青い夜

 

 

 

「だ〜か〜ら!飛行機使うのやめたんだって!ニュース見たろ?乗ってた便がハイジャックされかけて引き返したんだって。ケチついたから飛行機にはもう乗らねえよ」

 だから列車で行くと言えば、電話の向こうの相手はキンキン声で猛反対した。

「ああもう!心配ねえよ!確かに列車で行くのは初めてだけど、ちゃんとルートを確認したから。英語も通じるし大丈夫だって。・・・ああ?そんなに頻繁に事件が起きてたまるかよ!大丈夫だって、母さん。明日にはそっち着くから。駅に着いたら連絡する」

 駅のホームに立っていた少年は、じゃな、と会話を一方的に終えると携帯電話を折りたたんだ。

 携帯をジーパンのポケットに突っ込むと、ふう、と疲れたように息を吐き出す。

 空港からタクシーでこの駅まで来た少年は、これから列車を乗り継いで両親のいる別荘まで行くことになっていた。

 本当は飛行機を使い、海辺の別荘近くにある空港まで行く予定だったのだが、トラブルが起き列車を利用することにした。

 外国にきて、見知らぬ土地での列車の乗り継ぎは大変だが、英語は話せるし、この国の言葉も日常会話程度ならできるから問題はない。

問題があるとすれば、常に自分の身近で起こるトラブルか。

 もっとも、普通よりは確率が高いだけで、頻繁に巻き込まれるわけではない。

 そう思っているのは本人だけだと幼馴染みの少女やその友人がいつも呆れていたが。

「あ、ごめん」

 列車に乗り込もうと足を踏み出した少年に、後ろからカバンをぶつけた男がすぐに謝る。

 少年より三つ四つ上くらいに見える青年で、栗色のくせっ毛のハンサムだった。

 いえ、と少年は軽く頭を下げ、列車に乗り込んだ。

 青年も少年の後に続いて列車に乗り込む。

「失礼。もしかして日本人?」

 空いてる座席を探していると、さっきの青年が英語で話しかけてきた。

 そうだけど、、と少年が答えると、青年はへえ〜と目を瞠った。

「こんなところで日本人に会えるとは思わなかったなあ。この辺で列車を使う日本人はあんまり見かけないって聞いてたし」

「そうなのか?」

 確かに日本人の旅行者なら列車より飛行機を利用するだろう。

 人気の観光地までは乗り換えが面倒だし、時間もかかる。しかも、この辺りはそんなに治安がいいとは言えない土地だ。

 二人は自然に向かい合わせの席に腰をおろした。

 持っていたバッグは座席上に乗せる。

「オレが日本人だってことなんでわかったんだ?」

 普通、東洋人とみると中国人かと聞かれる。

 経済大国といわれていても、日本はやはり極東で世界地図を見ても小さな国なのだ。

「携帯の会話がちょっと耳に入って。日本語だったろ?」

「日本語わかるのか?」

「単語がいくつか聞き取れるって程度だけどね。ガキの頃、日本のアニメをよく見てた」

 言って男は少年もよく知っているアニメのタイトルをいくつかあげた。

 日本は経済大国というより、アニメなどの文化の認知度の方が高いようだ。

「合気道も習ったことがあるんだ。あれって日本の武道だろ?」

 ああと少年は頷く。

「日本人に会えるなんて、ラッキーだったなあ。あ、オレはサザーラクシズ。サーザと呼んでくれ」

「オレは新一。シンでいい」

「シンは中学生?」

「いや、高校生。今度二年になる。サーザは?」

「オレは先月、二十歳になった。大学に行ってたんだけどな、故郷に呼び戻されてやめた。でもいつかは復学するつもりだ」

 二人はそれから互いに住んでる場所の話をした。

 サーザは日本の首都のことも知っていた。

 大阪や京都のことも。

 殆ど、子供の頃に見たアニメの知識のようだ。

「大学に熱狂的ファンがいてな。え、と・・オタクって言うんだったか。いつかはオタクの聖地アキバに行きたいからと日本語を必死に勉強してたぜ」

 へえ?とその方面に疎い新一は相槌を打つくらいしかできなかった。

 子供の頃から、テレビも本もミステリー一辺倒だったのだ。

 まあ、チビの頃からミステリー作家の父親の影響を強く受け、原稿の段階で父親の新作を読んでいた新一であるから、マンガやアニメよりもシャーロック・ホームズに熱中していた。

 列車が停車駅に着き、新たな乗客が乗り込んでくる。

 乗り込んできた二人の男を見たサーザが、ふいに席を立った。

「ちょっとごめん」

 サーザは、彼らの反対側の斜め後ろに座った二人の男のところへ行った。

 列車で待ち合わせしている友人がいると言ってたので彼らがそうなのだろう。

 二人とも、サーザより年上のようだ。

 新一が座っている席から見えるのは、年長の男の方だった。

 眉の太い、男らしい顔立ちの男で、以前日本で見たアクション映画の刑事役に少し似ている。

「東洋人の子供か」

 新一が彼らを見ていたように、新一を見た年長の男が呟いた。

「シンというんだ。前の駅で会った」

「成る程。人見知りのおまえが珍しく楽しそうに喋っていた理由がわかった。アレは同種だな」

「え?」

「丁度いい。あいつにしよう」

「何?シンをどうするんだよ?」

「ああ。おまえはまだ知らないな」

 毒抜きだ、と年長の男が言う。

「毒抜き・・・」

同種・・ねえ、と隣にいた男がひょいと覗く。

「うーん、よくわからんが、あんたが言うなら間違いないな」

「手に入れよう」

どうするんだ?とサーザが訊く。

「あの子供は終点までか?」

「多分。乗り換えるって言ってたから」

「ならシグの手を借りよう。時間がない。明日になれば迎えが来る」

 今夜だ、と男は言った。

 

 

 

