高く、鏡を覗き込んだように同じ顔が一瞬で振り
返ると酷く真剣な面持ちで己を見つめてきたのだ。
こちらが見つめ返すと昏く翳っていた瞳はたちまち光を取り戻し、後は何事もなかったか
のように微笑まれる。
 「…気分はどう?」
 「……悪くない」
 寝ていて体力が回復したのと恐らくは彼の処置のお陰だろう。
頭痛はまだあったが軽いものでもあり、何より例の発作にまで至らなかった事は大きい。
体調が最も安定していた時での出来事だったのが幸いしたのか。
時計を見て今が昼近い事を確認すると新一はゆっくりと上半身を起こした。
瞬間鋭く痛んだ傷口に手をやればきちんと施された手当ての跡に唇をソッと噛み締める。
彼の他に誰もいない部屋。
全てを一人でやってくれた彼。
迷惑を掛けた。
ここには優秀な医療スタッフが揃っていると言うのにその世話にはなれない新一。
彼の身体は普通の治療が出来ない。
例えば今回のような場合、輸血するにしても特殊な加工を施したものでなければ使う事が
出来ない。
そしてそれさえも最終手段であり普段は体調の良い時に自らの血を少しずつ取っておいて
保存して使う。
事情を何処まで深く知っているのか分からないが快斗はそれらの事を踏まえた上で誰にも
触れさせず輸血ではなく負担のかからない増血剤の類いを注射によって送り込んでひたす
ら根気よく様子を見てくれていたらしい。
サイドテーブルには注射器のセットが、そして白い腕に生えた管から少しずつ送り込まれ
る栄養剤は部屋の天井に備え付けられたフックに掛かっていた。
このあたりはいかにも療養目的の寄宿舎らしい造りであった。
普段から己の身体の管理をし、大抵の怪我は自分で手当てを施す快斗の医学的知識も技術
もその辺の医者より世程優秀である。
そして新一は知らないが、快斗は以前日本へ戻った時主治医である灰原哀から彼の身体の
データを見せられている。
細部に渡って正確に記憶したそれを元に快斗は独自で学習し緊急時に対処出来るまでの力
を身に付けた。
今回も万一の時の為を思い用意してあった薬が役に立っていた。
 「もうこんな時間て事はもしかしなくても地元の警察が来てるんじゃねえのか?」
 「…まあな、流石にこの状況じゃ呼ばない訳にはいかねえからな。一応先にあちこち現
場検証やって他の奴等の事情聴取もしてた。俺も簡単な説明くらいはしといたけど何処ま
で信じてるかは分かんねえな」
 (結構都合良く脚色した部分もあるし)
まさか自分の正体をバラす訳にもいかない、その辺りは目を瞑ってもらおう。
それにしても新一には本当はまだ暫く安静にしていて欲しいのだがそれを表立って口にす
る事が出来ず、快斗は細くため息をつく。
 「どっちにしても俺は詳しい事件の内状は本当に知らねえし、しん…おメーが…」
 ジロリと睨まれて快斗は微苦笑すると
 「…新一が回復するのを皆待ってる状態かな」
 名前で言い直した。
ずっと何でも無い事のように呼び続けた彼を現す言葉が再び口にし辛くなったのは己の腑
甲斐無さ故に。
だがその後は努めて普通に笑うと肩を竦める。
そういう考え方自体彼を侮辱するのに等しい。
彼は彼の責任において動いているのであって他の誰かの干渉は本来余分なのだから。
それでも、偶然なのだとしても最後に自分に身体を預けてくれた新一の気持ちが嬉しかっ
た。
隣に居ていいのだと…無言の内に語ってくれているようで。
 「Dr.はどうしてる?」
 「意識はまだ戻らねえみたいだけど取り敢えず警察に預かって貰ってるよ」
 「そっか…」
 今度は上半身だけでなくベッドを降りた新一はかなりましになった体調にホッとしなが
ら立ち上がった。
軽い目眩があったが無視出来る程度である。
血で汚れたシャツは何時の間にか新しいものと取り替えてあった。
それに気付いた時点で思わず黙り込んでしまった新一に快斗は同じく立ち上がるとタオル
を手渡した。
 「俺皆に知らせてくるから取り敢えずシャワーでも浴びたら?」
 傷にあたらないように、ニコリと笑ってそう告げるとそのまま部屋を後にすべく扉に手
を掛ける。
 「…待てよ快斗」
 「ん?」
 快斗は一瞬躊躇った後ようやく振り返った。
己を見つめる双眸の鮮やかさにドキリとする。
 「礼も言わせねえつもりか?」
 細められた瞳が何処か傷付いたように憂いを帯びれば快斗は苦笑して肩を竦めた。
 「別にそんなつもりはねえよ、それに…なんかそう睨まれると俺が逆に怒られてるみた
いな気がすんだけど」
 「おメーがそうやって俺を…!!」
 その後に続く言葉は呑み込まれたが快斗にはそれが声となって直接心に響いた。
 (甘やかすから…そんなつもりは全然ねえんだけどな俺は。寧ろ…)
あの蒼の双眸が棚引く煙の向こうから現れた瞬間世界が鮮やかに色付いた。
それは今思い出しても胸が熱く疼く程に。
 「…とにかくさ、……し…新一を待ってる奴等が沢山いるからまずは仕度しようよ」
 本音とは裏腹に新一の点滴を丁寧に抜く。
彼の意志は結局何よりも尊重される。
 「沢山?そんなに警官が来てるのか??」
 「…まあそれは直ぐに分かると思う」
 クスリと笑った相手の顔に疑問を抱きつつ新一はその隙をついてあっと言う間に消えて
しまった快斗の早業にムッと唇を尖らせた。
 (でも、また名前呼んでくれたな…)
しかしそれも束の間、次第に柔らかさを増した口元は苦笑ともつかないため息を漏らした
のだった。

