平成27年3月号(第56号)     トップページ  年月別リスト 地域別リスト
黒 江
KUROEI
 和歌山県  海南市黒江 海南市HP
海南市観光協会HP
黒江ぬりもの館HP
池庄漆器店HP
   黒江は漆器の町である。室町時代から豊富な紀州桧を用いた木椀の製造がはじまり、さらにその耐久性を持たせるための仕上げ塗装として漆塗りの技法が発達した。漆器は今では高級食器として、お正月のおせちを入れる重箱やお雑煮用など特別な使われ方をしているが、当時は毎日の使用に耐える大衆的な日用食器として広く愛用されていた。
黒江では江戸時代初期には漆器の生産量が高まり、漆器産業の町として人口も増加し宅地が不足して、もともとは入江だったところを干拓し、中央に堀川という運河を通して町並みが整備された。江戸時代に農地としての干拓がおこなわれた例は各地にみられるが、宅地拡大のために干拓した事例は珍しい。干拓地の地形的事情から宅地の形状が平行四辺形状になったため、黒江の家並みは、のこぎりの歯のように前面道路に対して直線にならず、ギザギザ形状になっているのが特徴で、今ではその景観が一つのウリになっている。

 また、川端通りはその名の通りもとは堀川を挟む道路で、堀川が商品や材料を運ぶ動脈だったのだが、大正期に黒江港の埋め立てと同時に暗渠にされ、現在は広幅員の道路になっている。堀川が昔のまま保存されていれば、両側に残る商家の景観も生かされ、倉敷や佐原のような個性ある町並みになっていただろうと思われるので惜しまれる。
@冷水家住宅 A池庄漆器店  Bぬりもの館 Cうだつの家   
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@冷水家住宅 江戸から明治にかけて漆器の卸問屋として繁栄した商家である。建物は比較的新しいので建て替えたか改装したかと思われるが、黒江の町並みの特徴であるのこぎりの歯状の建てかたはそのままで、玄関前に見られる三角形の空地がしっかりその名残をとどめている。
A池庄漆器店 明治初期に創業の漆器店で現在も操業を続けている。このスケッチは川端通りに面した蔵で、店の表は蔵の反対側にあり、巾1間半くらいの狭い路地に面している。川端通りの堀川が暗渠にされ広幅員の道路になった現在では、表と裏が逆転したような感じがする。

Bぬりもの館 江戸時代に建築された塗師の古民家を再生し、漆器ギャラリーとカフェとして観光客に開放されている。玄関先の三角地には大八車もおかれ、こういう風に利用されていましたよ、とよくわかるように展示されている。

Cうだつの家 正面ファサードの両側に2段構えの袖うだつがあがっており、目立つ意匠なので「黒江散策マップ」には「うだつの家」として紹介されている。店の前の川端通りは昔は水路で、現在ではそれを暗渠にして道路になっている。この水路沿いが往時のメインストリートだったようだ。