 列車が終点に着くと、新一は乗り換えのため反対のホームへと向かった。

 サーザたちは、この町のホテルを予約しているからと言って着いたホームで別れた。

「二つ目の駅でまた乗り換えて、後は終点までか。ゲゲッ、今度来る列車が今日最後になってるじゃねえか。まだ夕方だぜぇ?」

 ま、乗れるからいいけど、と新一は足早に反対のホームへ移った。

 予定ではあと五分弱で列車が来る。

 日本人は列車の到着時間は正確なのが普通と思っているが、他所はたいてい"予定"であって正確にその時間に来るとは限らない。

 だから、一時間待たされても文句を言わずに待つ。

 日本人なら、三分待たされても駅員に食ってかかるが。所変われば、である。

「お、来た」

 列車が見えて新一はホッと息をつく。

 ちゃんと時間通りだ。珍しいのか、それともここでは時間に正確なのか。

 とにかく、これで明日の昼には両親が待つ別荘にたどり着くだろう。

 父親が新作の原稿を書き上げたと言っていたし、読むのが楽しみだ。

 なんと言っても父親の代表作シリーズ"ナイトバロン"の新作なのだ。

 ゴールデンウィークにロスに来るのが嫌なら、春休みの間に顔を見せろと東欧の別荘まで呼ばれたが、嫌々ながらも来たのは、ひとえに"ナイトバロン"の新作のためだといっていい。

 むかつくオヤジだが、作家としての才能は認めている。本がアメリカで発行されるのは二ヵ月後。それが翻訳されて日本で発売されるのはもう秋になる。

 待ってられっかよ。

 列車がホームに着き、扉が開いた。

 乗り込もうと一歩踏み出したその時、横からドンと誰かの身体がぶつかってきた。

 片足を上げていたので、いきなりぶつかってこられればひとたまりもない。

 勢いのまま、新一はバランスを失って膝をつくはめになった。

「いって〜」

 膝をしたたか打った新一は顔をしかめ、ぶつかっても謝りもしない相手に文句を言おうとしてハッとした。

 肩にかけていたバッグがスルリと抜けたのだ。

「あ、テメー!」

 新一はひったくられそうになったバッグの紐を掴むが体勢が悪く引きずられそうになった。

 このっ・・!

 新一は両手をついて足を浮かすと、腰を支点にし反動を使って相手を蹴り飛ばす。

 サッカーで鍛えた黄金の脚は見事にヒットし、引ったくりを吹っ飛ばした。

「このオレから引ったくろうなんて、いい度胸じゃねえか」

 新一は素早く立ち上がって、ホームの上にうつ伏せにひっくり返っている引ったくりの背中をドンと踏みつけた。

 引ったくりの男は、踏まれた蛙のような声を漏らす。

 バッグを奪い返し、駅員に警察を呼んでもらおうと顔を上げた新一は、目を丸くして立っている青年に気づいた。

「サーザ?」

 唖然としていたサーザが、すげえなと呟きながら新一の方に視線を向けた。

「なんでここにいるんだ?」

「あ、ああ。これ、駅員が間違ってオレの方に持ってきたんだけど、おまえのじゃないか?」

 言ってサーザが見せた携帯に新一は、あっ!と声を上げた。

 突っ込んでいた尻ポケットを探り、携帯がないことに初めて気づく。

「やべ!いつ落としたんだ?」

「座席に落ちてたらしいぜ。で、見つけた駅員が勘違いしてオレの方に持ってきてさ」

「うわ、サンキュー。助かった」

 サーザから携帯を受け取った新一が礼を口にしたその時、ホームから列車が離れていくのが見え、あーっ!と今度は悲鳴のような声を上げた。

「ちょ・・ちょっと待てーっっ!」

 新一は慌てて、走り出した列車に向かって叫ぶ。

 踏みつける足が緩んだのを見て引ったくりがチャンスとばかりに立ち上がって逃げようとしたが、近くにいたサーザがすかさず捕まえて投げ飛ばした。

「んなバカな・・・あれが今日の最終なんだぜ・・・」

 新一は、走り去っていく列車を茫然と見送った。

 

 

 

 

 結局、もう今日は列車に乗れないと諦めた新一は、サーザたちが予約しているホテルに泊まって、翌日の列車に乗ることにした。

 駅員に聞いてみると、昼前に発車する列車があった。

 ただ、乗り継ぎ時間がうまくなく、別荘に着くのは明後日になりそうだ。

 そのことを、とりあえず母親に知らせる。

 それからホテルの部屋をとって、サーザに誘われるまま町のバーへと出かけた。

 そこは彼の知り合いがやっている店らしく、サーザの連れもそこにいるのだという。

 軽い食事もできるからというので、新一はサーザについていくことにしたのだ。

 バーはカウンターとテーブルが二つあるだけの小さな作りだったが、小奇麗で感じのいい店だった。

 新一はカウンターに腰掛け、三十代くらいのマスターが作ってくれた料理を食べた。

 厚く切ったハムをあぶったものと、野菜サラダ、野菜の入ったスープとパン。

 バーで出される食事としては上等だった。

 昼も食べていなくて空腹だった新一は、瞬く間にたいらげた。

 食器を片付けたマスターは、新一の前に淡いブルーの液体が入ったコップを置いた。

「これは奢り。引ったくりを捕まえた英雄に」

 英雄って、と新一は苦笑を浮かべる。

「それで列車に乗れなかったんですけどね」

「それなんだけど、明日の朝に出るバスに乗ればどうだい?列車よりは早く乗り換えの駅に着くよ」

「ほんとですか!」

「どこにも寄らず直通で向かうから、昼前には着くね」

「それ助かる!だったら、乗り継ぎに長時間待たなくてすむし」

 いいことを聞いたと新一は喜んだ。

 そして、ありがたくマスターが出してくれた酒を飲んだ。

「あ、うまい」

 口当たりがよく、滑らかに喉を通っていく酒が気に入り、喉も渇いていたこともあって新一は一気にそれを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「眠ったのか?」