 快斗の言葉の意味は一歩廊下に出た時から理解出来た。
知らせに行くと言った先は警官達の待機する部屋の他にもう一つあったらしい。
 『クドウ!!大丈夫か?!』
 ヴィオラがまず床から立ち上がると次にモートンとシュラー、そして塔へ捜索に加わっ
たメンバー他知らずに悔しい思いをした他の少年達など次々にウエーブのように立ち上が
った。
 『クドウだ!!』
 『ほんとだクドウだよ!もう起きて平気なのか?!』
 『俺ずっと待ってたんだぜ?!』
 『クドウ!俺の気持ちはもう決まったよ、この手紙を…』
 『あ!てめーさり気なく出し抜こうとしてんじゃねえぞ!さっき皆で協定結んだじゃね
えか!!』
 『クドウ、俺栄養のあるもの作ってきたんだ』
 『クドウだ!生きてる!!』
 『神様ありがとうございます、俺のクドウを守ってくれて』
 『だから誰がお前のクドウだよ!』
 『クドウ』『クドウ』『クドウ』『クドウ』『クドウ』…一斉にスイッチが入ったよう
に喋り出したら止まらない。
それは遥か先まで廊下を埋める勢いで、新一はただ呆然とするだけであった。
彼等は一度は快斗に彼の傷に障るからと別室へ追いやられていたところ、皆知らせを聞い
て新一が出て来るまでの間再び廊下に座り込んで待っていたのである。
 『…俺はもう大丈夫だけど、一体この騒ぎは何なんだ??』
 『何ってお前の事心配だったからに決まってんだろ。あんな無茶しやがって!確かに俺
達もいきなり足手纏いで悪かったけどよ、もっと身体は大事にしろよな!!』
 ヴィオラは拳を握って力説しようとしたがそれは半ばまでしか成功しなかった。
彼の無事に感極まるあまり結局は力なく手を降ろすとため息をついてしまったからだ。
そんな彼の様子に新一はようやく皆の気持ちに気付くと神妙な顔をする。
考えてみれば最後はみっともなく倒れてしまったのだ、皆にはかなりの不安を与えたに違
い無かった。
淡い光の中白い包帯が増々白く浮かび上がる。
 『……ごめん、驚かせて、一寸ドジっちまってさ。俺前にも言ったけど結構何かに熱中
してると周りが見えなくなるんだ』
 それはもうよ〜〜く分かりましたよ、とヴィオラ達は肩を落とす。
 『でもまあほんと良かった、目…二度と覚めないんじゃねえかと思ったからさ』
 『ヴィオラなんて自分が死にそうな顔してたんだぜ?』
 リーダーに続いてそう言ったのはモートン。
 『ば、バーロ!!人事みたいに言いやがって、お前だってなあ…!』
 『でもやっぱ一番ショックを受けてたのってヴィオラだよな。…でもって頑張ってた。
見せたかったぜ〜?あの警官達を前にして一人で啖呵切ってたとこ、すっげえカッコ良か
ったんだからよ』
 シュラーはそう言って、それでもモートンと同じく何処かホッとした表情で笑ってみせ
た。
彼とモートンは間髪入れずヴィオラから怒りの鉄拳を喰らったのだが何時もよりも力の入
っていないそれは痛みではなく更なる笑いを誘っただけであった。
 『…警官ってここまで来たのか?』
 ずっと待ち望んでいた蒼の瞳に見つめられヴィオラは一瞬声を詰まらせる。
 『…お前が寝てるってのにどうしても会いたいからってしつこいからさ、目が覚めるま
で待てって言っただけだよ』
 そして誰も新一の部屋へ入れないよう皆で道を塞いでいた(それは途中で快斗に追い払
われたのだが)、そんなところだった。
だがそれは勿論命令などしなくとも皆自然に集まったものである。
 『そっか、…ありがとなヴィオラ、それからモートンもシュラーも皆も』
 蒼の双眸が潤んだように光彩を纏うと、やがてゆっくりと浮かんだ大輪の花を思わせる
極上の笑みにそこに居た全員が息を呑み三分の二がヘナヘナと座り込んだ。
彼と言う人間に免疫の少ない者はこうなる。
 『おメー等、あんまはしゃいで新一疲れさせてんじゃ……と思ったけど逆かこりゃ?』
 少し遅れて何処からか顔を出した快斗は呆れたようにため息をつきながら無意識な罪人
の肩をポンと叩く。
 「もう準備はいいみたいだな、そろそろ行こうぜ」
 血の気のない透き通るような白い肌はまだまだ彼の身体の不調を訴えているが気力に満
ちた希有な双眸は再び探偵のそれに変わっている。
事件は解決したが最後の引き継ぎが出来ていない。
これから学校の呼んだ警察と学校側の人間にこの異常な事件の説明をし、さらには保護し
たDr.ベルナール・レッシュの事など色々と話しをしなければならなかった。
新一は先を促すように歩く快斗と共に今度は舎監室に向かった。
警備員室では狭いので皆そこに居るのだと言う。
潮が引くように左右に見事別れる人波の中心を通れば誰もが新一と並んでいる快斗を見て
諦めの、しかし恍惚と溶ける表情で見送った。
誰よりもその隣に彼が居るのが一番相応しいと認めざるを得ない一対の絵画。
彼等を前にする瞬間人は皆無言になる。
 「そう言えばおメー何処行ってたんだ?」
 「一寸ヤボ用」
 ニヤリと笑ったその顔にはまた再び太陽の明るさだけがあった。
新一が目を覚ました時彼は何故か自分に背を向けていて、ようやく振り返った一瞬出口の
見えない世界でただ独り迷子になった子供のような顔をしていた。
何時も強さばかりを前面に見せる彼は時折ふとした時に普段は底に閉じ込めてある素顔を
覗かせた。
それを見られるのは自分だけの特権なのだろうか、そう思うと少しだけ嬉しい。
きっと口に出して言えばプライドの高い彼は凄く嫌がるに違いないので絶対に聞くつもり
はないのだが。

