衛生動物(07a)脊椎動物門 硬骨魚綱
(c)2012, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室)

衛生動物(目次) 


Ref. 060716 アユ
アユ                    【キュウリウオ科 Osmeridae】
Plecoglossus artivelis Temminck et Schlegel

サケ亜目 Salmonoidei, サケ目 Salmoniformes, 硬骨魚綱Osteichthyes, 脊椎動物門 Vertebrata
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:アユ。
2006年7月16日、千種川(兵庫県)。友釣りで漁獲。

アユ、横川吸虫の第2中間宿主
(16 July 2006. Revised on 26 January 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 アユは横川吸虫の第2中間宿主。吸虫の感染型幼虫(メタセルカリア)が寄生。ヒトは生食して感染、小腸で成虫になる。

 アユは1年で生涯を終える。冬、川で孵化(ふか)、川を下り、海へ。早春に川を遡上し始め、やがて食性を植物プランクトン食に変えて夏に急速に成長、秋に川を下り下流域に集合、初冬に産卵する。

 しかし、現在多くの河川では放流事業が行われているので、「天然鮎」とよばれていても、釣れた鮎の素性(経歴)には各種ある。即ち、(1)海から川への天然遡上、(2)湖やダム湖からの天然遡上、(3)海産種苗鮎の川への放流、(4)湖産種鮎苗の川への放流、(5)養殖種苗鮎の川への放流、(6)養殖鮎成魚の川への放流等である。


 第1中間宿主の淡水産巻貝カワニナから遊出した幼虫(セルカリア)がアユに侵入し、寄生してヒト等終宿主への感染を待つ。したがって、一定期間川で育ったアユは、素性にかかわらず横川吸虫の感染型幼虫(メタセルカリア)を保有している可能性がある。

 網、鵜飼、火振り漁、簗(やな)、釣り等で漁獲される。但し、遊漁はほぼ釣りに限られる。釣りには遊漁券の購入が必要。釣法には囮鮎を使う友釣り、毛鉤を使うドブ釣り、素掛けするコロガシ釣り等があるが、許可される釣法や漁期は各漁協ごとに決まっている。

 鮎を生食する料理で最も有名なのは、「せごし」。6月ごろの若い鮎を、骨切りを兼ねて薄く小口切りにした刺身。感染の原因となりやすいことは自明なので心得ておきたい。

 数日以上冷凍した鮎、また煮たり焼いたりした鮎からは、もちろん、感染しない。

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Ref. 071010 ゴンズイ
ゴンズイ                      【ゴンズイ科 Plotosidae】
Plotosus lineatus (Thunberg)
ナマズ目 Siluriformes, 硬骨魚綱 Osteichthyes, 脊椎動物門 Vertebrata
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

ゴンズイ
図1:ゴンズイ。2007年10月10日、兵庫県たつの市。釣りで漁獲。
ゴンズイ、背びれと胸びれに毒棘
(10 October 2007. Revised on 26 January 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japa. 田園科学室)

 ゴンズイは、海産魚。ナマズのような外観。体の側面に各2本(計4本)のやや黄色い線が縦に走っている。髭は4対(計8本)、長くてはっきりと数えられる。
 
 背びれと、左右の胸びれに各1本の固い棘があり、これらの基部に毒腺がある。

 海の釣りで、しばしば遭遇する。外道(望まないのに釣れてくる魚)扱いされるが、未だ食べたことはないが、身は味噌汁の具などになり美味という話を聞いたことがある。

 ハリを外そうとして、また調理しようとして、魚の取扱中に誤って刺される。腫れと痛みがひどく、概して長引く(約2日)。魚釣りや磯遊びの途中なら、中止して帰るか、安静にする。可能なら病院へ。

 昔、関東の某漁港で、釣り人が放置した多数の死骸を見た。魚を踏んで受傷することもある。望まない魚が釣れたら、速やかに海へ帰したい。

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Ref. 110811 ギギ(ハゲギギ)
ギギ(ハゲギギ)                   【ギギ科 Bagridae】
Pelteobagrus nudiceps (Sauvage)
ナマズ目 Siluriformes, 硬骨魚綱 Osteichthyes, 脊椎動物門 Vertebrata
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)
図1:ギギ(ハゲギギ)。2011年8月11日、千種川(兵庫)。夜間、釣りで採集。

