8月


30日
アーネスト・ラザフォード( Ernest Rutherford )(1871〜1937)

イギリスの物理学者

ニュージーランドのネルソンという町の近くの農家の4番目の子として生まれました。クライストチャーチのカンタベリー・カレッジに進み、に理学士になりますが、そのさい、高周波放電による鉄の磁気的性質を調べ、電磁波の高感度検出器を組み立てています。

そんな中、1851年にロンドンで開かれた博覧会を記念して設立された科学奨学制度が海外の学生にも適応されることになり、1895年の奨学生が、ある化学研究者に与えられることになったのですが、その人が家庭的理由で辞退し、学力の優秀なラザフォードに贈られることになったのです。

彼は奨学金を得て、イギリスに渡り、ケンブリッジのキャベンデッシュ研究所で、J.J.トムソンの下で原子物理学の研究をおこないました。また、マンチェスター大学で有核原子模型や元素の人工変換の研究などをおこなっています。その後はケンブリッジ大学の物理学教授などを務め、放射能が原子の崩壊によって生じることを説明し、アルファ粒子がヘリウムのイオン(原子核)であることを発見し、これらの業績により1908年にノーベル化学賞を受賞しています。

また、彼は、原子核物理学にとって根本的に重要な2つの発見をしています。それは、原子が小さな中心核とそのまわりにあるいくつかの電子からなるということ。また、原子の基本的構造を明らかにし、元素の人工変換を最初におこなったことです。ラザフォードが"核物理学の父"といわれているのは、彼がなしとげた数々の重大な発見と、科学分野の発展にかかわった多くの重要な物理学者に激励と指導を与え、生涯を通じて有能な弟子の育成に励んだからなのです。

その後1914年ナイトの称号を贈られ、1931年ネルソン男爵に叙せられました。
自分を含めて13人のノーベル賞受賞者を育てた、キャヴェンディッシュ研究所の第4代所長アーネスト・ラザフォード。彼は、ニュージーランド移民二世として生まれ、奨学金を得てイギリスへ留学。その後の彼は、核物理学をリードするとともに、綺羅星のごとき天才達を率いる優れた教育者となってゆきます。
もしも、彼が奨学金を貰えずに農業を生業として暮らしていたら、良い意味でも悪い意味でも、世界は今とずいぶん違った物になっていたでしょう
ラザフォードを取り巻く人々

ニールス・ボーア(1885〜1962,デンマーク)
ラザフォードの講義を聴き,その人柄にひかれ て、1912年から約1年間ラザフォードのもとで研究した。そして,ラザフォードの原子模型を使っ て水素スペクトルを説明し、水素原子模型を提唱した。そして1922年に「原子構造とその放射に関 する研究」により、ノーベル物理学賞を受賞した。

チャドウイック(1891〜1974イギリス)
1920年にラザフォードは中性子の存在を予言した。彼の弟子のチャドウイックが後の1932年にその中性子を発見し,1935年に「中性子の発見」により、ノーベル物理学賞を受賞した。

モーズリー(1887〜1915,イギリス)
ラザフォードが最も愛した弟子の一人に,モーズリーがいた。いろいろな元素にX線を当てたとき,散乱の強度は気体の分子量に比例する。X線の散乱は帯電粒子によって起こされると考えられるので,このことから,原子量が大きくなるほど原子内の帯電粒子の数が多くなることがすでに知られていた。モーズリーはこの理由を,原子が増すにつれて原子内の電子の数が増すこと,したがってまた,核内の正電荷が増すだろうと考え,メンデレーエフ(1834〜1907,ロシア)の周期律表を,原子核の正電荷の数(すなわち原子番号)の順に並べればよいことを提唱した。しかしながらモーズリーは,第1次世界大戦が始まり,英国工作隊として入隊させられ,1915年,27歳の若さで死んでしまった。生きていれば確実にノーベル賞を受賞していた人物である。

ブラケット(1897〜1974,イギリス)
第1次世界大戦では大尉だったブラケットは,大戦終了後,ラザフォードの講義を聴きに行って,そのままケンブリッジ大学に入学し,卒業後はラザフォードの指導のも とに,キャベンディッシュ研究所で研究を積み重ねた。ブラケットはウィルソンの霧箱を使い,1935年にα粒子を窒素に当てて核反応を起こし,その霧箱写真をとった。1935年には,γ線の消滅の際に電子と陽電子が発生する。いわゆる「電子対創生」を発見し,1948年に「ウィルソン霧箱による原子物理学と宇宙線の領域における発見」により,ノーベル物理学賞を受賞した。

そのほかにも、粒子加速器による最初の原子核変換実験に成功し,1951年にノーベル賞を受賞したコッククロフト(1897−1967,イギリス)や,超低温物理の研究(特に液体ヘリウムUの異常な性質)により1978年にノーベル賞を受賞したソ連の物理学者カピッツア(1894〜1984,ソ連)などがいます。


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