 カウンターに突っ伏した少年の肩にマスターが手をかけて揺すった。

 数分前に声をかけた時には、眠そうな声で答えていたが、今は彼の声に全く反応しない。

 カウンターの中にいるマスターが、腰をかがめて少年の顔の方に耳を寄せた。

 やや速いが、規則正しい呼吸音が聞こえる。

 マスターは少年の手首を取って脈を確かめた。

 異状はない。

 軽く少年の頬を叩いたが、異国からやってきた少年の瞼はピクリとも反応しなかった。

「よし。いいぞ」

 マスターが、テーブル席に座って酒を飲んでいた若い三人の男たちに向けて頷くと、三人は椅子から立ち上がって足早にカウンターの方へと寄ってきた。

 男たちの一人が少年の腋の下に手を入れてカウンターから上体を離すと、もう一人が力なく、だらんと落ちた足を持つ。

 こっちだ、とカウンターから出たマスターが、十二星座の大きなタペストリーのかかった壁を押し開いた。

 常連でも知らないという隠し部屋は、広くはないが、物が殆ど置いていないのでそんなに狭くは感じない。

 部屋の真ん中に、病院の診察台のような幅の狭い簡易ベッドが一つおかれている。

 他には丸いテーブルと椅子が一つあるだけだ。

 ベッドの上には大判のバスタオルが幾重にも重ねてあった。

 男たちはその上に、シンと名乗った少年を横たえた。

 少年が目を覚ます様子は全くなかった。

 マスターが調合したという薬の効果は絶大で、丸一日は目を覚ますことはないという。

 それにしても、と男たちはベッドの上の少年を見下ろす。

 確か十五歳だと言っていたが、眠っている顔を見るとかなり幼い。

 日本人は若く見えると聞いていたが、確かに自分たちが知る十五歳の少年より二つ三つ下に見えなくもなかった。

「こうして見ると、かなり華奢だな」

 まったくだ、と苦笑を返した男が少年の足から靴下ごとスニーカーを抜き取った。

「始めようぜ。時間がない」

 ああ、と男たちは頷いて動き出した。

 ベルトを外して少年のジーパンのホックを外す。

「脱がすのは下だけでいい。どうせ使うのは"穴"だけだからな」

 男たちは肩をすくめ、少年の足から今度は下着ごとジーパンを抜き取った。

 すると未発達の少年らしい、ほっそりとした白い足が現れ、男たちは思わず息を飲んだ。

「見ろよ。なんて綺麗な肌なんだ」

「全く、これが男の足かよ」

 呆れを含んだ声も出る。

「これで、あの破壊力なんて嘘みたいだぜ」

「毛は薄いし、股間のものもまだ可愛らしいもんだ」

 男たちはフフフと笑いながら言い合った。

 さて問題はこっちの方だが、と男たちの一人が少年の右足首を掴み、腰が浮くほど膝を折り曲げた。

 反対側に立っていた男も同じように左足首を掴んで膝が胸につくほど折り曲げる。

 少年の秘められた双丘の割れ目が男たちの眼前にさらされた。

「やっぱり未通だろうな。綺麗なピンクだ」

「穴も小さくて硬そうだ。傷つけずに犯れるのか?」

 やってもらわなきゃ困るな、と男たちのやることをずっと見ているだけだったマスターが言う。

「何が行われたかこの子が気づかないよう犯るのが条件だ。そのために薬を使った」

「わかってる。だから必要なものはちゃんと用意してきてるさ」

 答えた男は、持ってきた袋の中から潤滑用のジェルの入ったビンと、慣らすための張り型を出して少年の足元に置いた。

 まずはこれだなと、男はやはり袋の中から銀色のリングを取り出して少年の、まだなんの反応もしていないうなだれた股間の根元にパチンとはめた。

「一度イっちまうと、締め付けが悪くなるっていうからな」

「締め付けどころか、硬すぎって感じだぜ」

 それはこれからやる、と男は少年の男根にゴムまではめた。

「こっちは脱がねえからな」

 着衣を汚されないためだという男の言葉に、他の二人は苦笑いした。

 少年の白い下肢を見て既に身体は興奮しているのに、冷静な言動がおかしい。

 男たちは少年をうつ伏せに返すと頭を柔らかなクッションの上にのせ、それから膝を曲げさせて腰を持ち上げると、白い臀部を突き出す格好にさせた。

 隠された穴が見えやすいように、足も左右に広げる。

 ビンを持った男が中のジェルを指にすくいとると、腰が落ちないよう支えていた男の一人が手を伸ばし、作業がやりやすいように双丘を割り開いた。

 指にすくったジェルを穴の周辺に、マッサージするように伸ばしながら塗ってから、指先を穴の中に浅くもぐりこませる。

 ん・・っと、痛みを感じたのか少年の眉がしかめられた。

 意識がなく力が抜けている筈なのに、指がスムーズに入っていかない。

 指先だけで精一杯だ。

「こいつは時間がかかるな・・・」

 

 

 

 

