日本の町並み遺産

平成28年12月号（第77号）

CHIKUGO KUROGI

　福岡県　八女市黒木町黒木

八女市黒木
伝統的建造物群保存地区

　筑後黒木は、江戸時代初期に整備された豊後別路により発展した在方町である。現在の博多を中心とした交通網とは異なり、当時の九州は、瀬戸内海の入り口にある豊後へ通じる道が幹線街道だったようだ。
　筑後黒木では、お茶や炭などの山産物を中心とした商いが盛んで、街道沿いには蔵造りの商家が建ち並び、おおいに賑わっていた。その賑わいは明治・大正期にも続いていたようだが、鉄道網や高速道路網の整備に伴い急速に衰退し、現在では矢部川に沿った静かな小さな町に変貌している。
　ただ町の各所に立派な構えの古い商家が何軒も残されており、それらのたたずまいから往事の繁栄振りがうかがえる。町の衰退とともに古い町並みの多くが失われてしまったのだろうが、伝建地区の指定により、これらの貴重な商家とともに町の歴史も保存され、これからのまちづくりに生かされていくことを期待したい。
　ちなみに、元宝塚歌劇団娘役トップで現在女優の黒木瞳は当地の出身だそうだ。故郷の町の名が芸名に使われている。

①下　町

②中　町

③旧松木家住宅

④東上町

　←画像をクリック

①下町　筑後黒木の町並みは、豊後別路に沿って西から下町・中町・上町と３つのブロックに町割りされ、下町だけは国道４４２号の整備から外れているため、古い町並みがよく残されている。現存する古い商家はいずれも入母屋の居蔵造りで街道に面した正面は、それぞれ意匠が凝らされている。

②中町 　中町も豊後別路沿いの町並みだが、国道４４２号の整備とともに古い町並みの多くが失われてしまったようだ。ただ、飛び飛びにではあるが古い商家が残されている。この画の2軒の商家は景観改修がすんだばかりのようで、瓦も漆喰も真新しい。

③旧松木家住宅　西上町の旧豊後別路沿いに立つ居蔵造りの酒の小売商家。現在は「まちなみ交流館」として、地元住民や観光客に開放されている。この建物の雰囲気を生かした町並み景観整備が進むといいのだが・・・。

④東上町　江戸中期に、上町が整備されるのと同時期に町の北側に中井手用水が通され、その用水沿いに酒蔵や醤油蔵が建ち並んだ。現在もそれらのうちの何軒かが残され、往時の雰囲気を伝えている。