5月


2日
ベンジャミン・マクレーン・スポック(Spock,Benjamin McLane)(1903〜1998)小児科医 社会運動家

コネティカット州ニューヘブンで生まれました。エール大学ではボートチームの一員として活躍し、1924年パリ五輪での金メダル獲得に貢献しています。

その後、コロンビア大学医学部で学んだのち、ニューヨークで小児科・精神科医として活動。海軍に従軍中の1946年「スポック博士の育児書」を発表しました。ほぼ10年ごとに改訂をくりかえし、30以上の言語に翻訳され、5000万部が売れるベストセラーとなりました。

原著では「コモンセンスブック・オブ・チャイルドケア」、直訳すれば「子育ての常識の本」となっている。これは、それまでの育児書が常識を排し科学を重視してきたことに対する真っ向からの挑戦といえるでしょう。これまでの堅い育児書と異なり、児童心理から育児を考える、親切でわかりよいのが特徴で、米国中の家庭で常備薬的な存在となっています。

1963〜67年には正常な核政策のための全国委員会委員長を務め、放射能汚染を警告。また、ベトナム反戦を唱え、反戦デモに参加、1972年人民党から大統領選に立候補し第4位でした。

他の著書に「スポック博士の育児相談」「親の問題集」「ティーンエージャーのための性教育」などがあります。
育児書の冒頭で、スポック博士は次のように述べています。
「こどもは、一人ずつみんな違うし、親だって一人一人違うのが当たり前で、 病気でも、しつけの問題でも、他のこどもと同じにいかないのが普通なのです。 この本では、そのうちのごく一般的なことがらについて、ごく一般的な解釈や 問題を上げただけにすぎません。 あなたの赤ちゃんを一番よく知っているのはあなたであって、あなたの赤ちゃんの ことは、私は何一つ知らないのだということを、どうぞ忘れないで頂きたいのです。」
スポック博士の育児書は、従来の「べからず」読本のようにしつけの厳しさを説く内容ではなく、母親のもつ本能や子供自身の意欲を尊重し、自信をもって子供を育てるという弾力的な育児書。一九四六年(日本では昭和三十年)に出版された。その後、改訂版で赤ちゃんのことを「彼」から「彼ら=彼女ら」に改め育児も母親にかかわるだけのものではないことから「母親」から「両親」に言葉を変えるなど育児とは何かへの配慮を追求している
 九三年に筆者がオハイオ州クリーブランドの友人宅に滞在中のスポック博士を訪ねた際、彼は自らを「理想主義者であり、ベトナム反戦主義者」と語っていた。スポック博士の健康管理は、二番目の夫人、マリーさんが取り仕切っていて、博士は「好物のチーズをもう二年以上も食べていない。悲惨なことさ」とこぼしていた。夫人は彼からチーズばかりか、コーヒー、砂糖、塩を取り上げ、自由尊重のスポック流育児法の精神はすっかり棚上げされていたのだ。
この本をバイブルに子育てをした親は万人にものぼるという。
  それだけ、この育児書は凡庸ではなく、魅力と迫力に満ちていた。
  まずタイトルからして、原著では「コモンセンスブック・オブ・チャイルドケア」、直訳すれば「子育ての常識の本」となっている。これは、それまでの育児書が常識を排し科学を重視してきたことに対する真っ向からの挑戦といえる。   そして、そのことは、内容においても、見事に貫かれた。
  「あなたの赤ちゃんをいちばんよく知っているのはあなたです」
  「専門家のいうことも、いちいち気にすることはありません」
  「あなたの常識で考えることが、いちばん正しいのです」
  「いろんな育児法がありますが、結局は、両親が本能的にしてやりたいと思う方法がいちばんいいのです」
  これらの叙述が、専門家に振り回されて落ち込んでいた親たちに、どれほど大きな自信をもたらしたことか。
  そのうえで、スポック博士は、親の気負いをも、やわらげようとする。
  「親は殉教者になってはならない」
  「腹がたったら怒ったほうがよい」
  「子どもには必要なことだけをしてやり、もう一方で、子どもに害を及ぼさない程度に、親は親で楽しむことです」
  こうした人間への寛容が、子どもへの罪の意識に押しつぶされそうになっていた親たちに、どれほど安らぎをもたらしたことか。
CNNテレビのキャスター、ボニー・アンダーソン氏は、「クリントン大統領がスポック博士から大きな影響を受けたのは間違いない」と語り、今回の訃報(ふほう)に識者の中には「クリントン大統領のセクハラもスポック哲学の影響」とコメントする人もいた。
現在アメリカでは、これまで多くの母親のバイブルになってきたスポック博士の育児論、子どものやりたいことをやりたいように育てる育児法が、結果として自己中心的で社会の一員であることが自覚できない子どもたちを作ってきたとして、厳しい批判にあっているとのことでした。そして、例えば「子どもたちにはしかられる権利があるのだ」といったような主張をする学者の意見が、多くの支持を集め始めているそうです。


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