7月


10日
マルセル・プルースト(Marcel Proust)(1871〜1922)フランス 小説家 「失われた時を求めて」の作者

父は小説の中の田舎町コンブレーのモデルになったイリエ出身の著名な医師で、当時のフランスにおける衛生学の権威であり、皮肉なことに喘息についても研究を発表しています。

母はユダヤ系の富裕な家に生れた人で、彼は幼年時代母と祖母に溺愛されて育ちました。そのためか、彼は異常ともともいえるほど母に愛情を感じていました。

早くから上流社交界に出入りする一方で、パリ大学に学んでベルクソンを聴講。文学に傾倒して、優雅な小品を雑誌に発表、ラスキンの芸術哲学に傾倒してゆきました。

しかし、1903年と1905年に相次いで両親を失い、さらに追い討ちをかけるように、持病の喘息が悪化しました。これを契機に彼は、コルク張りの部屋にほとんどこもりきりになって、社交を絶ち、書き溜めた20余冊の手帳を資料に大作「失われた時を求めて」を15年間書き続け、完成と同時に倒れてしまいました。

彼にはロベールという弟がいますが、初期の秀作では主人公の弟が登場するのに、「失われた時を求めて」では完全に姿を消してしまいます。弟の誕生で母の愛情を独占できなくなったことがマルセルの喘息発病の原因というのが通説とされていますが、兄弟仲が悪かったわけではなく。やはり医師として成功を収めたロベールは、自らの忠告を無視してほとんど絶食しつつ創作を続けた兄が死ぬと、その遺稿の整理と「失われた時を求めて」の死後出版に尽力しました。

この7巻15冊から成る大河小説「失われた時を求めて」は、人間の内面の「意識の流れ」を綿密に追うことにより従来の小説概念を大きく変革しフランスの心理小説中の最高傑作と呼ばれています
失われた時を求めて
作者の幸福な幼年時代、社交界の生活、恋愛経験などを記憶によって再構成した小説で、驚くべき知性と感受性によって複雑に錯綜したテーマを緊密に結びつけながら、残酷な「時」の流れに風解してゆく人々や自分自身、そしてその背後にある社会を描き出した小説です。
プルーストは写真に異常な情熱をもっていた。大好きな友人(彼の場合は「美青年」が第一条件である)の軍服姿が魅力的なので自分も軍服を着て写真を撮りたい、ただそれだけの理由で、およそ柔弱なこの文学青年は一年間の志願兵になる。美青年と知り合いになると、かならず写真の交換を申し出る。馬車で散歩する高級娼婦の姿にあこがれ、手紙を書いて写真をねだる。主人公の初恋の相手のモデルとなった女性(友人のフィアンセ)の場合など、いろいろなつてをとおして写真を入手しようと努力し、ついには女中をそそのかして盗ませようとまでする。だが当の女性たちに、それ以上のことはしない。こうして貴族の夫人や令嬢、娼婦、俳優、芸術家、友人そしてお仕着せ姿の美貌の従僕に到る厖大(ぼうだい)な写真のコレクションが、小説を書きはじめるとき、「想像力が栄養を汲みあげる貯蔵庫」として彼の手元にあった


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