ギギ(ハゲギギ)、背びれと胸びれの棘に注意
(11 August, 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. 田園科学室)

 ギギは、昔は、田園科学室の周辺の明石川にはみられなかったが、最近聞いた話では「いる」という。

 私のギギ(ハゲギギ)捕獲初体験は、1960年代、篠山川(兵庫、加古川の上流)でのこと。ナマズと思って掴んだら、胸鰭の棘が刺さって、痛い思いをした。

 しかし、痛み以上の症状には記憶が無いので、機械的刺激だけで毒は無い魚と思ってきた。手元の書物を見ると、胸鰭の1対と背鰭の1本は毒棘と書いてあるが、未だ「毒がある」と信じるだけの被害体験は無い。

 なお、日本産ギギ科の分類には諸説ある。

 宮地ら(1976)は、ギバチ、ネコギギ、ハゲギギ、が各々別属に分けるほどの差が無いとして、Pseudobagrus1属に、各々を別亜属として扱っている。また、アカザをギギ科に含めている。

 さらに、ハゲギギの形態は大陸の種の変異幅の中に入ってしまうことを指摘、分類学者の詳しい検討を待つとしながらも、大陸種に含めてPseudobagrus (Pelteobagrus) fulvidraco (Richardson)の学名を充てている。

 一方、益田ら(編、1988)は、上記と異なり、アカザは別科(アカザ科)に、またギギ科は従来の3属を踏襲している。

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Ref. 060805 タイワンドジョウ
タイワンドジョウ                  【タイワンドジョウ科 Channidae】
Channa maculata (Lacepe'de)
(キノボリウオ亜目 Anabantoidei, スズキ目 Perciformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:タイワンドジョウ。
2006年8月5日、明石川(神戸市西区)。釣りで漁獲。

タイワンドジョウ、有棘顎口虫の第2中間宿主
(5 August 2006. Revised on 26 January 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 通称「雷魚」には2種、本種タイワンドジョウとカムルチーがある。体側面の黒斑が本種では3列、他種では2列。どちらも外国からの移入種

 2種とも、有棘顎口虫の第2中間宿主となる。ヒトは生食して感染。幼虫が体内を移動、遊走性限局性皮膚腫脹を生じる。ヒト体内では成虫にはならない。

 昔、大きなハリに餌としてカエルを付け、水面を引いて、今日のルアー釣りのような方法で釣った。当たりは突然で、引きは強烈、釣趣は申し分ない。

 肉は美しい白色で美味。現在はほとんど食用にしないが、「あらい」は絶品。酢味噌で和えて食べていた。

 移入後池や川にあまねく棲むようになったが、近年は激減した。

 子魚は金魚の色に似た朱色で、一腹の子魚が群れを形成するが、これが後に移入されたオオクチバスやブルーギルに簡単に捕食されたのが激減の原因だとする釣り人の想像は、当たっているかも知れない。

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Ref. 060322 スズキ
スズキ                       【スズキ科 Percichthyidae】
Lateolabrax japonicus (Cuvier)
(スズキ亜目 Percoidei, スズキ目 Perciformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:スズキ。
2006年3月22日、岩見(たつの市、兵庫県。餌釣りで漁獲。

スズキ、エラ蓋後縁で負傷
(22 March 2006. Revised on 26 January 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

  スズキは出世魚とよばれる魚の一つ。成長するにつれて、セイゴ、ハネ(フッコ)、スズキと名前が変わる。

 漁師以外、一般の人の場合、餌やルアーを用いた釣りで漁獲するのが普通。釣趣に富み、愛好者は多い。

 ハリに掛ったスズキは、エラ蓋を立てて(開いて)、頭を左右に振り、鋭い後縁で釣糸を切ることがある。釣り人はこれをスズキの「エラ洗い」とよぶ。

 釣りあげたあと、魚をつかもうとすると、やはりエラ蓋を立てて抵抗、この時に傷を負う。エラの後縁はまるでカミソリのように鋭利なので、大きな傷になる場合もある。体験では、傷口に海水がしみて、痛い。