 相手の返事と共に扉を開けば中に居た男達は先ず入って来た二つの同じ美貌の少年に目
を丸くし、その背後に行列よろしく繋がったとりどりの少年達の群れに口をポカンと開い
た。
だが無情にも二人とヴィオラを残して扉が閉められしまうとさざ波のように広がったため
息が却って男達を現実へと引き戻した。
ヴィオラが同行を許されたのは彼もまたある意味で被害者の一人である事と、何よりも新
一が彼の知る権利を主張した為だ。
戸惑いを含んだ空気の中で一人、変わらぬ表情で彼等を迎え入れた者がいる。
コクランだ。
姿が見えないと思っていたらこんな所に居た。
 『弟が…コリンズが目を覚ましたんだ』
 彼は新一達の姿を認めると直ぐにそう言った。
連絡を受け、一度は会いに行って来たらしくホッとしたような笑顔を浮かべている。
新一と快斗は安堵の笑顔を浮かべるとコクランに短く声を掛けた。
だが和やかなムードになったのも束の間、直ぐに現実に直面する。
ピリピリとした緊張が空気を伝わった。
 『彼がシンイチ・クドウです』
 警備の責任者でもあるカールセンは舎監が彼を紹介するより先にそう言った。
漆黒の髪、白皙の肌、人形のように整った美しい顔立ち、そして深い蒼の双眸が辺りを見
渡せばゾクリと背中を奔った高揚感に彼がただの学生でない事をそれだけで思い知る。
 『初めましてクドウ君、私はドイツ警視庁から来たカウフ・バランタイン警部だ。怪我
の具合はもういいのかな?』
 中肉中背、これと言って特に特徴のない平凡な顔付きの中年男性は警官の群れの中一人
でピシリとスーツを着こなしていた。
 『はい、御迷惑お掛けしましたがもう問題ありません』
 (地元警察だけじゃ手に追えなかったって事か)
 問題ないという顔色ではなかったがそれよりも光を宿す瞳の強さが何故か周囲を納得さ
せた。
それにしても警視庁からわざわざ刑事を寄越すとは。
確かにここまでの大きな事件、その上貴族が関わっていたとなれば地元だけでは動けない
だろうが。
 『では早速だがこれまでの一連の事件について最初から詳しく話してくれないか?君が
意識を取り戻すまでの間あちこち現場を調べさせて貰ったり君と一緒に居たと言う生徒達
やそこの彼…クロバ君にも尋ねてみたのだがどうにも要領を得なくて困っているのだよ。
何故あの高名なDr.があんな事になっていたのか、訳の分からない事ばかりでとにかく
説明して欲しい』
新一は己に集まる視線を感じながら僅かに目を伏せる。
長い睫が形を強調するように縁取ればそこに浮かんだ切な気な翳りに気付けたのは快斗だ
けであった。
 『分かりました、お話します』
 何処までを話せばいいのか、話したところで信じて貰えるのか、だが実際にウィルヘル
ム 親子の遺体は発見され、マリア像の中から妻であり母であるもう一人のマリアもまた
長い眠 りから覚めている。
そして複数の少年達の身体の一部もまた…。
それを仕掛けた犯人は世界的に有名な天才外科医を、途中殺害したリヒターに仕立て上げ
自らもその息子として何喰わぬ顔で全くの本人として生きていた。
だが残念ながら犯人であった人物の正体は知れぬまま現在逃亡中である。
新一は自分の眼で見てきた事件の真相をまずは語った。
そうなると快斗の事は自然避けられる形となるが変に庇った言い方もしなかった。
何故なら離れて行動している間彼が具体的に何をしていたのか本当に知らないからだ。
それで良かったか、必要となれば快斗は自分でフォローを入れるだろう。
一通り話し終えるとカウフだけではない、そこに居た全ての人間が驚愕と感嘆の吐息を洩
らした。
内容も驚きならそれを当然の事のように理路整然と述べてみせるこの少年にもだ。
傍らに立つ同じ顔をした少年は僅かに目を細めてそんな彼を見つめている。
だがただ一人話の内容が進むにつれ反比例するように顔を曇らせたのはヴィオラであった。
エルラッハ・ヒューと仲の良かった彼は容赦のない真実に打ちのめされる。
あの塔を訪れた時から、いや、もっとかなり以前から予想はしていたのだが改めて筋道を
立て説明される事柄の内容があまりにも残酷で…哀しみを通り越した心はただ疲労を運ん
で来た。
長く美しい髪をしていたエルラッハ。
臆病で死にたくないと笑いながら怯えていた彼。
死を克服したかった彼が悪魔の囁きに耳を傾けたとしてどうして責められよう…。
ふと視線を感じて顔を上げれば蒼い瞳がこちらを真直ぐに見つめていた。
そのあまりの深さに思わず息を呑む。
「真実を見つけたい」彼はそれをとうとうやり遂げたのだ。
ヴィオラはほんの少し目許を和らげると自分でも驚く程に優しい笑みが口元を彩った。
塔の中に封じられていた少年達は皆きっと彼と出会って今度は迷う事なく天への扉を見つ
けたに違いないのだから。
そして友人の汚名もまた濯がれたのだ、全てはこの<探偵>によって。
 『……ここまで大きな事件だったとは…。第一あの天才外科医が今頃になってこんなと
ころで発見されたとあっては我々だけで……』
 カウフは薄くなったのを気にしている頭髪に触れながら苦い顔をする。
 『では彼がDr.ベルナール・レッシュである事は証明されたんですね?』
 『ああ、DNA鑑定の結果驚いた事に本人だとついさっき分かったよ。そこの彼から事情
を聞かされた時は半信半疑だったんだがね。意識はまだ戻ってないんでこちらの病院で預
かっている』
 『そうですか、ならばひとまず安心ですね』
 『だが問題はさっきも言ったが事が大きすぎて我々の手にも負えないかも知れないとい
う点だ。逃亡中の正体不明の犯人といい、国際問題に発展しないとも限らない極めて難し
い人物達が関わり過ぎている』
 『…それについては僕の所属する組織が上手く連係をとって動いてくれる事と思いま
す』
 そこでハッとしてカウフ他快斗を除く全ての者の視線が集中した。
そうなのだ、あまりに見事な話の展開に当初からあった疑問をつい失念していた。
 『そう言えば君は…探偵と名乗った。それからこの事件が解決すれば自分の素性を話す
のは可能だとも言ったね?』
 警察の手前自分から意見するのを控えていた警備員の総責任者であるカールセンはつい
そう口に出すと質問し易いよう一歩前へと進み出た。
本来なら眉を顰められる場面かも知れないが実はカールセンとカウフは以前の同僚であ
る。
仲が特に良かった訳でもないが悪かった訳でもない関係であった。
なので特に咎められる事なくそこは流すと興味の対象は再び新一一人に戻った。
 『仮に君が本物の探偵というものだとして、何故君のように歳若い少年が世界的に有名
な外科医の捜索にこんな土地にまでやって来たのか、アンリそしてマリア・ウィルヘルム
をアシュケナジー…ユダヤ人と突き止めたその情報力、そしてこの異常な事件を解いた見
事な推理力に今言った<組織>という言葉……。探偵、それでもただの探偵ではありえな
い。…何者だ?君は』
 再びカウフが質問を浴びせる。
昨夜の星空に恥じない穏やかな光が窓から差し込み、希有な美貌の少年を愛でるように照
らし出す。
新一は奇跡の双眸を僅かに細めた。
 『その前にすみません、電話をお借りしてもよろしいですか?』
 『何処に掛けるんだね?』
 『お話する前に今回の事件の報告をして、上司の許可を得なければならないので…』
 上司?首を捻りながらもそれでも許可を出さない訳にもいかずOKを出すと新一は近く
の電話から受話器を取り上げた。
そして繋がったのか、いきなり流暢な異国の言語を話始めた新一に一同は目を丸くする。
何を話しているのか理解出来た者は酷く少ない。
快斗は当然、後はその昔ICPOに推薦された際フランス語を猛勉強したカールセンくらい
か。
 『おい、何を話しているんだ?』
 フランス語である事はなんとなく分かったカウフはカールセンにこっそり尋ねる。
 『あ、ああ、……事件の報告と………。でもこれは…本当に……?』
 独り言のように呟きながらカールセンの顔色がみるみる驚愕に変わっていくのを周囲は
不思議そうに見遣る。
何時の間にか辺りには緊張感が漂っていた。
ようやく会話が終わると新一は振り返る。
 『すみませんでした、許可が降りましたのでお話し致します。……信じて頂けないかも
知れませんが』
 新一は蒼の双眸を半ばまで閉じると一瞬躊躇った後使う事にならぬようにと願っていた
ものを懐から取り出した。
 『僕は本国では探偵を、しかし複雑な事情がありまして今回はICPOから派遣されて参
りましたパリ本部国際犯罪部の者です。実は当初今回の件ではこちらで消息を断ったフラ
ンスの誇る世界的な天才外科医Dr.ベルナール・レッシュの行方を内密で調査する事だ
けを目的としていましたので本来はこうしてこれを見せる事を禁じられていました。
なのでこれまでお話する事が適わなかった事、深くお詫び致します』
 開かれて現れたICPOの身分証明書に全員が呆然と見入っていた。
それが本物だとか偽ものだとかそんな事はどうでもいい事のように思えて…、凍り付いた
人々の中で快斗だけが可笑しそうに目を細めていた。
 『今回の事はDr.の件も含めこれからICPOの管理下に入りますので、色々と面倒な
事になるかと思いますがどうかよろしくお願い致します』
 軽く目礼した新一を誰もが声もなく見入っていた。
この何処から見ても綺麗で華奢なだけの少年がICPO?!
しかし実際に彼の活躍ぶりと言えば普通の刑事以上に目覚しい。
信じられない程複雑で難解な糸を解きほぐし光の元に晒したその手腕は一人としてこの現
実に異義を唱えさせなかった。
その昔噂で聞いた事がある、あまりにも飛抜けて優秀な人材は年令国籍を問わずICPO自
らがスカウトに出向く事があると。
 『……すまないがそれをよく見せてくれんかね?』
 それでも一応の確認は必要で、カウフが茫洋とそう言うとカールセンも並んで手渡され
たデザインも美しい証明書を食い入るように見つめた。
本物だ。
あの憧れてやまなかった本物がここにはあった。
ため息が何時の間にか出ていた。
 『それじゃあ、取り敢えずここはもういいですよね?』
 そこでいきなりそう切り出したのは快斗であった。
 『彼、かなり無理してるんで早く休ませてやりたいんですよ』
 言われてようやく新一の体調を思い出したカウフは半ば呆然とした勢いのまま頷いてい
た。
あまりにも鮮やかな存在にその事を失念していたのは彼だけでなく皆そうである。
 「話は一通り済んだし、応援が来るまで後は特に急いでする事なんてないよな?」
 「あ、ああ、…でもおメー……」
 新一は戸惑いを含んだ目で快斗を見る。
その顔は光の中でより白く色を失い彼の体調がまだ回復には程遠い事を示していた。
 「うん、すぐ済むから」
 新一の言わんとしている事はよく分かっている。
第一自分を見る周囲の目が途端厳しく細められた事から皆同じ事を思っているのだろう。
 『何を喋っているのかね?それよりもクドウ君の件は…信じざるを得ないとして、君だ
よクロバ君、君の不可解な行動についての説明が全くなされていないだろう?』
 新一を見る目とは一転した眼差しにやはりそう来たかと快斗はため息と共に微苦笑し
た。
 『君は我々に簡単に捜査現場の説明だけをして、後はクドウ君が目覚めてから一緒に事
情聴取を受けるとしていた筈だ』
 『ええ、確かに』
 『では聞くが君はクドウ君とは提出されている書類上信じられない事に全くの赤の他人
となっているがそれは本当か?』
 『本当ですよ、だから書類にもそう書いてあるでしょう?』
 確かにその通りである。
カウフは一つ咳払いをすると次の質問に入った。
 『なら何故クドウ君と時期を同じくして見計らったかのように転入してきたのかね。君
達は当初から知り合いのように振る舞っていたと言うし、君の不可解な行動といい、そし
て何より犯人とかなり深く関わっていたらしいと他の生徒達からも証言が出ている。あの
マリア像は君が壊したのか?』
 快斗は何と答えるのか、新一と事情を何となく知っているコクランは息を呑んだ。
フォローを入れようと思えば何とでも入れられる、但しそれは完全な嘘になり警察を相手
に証言する事は今の新一に難しい。
しかしそんな事よりも新一が黙っていたのは快斗自身がそれを自分には望んでいない事が
よく分かっているからだ。
新一は心に小さな棘が刺さったような痛みを無意識に感じながら快斗を見た。
 『そうですよ、俺…いえ、私が壊しました』
 快斗の表情は特に変わらず軽く返事を返したがその口調は改まったものへと変化して
いる。
気配はそのままに、しかしそれは何処か怪盗のものと似ていた。
 『何故そこに私がいたのかと言えば私もまたICPOの彼と同じくとある人物を追ってこ
こまで来ていたからですよ、勿論相手は違いますが。そこでいきなり事件に巻き込まれ、
ここで会ったのは本当に偶然ですが以前にもある事件で世話になった事のある彼とは顔見
知りだったので秘密裏に合同捜査をお願いしました』
 物おじしないしっかりとした口調と態度に新一の時とはまた違う視線が注がれる。
快斗もまた新一と同じ美貌の持ち主、但し取り巻く空気は凛と張り詰めた感のある新一と
違い飄々とした軽い雰囲気がある為一見した時のインパクトには差が生まれるのだが。
 『合同捜査?…それで結局君は何者なんだ?』
 快斗は真顔のまま新一と同じく懐から手帳サイズのものを取り出すとそれを見易
いよう少し前へ突き出す形で中身を広げて見せた。
 『…私はMI6、英国情報部の者です』
 あまりに突拍子もない台詞はやはりICPOの彼の時を再現するようで、全員が声もなく
固まった。
それは彼の正体を知っている新一とコクランにも同じ事で、しかし彼等の場合は驚きの種
類が違っていたのだが。
漫画的表現ならば目が点という感じだ。
 『今回極秘任務である人物…こちらで事件を起こした犯人を詳しい事情は言えませんが
追っていました。ですがここまでの騒ぎに発展するとは予測出来ず、国境を遥かに越えた
この地で我々(MI6)が動いていたと知られると厄介な国際問題に発展しかねませんので、
今後は組織の上層部が直接ICPOと交渉する事と思います。ですから皆さんは今ここ で見
たものについては他言しないようお願い致します』
 ニヤリと最後に笑った顔はしかし確かな瞳の強さをたたえていてその光に呑まれるよう
に異論を唱える者など存在しなかった。
それが本物なのかどうか確かめられる前に彼が自ら差し出したものをカウフは呆然とした
表情のまま受け取る。
警視庁に勤める身としては本物を見た事がない訳ではないシンプルなデザインはそれでも
真似ようもない女王陛下のサインが入っていて……
 『……本物だ』
 カウフの心を代弁するように言ったのは横から見ていたカールセンであった。
 『信じて頂だけて嬉しいです』
 ゆったりとした動作で取り戻した手帳を仕舞い込むと快斗は営業用スマイルを浮かべ
る。
天使の微笑みとはまさにこの事、そのまま新一と共に並んだ姿はため息が出る程に美し
い。
大人達ばかりでなくコクランもヴィオラも見愡れていた程に。
だが彼等は外見だけでない、その存在も非凡なものでICPOとMI6、一つ一つの組織です
ら一介の警官とて馴染みないものだがその二つが何故か揃っているとなればこれはもう夢
だ。
しかも何処から見ても成人していない少年。
それだけ有能な人材というのか。
確かにその実力は思い知ったところなのだが。
見れば見る程、考えれば考える程ミステリアスな一対の絵画がコクランとヴィオラを伴っ
て姿を消しても暫く誰一人としてその場を動く事が出来なかった。

