9月


14日
パブロフ(1849〜1936)ロシア(旧ソ連)の生理学者

リャザンの牧師の家に生まれました。ペテルブルグ大学で自然科学を学び、1879年陸軍軍医学校を卒業し、ドイツで実験技術を習得、軍医学校教授となる。ロシア革命前には、サンクト・ペテルブルグの実験医学研究所(現アカデミー生理学研究所の一部)の生理学部長、陸軍軍医学校の医学教授をつとめました。

彼が初期に行った研究は主として循環生理、消化生理で、1902年、唾液が外に出るように手術した犬で唾液腺を研究中に、飼育係の足音で犬が唾液を分泌することに気づき、条件反射の研究に着手しました。そして1904年、消化液分泌の神経支配に関する研究でノーベル生理・医学賞を受賞しています。

彼が行った条件反射の研究は画期的な実験方法で、より自然な状態で動物の生理を観察できることから、客観的な科学的心理学に強い影響を与え、特にアメリカの行動心理学に基盤を提供しました。またイヌの実験神経症形成の手法の発見は、人間の精神障害の科学的研究にも貢献しました。

共産主義には反対する立場をとっていましたが、十月社会革命後もレーニンの援助をえて、1935年にソ連政府が設立した研究所で研究の継続をゆるされ、アカデミア付属生理学研究所長となっています。

晩年には睡眠、本能、神経症の研究をすすめました。多くの門弟が輩出し、条件反射の研究は、国外ではとくに日本の生理学界とアメリカの心理学界で盛んになったといわれています。

※パブロフの犬
犬に必ずベルの音を聞かせてから餌を与えるようにすると、ベルの音を聞かせるだけで、胃液が分泌されることが観察される。この有名な現象・実験を「パブロフの犬」と呼んでいる
実験心理学プロパー様より、以下のような情報をいただきましたので紹介させていただきます。

パブロフは共産主義に反対していません。

パブロフが何故レーニンの信頼を得たのかはそのドイツで鍛えられた弁証法的、唯物論的態度は十分マルクス主義的だからです。口述筆記にもマルクスの用語が散見されます。現にレーニンはパブロフを親友の一人として挙げていますし、パブロフもレーニンを同志と呼んでいる。モンタージュ理論など科学を共産主義への道と解釈し、資本主義国でも宣伝するようにしたレーニンに、彼は条件反射をボリシェビキイデオロギーの根拠として提案し、現に適用した事はかなりアカデミアでは有名な逸話です。それは精神ではなく条件である事から明確です。それは晩年のスターリンの下でも続け、最終的に中国に提供されて、洗脳と呼ばれました。
さらに終生弁証法的唯物論者を宣誓しています。

2006年8月25日に掲示板に書き込んでいただきました。本当に詳しい解説をありがとうございました。
また、ネット上で見つけた実験では、男性被験者にヌード写真を見せるのですが、その直前にまったく関係ない傘の写真を見せていました。すると最後には傘を見ただけで欲情するようになったそうです。人間の心って、複雑な様でいて、意外と単純なのかもしれません。
スポーツ選手によく見受けられるそうなのですが、はじめは競技をする事自体が楽しかった(精神的報酬)選手が、大会で優勝してトロフィーを貰ったり、賞状をもらったりして成績を残す事(物質的報酬)が目的になってしまった時からスランプに陥ったり壁にぶつかったりするそうです。やはり物理的報酬に付随する精神的報酬より、直接の精神的報酬が大切なようです。
パブロフの言葉
学問に身を捧げている祖国の若い人たちに、私は何を望むと思いますか。

一歩一歩ゆっくりすすむこと、まず第一には、――徹底。 有益な研究をするために必要なこの条件について、私は興奮せずに話すことはできません。徹底、徹底、どこまでも徹底。研究にあたっては最初から徹底ということに慣れねばなりません。手近の一歩をわがものとせぬうちは、決して次のものに手をつけてはいけません。そして臆説を斥けねばなりません。臆説はシャボン玉のように見る眼には美しいが、所詮破裂して、混乱の他には何ものをも残さないものです。

 節制と忍耐に慣れなさい。研究においては、苦しい努力をするようにしなさい。事実をまず見、次にくらべ、そして集めなさい。鳥の翼がどんなに完全であっても、空気の助けがなければ、鳥は飛ぶことはできません。事実というもの、それは学者にとっては空気なのです。これなくして、君たちは決して飛び立つことはできません。これなくしては、君たちの「学説」は空しい努力になってしまいます。  しかし、学び、実験し、観察しつつ、事実の皮相に止まることがないよう努力しなければなりません。事実の記録係になってはなりません。その発生の秘密を洞察するように試みなさい。事実を支配している法則を根気強く探しなさい。

 第二には――謙譲です。何でも知っているなどと夢にも考えてはいけません。よしんば人びとが、君たちを高く高く評価しようとも、つねに「私は何も知っていない」と自分にいいきかせるだけの男らしい気持ちが必要です。傲慢のとりこになってはいけません。傲慢にとらわれると、賛成すべき場合でも、自分を固執するようになるし、有益な助言や親切な援助をも、断るようになってしまいます。また方法に客観性を失う結果にもなります。

 第三には――情熱です。学問というものは人間からその全生命を要求するものです。このことを忘れてはいけません。たとえ、生命が二つあったとしても十分ではないでしょう。学問は一層大きな努力と、情熱を要求するものですから。  私たちの祖国は、大きな自由を学者にあたえています。そしてまた、極端だと思われるくらい十分に、学問を生活にしみ込ませています。わが国の若い学者の状態について、何を話すべきでしょう。これですべてがはっきりしているではありませんか。学者には多くの便宜が与えられています。と同時に、彼等には、祖国が望んでいる大きな期待を果たすという名誉ある義務があるのです。


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