10月


19日
ミゲル・アンヘル・アストゥリアス

(1899〜1974)

グアテマラの小説家、詩人、外交官

判事の職にあった父と小学校教師の母の長男として首都グアテマラの下町に生まれました。1903年に父親が、時の大統領エスタラーダ・カブレラに、にらまれて、判事の職を失い、母方の祖父が住む農場に移り住んでいます。

そこで働くインディオの家族と過ごし、アストゥリアス文学の原点となるマヤの神話や伝説の世界と親しみました。その後、首都に戻って、国立大学医学部に進学しました。が、グアテマラをおそった大地震で崩壊した都市の風景を文章にするうちに文学の道に進む決意をし、法学部に移り詩を書き始めました。

彼の大学時代は、大統領エスタラーダ・カブレラの独裁政権の末期からそれに続く軍事政権へと移動した時代に当たり、彼も積極的に学生運動に参加していました。そして大学を優秀な成績で卒業しましたが、学生運動に関係し、雑誌に寄稿したことがもとで逮捕され拘留されたりもしています。

その後彼は、短期の留学を目的に1923年イギリスに向かい、二ヶ月後フランスのパリに移動し、パリ大学でマヤの古代文化を研究しました。当時、パリでは新しい表現方法を求めるシュルレアリスム運動が盛んで、彼は、これにおおいに影響を受けています。

これらの研究や幼年時代の体験をふまえて彼は「グアテマラ伝説集」を発表します。この作品はフランス、スペインで絶賛され、以後の「土着文化派」としての創作活動のスタートを切りました。

1933年にグアテマラに帰国し、苦労してメキシコの出版社から、独裁者の圧制が人間を内面から抹殺していく過程を中央アメリカの一小国を舞台に独特な迫力ある文体で描いた「大統領閣下」を自費出版し、後にブエノスアイレスの大手出版社から再版されることになり、名声が確立しました。この作品は、新しい表現方法の実践として書かれた最初の長編小説で、彼の代表作となり、1967年ノーベル文学賞を受賞しました。

その他の作品として、とうもろこしを栽培して数千年の歴史を生きてきたラテンアメリカ先住民族 (インディオ) たちが、大資本に土地を奪われ土地との絆を失い次第に堕落していく現実を描いた「とうもろこしの人間」や「強風」「緑の法王」「埋葬された者たちの目」「ムラートの女」等があります。

創作のかたわら駐仏大使などもつとめました。
グアテマラ(Guatemala)
中央アメリカの北部にある共和国で、首都はグアテマラ。4〜10世紀にかけてマヤ文明が繁栄。1524年以後スペインの支配下に置かれたが、1839年に独立。1847年共和制となる。農業を主とし、コーヒー、綿花、砂糖などを輸出する。首都のグアテマラは、1527年スペインの植民都市として建設されたが。アグア火山の噴火により、数度にわたり破壊。現在再建された市街は、小パリといわれるほどに整えられています。
彼の文学は抗議の文学とよばれています
彼の作品「大統領閣下」の中には、ただそこにいただけで逮捕、監禁され、拷問を受ける下町の女性、拷問の最中、生んだばかりの赤ん坊の泣き声がどこからともかく聞こえる中、半狂乱になる女性の姿や、抱いた腕の中で泣き疲れた赤ん坊が死んでいき、大統領の腹心であった美しく若い男が獄中で惨めに死ぬ。そのようなやりきれない死の姿を通して彼の抗議が読者の心にひびいてきます。


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