 一歩廊下に出ると直ぐさま彼等が出て来るのを心待ちにしていた少年達で再び周りを
埋め尽くされた。
半ば放心したままのヴィオラをシュラーとモートンは怪訝な顔をして囲む。
彼は今二重のショックの真っ最中だったのだ。
親友の死と事件の真相、そして快斗と言うよりは新一の正体に。
だが彼が何処まで手の届かない人だと知ってしまった現実は納得する気持ちよりも寂しさ
が上回った。
 『クドウ、クロバ、これからお前達何か予定でもあるのか?』
 『なあなあ、ゆっくり事件の話聞かせてくれよ』
 『ついでに飯も喰おうぜ!!』
 『バ〜カ、クドウを休ませてやらなくてどうすんだよ』
 『でも少しくらいならいいんじゃねえ?』
 『愛が足りねえぞお前等』
 『なあクロバ、クドウ中で虐められたりしなかったか?!』
 『お疲れ、クドウもクロバも』
 『なあ、だから皆でだべろうぜ!』
 何時ものごとく一斉に喋り出す面々に新一は苦笑を浮かべる。
何故今頃こんなに仲良くなれたのかよく分からないのだが素直に嬉しいと思う。
新一とて高校に通ってはいるのだが普段は探偵業も掛け持ちしている為こんな砕けた雰囲
気は久しぶりであった。
しかも例の事件以降は身体の事もあるが周囲の友人達も何処かよそよそしくなっていて、
それは色々な経験が自分を変えたからだと思っているが本音を言えば少し寂しい。
横目で快斗を見遣れば彼は内心この雰囲気にまだ戸惑っている様子で、しかし本物の笑顔
が浮かんでいる。
仕事は互いに一応の決着を見せている、今だけは本来の学生の姿に戻ってもいいのかも知
れない。
 『いいぜ、折角だから付合うよ』
 新一がそう言うと俄然皆はりきりだした。
会場の確保だとか食べ物だとか、あっという間に分担を決めた少年達は一斉に己の仕事を
一刻も早く全うする為に一目散に消えて行った。
それを一寸びっくりしたように目を見張ればそれ以上に目を大きく見開いた快斗が自分を
見ている。
 「…新一、おメー無理する事ねえんだぞ?」
 快斗はあくまで新一の体調が心配だった。
彼は血を流し過ぎている、今だって仕事と言う事で無理して起きて来ているというのに。
白い顔にはまだ血の気が差さない…。
だが新一は笑った。
それは変に飾ったものではなく心から沸き上がって現れたもの。
 「無理なんてしてねえよ、おメーの方こそ仮眠取るならそうしたらどうだ?後でちゃん
と呼んでやるし」
 「冗談、新一が起きてて俺が寝てられる訳ねえだろ」
 彼と共に在れる奇跡のような時間を自分が無駄にする筈がない。
少しムッとして答えれば
 「んじゃ、決まりだな」
 新一は満足げに頷いて微笑んだ。
その瞳の中に覚えのある感情を読み取って快斗はハッとする。
 「……折角だからさ、少しくらいいんじゃねえか?何か、こんな風におメーと過ごせて
俺……ほんとは嬉しかったんだ。別に今を悲観する気は全くねえけどもしも、…もしも普
通に暮してて普通に出会ってたら俺達何時もこんな感じで毎日過ごしてたんじゃねえかっ
て思ってた」
 その感情は時折ふとした時に快斗の胸にも去来するもの。
 「…かもな」
 不安定な未来に身を置く生活、過去に縋っている暇などないけども願う事くらいはして
もいいのではないか。
そしてそれが瞬き程の長さとしても、それは確かに在る現実。
今二人は同じ学生でありクラスメイトなのだと。
かつて自分から切り捨てた生活がここに在った。
 「それに、おメー俺が寝たらぜって〜そのまま消えちまうだろ?」
 僅かに細められた蒼の双眸が逃げを許さない光を纏っていた。
その美しさに瞬間息を呑んで、相変わらずの慧眼さに微苦笑する。
流石に読まれていると言う訳か。
ICPOから来る仲間に引き継ぎ等仕事の残っている彼に対し自分はもう本来ならここに留
まる理由はない。
それでもこんな風に新一が引き止めるような事を言うのは初めてで、快斗はこの特殊な
空間に新たに満ちる心地よいエネルギーを感じていた。
少しだけ、この熱にあたってもいいだろうか。
本当は去り難いと思っているのは自分の方なのだから。
 「魔法が解ける時間まで付合うよ」
 快斗はどんな顔をしたら良いものか珍しく迷いながらそう言った。