 毒があるわけではないので、普通の切り傷の手当をすればよいが、大型魚による深い傷の場合はタオル等で軽く押さえながら病院へ。

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Ref. 120817 イシガキダイ
イシガキダイ                    【イシダイ科Opleganathidae 】
Opleganathus punctatus(Temminck et Schlegel)
(スズキ亜目 Percoidei, スズキ目 Perciformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2012, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室
図1:イシガキダイ(幼魚)。14p、2012年8月17日、浦漁港(淡路、兵庫県)、釣りで捕獲。

イシガキダイ、毒化個体に注意
(17 August 2012, ABA. Lab. Sci. Rural Lidfe, Kobe Japan)

 全長80p超になる。石垣状の黒斑は成長とともに小さくなり、雄の老成魚では消失する。イシダイに次いで磯の底物釣りの釣師に喜ばれる。イシダイとともに、高級魚として食される。

 まれに、毒化個体による食中毒がおこる。文献的には、沖縄、鹿児島、宮崎、大阪、三重、神奈川、千葉で20年間に数十例あったとするものがあり、これを単純に平均すると年3.4例。但し、これとは別に軽症例が知られず(埋もれている)可能性も否定できない。

 幸い、死亡例が記された書物に遭遇していない。

 毒化は、いわゆるシガテラ毒(毒物質は各種)を含むプランクトンを摂取しておこる。

 一般にシガテラ毒による中毒では、(1)消化器系の症状(吐き気、下痢、腹痛)と(2)神経系の症状(ドライアイスセンセンションなど)、(3)その他、が知られる。

 また、最も幸いな場合、回復は1週間だが、重症例では半年〜数年ともいう。

 食べるべきか、食べざるべきか?だが、…私は食べる。フグの場合と違って、調理法を工夫しても、煮ても焼いても毒は消えないので、運を天に任せるしかない。

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Ref. 120409 アオブダイ
アオブダイ                       【ブダイ科 Scaridae】
Scarus ovifrons Temminck et Schlegel
(スズキ亜目 Percoidei, スズキ目 Perciformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2012, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

(写真は後日)

アオブダイ、毒化個体で死者も
(08 April 2012. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)
 全長80cm超になる青い色の大型魚。雄の成魚は頭部額付近がコブ状に前方へ突出する。

 2012年、長崎県新上五島町の78歳男性、自分が釣ったアオブダイを4月20日に食べ、翌21日に死亡。家族の78歳女性と39歳男性は腰痛症状の後回復。パリトキシンによる中毒とみられている。(長崎県発表、4月8日付神戸新聞参照)

 アオブダイの毒物質は餌生物由来のパリトキシンとされ、肝臓など内臓、または筋肉に蓄積される。「猛毒」で、フグ毒(テトロドトキシン)より強いとも言われる。主症状は筋肉痛、呼吸困難、痙攣、ときに死に至る。全個体が毒を持つわけでなく、中毒は毒化個体による。

 毒化は、上記報道を含め多くの場合スナギンチャクが原因とされている。

 また、アオブダイの毒化個体が見られた徳島県牟岐沖の海域で、海藻に多量に付いていた渦鞭毛藻がマウスに致死毒性および溶血活性を示し、これが毒化の「起源」と考えられたという。

 毒化個体は、少なくとも三重県、和歌山県、徳島県、高知県、長崎県などで知られる。自分で釣った本種を、食べることはやめたほうが良い。

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Ref. 100921 タチウオ
タチウオ                      【タチウオ科 Trichiuridae】
Trichiurus lepturus Linnaeus
(サバ亜目 Scombroidei, スズキ目 Perciformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図2:タチウオ(頭部)。
2010年9月21日、志筑(淡路、兵庫県)。釣りで漁獲。