 思った以上に狭く抵抗する穴を広げるため、男たちは根気よく解していった。

 指で丹念にマッサージを続けたり、指で穴をこじ開けてジェルが染みとおるようにする。

 指が一本入ると、動かして中からも解していく。

「大分柔らかくなったが、まだ受け入れるのは難しいな」

 無理して挿入できなくもないが、それをやると間違いなく傷つけてしまう。

 そんなことは、マスターが許さない。

 広げた状態に慣らすため、ジェルで濡れた穴に張り型を入れてみることにした。

 男はベッドの上の張り型を取り、それをうつ伏せの少年の穴にあてがったが、さすがに冷たい感触、異物感に身体が拒否反応を起こした。

 つまり緊張して、入り口を硬く閉ざしてしまったのだ。

「それじゃ駄目だな」

 ずっと口を出さずにいたマスターは、張り型を持った男の手を押さえると、少年を仰向けに戻し、ベッドをまたいで少年の上体を自分にもたれさせるように支えた。

 そして両方の膝を掬い上げ足を軽く曲げさせる。

「ゆっくりとやるんだ。いきなりだと身体が怯える。それでなくても、異物を身体の中にいれるんだ。拒否は当然だろう」

 男から張り型を受け取ったマスターは上着のポケットから小さなチューブを出すと表面に中身を塗りつけた。

 甘い匂いが漂いはじめる。

 蜂蜜シロップのような甘ったるい匂いだ。

 彼は少年の口を開かせると、持っていた張り型を押し入れた。

「ん・・・・・」

 甘い味が舌に感じたためか、少年は嫌がるでもなく張り型をくわえた。

 さすがに長いので先の方だけしか入らないが。

「これで少しは冷たさがマシになる。こういう無機質なもんは、あっためた方が抵抗が少ない」

 なるほど、と男たちはマスターの言葉に納得した。

 しかし、張り型をくわえている少年の顔は、なんともエロチックで、下半身にくるものがある。

 もういいだろう、とマスターが張り型を少年の口から抜くと、男に返した。

 少年の唾液で張り型は濡れて、明かりに反射するように光った。

 男は少年の双丘の割れ目に再び張り型の丸い先を押し当てる。

「感触に慣れるよう周辺を撫でて・・・そう、そしてゆっくりと入れるんだ」

 つぷ・・・と丸い張り型の先がもぐりこむ。

 張り型は、最初はガラス棒くらいの細さだが、だんだん太くなっていく形になっている。

 マスターに言われた通り、男は焦らずそろそろと張り型を少年の秘部に押し込んでいった。

 と、突然少年の身体がビクンと震え、息を吸い込むような声を上げた。

 ああ、とマスターがクスッと笑う。

「この子のいい所に触れたな」

「いいとこって、前立腺か?」

 そういうこと、とマスターは頷き、自分の下腹の上に乗った少年のサラサラした黒い髪を撫でた。

 前立腺をこすられたことで、少年の股間が一気に反応を示した。

 太い部分になるともうピンポン玉ほどの円周になるので、さすがに痛みを感じたのか、少年は顔をしかめたが、不満の声はすかさず伸びたマスターの大きな手で塞がれた。

「抵抗が大きくなったら少し間を置いてから進めた方がいいぞ」

「わかった」

 男はマスターに言われるまま、時間を置きながら押し入れていった。

 半時間かけて、張り型を僅かに外に残し全てを少年の中へ押し込んだ。

 最後はかなりの太さになっているので、尻穴は大きく口を開いているように見える。

 張り型はどぎついピンクに塗られているので、それが少年の白い双丘の間から覗いてる様はなんとも卑猥だった。

 時々具合をみるように抜き差しし、穴の筋肉が緩むのを待つ。

 時間はかかる。だが、その時間は少年の身体を傷つけないために必要なものだった。

 もういけると判断したマスターが準備を始めた。

 少年の腰を仰向けのままベッドの端にくるよう寝かせると、両手を重ねてタオルを巻きつけた。

 それからマスターはまたベッドをまたぐと少年の身体を後ろから支え、尻が浮き上がりやすくなるよう腰の下にクッションをあてた。

 今は両脚がベッドの端から落ちたままだ。

 慣らすため、しばらくそのままにしていた張り型は既に取り除いている。

 張り型で前立腺を刺激された少年の股間のものは、まだ柔らかいが勃っており、はめられたリングで窮屈そうになっていた。

 意識があれば、気の強い少年は恥ずかしさに赤くなり、さぞ激怒したことだろう。

 だが、眠っている少年は他人の手になすがままだ。

 マスターは背中からまわした左手で、タオルをまかれた手を少年の胸元に押し付け動かないようにし、右手は折りたたまれたタオルを使って少年の口を塞いだ。

「この店はたいして防音がきいてないんでな。外まで声が響いてもらったら困る」

 どう言い訳しても、これは強姦だ。

 しかも、意識のない子供を犯すのだ。非難されても仕方のないことを彼らは今からやる。

 三人は明日にも町を出て行くが、彼はこれからもこの町で生きていく。

 町の人間に知られるとやっかいだった。

 それでも犯罪に手を貸すことにしたのは、マスターであるシグが、この三人と同じ村の出身だからだ。

 いつでも始めていいぞとマスターがいうと、三人の男たちは顔を見合わせた。

「先におまえが犯れ、サーザ。童貞のおまえに一番乗りをさせてやる」

 最初にこの少年に接触したのもサーザだ。

 サーザは二十歳で、これから自分が犯そうとしている少年とはさほど年が離れていない。

 列車の中で会った時、何故か気があって、話をするのが楽しかった。

 他の二人が少年を気に入り毒抜きの相手にすると言った時は驚いたが、今は相手は彼しかいないと思っている。

 ドキドキする。

 類まれな美少年というほどではないが、少年の顔はとても綺麗だった。

 東洋人にしては色が白く、といって白人のような白さではなく真珠のような色だ。

 体毛が薄いのも東洋人の特徴か。

 すんなりと伸びた形のいい脚は、女のような柔らかい印象はないが、触れてみたい気にさせる。

 サーザは、ゴクリと唾を飲みこむと、ズボンのベルトを外しジッパーを下げて、窮屈そうにしていた己の男根を外に出した。

 さっきから痛いくらい硬くなっていて、下腹がむずむずしていた。

 サーザはAVを見ながら自分で抜くことはあっても、実際に誰かと繋がって抜いたことはない。

 だから童貞なのだが。

 ハンサムなのでもてるし、商売女から誘われることもよくあったが、何故か一線を越えることなく二十歳を過ぎてしまった。

 別に理由はないのだが、あえて言うなら両親を早く亡くし、厳格な祖母に育てられたからか。

 祖母は安易な性行為を疎んでいて、SEXをしたら相手と結婚するべきだと彼に言い続けていた。

 男はそれだけの責任を持つべきだというのだが、そうなるとどうしても考えてしまう。

 つきあってる彼女と本当に結婚してもいいのか、と。

 迷ってると、女性の方が諦めて、または怒って去っていってしまうのだ。

 一度、つきあっていた女性にそれを言って平手で叩かれたことがある。

 それでもう面倒になって、女性と知り合ってもつきあうことはなかった。

 自分から童貞だと言ったりはしなかったが、この二人には何故かバレた。

 いつかは捨てることになるだろうと思ってはいたが、まさか同性相手にとは予想もしてなかったなと、口元に苦笑が浮かぶ。

 サーザはベッドから落ちていた少年の両脚を抱え上げると、硬く立ち上がった男根の先を尻穴にあてがった。

 男相手に勃起するのかと疑問だったが、視線の先にある自分の男根は大きく膨れ上がってカチカチに硬くなり、まさに凶器に変貌していた。

 少年の尻穴を解していた時から彼の股間は硬く張り詰め、奥まで突き入れたい欲求で一杯だった。

 今、その欲求が叶う。

 だがぐっと力をこめて押し入ろうとすると、腕に抱えていた両脚が閉じようと動き、腰を捻られた。

 つ・・とサーザは顔をしかめる。

「興奮して待ち切れないのはわかるが張り型を入れたときのようにゆっくりとやれ。おまえが初めてのように、この子も初めてなんだ」

 優しく、だ、とマスターに言われたサーザは、ああ・・と頷き一回深呼吸をすると少年の脚を抱えなおし、少しずつ慣らしていくように股間のものを硬い蕾のような穴へ挿入していった。