 それからの時間は本当にあっという間に過ぎた。
場所は広いフリールーム、普段はここで寮の学生達が自室以外で自由に集まりたむろして
いる。
ここに居る殆どの者が昨夜から眠っていないのだがそれでもそのエネルギーは何処からと
いう程の勢いで盛り上がっていた。
中心には当然新一と快斗が、初めは事件について簡単に触れていたものの途中からは取り
留めもない世間話や各々の家庭の事、趣味の事など皆が話し掛けてくる。
その中に何時の間にか加わっていた図書委員のクレーフェ・オルタンスは無意識に数ある
ライバルを蹴散らし新一とマニアなミステリー談義に花を咲かせていた。
用意された料理は事件を解決した功労者達に対する食堂からの差し入れでその殆どは粗方
片付けられている。
そして何処からか(恐らくは料理を貰いに食堂に出入りしていた誰かが聞いたのだろう)
知れ渡った新一の本当の正体にも初めは驚いたもののどちらかと言えばそれもあって然る
べきという感じで誰一人として退いてしまう者は無かった。
そんな事で退いていては彼の側になど居られない。
快斗についての見解は特に示されていないが無条件に仲間と思われている。
彼が新一の味方だと言う事は誰の目にも明らかだからだ。
新一と快斗、この二人の隣を確保しようと画策する輩の殆どが将来自分も警察もしくは権
力者になろうと心に決めていた。
そしてゆくゆくは同じ職場か彼を彼等を裏から手助け出来る立場になる、身体の弱い者は
病気の克服を、家庭や心に問題のある者は確固たる信念を持ち続ける事をこの時誓ったの
である。
こんなところでも彼等は…特に新一は無自覚なまま役に立つ事となっていた。
途中一度わざわざ制服に着替え誰かが持っていたカメラで皆で写真を取った。
その際やはりその立ち位置を巡り熾烈な争いが起きていたお陰でおかしな写真になってし
まったがそれもまた中々に面白い出来だったと思われる。
デジタルカメラではなく普通のカメラであった為にその場で映像を見ると言う訳にはいか
ず、すぐに現像出来ないのも残念なのだがフラッシュが光ったあの瞬間の胸の高鳴りは決
して忘れる事はない。
ただその写真は出来ても他に見せないようにと新一は念を押しておいた。
理由はきっと言わなくとも伝わったのであろうが、どちらにしてもそんなおいしい写真を
勿体なくて誰が他人に見せてやるか!と思っている輩が殆どなのであまり心配は要らない
かも知れない。
その後で快斗の即興のマジックショーなど飛び出し最高に盛り上がったところで少しばか
り休憩に入った。
新一の身体を思い遣っての事である。
そしてそろそろ眠気もたってきたところであるしと皆も仮眠に入る。
昼から続いた騒ぎは既に暗さを増した視界の中今度は複数の寝息に代わった。
新一は忘れていた身体の不調を意識的に無視すると姿が見えなくなった快斗を追って自室
には戻らずそのまま外へと出た。
寒い。
雪は残ったまま、陽も翳り冷たさを増した冷気が痛い程に、しかし神経を覚醒してくれ
る。
何となくの勘であった、そこへ向かったのは。
新一は周囲にロープの貼り巡らされた塔の影に立った。
本格的な現場検証は今夜遅くからにでも新一立ち会いの元、ICPOの刑事と共にドイツ警
察が共同で執り行う事になる。
陽の短いドイツの冬、まだ時間はそれほどでもないと言うのに空には気の早い星や…そし
て真円には少し欠けてしまった月が輝き始めていた。
その中に佇む凛としたシルエットを新一は息を詰めて見上げた。
塔の頂上(本来は頂上とは正しくは言わないが)で月に向かい何かを掲げているのは見間
違う筈もない人。
その美しく厳かな空気は誰一人として立ち入る事を許さない硬質な輝きを放っている。
新一でさえもそれは例外ではない。
そこに何を見い出そうとしているのか、知っているつもりでも不意に不安が込み上げ新一
は眉根を寄せた。
あのアンリの姿を持った金色の魔物は言った、イーブルアイとミッシングリング、探偵と
怪盗…と。
またも勝手な呼び名をこの眼に付けてくれたものだと思うより先に気になったのは恐らく
流れから言えば快斗を表したに違い無い<ミッシングリング>という言葉。
酷く危険で嫌な響きがした。
そして持っていたのは保留にしていると言っていた筈のMI6の身分証明書。
あれを見た時は本当に驚いた。
彼は……一体何に巻き込まれているのだろうか。
しかしそれを彼自身から告げない限り自分には知る術もない。
すぐ背後から気配が沸いて振り返るとコクランとヴィオラが並んで立っていた。
彼等も快斗の様子に気付いたのか密やかに空と溶け合う彼の姿を見ていたが新一と視線が
会えば疑問を目で訴えてくる。
新一はそれに微苦笑しながら首を横に振って答えた。
知らなくても良い事なのだ、俺もお前達も、と。
新一は二人をソッと連れ出すと少し離れた木の影に立った。
 『…えっとさ、いきなり姿が見えなくなったからどうしたかと思って』
 ヴィオラはまだ先程の快斗の姿に少しだけぼんやりしながら声を潜めて切り出した。
寒さの為か頬が薄闇にも紅潮して見えた。
 『ああ、……俺も同じだ』
 『どっちが本当のクロバなんだ?』
 その質問は快斗の怪盗姿を見ていないヴィオラには分からないものだった。
 『どっちも本当のあいつだよ。笑って、マジックやってるお調子者のあいつも秘密主義
の固まりなあいつも全部』
 新一は何処か寂し気にニコリと笑う。
 『……もう帰るのか?』
 美貌の儚さに、それ以上は触れてはいけないような気がして言葉をなくしているとヴィ
オラがポツリと呟いた。
彼はそれが一番の気掛かりだったのだろう。
 『いや、俺はまだやらないといけない事があるから暫くは留まる事になる』
 ヴィオラは思わず顔を綻ばせかけたが日延べした死刑執行日を聞かされただけのような
気がして直ぐに目を半ばまで伏せた。
彼はやはり帰ってしまうのだ、それは当り前の事であるのに酷い喪失感に襲われる。
またエルラッハが居た頃のような自分に戻れそうな気がしていたのに。
 『クロバはどうなんだ?』
 『……多分、これから直ぐに……行く、つもりだと思う』
 帰ると言いかけ、彼は何処に帰るのか疑問に囚われた新一は言葉を選んで答えた。
そろそろ潮時だと思っていた、今ならまだ街へ出るのに不自由はないしこれ以上はICPO
ともはち合わせの危険がある。
だからこそ新一は快斗を追ってここまで来たのだ。
もう一度新一は天を仰いだ。
月の化身のようなその人は彼の視線を待っていたかのようにこちらへ端正な顔を向けると
遠目にも微苦笑しているのが見えた。
新一が瞬きを繰り返す間に忽然と姿を消した彼はあっという間に傍らに立ち先程の表情を
そのまま向けて来る。
 「気配に敏感なのって時々有り難迷惑だよな」
 「…まあ気付いてるかもとは思ったけど…、ただあそこで目が合うとは思わなかった」
 「俺は何となくこっち見てくれるって気がしてたけど」
 その瞬間だけ白い怪盗の顔で答え、直ぐにそのまま他の二人を見遣る。
 『ところで、お揃いでどうしたって訳?』
 『別にお前を俺は追って来た訳じゃねえよ、クドウが何処行くのかって付いて来ただけ
だ』
 『俺は……なんとなくだな』
 ヴィオラとコクランは各々らしい答えを口に乗せたが僅かに声に力がないのは先程月と
溶け合うような彼の姿を見た時の余韻が残っているせいだ。
そこに在ったのは宗教画のごとき静謐さと胸が痛くなる程の美しさで、畏怖と同時に感じ
たのは凄絶な孤独。
彼もまたここに在る蒼の双眸の持ち主と同じ生き物なのだと認識した…。
それはとても安堵して、でも切ない瞬間であった。
 『おメーがこのままもう行っちまうって思ったんだよ』
 その一言で快斗はあらゆる表情を消して傍らの彼を見遣る。
何処までも深い希有な瞳はただ静かに己の姿を映していた。
以前とある中国人兄弟に魔眼と言わしめ、ファウストにしてイーブルアイと評させた瞳は
今蒼の中に限り無い熱さとほんの少しの優しさを秘めていた。
そのあまりの美しさと幸福に先程の余韻など根こそぎ灼き尽くされる音を聴く。
夢魔の囁きと呼ばれる一対のスターサファイアは予想通りパンドラではなかったが月の光
り越しに見たそれはその名に相応しい悪魔的な美しさで、その誘惑に耐え切れたのはそれ
以上に美しい本物の生きたサファイアを思い浮かべたからだ。
どんな宝石も色褪せる蒼の双眸。
その行為に集中するあまり気配に途中まで気付かなかったのは失態だが、これでデータも
無事転送し本当に今回の任務は完了した。
宝石は後で本家(MI6)に持ち込んでやろう。
新一が目覚めて一度皆に報告するついでに自分の身柄についてドイツ警察とICPOに手を
廻して貰うよう連絡を入れた際、宝石についても報告しておいたのだから構わない筈。
 『もう魔法の解ける時間だからな、俺はまた走り出さねえと…怠けてこのまま居座りた
くなっちまうし』
 苦笑してさり気なく目を反らせばたちまち沈黙が降りた。
昨夜の緊張と毒に満ちた不穏な空気とはまるで違う静かで穏やかな夜気は、足元からやっ
てくる帳の速度を誘い込むようにたゆっている。
そのままそれに流されてしまえたらどんなに良いだろう。
こんな軟弱な気にさせるのもこの学校という特殊な環境のせいだと思いたい。
緊張に苛々しながらも本当は夢のような時間だった。
だが夢は何時か覚める。
 『…それが何でいけねえんだよ?』
 いきなり沈黙を破ったのはヴィオラであった。
何も言えない様子の新一にも快斗と同じく目線を流してヴィオラは軽く拳を握った。
 『俺にはお前達の事情なんて全然分かんねえけど、でも、やっぱおかしいよ。もしも、
もしも離れている間に二度と会えなくなったら後悔なんていくらしたってしきれねえんだ
ぜ?!クドウもクロバもあんなにお互い大事にしててそれなのに離れても平気だって…そ
んな強さなら捨てちまえよ!それで卒業までここに居ればいいじゃねえか!!』
 ヴィオラの剣幕に二人は目を丸くした。
あまりにもストレートな言葉は逆に何の抵抗もなく心に飛び込んで来る。
 『…そう言うな、クドウが困ってるぞ。それにこの学校自体存続は難しいかも知れない
時だ』
 だからこそ余計に皆テンションも高く新一達を囲んだのだ。
 『んなもん、どうしてもってなら死ぬ気で親父に頭下げたって俺は…』
