5月


28日
スタンリー・B・プルジナー (Stanley B. Prusiner)(1942〜) アメリカ 生理学者  

アメリカのアイオワ州デモインで生まれました。
その後、ペンシルバニア大学医学部を卒業し。1969年から3年間の国立衛生研究所(NIH)における兵役期間を除き、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部に在籍、1984年には教授となりました。

1972年、自分の患者がクロイツフェルト・ヤコブ病による痴呆症で死亡したのをきっかけに、脳の奇病の研究を始め、1982年、狂牛病に似たスクレイピー病を発症させたハムスターの脳から病原体を発見しプリオンと命名します。

プリオンは、通常は人間や動物の体内で無害のタンパク質として存在していますが、構造の変化により、脳の異常の原因物質となり、「プリオン病」を引き起こします。プリオン病は、人間の場合ではクールーの他、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、致死性家族性不眠症、新型クロイツフェルト・ヤコブ病などが,また動物では羊のスクレイピー(ふるえ病)、伝達性ミンク脳症、ウシ海綿状脳症(狂牛病)、などが知られています。

さらに、最近はアルツハイマー病との類似性も指摘されており、ノーベル賞選考委員会は,「アルツハイマー病など他の痴呆にかかわる疾患の分子生物学的なメカニズムの解明に役立ち、薬や新しい治療法の開発に重要な知見を与えた」として、1997年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
プリオン(prion)
アルツハイマー病などスローウイルス感染症の病原体。サンフランシスコの S.プルジナーのグループによって名づけられた。ウイルスの 100分の1の大きさで,ウイルスのようにふるまうが,その本体は核酸をもたず,蛋白質だけから成ると報告され,遺伝情報が核酸以外の物質に存在する例,または核酸から蛋白質への流れを大前提とするセントラルドグマに反する例として論議を呼んだ。しかし,その後の研究でも正確な増殖機構は解明されていない。
クロイツフェルト・ヤコブ病
特殊な感染性蛋白質プリオンを病原体とする病気で,脳がスポンジ状になり,けいれん,麻痺,痴呆等の脳障害を引起し,多くは死にいたる。通常は中高年に多く発症するが,イギリスの場合若年層に発症が目立ったため,狂牛病にかかったウシからの感染の可能性が問題となっていた。 1996年,イギリス政府の委員会は狂牛病との関連性を認める発表を行なったが,これに対し世界保健機関 WHOの専門家会議は,狂牛病との明確な関連性を否定しながらも,狂牛病への何らかの接触が最も可能性のある仮説であると曖昧な結論を下した。同年 10月,ロンドン大学の J.コリンズ博士らは,クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体プリオンと狂牛病のプリオンが同系列のものであるとの研究結果を発表した。
狂牛病について

狂牛病が発見されるはるか昔から、奇妙な病気が羊にはあった。それは「ふるえ病」といいます。脳に支障をきたし、ついには死亡するというもので、18世紀から知られていました。しかし、羊類と牛類間で病気が伝染することは考えられなかったため、両者の間の相関関係はほとんど問題にされませんでした。

1986年11月、英国の獣医たちは衛生当局に、未知の病気にかかった牛がいることを告げました。狂牛病の最初のケースでした。狂牛病は脳みそがスポンジ状になって最後は死に至るという奇怪な病気で、普段はおとなしい牛が、この病気にかかると、触ったり、つついたりするだけで異常な反応をすることから、「狂った牛」といわれました。

症状は羊の「ふるえ病」とほとんど同じで、この病原は、バクテリアでもウイルスでもなく、遺伝子DNAを持たない病原蛋白質「プリオン」であることが、カリフォルニア大学スタンリー・プルジナー博士によって仮説されました。普通の蛋白質が、病原蛋白質に変質するのではないかと考えられており、その臨床的な裏付けが急がれている。87年末、様々な実験の結果、狂牛病は食物を通じて伝染する可能性が示唆された。

他方、クロイツフェルト・ヤコブ病という類似症状で死に至る病気が1920年代から人間にも発生していました。狂牛病との類似性は指摘されたものの、その因果関係はすぐには証明されませんでした。1996年3月、英国厚生大臣はクロイツフェルト=ヤコブ病患者の10人が死亡したことを報告します。この患者たちの死因は、後日99年12月21日、プリオンの発見者プルジナー博士によって、狂牛のプリオンであることが医学的に証明されることになったのです。

一週間後、ヨーロッパ連合は、英国産牛肉に対する輸出禁止措置をとりました。
口蹄疫(こうていえき)
牛、豚、羊など偶蹄類がかかる伝染病。感染すると口や蹄に水疱ができ、食欲を失い生産性が著しく低下する。伝染力が強く、蔓延防止のため発症した家畜はすぐに処分される。人間は口蹄疫にかかった家畜の乳肉を飲食しても影響はないとされて
いる。

ちなみに、1967年にイギリスで口蹄疫のウイルスが大流行したとき、病気になった人間はたった1人で、その症状もインフルエンザにかかった程度のものだったそうです。


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