タチウオ、鋭い歯に注意
(21 September 2010, Revised on 26 January 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 タチウオは色々な料理に合う、美味な魚。しかし、釣り人がその歯で負傷することが度々ある。

 魚体は美しい銀色金属光沢をもち、リボン状で細長く、大きくなると1mを優に超す。口部の歯は、牙と呼ぶ方が自然。

 日持ちの良い魚ではない。つまり、鮮度が落ちやすい。昔は食あたりも多かったらしい。山村出身の老人に、釣ったタチウオを進呈しようとして、「幼い日に食あたりして以来、一度も食べてないし食べたくもない」と言われたことがある。

 タチウオの歯は極めて鋭い。ちょっと触れるだけで怪我をする。釣りで、ハリを外す際、触れた記憶がないのに指から出血している場合もしばしば。

 魚挟みを使うこと、タチウオ挟みと銘打った品もある。また、ハリ外しよりも先に「サバ折り」にしめること。

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Ref. 110125 ニザダイ
ニザダイ                      【ニザダイ科 Acanthuridae】
Prionirus scalprus Valencienes
(ニザダイ亜目 Acanthuroidei, スズキ目 Perciformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:ニザダイ。
2011年1月25日、牟岐大島(徳島)、40p、釣りで漁獲。

ニザダイ、尾柄付近の骨質板に注意
(25 Januar, 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 釣り人にはサンノジなどとよばれる。尾柄から前へ4〜5個の黒い骨質板を備える。

 磯釣りでは外道(望まないのに釣れてくる魚)扱いされる。海藻食、特有の臭みがあるので、「美味しくない」と嫌われる。しかし、寒期のものは調理次第で美味と言う人もある。

 釣り上げて、興奮した個体は骨質板表面の竜骨状隆起を「逆立て」、これに触れて受傷する。幸い、魚体はぬめりが無く、ザラザラした感触なので、口の付近をしっかり持てば、ハリ外しの際の受傷は避けられる。

 磯で、岩上に放置されているのを目にする。望まない魚なら、速やかに海へ帰したい。

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Ref. 101216 アイゴ
アイゴ                        【アイゴ科 Siganidae】
Siganus fuscescens (Houttuyn)
(ニザダイ亜目 Acanthuroidei, スズキ目 Perciformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:アイゴ。
2010年12月16日、牟岐大島(徳島県)。42cm、釣りで漁獲。

アイゴ、背びれの棘は危険
(16 December 2010. Revised on 26 January 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 アイゴは海藻を食べる。やや癖のある風味のせいで、食べるのをためらう人もいるが、美味。特に一夜干しは酒肴として絶品。釣趣も悪くない。

 背びれの棘に刺されると激痛、ときに重篤、約2日苦しむと言われる。磯釣りには「アイゴ挟(はさ)み」とよぶ魚掴みの道具が必須。

 料理に先だって、背びれを料理鋏で切り取るが、この作業中に指に受傷することがあるので注意。

 なお、調理の過程で内臓を傷付けると身に不快な臭いがうつる。注意すること。

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Ref. 090109 カサゴ
カサゴ                       【フサカサゴ科Scorpaenidae】
Sebastiscus marmoratus (Cuvier)
(カサゴ目 Scorpaeniformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:カサゴ。
2009年01月09日、岩見(たつの市、兵庫県)。20p、釣りで漁獲。

カサゴ、背びれの棘に注意
(9 January 2009. Revised on 26 January 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 一般には刺毒魚と認識していないが、書物によっては本種を刺毒魚としている場合がある。釣りあげた時、また調理中に、背びれに刺されるとかなり痛い。

 体験から言うと、幼魚のほうが痛みが強い。痛みは半日〜1日でおさまる。傷口を清潔に保つこと。

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Ref. 050306 ハオコゼ
ハオコゼ                      【ハオコゼ科 Congiopodidae】
Hypodytes rubripinnis (Temminck et Schlegel)
(カサゴ目 Scorpaeniformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)
ハオコゼ
図1:ハオコゼ。兵庫県あわじ市、2005年3月6日。釣りで漁獲。