 ヴィオラは快斗の本当の姿を知らない、それがコクランとの微妙な見解の違いを生んだ
のかも知れないが彼ならば例え快斗が犯罪者と分かっても変わらぬ態度を取るだろう。
しかし他ならぬクドウと聞いてヴィオラはハッとして途中息を呑んだ。
彼を困らせるつもりなど毛頭無いのだ。
ただどうしても言いたかった事で…。
 『ありがとうヴィオラ、コクラン』
 新一が微笑む。
冴え渡る笑顔の美しさに思わず我を忘れそうになる。
ただその笑顔に含まれた多大な意味を全て汲み取るには二人はまだ経験が足りない。
 『クロバ、俺はハッキリ言ってお前なんか気に入らねえけどな、でも…悔しいけどクド
ウを一番解ってやれるのはお前だけなんだ。よく分かんねえけど折角出会えたんなら離し
てんじゃねえ!だけどどうしても側に居られねえってならせめて何か約束くらい置いてっ
てやれよ!!』
 畜生!とヴィオラは哀しい程の苛立ちに舌打ちする。
昨夜礼拝堂で壊れた壁から出て初めて目にした光景は今も心の中に鮮やかに焼き付いてい
る。
決して誰の手も借りる事のなかった探偵はたった一人にだけ、その身を安心したように預
けていた。
自分達が守られる立場であったからだというのは分かっている。
しかしそれを差し引いてもあの<彼>だけは特別なのだと無言のうちに語っていたようで
…。
悔しさを一杯に詰めた瞳で見据えれば憎々しい程彼に似たその男は片眉を器用に跳ね上げ
るとやがて思いきり苦笑を浮かべた。
どうも自分は工藤新一を大切に思う人間にとって真っ先に敵として名を列ねる事になるら
しい。
だが快斗が苦笑したのは即答出来なかった自分自身にだったのだが。
フと冷たいものが頬を掠めて顔を上げた。
先程まであんなにも空は晴れていたというのに通り雨のように唐突に降り始めた雪が視界
の中で白く踊っている。
快斗が口を開き掛けた時バタバタと沢山の足音が近付いて来た。
 『あ、居た居た、こっちだぞ〜皆!』
 『見付かったか?!良かった!』
 『早く、あっちだってさ』
 白く息を切らせて走って来るのは騒ぎ疲れて寝ていた筈の少年達で一様にホッとした顔
をしている。
 『良かった〜、外行ったのは分かってたから多分この辺じゃないかと思ったんだ』
 そう言ったのはシュラーで、モートンはその隣に、二人が他のメンバーを先導する形で
来たらしい。
 『急にいなくなるからもしかしてもう帰ったんじゃねえかって心配したんだぜ?』
 モートンは息を整えながら新一と快斗、そしてヴィオラとコクランの様子を見る。
しかしそれがあながち外れでなさそうな雰囲気であるのを悟り安堵と切なさの混じった息
をついた。
 『ついさっき写真の現像が出来たんだ』
 手に持った封筒を各々新一と快斗、そして勿論ヴィオラ達にも手渡す。
どうやらカメラの持ち主であるマニアの少年が自ら自室で現像したらしかった。
中を見れば見事にあの瞬間を切り取った思い出が姿を現す。
同じ顔をした美貌の転校生二人を真ん中に脇はヴィオラ達で固められ他の少年達は場所取
りに揉み合っている。
それを不思議そうに見ている新一、快斗はそんな新一を見て苦笑している。
何故か誰一人としてカメラ目線でないところが逆に生き生きとしていて、思わず眺めてい
るだけで笑みが溢れた。
それをコンピュータ並の頭脳に正確に記憶して快斗は写真に再び封を施した。
 「じゃあ行こうぜ、快斗」
 目を丸くして日本語を話した声の主を見れば新一は悪戯な表情で微笑んでさっさと背を
向けた。
 「…行くって何処へ?」
 「バーロ、こんなトコから出てく気かよおメーは」
 新一の視線の先にあるのはただの塀。
スッカリそのつもりであった快斗は彼の言葉の意味が分からず困惑した。
そのまま新一の背中に付いて行く形で歩き出す。
手には小さなバックが一つだけ。
皆に囲まれるように辿り着いた先は入って来た時と同じく外界と繋がる大きな門。
 (ああ、そう言う事か)
ようやく合点のいった快斗はタイミング的に一寸だけまずいかなと思いつつ不思議な高揚
感と既視感に襲われた。
降りしきる雪、あの日はもっと明るくて…クラスメイト達も幼馴染みも授業を受けてい
た。
今は遠い記憶となりつつあるその日は日常と決別した日でもある。
その時も雪の中門ではなく塀を乗り越えて学校を後にした。
でも今度は正面から堂々と出て行けと彼は言うのか。
振り返れば白い景色の中に沢山の学友達に混ざって奇跡の双眸でこちらを見つめる人。
 「…なあ新一」
 快斗は一呼吸置いてから先程の封筒を差し出した。
 『コレさ、預かっててくれねえかな』
 無言のまま目を細める彼の強い眼差しに快斗は飾りのない笑顔を見せた。
それは本当に美しく、あのヴィオラやコクランですら見愡れてしまった程である。
 『万一誰か危ない奴の手に渡ると困っちまうしさ』
 なんせ新一と写っているものなのだ、確かに何処かに流れてしまえば危険極まりない
ものである。
 『んだよ、珍しく自信ねえのか?』
 『…んな事ねえよ、預けるだけだって言ってるだろ?だから、俺が何時か新一のとこ
ろに受け取りに行くからそれまで頼むよ』
 ヴィオラが目を見開いた。
つまり彼は今、広い目で見れば約束というものをしたのだろう。
新一もまた初めて聞いたような気がする快斗の一つの選択に呆然としていた。
何時も先の分からない日常にそんな事は無理だと思ってきた。
そして快斗が急にドイツ語に切り替えた訳も分かり新一はハッとした。
彼はヴィオラにも聞かせるように言っているのだ。
 『一応時間制限あるからな、それまでに来いよ?』
 彼の強さには目眩がする。
内心の想いとは裏腹に新一はそう言ってクスリと笑った。
 『必ず』
 時間制限とはどんなものなのか具体的に口にしなくとも二人には分かっているようで、
見つめ合う彼等の間に割って入ろうとする者は一人として居なかった。
邪魔するものがあるとしたらそれは時間だ。
遠くからエンジン音とライトの灯りが木々の間に見え隠れした。
それが何で誰が乗っているものであるのか快斗には分かっていた。
 (魔法が解ける時間が来たな)
接近して来る車に気付いた快斗と新一は互いに微苦笑して数日前の朝、同じくここを訪れ
た時の事を思い出していた。
あの瞬間の驚きと乾きが癒されていく感動は忘れ様もない。
 『じゃあな、皆、すっげえ楽しかったぜ』
 『クロバ、…元気でな』
 コクランは結局考えた過ぎた挙げ句月並みな言葉を短く告げた。
それでも精一杯のもので、複雑な顔をしたコクランを快斗は笑って見遣る。
 『おメーも弟と仲良く喧嘩しろよ』
 何処ぞの動物アニメの歌のような事を言って片目を瞑ってみせる快斗にすっかり慣れた
のか彼は怒る前に苦笑して善処する、と答えたのだった。
だが最後に小声で「世話になったな」と聞こえたのはきっと空耳に違い無い、そうは思っ
てもコクランは一瞬目を丸くした。
 『……クロバ、これから先どんな事があっても絶対勝手に何の断わりもなくクドウの前
から居なくなったりすんじゃね えぞ!!』
 ヴィオラは一気にそう言い放つと激しい眼差しを正面からぶつけてきた。
こんな風に自分に正直になれる彼が本当は眩しく見えたりもする。
 『…俺はすっげえしぶとい上に欲張りだからな、そんな勿体無い事頼まれたってするか
よ』
 挑発的な眼差しと共に答えを返せば、しかしそれでもヴィオラの満足のいくものだった
らしい。
ヴィオラは最後に笑顔を浮かべていた。
それを契機に沢山の別れの言葉を貰った頃、一台の車が手前に止まった。
新一が目でどうすんだ?と快斗に訴えている。
 「大丈夫だって。…じゃ、怪我早く治せよ……新一」
 片手を上げてそう言うと快斗は背を向けた。
そして直ぐに車のドアから飛び出して来た人物と途中すれ違った。
 (ほぼ予想通りの時間だったな)
一見歳もそう変わりばえのしない東洋人の男の眼中には初めから門の前に佇む蒼の双眸の
持ち主の姿だけがあったのだがそれはすれ違う瞬間目標に混乱をきたす。
 「工藤さん??!」
 流暢な日本語で小さく叫んで振り返りかけ、更に畳み掛けるように叩き付けられた挑発
的な<気>は驚愕に歪んだ端正な顔を更に驚かすには充分なものであった。
ICPOから応援として派遣(本当は任務終了後新一の事を知った彼は速攻で帰って来て有
無を言わさず立候補した)されて来た刑事 李 友良(リー・ユーリャン)は素早く体を
反転させると相手の顔をもう一度よく確かめた。
それはどう見ても一番大切なその人とあまりにも似ていて、だが瞳の色と人を喰ったよう
に細められた悪戯な表情は彼の人にはあり得なかった。
 「……怪盗キッド?!!!」
 外見がどう変わろうとあの日本での屈辱と体に刻みついた憎々しい<気>の質は忘れら
れるものではなかった。
声と同時に回し蹴りを放っていたのは殆ど反射的になのだが、その素晴らしい威力と早さ
のそれも相手は読んでましたとばかりにあっさりと躱される。
再び目が合った。
 「何故こんな所にお前が?!しかもよりによってあの人に変装するとは…!!」
 友良はこれがキッドの素顔だとは知らない。
 「そんな事よりも、早く行って差し上げた方がいいのでは?」
 目の良い友良は彼の言葉の意味を理解すると途端快斗の事は忘れ一目散に走り出した。
彼の目には暗い中にも新一の頭に包帯が巻かれている姿がハッキリと見える。
 (正直だねえ…でもま、今回は譲ってやるしかねえよな)
彼の怪我を防げなかった。
そんな事を言えばこれは俺の責任だ!と彼は怒り狂うだろうがそれでも間接的に巻き込ん
だ形になったのは本当だからどんなに理解していても心の痛みは消えない。
だから部屋でMI6と連絡を取った時ついでに友良の情報を得て快斗は少しだけホッとも
したのだ。
きっと彼が来ると思っていた。
彼ならば正規の薬を使って新一の身体を診られる。
悔しいがそれが今何よりもまた安堵する事でもあった。
快斗は僅かに顔を曇らせたがキーの差し込まれたままの友良の車にそのまま乗込むとエン
ジンをスタートさせた。
そして何の躊躇いもなく車を盗んだ彼は取り敢えず手近な街に向かう事にした。
バックミラー越しにこちらと新一とを交互に見ては呆然としている友良を見て口の端を持
ち上げる。
だがそれは何時ものようにただ勝ち誇った笑いという訳にはいかなかったが。