 時間をかけて解したものの、やはり締め付けがきつくて痛みを感じたが、他人と繋がる感覚はなんともいえない気持ちよさも感じた。

 熱くて絞られる痛みさえ快感を呼ぶ。

 根元まで全て押し込むと、サーザはホッと息を吐き出した。そして、息を吸い込み自分の大きさを覚えこますように何度も中で突き上げる。

 んっ・んっ・・とタオルでふさがれた口からくぐもった声が漏れた。

 痛いだろうと思う。

 意識がないので、悲鳴をあげているのは身体なのだろうが。

 白い下腹がピクピクと上下するのを目にとめながら、サーザは入り口まで退いてから、再び奥まで突き入れた。

 ビクンと抱えていた少年の脚がマヒしたように震えつま先が引きつる。

 サーザは腰を揺らしながら抜き差しを繰り返し、たいした時間もかからず、息をつめ、ぶるっと身震いした。

 これまで自分の手の中でだけ出していた欲を、初めて他人の、少年の奥に向けて放出する。

 内部に直接流れ込んだ感覚を感じたのか、少年の顔がぎゅっとしかめられた。

 出し終えて、は・・と吐息をつくと、見ていた二人の男がパンパンと手を打った。

「童貞喪失おめでとう」

 サーザは返し方がわからない表情で少年の中から力を失ったものをゆっくりと抜き出した。

「おめでとう。そしてこの子は"処女"を失った」

 マスターが言うと、三人は無言で顔を見合わせた。

「じゃ、次は俺だ。男娼も相手したことはあるが、東洋人のガキは初めてだ」

 言って、サーザと入れ替わるように少年の細い足首を持ち上げて大きく左右に割り開いたのは、三人の中では最年長の男だった。

 とはいえ、まだ三十を越えていない若い部類に入る男だったが。

 少年の域を抜けたばかりのサーザよりは胸板の厚みはあり、腕も太いが、一般には細身といっていい体格の男だ。

 男は少年の小さな穴に、己の硬くて太い男根を押し込んだ。さすがに慣れているのか、動きがスムーズで戸惑いもない。

 一度出された精液が新たな潤滑液ともなっているので、さほど抵抗もなく根元まで一気に入った。

 男は小さく唸った。

「こいつはスゲエな・・・」

 珍しく感嘆の声を漏らした男に、他の二人が目を瞬かせる。

「まだキツイが、こいつ・・まるで吸い付いて奥へ奥へと引き込んでいくような感覚を与えてくるぜ」

 たまんねえ・・・と息を吐く男の言葉が理解できるのは、ついさっき少年の穴を征服したサーザだけだった。

 もう少しもつと思ったのに、あっさりもっていかれたのだ。初めてだからと思ったが、女だけでなく男ともSEXした経験のある男も焦ったような声を漏らすのを見ると、自分が童貞だからという理由だけではなかったらしい。

「ヤベエぜ。サーザを笑えねえ」

 男は少年の中でしばらくゆるゆると動かしてから抜き差しを始め、少年の腰を揺さぶった。

 さすがにサーザのようにあっさりもっていかれることはなかったが、それでも我慢できなくて短時間で射精した。

 ん!と男が呻くと、マスターに抱えられている少年の頭が揺れた。

 少年の中に精を放った二人目の男が離れると、三人目の男が少年の脚の間に身体を入れて太い腕で腰を抱えた。

 三人の中で一番身体の大きい男だ。

 鍛え上げられた逞しい肉体は、サーザも憧れている。

 その男がズボンから出している男根も身体に見合ってデカい。

 いい一物だなとマスターが言うと、男はへへと鼻で笑った。

「脚をもっと持ち上げて広げろ。腰が浮き上がって尻穴が天井に向くくらいに・・・そうだ。それからゆっくり上から刺し貫くように入れるんだ。おまえの一物は一番この子を傷つけやすいからな」

