FAKE

 

 

 

「今度の日曜、新一君も一緒にパーティに来ない?」

「・・・・・は?」

 

教室で昨日出たばかりの小説を読んでいると、蘭と一緒に園子がそばにやってきていきなりそう言ったので新一は最初理解できなかった。

 

「だ〜か〜ら〜、パーティだってば。今度の日曜日にパパの知り合いの誕生日 パーティが開かれるのよ。私と蘭は行くんだけど、それに一緒に行かないかって誘ってるの!」

「あ〜?パス。めんどくせぇ・・・。」

 

ただでさえ読書を邪魔されて不機嫌な新一はぶっきらぼうに答える。

が、それでくじける園子ではなかった。

 

「え〜?だめよ!もう新一君も行くって言っちゃったもの。」

「・・・・・おい・・・・どういう意味だ・・・。」

「だから、もう新一君も行くって言ってあるから、今さら断ってもダメだって言うこと。」

「・・・・・おめぇな、それは誘いじゃなくて強制っていうんじゃねぇのか?だいたい俺は、今パーティとかには行きたくねぇんだよ。」

 

こうやって学校に来たりするだけならまだいいが、パーティなどには、

組織のやつがまぎれているかもしれないから。

 

「なあに?最近世間に出ていないと思ったら、なにかに追われてでもいるわけ?」

「・・・・・とにかくだめだ。」

「大丈夫よ!もしそうでも工藤新一だってわからなければいいんでしょ?知り合いにメイクアップアーティストがいるから、変装すればv」

 

新一がだんだん切れかかってきているのを見て、蘭があわてて間に入った。

 

「いいじゃないの、新一。最近あまり学校にも来ないんだから、たまには付き合いなさいよ。」

 

いつも心配をかけていることから蘭に弱い新一は、口を噤んでしまう。

それを知ってか、園子はしてやったりと笑みを浮かべた。

 

「・・・・・・・鈴木会長の知り合いのパーティなんておめぇが行かなくてもいいんじゃねえのか?」

 

新一はそれでも反論してみる。

 

「そりゃあね、普通のパーティだったら私も行かないわよ。でも、今度のパーティには彼がくるのよ彼が!」

「・・・・・彼?」

「キッド様よ、キッド様!その知り合いのところに予告状がきたらしいのよ!」

「キッドが?」

 

キッドとは前の”スネーク”の一件以来会っていなかった。

あの時自分はキッドにキスされた挙句眠らされたのだ。思い出すだけでも腹立たしくなる。

 

「で?やつの目的は?」

「なんでもその人が持っているルビーらしいわよ。」

 

キッドのことを考えて別世界に旅立っている園子の代わりに蘭が答える。

 

「予告状の内容はわかるか?」

「さぁ・・・お父さんのところにも今回はなにも連絡きてないし。」

「それよりも!新一君、絶対に来なさいよ!来なかったら承知しないから!」

「あ〜、わかったよ・・・・・。」

 

新一はあきらめたように返事をした。

 

「日曜日の3時にここに来て?遅れちゃダメよ?」

「わかったわかった。」

 

もうどうでもいいかのように場所の書かれたメモを受け取ると再び読書に戻る。

だから、園子が怪しい笑みを浮かべているのに気づかなかった。

蘭は、そんな様子を見て苦笑いを浮かべる。

 

 

 

 

 

「あ、目暮警部?僕です。お聞きしたいことがあるんですが。」

『おお工藤君。久しぶりだね。どうかしたのかね?』

「あの、2課のほうにキッドからの予告状って届いてますか?」

『キッドからの予告状?いや、知らんな。ただ、キッドから予告状が届いたという連絡があったって騒いどるみたいだが。』

「そうですか。ありがとうございます。」

新一は携帯をきる。

(おかしいな、キッドはこういう場合警視庁にも出していたと思ったが。まさか偽者?まぁ、どうせ行かなきゃいけないんだしいっか。)

もしキッドが本物なら、捕まえて言ってやりたいことが山ほどある。

新一はそんなことを考えながら帰路につく。

 

 

 

「・・・・おい・・・・・・・」

「ああ、楽しみだわぁ〜vv早く時間になんないかなぁ?」

「・・・・おい、園子・・・・・・」

「今度こそ絶対に会ってやるんだから!ね、蘭v」

「う、うん。そだね・・・。」

「おい、園子!!」

「なによ、さっきからうるさいわね。」

「うるさいじゃねぇ!なんで俺がこんな格好しなきゃなんねぇんだ!!」

「あら、想像以上に似合ってるわよ?蘭もそう思うでしょ?」

「え?うん、そうだね・・・・;」

 

指定された場所に行くとそこにはすでに園子と蘭が来ていた。

2人ともパーティ用の服に着替えている。

そこで新一は園子の口からとんでもないことを聞いた。それは、

「言われたとおり、変装の準備は出来てるわよv 女装のね 。」

だった。

園子の言葉を聞き、近くにいた女性が新一を連れてこのホテルの一室に

連れて行き、文句を言う新一にドレスを着させ、化粧もほどこしたのだ。

さすがに園子の知り合いだけあって彼女は口が達者で、新一は押し切られてしまった。

どこから見ても美人な女性に変身した新一は、ついにきれて園子に詰め寄る。

しかし当の園子はただ楽しそうに笑うだけだ。

 

「なによ、きちんと工藤新一だってわからないようにしてあげたんでしょ?」

「それがなんで女装なんだ!!」

「そのほうがわかりにくいじゃない。」

園子は100%楽しんでいる。

「おめぇ、最初からそのつもりだったな・・・・?」

蘭は苦笑いしたまま2人を見つめている。

「・・・・・帰る。」

「それは無理ね。新一君の服はこっちで預かっているから。」

「なに?返せ!」

「いいわよ。パーティが終わってからねv」

「〜〜〜〜」

「それに、新一君が来るってこと、パパしか知らないから、安心して。さ、そろそろ始まる時間よ。行きましょう?」

まさかこのままの格好で帰るわけにもいかない。

すっかりだまされた自分を呪った。

そのまま新一は会場まで連れていかれてしまった。

 

