3月


24日
ウィリアム・モリス(William Morris)1834〜1896

装飾芸術家・詩人・物語作家・社会主義運動家

ロンドン郊外のウォルサムストウのエルム・ハウスに生まれました。オクスフォード大学に進み、卒業後、詩人で画家の、ロセッティという人物に出会い、彼の薦めで画家を目指しました。

1861年、ラファエル前派の芸術家たちと共にモリス商会を設立し、その製品である家具、織物などには工芸に誠実さと品位を求めようとしたといわれています。質素な材料であっても人の手による豊かな装飾をほどこし芸術的な作品を生み出しました。

壁紙やテキスタイル、ステンドグラス、家具、書籍など様々なデザインを手がけ、その後のアーツ・アンド・クラフツ運動をはじめ、20世紀の世界のデザイン界に幅広い影響を与え「モダンデザインの父」として位置づけられています。

天性の詩人で多くの分野に熟達した工芸家であり、デザイナーでもありました。又、当時のイギリスの商業印刷に対抗するかのように、彼はケルムスコット・プレスを設立し、理想の書物の製作に乗り出し、プライベート・プレスの先駆けともなりました。

晩年は、古建築の破壊に反対し、森林伐採や河川の汚染に抗議し、熱心な社会主義活動家でもあったとのことです。それらの仕事や社会主義運動は、先駆的であるばかりでなく、今日の文明批判の源として光彩を放っています。又、アール・ヌーボー (世紀末芸術) の運動に直接的な影響を及ぼしてもいます。

彼が亡くなった頃には、詩人としての評価が高かったと言われていますが、一世紀を経た今では、やはりデザイナーとして、あるいはアーツ・アンド・クラフツ運動の推進者としての業績が重要視されています。
モリスの妻となったジェイン・バーデンは、ラファエル前派同盟を結成した画家として有名なダンテ・ゲイブリエル・ロセッティによって理想的なモデルとして見出され、モリスと知り合いました。そしてモリスの求婚を受け入れましたが、そのロセッティとも深い恋仲となってしまいます。
1859年にモリスとジェインは結婚し、二人の娘を授かったが、1871年モリスとロセッティが別荘としてケルムスコット・マナーを共同で借りた頃には、モリスがアイスランドヘの旅に出たり、あるいはロンドンで仕事をしているとき、この恋人たち(ロセッティとジェイン)がケルムスコット・マナーで時を過ごすという奇妙な関係となっていました。
三人の関係は当時のモラルからすると尋常ではなく、田舎の住人からは、疎ましい目でみられていたようです。
モリスは、ある種の和解と容認に達していたといわれていますが、彼の心中がどうであったのかは不明です。

ロセッティ(1828〜1882)
イギリスの画家、詩人。ラファエル前派を結成。絵画はダンテ・聖書・神話に主題をとり、ロマンチックで神秘的な情感をたたえる。詩は古民謡を生かしダンテの影響が強い。
モリスは日本人にも思想・精神面で影響を与えています。
「明治の文豪、夏目漱石がイギリス留学でモリスの著書『地上の楽園』を愛読し、その思想に共鳴した」
「漱石の門下生、芥川竜之介はモリスを卒業論文のテーマに選んだ」
このほかにも、民芸運動で知られる柳宗悦や白樺派などの人々にも、モリスは思想・精神面で強い影響を与えています。
モリスが62歳で死去したとき、その死因は「モリスがモリスであったため」といわれました。
つまり、普通の人なら一生をかけてもできない偉業を身体に無理を強いながら「実に十人分以上」成し遂げたためだと伝えられています。
1185年のこの日、壇ノ浦の戦いが行われました。

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