 ゆっくりと。おまえのモノが入っていくところから目を離すな。

 自分の目で確かめていれば無茶な挿入はできないはずだ。

 わかった、と頷くと三人目の男は言われた通り自分の一物が少年の穴を押し広げていくのをじっと見つめ続けた。

 指で解され張り型で慣らされ、さらに男二人を受け入れたそこは、太いものを入れられて極限まで口を広げられても裂けることはなかった。

 柔軟に大口を開けて男の一物を飲み込んでいく様は、男の欲望を直撃する。

 スゲーと仲間の巨根と少年の尻穴が繋がっているところを横から覗きこんでいたサーザがゴクリと唾を飲み込んだ。

 イって間もないのに、股間が疼いて硬くなっていく。

 あんなに小さくて入るのかと首を傾げるほどだったのに。

「んん・・っ!」

 少年がこれまでにない呻き声をあげる。

 さすがに奥まで巨根をねじ込まれ、中で動かれては身体も軋み苦痛を感じたようだ。

 嫌がるように身体を動かす。

 脱がされているのは下だけで、上はシャツと丈の短いデニムのジャケットを身に着けたままだ。

 それが動くことで肌がこすれ、犯されて敏感になっている身体が快感を全身に伝えていた。

「んんーーっっ」

 頭を振り、最も刺激を受け快感を与えているものから逃れようと腰を激しく動かした。

 だが、脚はがっちりと男の腕で拘束されていて、さらに男の一物が突き刺さり繋がっているので動きは最小限にとどまっている。

「大丈夫。落ち着いて」

 マスターは少年に語りかけながら、汗ばんだ黒髪を撫で続けた。

 少年を犯している男が、いいのか?と問いかけてくる。

「そのまま続けろ」

「けど、目を覚めさねえか、こいつ」

「これくらいで意識が戻るような調合はしていない。心配するな」

 だったらいいけどよ、と男は呟き、動きを止めていた股間のものを抜き差しさせた。

 ここで止めろといわれても、こっちが辛い。

 んーっ、んんーっと少年はタオルで塞がれた口からこもった呻き声を上げたが、マスターの言ったとおり目を覚ますことはなかった。

 男もまた少年の中に多量の精を放った。

 男は、ハッと息をつく。

「まいった。とんでもねえ、身体かも。こんガキ」

 女を早く知り、数え切れないほど抱いてきたが、彼は男は初めてだった。

 同性相手など気色悪いと思っていたが、萎えるどころか、興奮しまくり精を搾り取られてしまった。

「こいつの身体を知ったら、正気を失うほどハマっちまうバカが出てくるかも」

「俺たちは"死人"で数に入んねえが、将来が心配になるガキかもな」

「まあ、男でも女でもこの子のためになる人間と出会えれば心配ないだろう」

 マスターがサーザに向けて次を促す。

「え?いいのか、休ませなくても」

「まだ復活してないなら後に回るか、サーザ」

「あ、いや・・・続けて犯っても大丈夫なのか?」

「間をあけた方がこの子も辛い。そのうちマヒして快感だけ感じるようになるから心配することはない」

 ただ、キツイのは、どんなに刺激を受けてもイけないことだ。

 既にパンパンに膨れ上がっている少年の股間だが、根元をリングで締め付けられているため射精できなかった。

 それでも先から滲み出しているものはかぶせられたゴムが受け止めている。

「やるなら早くしろ、サーザ。オレたちは朝までにそいつの穴を使って、最後の一滴まで搾り出さないといけねえんだからな」

「ああ、わかってるよ」

 サーザは再び少年の脚を肩にかけると、自分のものを含めた三人分の精を注がれた尻穴に勃ちあがったモノを挿入した。

 グチッと濡れた音が繋がった場所からし、溢れかけていたものが押し出されて出てきた。

 動くとグチャグチャと湿った厭らしい音が響く。

 

 サーザは足首を持って膝が胸につくほど深く折り曲げると、自分のモノを飲み込んでいる少年の穴を見おろし、そして何度も抉り続けた。

 

 

 

 それから三人は休むことなく、代わる代わる少年の穴に己の男根を突きこみ射精した。

 男たちのモノからついには一滴も出なくなるまで、少年の尻穴は口を開け続け閉じることは叶わなかった。

 


 

 

 明け方、ようやく彼らの行為が終わった。

「このまま行くのか?」

 身づくろいをすませた三人が出て行こうとするのをマスターが尋ねる。

「いや。迎えのトラックが来るのは昼だから、一度ホテルに戻って休む」

 さすがに疲れたと言って男は苦笑する。

 マスターも笑った。

「そうか。じゃ、元気でな。また来い」

「まだ存在してたらな」

 男たちはそう言って店から、夜が明けかけた外へと出て行った。

 男たちの姿がなくなると、マスターはベッドに横たわる少年のもとへ戻った。

 三人の男たちにひと晩中犯され続けた少年は、いまだ目覚める様子はなかった。

 効果が切れるのは早くて昼過ぎになるだろう。

 それまでゆっくり休めばいい。どっちみち、目が覚めても少年は腰がたたないはずだ。

 何がなんだかわからないだろうが、納得はさせられる。

 マスターは洗面器とお湯が入ったポット、それにタオルを揃えて、ベッド横に置いた台の上にのせた。

 まず上の服を脱がせ全裸にする。

 汗をかいてるのでシャツはしめっていた。

 それから股間のものを締め付けていたリングとゴムを取り除く。

 ん・・と意識のない少年が甘く鼻を鳴らす。

「悪かったね。もうちょっと我慢してくれよ」

 言い聞かせるように言って、マスターは少年の口に丸めたタオルを押し込んだ。

 そして、腹につかんばかりに反り返っていた少年の男根をタオルで包み軽くこすった。

「んんーっっ!」

 少年はひときわ大きな悲鳴をあげたが、押し込まれたタオルに声は吸い込まれ、そしてタオルの中に精を吐き出した。

 ずっと我慢させていたのだ。一度では満足できないだろうと思いつつ、次の作業のために別のタオルを手に取る。

「マスター」

 ふいに呼ばれて彼は手を止めて振り向く。

「サーザか。どうした?」

 立っていたのは、まだ少年の面影を残した青年だった。

「手伝おうと思って戻ってきた」

「ホテルで休まなくていいのか。これから長旅だろう」

「平気だ。オレは若いから」

 そうか、とマスターはハハと笑う。

「じゃあ手伝ってくれ。その子の両手を動かないようにベッドに押し付けて」

「何をするんだ?」

「中を綺麗にする。放っておくと身体に悪いからな」

 そうなのか?とサーザは目を瞬かせた。

 初めてだから、何も知らない。

「男を受け入れると、いろいろ大変なんだな」

 サーザは少年の両手を頭の両横に押さえつけた。

 マスターは尻穴に指を入れ、中に出されたものを掻き出した。

 白濁とした液体が穴から溢れ出てくる。

 それをタオルに染み込ませ、また指で中を探る。

 穴に指が入れられ動かされて少年は身体をねじった。

 逃れようと手に力を入れられたので、サーザは思わず手首を握りしめる。

「あんまり力を入れるな。指の跡がついたら説明が難しい」

 あ、ああ、とサーザは指の力を緩めた。

「んーん!んん・・ふ!」

 刺激に身をよじる少年を宥めながら、マスターは少年の中を綺麗にしていった。

 掻き出したもので汚れたタオルを捨て、お湯で濡らしたタオルで少年のベタついた白い尻を拭っていく。

「後、身体を拭くだけなら、オレがやるけど」

 落ち着いたのを見て手を離したサーザが言う。

「なら、頼む」

 マスターはタオルをサーザの手に渡した。

「なあ、シグ。こいつがオレたちと同種かもしれないってホントか?」

「さあな。同じものかどうかはわからないが。第一この子は日本人で普通の生活をしている。オレたちとは経緯が違うだろう。だが、似た何かを感じるのは確かだ」

「似た何かって?」

「本来生きてはいない存在が、人の力で生かされた異質なるもの」

 そういう気配だ、とマスターが言う。

「オレたちの村は死んだのに、なぜか今も存在してるということと同じことがこいつにも?」

「同じことがとは言い切れないがな」

似た何か、だ、と言葉を繰り返しマスターは首をすくめた。

「ちょっと部屋で休んでくる。何かあれば言ってくれ」

 ああ、とサーザは頷く。

「もう入れるなよ」

 少年の口を塞いでいたタオルを取り去るサーザを見ながらマスターが忠告した。

 サーザは苦笑した。

「もう何があったって、勃たねえって」

「それならいいがな。身体を拭いたら、そこに着替えがあるから着せてやってくれ」

「わかった」

 