 

 

 

会場で、注目を受けている人がいた。

真っ白なパーティドレスに身を包み、長い髪を1つにまとめて上にあげている。

肌は雪のように白く、瞳は美しい蒼だ。会場の誰もが彼女に見とれていた。

しかしそれは、女装して出ることになってしまった新一であった。

壁に寄りかかり、不機嫌に眉を寄せ床を睨んでいる彼女は、話し掛けづらい雰囲気だ。

離れたところで蘭と園子はその様子を見ていた。

 

「ねぇ園子、やりすぎたんじゃない?すっごく機嫌悪そうだよ?」

「だいじょーぶよ。蘭が後からフォローいれれば。あやつは蘭に弱いんだから。」

「もう、園子ったら・・・。」

「しっかし、まさかあんなに美人になるとは思わなかったわ。」

「そうだね。」

ふと、1人の若い男が新一に近づいて何か話し掛けている。

「ちょっと園子、新一が・・・。私ちょっと行ってくる。」

「待ちなさいって。ほっときましょうよ。おもしろそうじゃない。あの人結構かっこいいわよv」

「でも・・・」

「いいからいいから!」

蘭は心配そうに新一のほうを見た。

 

 

 

 

「きれいなお嬢さん、壁の花になっていないで私とお話でもしませんか?」

(げっ!)

 

ふいに話し掛けられて新一は驚くが顔をそらして無視を決め込む。

すると男はさらに近づいて新一の耳元で囁いた。

 

「ずいぶんときれいになったね、名探偵。」

さっきとは違う声に新一は驚いて顔を向けた。

 

「おまっ・・キッ・・」

「しっ、静かに。名探偵。」

 

新一は慌てて口をつぐみ、周りを見渡す。幸い気づいたものはいない。

男もといキッドは新一の隣に寄りかかった。

 

「おい、今回の予告状は本当におめぇか?」

「やっぱり気づいたか。名探偵のお考えどおり、今回は俺じゃないよ。今日は、俺の名を語る不届き者を少々懲らしめようかと思ってね。」

「・・・おめぇが言うとしゃれになんねぇ・・・・。くそっ、おめぇに会ったら言いたいことが山ほどあるっていうのに、これじゃあ言えねぇじゃねぇか。」

「クスクス、俺も驚いたよ。園子嬢が来ているから来るかなとは思ったけど、まさか女装してくるとはね。もともときれいだけど、ますます美人になってるんだもんな。」

思わず見とれちゃったよ。

「・・・・・おめぇ、なんか前と違うぞ?」

「今更でしょう?素顔も見られてるっていうのに。さてと、そろそろ仕事しますか。」

「え?偽者の正体わかったのか?」

「まあね。・・・・・新一」

 

ふと自分の名前を呼ばれて戸惑った。そう呼ばれたのは初めてだったから。

キッドは新一の手をとり、その甲に口付けた。

 

「また会いましょう?」

 

キッドが指を鳴らした瞬間、前のほうに置いてあった宝石ケースの下から

煙りが出始める。そして照明が消えた。

すぐに照明がついたが、その時にはすでにキッドも宝石も消えていた。

「うわぁ〜!!ルビーが!私のルビーが!!」

このパーティの主役である澤井が悲鳴をあげる。

「こんなはずじゃ・・・こんなはずじゃ・・・・・・」

頭を抱えて座り込んでしまう。

「澤井さん、それはどういうことですか!?」

キッドを捜していた中森が澤井に近づいて問い詰める。

 

「これに懲りたら、私の名前を利用しようなどとは思わないことですね。」

 

ふと上のほうから声が聞こえた。天井の桟にキッドが立っていた。

後ろから園子の悲鳴が聞こえる。さぞかし喜んでいるのだろう。

 

「キッド!!」

「これは、お返しいたしますよ。私が求めるものではありませんから。」

 

ルビーを澤井に向かって放り投げ、自分の足元には煙玉を投げる。

煙がはれたときにはもちろんキッドの姿はない。

中森たちは大声を上げて追いかけていった。

 

「ま、今日も捕まえられないんだろうな。」

 

新一はそう呟いて笑った。

その姿はいまだきれいな女性であるので、見とれてしまった人が多数いたことは言うまでもない。

 

 

 

その後、澤井が行き詰まってきた会社を立て直そうと、キッドの名を使って

話題作りをしようと考えて、予告状が届いたと嘘をついたということがわかった。

まさか本物が来るとは思ってもいなかったらしい。

そして、その後しばらくは新一の機嫌は直らず、蘭が懸命になだめた。

新一が”快斗”と会うのはもう少し後。

 

 

END

 


原作の方を読んで思いついたお話です。

一応前の「Representative」に繋がっているんですが、前とはかなり雰囲気が違いますね;

とりあえず、園子ちゃんを出したかったもので。

新ちゃん変装ネタ第2弾、こんなものでいかがでしょうか、麻希利さん・・・・?

ちなみに題名に意味はありません;

ありがとうです、友華さんv

また頂けて嬉しいです!地雷設置して良かった(^^)
今回の女装新ちゃんもとても良かったですv新ちゃんはやっぱ美人ですよねえ!
それにしても、こんなに早く頂けるなんて・・・
友華さんの素早さにはもう脱帽です。
わたしなんか、余所で地雷踏んでンヶ月ですからねえ(ごめんなさ〜い)
麻希利

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