ハオコゼ、鰭の棘に毒
(6 March 2005. Revised on 26 January 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 ハオコゼは、せいぜい10pの小さい魚。しかし、その背びれにはずらりと毒棘(14本)を備え、また口の両側にも、折りたたみ式の鋭い棘を備える。

 釣りや磯遊びの際に刺される。カサゴの幼魚と見誤って素手で握って刺されるか、またはハリ外しの際に刺される。ハリに掛ってきた2cmに満たない幼魚に刺されたこともある。

 疼痛に悩まされるが、特別な体質でない限り、約3時間長くても半日でおさまる。自症例の場合、釣りを中止して帰るほどでひどくはなかった。

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Ref. 120331 ハコフグ
ハコフグ                      【ハコフグ科 Ostraciidae】
Ostracion immaculatus Temminck et Schlegel
(フグ亜目 Tetraodontoidei, フグ目 Tetradonttiformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2012, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)
図1:ハコフグ。2012年3月28日、愛媛県愛南町、釣りで捕獲。、

ハコフグ、パリトキシン様の毒による食中毒あり
(31 March 2012. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 フグ科ではなくハコフグ科に分類される。体の横断面が四角形。手で触れると硬い。

 筋肉と精巣は無毒(*厚生労働省ほか)なので、現在もこの2部位に限り、免許を受けていれば料理に使用可能。

 「冬の肝臓は大きくて美味」とされ、しばしば伝統的な調理法、ネギ味噌焼き・肝味噌焼きにされてきた。

 即ち、鋏で腹を楕円形に切り開いて内臓を取り出し、肝臓と洗った腸にネギ・味噌・酒を加えて腹に戻して、仰向けに網上に置き、炭火で焼く。魚の体を鍋のように使って焼く。

 これは代表的な釣魚料理でもあった。

 しかし、良く知られるフグ毒のテトロドトキシンとは異なる「パリトキシン」とみられる毒による食中毒が近年各地で発生、現在では筋肉・精巣以外を食用に供することが禁止された。

 なお、パリトキシンは、テトロドトキシン同様加熱で分解されることのない強い毒である。

 なお、次の点にも十分に注意したい。

 (1)釣りあげると体表から粘液とともに毒物質を出す。
 (2)その毒はパフトキシンとよばれ、魚に毒性・溶血性を示すとされる。
 (3)毒は体外ではやがて効力を失う。
 (4)しかし、釣ったハコフグをほかの食用魚と一緒にクーラーへ入れるのは感心しない。
 (5)魚に対する毒とはいえ、素手で弄ぶのは感心しない。

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Ref. 101110 クサフグ
クサフグ                      【フグ科 Tetraodontidae】
Tachifugu niphobles (Jordan et Snyder)
(フグ亜目 Tetraodontoiddei, フグ目 Tetradonttiformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2010, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:クサフグ。
2010年11月10日、明石川河口(明石市、兵庫県)。釣りで漁獲。

クサフグ、有毒種
(10 November 2010. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 本種はコモンフグ、コモンダマシなどと似ている。種名を調べるときに注意が要る。

 文献的には、全身に毒があり、筋肉も弱毒。決して食べてはならない。

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Ref. 101110 コモンフグ
コモンフグ                     【フグ科 Tetraodontidae】
Tachifugu poecilonotus (Temminck et Schlegel)
(フグ亜目 Tetraodontoidei, フグ目 Tetradonttiformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2010, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:コモンフグ。
2010年11月10日、明石川河口(明石市、兵庫県)

コモンフグ、有毒種
(10 November 2010. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 本種はクサフグ、コモンダマシ、などと似ている。種名を調べるとき、注意が要る。

 文献的には、卵巣、肝臓、精巣、皮膚は有毒、筋肉は毒か弱毒がある。決して食べてはならない。

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Ref. 101226 ヒガンフグ
ヒガンフグ                     【フグ科 Tetraodontidae】
Tachifugu pardalis (Temminck et Schlegel)
(フグ亜目 Tetraodontoidei,フグ目 Tetradonttiformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2008, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:ヒガンフグ。
2010年12月26日、志筑(淡路、兵庫県)。