 

 マスターが出て行き、少年と二人だけになると、サーザは寝かされている少年の身体を改めて見下ろした。

 まだ子供の、未発達で華奢な身体だが、手足が長くプロポーションがいいので鑑賞に堪える美しい肢体だ。

 肌は肌理が細かくしっとりした感じで、やはり真珠のような色である。

 サーザは何の気なしに、すーっと胸に指を滑らせ、薄赤い突起の一つを人差し指の先で軽く押した。

 誰も触れていなかったのに、少年の乳首はツンと硬く立っていた。

 尖った乳首を指の腹でゆるゆるとまわすように触れると、ピクと身体が反応した。

 ハッとして指を離すが、今度は指先で何度も摘む。乳首はさらに硬くなり赤くなっていった。

 それがまるで熟れた木の実のようで、サーザは誘われるようにそれを口に含んだ。

 唇ではさみ、舌先でつついてから尖った乳首を転がすように舐めまわす。

 乳首を口に含んだまま、もう一つの乳首を指でこねる。

 指の間で硬く立ち上がっていく乳首は、まるで木の実が赤く熟れていくようだった。

「あ・・・・」

 サーザはふいに耳に入った声にドキリとした。

 甘い声だった。

 なんだ?と胸から顔を上げると、少年の唇がうっすら開いていた。

 くりっと硬い木の実のような乳首を指で捻ると、また少年は甘い声を上げた。

 感じてるのか?

 女性と違い、無用とも思えるただの飾りのような突起に刺激を受け感じるとは思わなかったサーザは、ちょっと驚いた。

「気持ちいいか?」

 サーザは、さらに硬くなった乳首を舌で嘗め回し、指でつまんだり押しつぶしたりした。

「う・・・んん」

 甘い声を上げる少年の唇に目をやったサーザは、そっと自分の唇を押し当てる。

「シン・・・」

 少年の肌は見た目通り滑らかで、手に吸い付いてくるようだった。

 ずっと触っていたいような絹の肌。

 心地よいぬくもりが手のひらに感じるが、少年の中は火傷しそうなくらい熱いこともサーザは知っている。

 サーザはもう一度、硬く立ち上がった乳首を口に含むと、音がたつほど吸った。

 二つの胸の突起を何度も吸い上げ、舌で肌を舐めながら股間へと向かい、膝裏に手をかけて持ち上げた。

 少年の股間のものは、乳首の刺激でやや持ち上がり硬くなり始めていた。

 サーザは反応しているソレには触れずに、その下の白い双丘の狭間に舌を触れさせた。

 何度も男根を受け入れさせられた尻穴は、裂けてはいなかったが、摩擦で赤く腫れあがっていた。

 サーザは腫れたソコを癒すように舌で舐め続けた。

 尖らせた舌を穴の中にもぐりこませると、高い声が上がった。

 動く舌から逃れようと腰を揺らすが、サーザはがっちりと脚を押さえ込んで離さなかった。

 ふと視線を上げると、少年の股間のモノは先ほどより膨らんで反り返っている。

 サーザは穴から反り返った突起へと舌を滑らせた。

「やっ・・ん!」

 鼻から抜けたような声が少年の口から漏れた。

 サーザはふっと口端を歪ませる。

「おまえが落ち着くまでちゃんと抜いてやるから」

 

 サンキューな、シン、とサーザは呟き、雫をこぼし始めた先をためらうことなく口に含んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サーザが帰ると、マスターは、パジャマに着替えさせた少年を、二階の寝室へと運んだ。