 目を閉じれば鮮明に思い出せる、あの一枚の写真に閉じ込められた一瞬はきっと何時ど
んな時にも彼への想いと共に色褪せる事は無い。
何故ならそこには仮面を外した素のままの二人がいた。
 『Auf Wiedersehen.(さよなら)』
 快斗は最後にもう一度だけミラー越しに、夜目にも眩しい彼の希望の光をその瞳に納め
るとアクセルを更に深く踏み込んだ。


 それから数週間後、記憶の混乱から解放されたDr.ベルナール・レッシュは身体の再
生手術を受け再び元通りの姿を取り戻した。
彼を待ち望んでいた某国の副首相は休暇と偽り、その間に無事手術を受け命の危機を脱す
ると何事も無かったかのように今日も政務に励んでいる。
フランスとしてそれは某国に恩を売った形となり、だからこそ余計にかの有名なDr.の
捜索を急いだという訳であった。
だが幸運なのはその政治家がベルナールを発見する切っ掛けとなった事件を知り、学校の
運営に多額の寄付と新たな経営者を用立ててくれた事である。
これで一時的に休校状態にあったウィルヘルム校は名前を新たに再開される事となった。
ただあまりにも信じ難い事件の内容と影で関わっていた希有な人物達の都合などにより事
件そのものはマスコミには発表されないまま静かに幕を降ろす形となった。
その中に二つの巨大組織の意志が働いていた事は言うまでもないだろう。