ヒガンフグ、有毒種
(26 December 2010. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan)

 本種は、有毒種。文献的には、血液と筋肉の毒はあっても僅か、しかし卵巣や肝臓は猛毒とある。

 淡路では25pほどの型がよく釣れる。

 地元の人に、「食べればよいのに」と真顔で言われることもしばしば。また、あるTV番組で、アカメフグを(食用に)釣るシーンがあって、苦労の末釣れて歓声が上がったのは、なんとこのヒガンフグ。書物に地方名アカメフグ、とあるので納得。

 体に小棘は分布しない。皮膚に粒状の鈍突起が分布。

 資格を持つ人が捌いて釣り人に渡すのがフグ釣りをさせる釣り船、素人が捌くわけではない。なお、私の場合、シロサバフグ以外のフグは絶対捌かないと決めている。

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Ref. 110628 ショウサイフグ
ショウサイフグ                   【フグ科 Tetraodontidae】
Tachifugu snyderi (Abe)
(フグ亜目 Tetraodontoidei,フグ目 Tetradonttiformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)
図1:ショウサイフグ。26cm、2011年06月28日、洲本市 (淡路、兵庫県)。
ショウサイフグ、有毒種
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.(田園科学室)

 中型のフグ。美味しそうに見えるが、もちろん有毒種。

 体に小棘は分布しない。胸鰭斜め上後方の黒色斑は分割されている。尻鰭は白色。尾鰭は下縁だけが白い。

 文献的には、筋肉は無毒〜弱毒、精巣は無毒。それ以外の部位(卵巣、腸、皮など)は猛毒または強毒。

 関東では専門の釣り船が出ていて、船上で釣ったこのフグを捌いて渡してくれると聞くが、もちろん素人が捌くのは厳禁。

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Ref. 110703 マフグ
マフグ                   【フグ科 Tetraodontidae】
Tachifugu porphyreus (Temminck et Schlegel)
(フグ亜目 Tetraodontoidei,フグ目 Tetradonttiformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)
図1:マフグ、幼魚、20p。2011年7月3日、兵庫県淡路市。

マフグ、有毒種
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.(田園科学室)

 ここに示したのは幼魚。成魚はここに見られるような斑点が消え、黒褐色となる。

 体に小棘は分布しない。尻鰭は黄色。胸鰭斜め上後方と背びれの基部に黒斑。尾鰭下縁に白色部は無い。

 もちろん有毒種。文献的には、筋肉と精巣は無毒とされるが、それ以外は猛毒か強毒。

 最大50pにもなるというが、釣っても決して食べないこと。

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Ref. 120331 キタマクラ
キタマクラ                   【フグ科 Tetraodontidae】
Canthigaster rivulata (Temminck et Schlegel)
(フグ亜目 Tetraodontoidei,フグ目 Tetradonttiformes, 硬骨魚綱Osteichthyes、脊椎動物門 Vertebrata)
(c)2012, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室
図1:キタマクラ。2012年3月6日、愛媛県宇和島市、釣りで捕獲。

キタマクラ、食用にはされないが有毒種
(c)2012, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.(田園科学室)

 磯釣りでは、餌盗りとして嫌われる。15cm程度の小型魚。

 食用にされるという話は聞いたことがない。そのためか、毒性に関する文献は少ないようだ。

 筋肉と精巣は無毒とされるが、皮膚に強毒があるという。強毒とは、10g以下なら食べても死なないというだけのことで、ネット上では「さほど強い毒ではない」などと書いたものもあるが、怖い毒である。誤解のないように。

 肝臓と腸には弱毒(100g以下なら死なない)がある。

 大きさや見栄えの悪さから、食用にしたいという気は起こらないだろうが、決して食べてはならない。

 なお以下にも留意のこと。

 (1)皮膚から出る粘液中にも毒がある。
 (2)クーラーボックスに他の魚と一緒に入れない。
 (3)素手で徒に弄ぶのはやめる。

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