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カチコチ・・・一定のリズムで12の文字を回る梁 その中でも大きな二本の針は長針が6を単身が11を3目盛りほど進んだところを指している。
「さて、そろそろ魔法が解ける時間だ」 ラピスラズリ色をした夜の闇の中に、白い翼を持った影が舞い降りる。 星の輝きさえも消してしまうような街明かりが照らし出すその姿は、白いマントを羽織り同じように白いシルクハットを被った一人の青年であった。 「現実と言う名を持つ魔法が・・・」 そう一言呟くと、青年は夜でもなお明るい街を見つめた。
同時刻・・・・とある屋敷
「ふぁ〜退屈だな・・・しゃーねえ本でも読むか」 此処の住人らしい青年は欠伸を一つすると、部屋のドアを開ける。 部屋の中に一歩はいると、まず飛び込んでくるのは部屋の壁一面に並べられた本の山。 それは、一角のみならず吹き抜けのこの部屋の壁一面と言っていいほどの量であった。 「さーてと、何読もうかな・・・んっ・・何だコリャ」 そう言って手に取ったのはタイトルも何も書かれていない宙色の本だった。 夜空を思わせる表紙に金で装丁がされており、中を開くと英語だろうか小さな英数字が所狭しと並んで印刷されている。 「・・・まっ、これでいいか」 手にした本を持ち、そのまま自室ではなく適当に二階にある部屋に入る。 自室にいるとほかの事を考えたりするので、こうやって読書をするのが癖になっているらしい。 部屋の窓を空け椅子を窓辺に置き、夜風に揺れるカーテンの片方を椅子の後ろに回すと腰を掛ける。 「満月か・・・・灯りはつけなくてもよさそうだ」 月の明かりを浴びながら青年は本に目を落とす。
15分後・・屋上
「そろそろ行きますか」 今まで風景を眺めていた青年はおもむろに懐からふるめかしい懐中時計を取り出すと、小さく微笑みを浮かべる。 「だが、予告もなしに行くのは俺の礼儀に反するな・・・悪いけれど彼の姫君に伝言を頼むよ」 軽く握った右手を宙に向けて開くと、ポン!と軽い音と共に白い一羽の鳥が夜の闇に飛んでいく。
同時刻・・・屋敷
「・・・誰だよ・・・こんな本あそこに入れたのは・・・」 青年はジト目で月に文句を言う。 見たことも無い本なので読んでみたのだが、 「親父か・・・おふくろかよ・・・・・ったく子供じゃあるまいし今時お姫さまねぇだろう」 英語は難なく読めるものだったのだが・・・中身は、冒険談と言うかファンタジー小説だったのである。 内容はというと・・・屋敷に捕らわれた姫君を翼を持ちし騎士が助けるお決まり事のようなおはなしだ。 「白い翼か・・・」 現実にいるわけはないのだが、ある人物の姿が心の中に浮かぶ。 「No.1412・・・人呼んで・・・・」 月を見つめる瞳に一羽の鳥が映る・・・ 青年は小さく小さく・・・ある名前を呼んだ。
闇夜に白い翼の鳥が飛ぶ・・・ 「さて、ご機嫌いかがだろうね・・・推理という屋敷に囚われた探偵の姫君・・・」 青年は青い闇と同色に塗られたグライダーを巧みに操るのであった。
月夜の夜は静かに時が流れていく・・・・・・
END
わざわざ、スペースまで届けて下さってありがとうございますv まさか、SSまでもらえるとは思ってなかったのでとっても嬉しかったです! 今回アップさせて頂いたんですけど、肌色が綺麗にでなかったのが悔しい・・ 原画はとっても綺麗な色なんですよv 麻希利 |