 ベッドに寝かせ、掛け布を身体の上にかける。

 少年はまだ眠り続けていた。

 今夜自分の身に起こったことを彼が知ることはないだろう。

 夢に見ることもなく、全てが何もなかったことになる。少年にこの夜のことを告げるものは誰もいないのだから。

 マスターは少年の隣にもぐりこむと、片手で上半身を抱えて起こした。

 そしてサイドテーブルに置いていた酒の小瓶を反対の手で取り中身を口に含むと、開かせた少年の口の中に注ぎ込んだ。

 ややアルコール度が高い酒なので、少年は眉間を寄せたが吐き出すことはしなかった。

 マスターは、口移しで小瓶の酒を少年に飲ませ続けた。

 ほぼ中身がカラになると、彼は小瓶をサイドテーブルに置いた。

「結構酒に強いんだな」

 この店に来たときから、酒を全く飲んだことがないとは思わなかったが。

 しかし。

 日本には行ったことはないが、確か国民は全て、酒は二十歳にならないと飲んではならないという法律があった筈だ。

 以前、日本に行ったことがあるというフランス人から聞いたことがある。

 ワインは水代わりだと豪語し子供の頃から飲んでいる彼らにとって、二十歳を過ぎないと酒も飲めないなんておかし過ぎると首を捻っていた。

 まあ、どこの国でも、法律で決まっているからと全て守るような国民はいないだろう。

「彼らが心配するのも無理ないかもしれないな」

 自分は淡白だと思っているし、実際性欲を感じたのは数えるほどだ。

 それも、かつて愛した女性に対してだけ。

 ここ最近は、大胆に女性に迫られても何も感じなくて同性愛者かと疑われることもあった。

 しかし、男にときめいたことは一度もない。

 なのに・・・とマスターは反応している自分の股間を見て苦い笑いを浮かべた。

 あの三人がいる時は欲望を覚えなかったが、いざ二人きりになるとこのザマだ。

 おそらくは、さきほどサーザにも言った、似たもの同士という繋がりによるのかもしれない。

 彼がただ一人愛した女性も同じ村にいた幼馴染みだった。彼女はあの三人と同じ場所へ旅立ち、二度と戻らなかった。

 彼は、パジャマのズボンを持ち上げている股間のモノを外に出す。

 自分のモノが、欲で硬く張り詰めているのを見るのは何年ぶりか。

 殆ど自慰すらすることもなかったというのに。

 彼はもう一度笑って、右腕に抱えていた少年の口を開かせた。

 赤い舌が見えると、ズクリと下腹が疼いた。

「ほら。くわえて」

 マスターは優しく語りかけながら、少年の口に己の怒張したモノを差し入れた。

 少年の暖かい口中に包まれ、久々に快感を覚える。

 彼は、はぁ・・と熱い吐息をこぼす。

 口いっぱいにくわえさせられたモノに顔をしかめるものの、押し出そうとはしない少年の黒髪を彼はそっと撫でた。

「いい子だ」

 大人の、それも普段の何倍もの大きさになったモノをくわえるのに、少年は大きく口を開けなければならなかった。

 といって奥まで突き入れていないので、実質半分も入っていない。

 彼は先端を口に含ませるだけで、動かさなかった。

 だいたい、彼は少年の口中に欲を吐き出すつもりは全くない。

「この状態で暖めてくれたらいいから」

 彼は自分のモノをくわえた少年の髪を撫で続ける。

 そういえば、この子の名前はなんといったか・・・

ああ、そうだ、としばらくして彼は思い出す。

「シン・・・・」

 

 

 

 

「あれ?」

 

 目を覚ますと、見知らぬ場所に寝ている自分に気づき新一はパチパチと青い瞳を瞬かせた。

 どこだ、ここ?

「起きたか。気分はどう?」

 近い所から声をかけられた新一は、頭を動かした。

 見覚えのある顔が間近に寄せられた。

「えと・・マスター?」

「そう。忘れてなくて良かったよ。誰だ?とかいわれたらどう説明しようかと考えた」

「あ、いや、覚えてっけど・・・でもなんでオレ、ここに寝てるのかは覚えてないんだけど」

 しかも、ブカブカだがパジャマを着てるしと首を傾げる。

 だろうな、とマスターは首をすくめて笑った。

「昨夜、いきなりぶっ倒れるように眠ってしまったからな」

「昨夜?・・・って、今何時?」

「もうすぐ三時だな」

 昼の、と言われ、新一は仰天した。

「昼の三時――っ!?え?じゃ、もうバス出てんじゃ」

「とっくにな」

なんで起こしてくれなかったんだと文句を言いかけ起き上がろうとした新一は、腰に全く力が入らないことにようやく気づいた。

「あ・れ?」

 マスターはクスッと笑った。

「起こしても立ち上がれなくてはバスには乗れないだろう?」

「なんで??」

「まあ、覚えてはいないだろうけど」

 昨夜、一杯の酒を新一が飲んだ後、一緒にいた三人に絡みながら彼らの酒を飲み、ぶっ倒れたのだとマスターは言った。

 うそ・・と新一は思わず呟いた。

「最初の酒も結構強い酒だったが、それを一気飲みしたからな、君は」

 うわ・・・と新一は声を上げる。

 それだけは覚えていた。

 口当たりが良かったので、つい一気飲みをしてしまったのだ。

 それに、初めて酒を飲んだわけではなく、父親にも結構強いと言われていたから油断した。

 この地方の酒はかなり度数が強いから気をつけるように言われていたのに。

「オレ・・・あいつらに絡んじゃった?」

 気まずそうに問いかけてくる少年に、マスターは優しい笑みを浮かべた。

「別に迷惑そうじゃなく彼らも十分楽しんでいたみたいだから、気にする必要はない」

 うーんと新一は唸る。

「あの三人は?」

「明け方に隊に戻った」

「隊って・・・まさか軍隊?」

 そうだと、マスターは頷いた。

「そうかあ。あいつら、軍人だったんだ」

 だったら、もう会う機会はないかもしれない。

 覚えていないが、迷惑をかけたかもしれないのに。

 いや、絶対にかけているだろう。

 このオレが記憶に残らないまで酔ってしまったのだから。

「やっべえ〜〜」

 こんなこと、両親に知られたら何を言われるかわかったもんじゃない。

 それに、今日のバスに乗れなかった理由を聞かれたらどう説明したらいいのか。

 父親は推理のベテランであるから、下手な言い訳は通用しない。

 このまま別荘に寄らずに日本に帰っちまうか。

「今日はもうバスはないんだよな?明日は何時?」

「明日もゆっくり寝ていた方がいいんじゃないか?ここにずっと泊まっても構わないぞ」

「そういうわけには・・・・」

「明後日、この町で祭りがある。五年に一度の大祭で、めったに見られないものだから、見ていったらどうだ」

「大祭?」

「世界中から観光客がきて賑やかだぞ。珍しい土産物も買えるし」

 へえ〜と新一は瞳を輝かせた。

 祭りかあ。五年に一度の祭りなら確かに見とくべきだよなあ。

 それに、これなら遅れた理由として十分両親を納得させられるんじゃないか。

「うん。じゃあ祭りを見ていく」

「そうしろ。今日はこのままベッドにいて、明日起きられたら町を案内してやるから。祭りの準備を見るのも面白いぞ」

「ありがとう、マスター」

「それじゃ、何か食べるものを持ってくる。お腹空いたろう」

 新一がコクンと頷くと、マスターは部屋を出て行った。

 新一はもう一度起き上がろうとしたが、やはり腰が重くて諦めた。

 頭も重い。完全に二日酔いだ。

 確かに今日はもう起きられない。

「珍しい土産物かあ。どんなのがあるのかな?いいのがあったら、蘭に買ってってやろう」

 新一は日本にいる幼馴染みの顔を思い浮かべると、ふっと息を吐いた。

 

 

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