 

 更に一週間後、ICPOを通じ新一の元に届けられた一通の封筒には短い手紙と何処かま
だぎこちない顔つきでそれでも仲良く並んでいるコクランとコリンズの写真が在り、新一
を思わず笑顔にした。
そしてそれはひっそりと隠された同じ二枚の写真と共に彼の手元で眠る事となる。

 

                                   <END>

最後は結構ほのぼの、青春大爆発と言う感じです(大汗)恥ずかしい〜〜。本当は端折って書こうと思え
ば書けたんです けど、ここまで長く付合ってきた彼等と新一と快斗はどんな風に別れる事になるのか興味
も出てきてつ いテンポ悪くなるのは自覚しながらも長々書いてしまいました(汗)
でもこれで完全完結です、ここまでおつき合い下さいましてありがとうございました。
2ヶ月一寸、ひたすら考えて書いてきた話なのでこれでもう書かなくていいとなると凄く寂しいです(泣)
この話をリクエスト下さった麻希利様に大感謝致します。そして時間掛かりましたがこれらの全ては麻希利
様に捧げますね!
それでは本当に本当にありがとうございました(ペコリ)
あ、それから今更ですが工藤新一ファンクラブは解散の危機を免れましたよ!!(苦笑)

お疲れさまでした!長い間、ありがとうございまますv
よもや、リクエストした内容がこれほど素晴らしい長編になるとは思ってもみませんでした。
嬉しい誤算vこのお話全部頂けるなんて、幸運と呼ぶ以外ありませんね。
ああ、またキリ番狙っちゃおと図々しい欲がムクムクと(^^)
エピローグはホントにほのぼのとした、まさしく大団円となりましたね。
犠牲者はいても、新ちゃんが怪我しても、結果はこともなし・・なのでしょうか。
互いの身分を明かした二人だけど、やっぱり驚きは快ちゃんのMI6でしょうね。
そりゃ、大人には驚きでしょう。どうして、こんな子供が・・と。
それにしても、みんないい子ばかりでしたvヴィオラくんもとってもいい子だvv
最後にすっ飛んできた友良くんが嬉しかったです。
快ちゃんに車パチられてましたが(苦笑)
この二人、もしかして天敵?隆良と快ちゃんは同志というような気が・・・

本当にありがとうございました、ラトさん!これからも、よろしくね。   麻希利

 

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